産業、経済、社会



ここでは、人間族を中心に
この世界の人々が、
どのような生活を送っているかについて
触れます。





 経済





■ 貨幣


まずはこの世界における貨幣について述べます。

人間社会に限定すると、貨幣経済はかなり浸透しています。
(さすがに、紙幣は普及していませんが。)
かなり小さな農村などの場合、
お金が通用しないことがあるかも知れませんが
そのようなところでも、村長や長老の所、教会(あればですが)に行けば
お金による取引の仲介をしてくれるかもしれません。

これらの貨幣は、
世界に存在する各国が、独自のものを鋳造、流通させており、
異なる国の通貨は多くの場合通用しません。
(各国の貨幣については、国と地域で触れる予定です。)
そのため、国境を超えて商売をする場合や、
旅をするものは両替商の世話になることになるでしょう。

ただ、ゼトニア`ギリス(南風と陽光の平原)マバールなど独自の通貨が流通していない地域で
貨幣による取引を行う場合はさまざまな国の通貨がやり取りされます。
(そのためか土地に慣れない者を目当てにした両替詐欺が一部で横行しています)





◇ ゲーム中の通貨表記について ◇


この世界において、各地域の通貨はばらばらですが、
各地域ごと通貨で表記していてはゲームの進行に支障をきたすので、
ゲーム中では世界で一番通用する西アルベールの通貨、【コルト(kt)】で通貨を表記します。
【コルト】は銅貨、銀貨、蒼紋銀貨、金貨、白金貨に分類され、
硬貨の価値は、基本的に硬貨に使われている金属の価値と同等のものです。
各々の硬貨を$に換算すると、

1銅貨=1/10kt=$1/10
1銀貨=1kt=$1
1蒼紋銀貨=10kt=$10
1金貨=100kt=$100
1白金貨=1000kt=$1000

となります。
また、一般には流通していませんが、
さらに高価なミスリル硬貨、イェローリル硬貨が
これらの硬貨の上に存在しています。

あと、人間以外の種族に関してですが、
人間との交易がさかんなドワーフ、
そして、一部の人間との交流がさかんな一部のもの以外には、
貨幣経済は浸透していません。

かれらはのほとんどは、自給自足が可能な生活を行っていますし、
取引を行うにしても、たいていの場合、物々交換での取引を行っています。




■ 交通と貿易


交通に関して、この世界では機械文明が発達していませんので、
移動は、陸路においては、徒歩、もしくは荷役動物(馬、ロバなど)による移動になりますが、
巡礼街道という、かなり整備された街道があるので、
巡礼街道の周辺なら移動は比較的迅速におこなえます。
しかし、巡礼街道といえども野党、野生動物、魔物、戦などの
危険にされされる可能性は少なくありません。

また、巡礼街道以外にも、人が多く行き交うところなどならば、
街道などが存在していますが、
そこから、一歩でも外れれば、村々を結ぶ道なども
なきに等しい地域がひろがっています。

そのため、ユイール山に巡礼に行ったり、交易を行うものは
集団で旅をし、その護衛として"荒駒の剣"と呼ばれる
組織で傭兵を雇う者が多いようです。


また、この世界では、既に原始的な帆船が実用化されているため、
船を使った海路での移動は、
ある程度、迅速に行えますが、運賃が高いこと、
海賊や、陸の魔物などよりはるかに強力な海の魔物に襲われる危険性がなどがあるため、
普通は陸路による移動の方がほうが、ひんぱんに使われるようです。


交通事情がこのような状態のため、
交易には、少なくない危険がともないます。
(そのぶん、冒した危険にみあうだけの報酬もえられるでしょうが……。)
そのため、遠方の交易品は値がつり上がりますし、
へき地の村に品物を届けてくれる行商人は貴重な存在として歓迎されます。




◇ 旅に関するいろいろなこと ◇


・巡礼街道(ルゼルィール)

交易や移動をスムーズに行うためには街道の整備が不可欠ですが、
この世界においても、街道はいくつか存在しています。(安全は保証されていませんが。)
それらの街道の中でも大規模で、
比較的安全なのが巡礼街道と呼ばれる街道です。

巡礼街道は、今(世界暦2000年前後)からおよそ1000年程前
アーモリム(聖誓の礎)の始祖シャノンが歩んだといわれる道をなぞるようにして
何者かによって、作り上げられた街道です。
(ワールドマップで濃い太線で示されているのが巡礼街道です。)
始点は、雪と逃れる者の原野にある、雪の街ユーラ。
終点は、北辺郷のユイール山であり、
その全長は各地にのびる支道もあわせると長大な距離になります。
(後述の計算に従ってユーラ ― ユイール山の旅程を計算するとおよそ800日(この世界の暦で三年弱)となります。)

街道はかなり整備されており、陸路の中では比較的安全で、
街道沿いには、宿場町(村)も多く存在しています。
(ごく少ないですが、場所によっては、石畳がしかれているところもあります。)

たいていの場合、街道はそこを治める国が管理をしているのですが、
場所によっては手の行き届かない部分や、
国が存在していない地域も多く存在します。
ですが、そういう所でもどういうわけか巡礼街道は荒れることもなく、
1000年前の状態を保っています……。



〜巡礼街道にまつわる伝説〜

シャノンが辿ったと言われるこの道が、巡礼街道と呼ばれるのは
この街道にまつわる、ある一つの伝説があるためです。
巡礼街道のうち、ハグルスギリス`ギリス(雪と逃れるものの原野)にあるユーラから
ミスラス(北辺郷)のニル`アッハへと至る行程には各所に
シャノンが残したといわれる祠や泉などがあるのですが、
願いを込めた品を携え、それらの祠や泉をめぐりながら
ユーラからニル`アッハまで旅を続け、最後にニル`アッハにある"聖誓の丘"にささげると、
比類なき癒しの力がその品に宿ると言われているのです。
その癒しの力は一回きりではあるものの、巡礼を果たした者の願いに応え、
あらゆる病と傷を癒し、死人さえ生き返らせるといわれていますが、
この"巡礼"の旅を果たすことが非常に困難であり、
その力に授かった者の話も少なからず伝わってはいるものの
その内容は不確かなものが少なくありません。

しかし、それでも―、
誰かを救うため、わずかな望みを胸に抱いて
この果てしない旅路に旅立つ者は
いつの時代も絶えることが無いと言われています。






・移動にかかる時間と費用


ファルナローンの都ハーランから、
ベルアルートの都ディアフまで徒歩で移動した場合、
単純計算(ハーランからディアフまでの距離/GURPS BASICに載っている軽荷の人間が一日に移動できる距離)で
約140日かかります。


実際の旅の場合、悪天候による足止めや、
その他の要因からして、
だいたい210日くらいほどかかるといっていいでしょう。
その間にかかる費用は、(安宿に泊まりつづけたとしても)
宿代、食事代だけ(一日の生活費を20ktとして考えます)で、
だいたい、4200ktとなります。
それに、関税、その他費用を考えると、
かなりのものになるでしょう。

また、海路を利用した場合の例をあげると、
ファルナローンのベスティアから、
雪と逃れる者の原野のユーラまで船で移動した場合、
およそ、15日前後の旅程となります。

船賃は、だいたい4000kt程度でしょう。




という計算があるのですが、
一日に60km(GURPSベーシックに乗っている軽荷の人間が一日に歩く距離)
というのはちょっと疑問がありまして、Web上で調べた結果一日約30kmというのが
どうも標準的なところのようであります。

ですから、移動だけで、270日、
その他の要因を考えると、およそ400日(この世界の暦で約一年と三分の一)ぐらいはかかると考えていいでしょう。
ちなみに、その場合の旅費は上記と同じ単純計算で8000ktぐらいとなります。
そもそも普通は行ったら帰るものですから往路のことを考えるとさらに旅費はこの倍になるわけです。

このように、旅にかかる費用は(この世界に暮らす住人達にとっては)膨大なものです。
(上記の例だと往復の旅費で16000kt=職人など(財産レベルが標準)で年収一年半分/農民(財産レベルが貧乏)だと年収三年分)
もちろん、為替などの仕組みは存在していないので、旅先で稼ぐ手段を持っていなかったら、
旅費はすべて持ち運ばねばなりません。
もし、旅費を泥棒等に盗まれたり、予想もしない出費があれば、
そこで立ち往生することになってしまいます。
その上、思いもよらぬ危険に遭遇することも少なくない訳で、
遠い土地に旅立つという事はまさに命がけのことなのです。



・宿泊施設

巡礼街道にかぎらず、街道沿いの街は
そこを行き交う旅人相手の宿屋が多くある宿場町となっており、
旅人はそこで休息を取ることができます。

ただ、あまり旅人が訪れないような田舎の場合、
宿屋がない場合も大いにあります。
そのような場合は、泊めてくれるところを何とかして探すか、
(人にもよりますが、けっこう難しいはずです。)
野宿するしかないでしょう。
(しかし、この世界で野宿するということはかなり危険な行為であるといえます)


下に、宿泊施設の大まかな利用料金をあげます。
ちなみにこの価格は、標準的な宿場町での料金です。

最低の宿/5kt・一泊
 雑魚寝の宿泊所。いわゆる木賃宿。
 まさに「寝るだけ」の場所で、寝具もなく、安全とはいえない。
安宿/10kt・一泊
 一応、個室があるが、部屋には
 寝具以外何もなく、その寝具もかなり粗末。
宿屋/20kt・一泊
 一階が酒場になっているような「一般的な宿屋」。
 個室にはベッドや、粗末だが家具なども一応ある。
高めの旅館/100kt以上・一泊
 かなり高価な旅館。施設内に浴場などがあるところもある。








■ 商業と街の生活、農村の生活
(ここに挙げるのはあくまでも一般的な町や村の姿で
あってすべてがそうであるというわけではありません。
また、国によっても街や村のありようは変わってきます。)


人間族の社会においては
貨幣経済がある程度発達しているといっても、
やはり農村で何か商売をやるというのは無理な話です。
どんな商売をやるにしても、
多くの現金を手に入れる事が無い農民が相手では無理があるため、
小さな農村などでは一般的に行商人が一部の生活必需品や
装飾品などを供給する役割を果たしています。
娯楽の少ない農村では、行商人が訪れた際に
村の広場などに広げられたものめずらしい商品をあれこれと物色するという事が、
ささやかな楽しみとなっている場合も多いようです。
また、その際には、行商人が商品を売るだけではなく
農民達が農作業の合間に作った品物等を
行商人のほうが引き取る事も多いでしょう。
場合によっては、お金を使わずに直接物々交換という事もあるかもしれません。

また、何かの事情でお金が必要になった時のために
村長や長老が村を代表して、あらかじめ村人から集めておいた品物などを換金し
それを村の共有財産として取っておく事もあるようです。


このように、小さな農村の場合、定住している商人などは普通いませんが、
鍛冶屋、大工などの生活に必要不可欠な職業は、
代々特定の家が技を受け継いでその役割を果たしているところが多いようです。
(当然、鍛冶屋だけではやっていけないでしょうから農家と兼業という場合がほとんどのようです。
また、鍛冶仕事のお礼は畑で取れた野菜・・・というパターンも珍しくないでしょう)
また、医術や祭祀を司るものとして、代々土地に住み、その地の精霊たちと深い関係を築いている"魔法使い"達がいます。
(賢者達は、彼らのことをいわゆる神語魔法の使い手(イェネリエル)と区別するために、
"語り手"(ノルダ)と呼ぶようですが、一般の人々はそのあたりの区別を気にすることはないようです。)
同じような役割を果たす者達として、アーモリム(聖誓の礎)の教父や教母達がいますが、
ノルダ達と彼らは"聖誓"によって協力関係にあるとされ、対立することはないようです。
(ノルダの血筋が絶えたところや、そもそも居ないところには聖誓の礎の者たちが赴くことが多いようですが)

上記のような農村の生活とは違い
ある程度人が集まるような街では商業ある程度が盛んです。
近隣の村で買い付けられた食料品を売る市場、露天商
日用雑貨を売るお店や、衣料品店、食堂、酒場、(街道沿いであれば宿屋とかも)など。
また、魔物などの脅威が大きいため、
武具店兼鍛冶屋というお店が
比較的規模の小さい町でも見受けられます。

このような街で見受けられる市場は、
食料品等を売る市がほとんどで、
農民などが、直接売りに出している場合、
近郊の村であらかじめ買い付けた物を
商人が売りに出している場合など様々です。
(基本的に野菜や魚、肉などは日持ちがしないので
税として取られる事も無く
農民や漁師の貴重な現金収入となっています。)

また、この規模の街になれば、
酒場で娼婦や男娼、吟遊詩人を見かけたり
広場や街頭で芸を披露する大道芸人を見かけることもあるでしょう。



さらに大きな街、地方の中心都市や
王都などでは、さらにお店のバリエーションが増えます。
市場や露天では食料品以外のもの(衣料品や装飾品など)も
売られているでしょうし、
街によっては故売市、骨董市等も見かけられます。

お店なども、本屋(古本屋)
専業の武器屋、魔術に使う道具や霊薬を扱うお店
宝飾品店、衣料工房など大都市でしか
目にする事ができないようなものを見かけることができます。

あと、比較的大きな街にしか見られない施設として、
学生や出稼ぎの者を相手にした下宿屋や
専業の医者、代筆屋、娼館、見世物小屋等も挙げられます。

また、ここまで大きな町になってくると
大商人と呼ばれる者たちも少なくありません。
呉服商、武器商人、宝石商、貿易商など
扱うものは様々ですが、
その財力によって街に大きな影響力を及ぼしています。
(特に西アルベールでは大商人達が地域の権力を握っています。)





◇ 村の暮らしと行商人 ◇


外との交流があまり無い辺境の小さな村では、
たまに訪れる行商人の手によって、
その経済が支えられているといっても過言ではありません。

彼ら行商人は
代々、家業として引き継ぎつつ
定期的に同じ村をまわって商売をする事がほとんどで、
後継ぎは旅ができる年齢になると親と共に行商の旅に出ます。

その過程で、顔見せをしながら後継ぎは代々築き上げてきた
おとくいさんとの関係を受け継ぎ
一人前の商人になる修行をするのです。
そのためか、馴染みの行商人というのは
村人の信頼もあつく商品の取引だけではなく
遠方への手紙を託されたりといった
個人的な頼みを託される事もあるようです。
このような行商人との付き合い方は外との交流が少ない
辺境の村が身を守るために自然と出来上がったものなのでしょう。

行商人という商売は
危険な荒野や森を旅する事も多いので
危険ですし、体力的にもかなり過酷なものです。
もちろん、普通に商売をするよりも
稼げるかもしれませんが旅にはお金もかかります。
基本的に、護衛を雇うような余裕など無いでしょうから
ほかの行商人仲間と共に行動したり
大きな隊商と共に行動をしたり工夫を凝らして
少しでも安全を確保しようとする場合が多いようですが、
それでも、その旅路はかなり危険なものです。


また、場合によっては、
大商人によって牛耳られているために、のし上がる機会がほとんど無い都市ではなく、
街の外の世界で一儲けしようと夢を見て、行商人となる者達もいるようです。







■ 物価


ここでは、この世界での様々な品物の標準的な価格についてふれます。

まず、武具類の価格に関しては、GURPSベーシックに準じます。
また、一ヶ月の生活費、収入なども、GURPSベーシックに準じると考えていいでしょう。
基本的に、(現代の現実社会に比べると)より生活必需品は安く、嗜好品などは高価になっています。

ここでいくつか、物、サービスの価格を挙げておきます。

食事 : パンひときれ銅貨4、5枚)
酒場の食事
(2〜3kt)〜際限なし
 :エール一杯(1kt)安いワイン一瓶(3〜4kt)
衣服 : 木綿の粗末な服(10kt)
木綿の普段着
(20ktくらい)
絹製の礼服
(1000kt)〜際限なし
 :羊皮紙(一枚、1kt)、紙(一枚、3kt)
紙製の本 :最低で100kt
公衆浴場 :1〜2ktから
吟遊詩人の一曲 :10kt〜
代筆屋 :一筆1ktから
見世物小屋 :5ktぐらい
娼婦、男娼 :20ktぐらいから様々
荒駒の剣の傭兵一日の報酬 :30ktくらい
(一般的な護衛任務、必要経費は別)
芸人一座 :だいたい一日で人数×50ktくらい。










 産業







■ 農業


基本的に、この世界の人々が最も口にする食べ物は
小麦(にあたるもの)を原料にしたパンです。
ただし、気候が冷涼で小麦が育ちにくい東アルベールであればなどでは、
根菜類(ジャガイモ(にあたるもの)など)も多く食べられているようです。
また、太陽の日が射すことのない常夜の国では、
キノコや蛍麦と呼ばれる麦から作ったパンなどが、人々の主な食事になっています。

穀物の収穫量は、われわれの世界における中世期の欧州近隣と比較すると
かなり安定しており、また、"世界"全体の人口も少なく、農作物以外で日々の糧を
提供してくれる森が非常に豊かですので(よほど過酷な税の取立てでもない限り)
日々の食事に事欠くという事は基本的には無いようです。
ただ、天災やそれに伴うききんが発生する事もあり、
人々が飢えることが全く無いというわけではありません。
農作物は、税として取られる分以外は、ほとんどが自給のためにまわされます。
(大きな街の近くであれば多少事情が変わってきますが…。)
そのため、現金収入を得る手段となるととなると
農作業の合間に行う内職ぐらいしかありません。

穀類や、根菜類以外でよく栽培されているものとして、
ワインの原料としてのぶどうやその他の果物類、油をとるためのなたね、
綿、麻、桑などの食料以外の目的に用いられる植物などがあります。
ぶどうは特にファルナローンの南部とウィルローン東部が、
綿は西アルベールとベルアルート南西部が生産地として有名です。



ちなみに、牧畜などですが、食用のためだけに
動物を飼うというのはあまり多くありません。
たいてい、乳を取ったり、荷役に使ったりといろいろな用途に使われています。
そのため、農民の場合、肉を口にする機会はそこまで多くはありません。
(これが町暮らしとなると多少事情が変わってくるのでしょうが・・・。)

また、この世界には化石燃料が存在しないので、
薪や炭に用いるための林業が比較的盛んです。
そうなると、森が荒れたりするのではないか、ということになりますが、
まず第一に、広大な森の木々を切り尽くしてしまうほど
人間が多くいないということ、森の女神の加護のおかげで森自身の生命力がかなり強靭である事、
そして、いまだに一般の人間たちにとって森は、
森エルフ、そして野生の獣と魔物が住む未知の領域であり、
畏怖の対象であるために、必要以上に森に分け入ることがほとんどない
といった理由で、たいていの森はその姿を保っています。
また、小さな村の住人や猟師、きこりといった、森から生活の糧を得ている者たちは
木々の精と深い縁を結んでいる者が多く、先祖代々"彼ら"との関係を尊重する精神を受け継いでいるため、
普通、必要以上に森を荒らすようなことをしません。






◇ 一般的な農村の姿 ◇


参考までに一般的な農村のすがたを挙げます。

集落の規模という点について人間族の社会全体をみると、
人口3000人以下の小村が数としては圧倒的
で、
その住民のほとんどは農民や猟師です。
街道沿いでなければ、宿屋など存在していないでしょう。
また、森林が豊かな土地ならば、
そこから糧を得るために、森にへばりつくようにして、
存在している村なども多いようです。

そこで、住民達は日の出と共に起き出し、日の入りと共に眠る生活を毎日送っています。
(油や薪がもったいないので、暗くなってから起きていることはほとんどありません。)
農民の場合、冬の農閑期以外は、月に3度の安息日
たいていは関係なしにはたらいています。
冬は冬で、内職などが忙しくほとんど働きづめの毎日です。
そんな彼らの楽しみといえば、収穫祭などの年に何回かある祭りぐらいで、
そのときには、旅芸人の一座などを呼んだりして
おおいに踊り、歌い、騒いで、日頃の憂さを晴らします。

このような小さな村の場合、その村を領有する領主などが、
村を守る役割を担っていますが、
村自体には、基本的に自衛手段などほとんどありません。
村の治安の維持や領主との連絡を任された者が駐留している事もありますが、
村長や長老がその役割を担っているところも多いようです。
かれらが事前に危険を察知でき、その上で自らの手に負えないと判断した場合は、
しかるべきところに助けを求めたり、護衛の者を雇ったりすることができるのでしょうが、
突然、強大な魔物があらわれたりでもしたら、ひとたまりもないでしょう。

また、これらの小さな村々でも、魔法使いというか、まじないの類に通じた者が
居る場合が少なくありません。彼らの扱う"不思議なちから"は、いわゆる神語魔法(イェルム)に
由来することもあるのですが、大抵はその土地に古くから根付いている精霊との
深い縁(えにし)に由来するものです。かれらは"魔法"を扱えるだけでなく、
医術やちょっとした雑学(歴史、伝承や地理、自然に関するさまざまなことなど)、
そしてさまざまなしきたりに詳しい場合がほとんどで、集落に人知れずほどこされた"まじない"を管理したり、
年に何度か行われる祭祀の際にアドバイスをしたりするほか、
さまざまな悩み事の相談役となったり、医師の代わりをやったりと頼りにされています。
(賢者達は彼らのように精霊と深い縁を結ぶことで不思議な力を振るう者達のことを
"語り手"(ノルダ)と呼んだりするようです)
また、代々、土地に伝わる伝承を受け継いでいることも多く、
その語りを村人達に語って聞かせたりすることも多いようです。

ちなみに、人間族のうち大部分がこのような農村に暮らす生活を送り、
生まれ育った村からほとんど出ることなく、その一生を終えます。


※集落規模の比率は人間族の国でおよそ以下の通り。
大都市(人口10万):中都市(人口約5万):小都市(人口約1万):村落(人口3000人以下)
=1:2:7:2000

なお、上記の集落規模の比率は司 史生の架空世界研究所 内、
ユルセルーム博物誌>ストラディウムの人口と社会構造 を参考させていただき算出いたしました。






◇ 魔物のとの戦いと領主、騎士 ◇




国によってその呼び名や、細かい違いはあるものの
この世界において、いわゆる王、領主、貴族と呼ばれる支配者層の者の多くは
同時に武人(もしくは直接戦いに参加しなくとも、戦いに何らかの形で関わる者)でもあります。

この世界では魔物の脅威が日常的に存在し、
常に人々の生活はそれらの危険と隣り合わせにあるといっても過言でありません。
上古の時代、人間族が冶金術を得、版図を拡大し行く過程で
魔物から身を守り、戦いを支え、さらにその上で生活していく為に
国というものが徐々に形作られていったという経緯があるため
今も、その影響が国や社会に色濃く残っているのです。

そもそも、王や領主が堅牢な城や館に住まうのは、
いざという時、そこに領民をかくまうため、
また、領民達が収穫の中から税を納めるのも
本来は、いざという時に魔物から自分達を守ってもらうため、
戦士達の生活を支え、戦いのための装備をそろえるためだったのです。
もちろん、実際のところ、事態はそこまで単純ではありませんし、
人間族の社会が複雑化するにしたがって
人間同士の争いから身を守るという役割もかなり大きくなり、
税を取る側、取られる側の立場もだいぶ変化してきてはいるのですが・・・。

また、この世界においても、騎士や領主の役職は確かに世襲制である場合がほとんどですが、
彼らの多くは、自らが魔物と戦う武人である、ということを一番のアイデンティティとし、
そのために、家をまもり、血を受け継いでいくのだ、という考えを持った者達が比較的多いようです。
当然、そのような理由から実際に彼らの多くは日々鍛錬を欠かさず、
また、いやがおうにも実戦を経験することになるため、名前だけの騎士、というのはあまりいないようです。
(ただ、彼らが優れた戦士であり、その自覚を持っていたとしても、彼らが"善き統治者"であるとは限らないのですが・・・。)
さらに、国の組織なども多くが形式や家柄よりも
実力を(比較的)重視する体制となっていることも、
彼らを優れた武人たらしめている理由の一つと言う事ができるでしょう。
















■ 農業以外の産業と様々な技術



 ◇ この世界の技術について ◇ 


この世界では『科学技術』はほとんど発達していません。
(【文明レベル】でいうとおよそ3Lvにあたります)
また、いわゆる"科学的""論理的"に物事を考えない傾向が強いといえます。
そのほか、我々の現実世界とは異なり
化石燃料に相当する物や火薬などが存在しません。
(火薬などはそれに関わる『物理法則』そのものが存在していないので
もし、同じ原料をそろえることができたとしても爆発しないでしょう。)





◇ その他の産業(衣食住に関わるもの)について ◇


ここで、農業以外のその他の産業ということで、
衣食住に関わるものについて軽くふれておきます。

衣食住のうち、衣についてですが、
服はたいていが木綿製のものです。

これらの原料となる布は、一般的に、
綿を栽培している村で織られていて、
農村の貴重な現金収入となっています。
( ただし、土地によってはこれらの布なども
税として取られてしまうところも少なくないのですが・・・。)
また、そのようにして出来上がった布を縫い上げて出来上がった衣服も、
また、農村の貴重な現金収入源です。
ちなみにこれらの綿織物は、
ベルアル−トや、西アルベールラータイアで特に生産が盛んです。

木綿などより高価な素材として、生糸があります。
生糸を原料とした布は、非常に肌触りがよく
高値で売れるのですが、
そのほとんどは、税として領主などに取られてしまいます。
生糸や、それを原料にした布の生産が盛んなのは
ファルナローンのほぼ全土、そして、ウィルローンユーテアです。
特にウィルローンの生糸織りは非常に質が高く
高値で取引されています。


これらの衣服は安いものでしたら、農村などでで生産されたものを
市場の露天などで買うことができるでしょう。(5ktくらいから)
少し洒落たものを着たかったら
大きめの町にある衣料品店や雑貨屋などで買うことができます。
ここらへんまでが、一般庶民の手の届く範囲です。

これらのものより高級な物がほしいのなら、
大きな街の衣料工房などで注文して、
いちからオーダーメイドするという形になります。
ただしこの場合、法外な値段(最低で2000kt)がつきますが・・・。


また、『住』つまり、建築についてですが、
木材が豊富な世界ですので、木造の家や、
木とレンガを組み合わせて作ったて作った家が多いようです。
ただし、城などは堅牢さが要求されるので
がっちりとした石造りのものがほとんどです。
また、この世界における城などの大規模建築物を作る"技術"は
かなり未熟なものと言わざるを得ませんが、
魔法やその他様々な力が存在していますので
その力をかりて作り上げられた(維持されている)
(我々から見て)常識はずれな建築物や巨大な建築物は数多く存在しています。

ちなみに、我々にとって馴染み深い存在である、
ガラス窓はかなりの貴重品でです。
そのため、裕福な商人の邸宅やお城、貴族の館など
かなりお金のあるところでないと見かけることはできません。






◇ 冶金術と武具 ◇



ここでは、冶金術と武具について軽くふれておきます。

まず、この世界においても、
鉄を扱うのが一番うまいのはドワーフといえるでしょう。
冶金術の起源は炎の神であるリガートによって上古に伝えられたもので
人間たちの間にも伝播したのですが
現在主流となっている冶金術は
ドワーフが中心となって発展させていったものです。
そのためか、今でも、武器職人として道を極めようという者は
ドワーフに弟子入りをする者が多いようです。


ちなみに世界に存在する鉱物は世界に偏在する様々な力が
凝り固まったものであるとされます。
たとえば、鉄は"停滞(死)"の力が低い純度で顕現したもの、
銀は"純化させる力"が顕現したもの、
金は人の精神に働きかける力のうち"魅了"の力が高い純度で顕現したものと言われています。
そして、これらの金属を精錬するという行為は
"変化させる力"の顕現である炎の力を方向性を純化させる方向へと向かわせ
原石の中に秘められた力(鉱物)を抽出する作業なのです。

また、この世界における冶金術の特殊な点として
ラティンという鉱石を
使用しているというところが挙げられます。
(この世界には石炭が存在していません。熱源は木炭、地熱、もしくは魔法が用いられます)
ラティンは、銀と同じく"純化させる力"を秘めている鉱石と言われ
銀よりも採掘量が多いため
精錬の際の触媒として広く用いられているのです。
ラティンはほかに主だった長所も無く
銀ほど"力ある"鉱物ではないために
この用途以外には使いようがないのですが、
これがないと鋼鉄を作れないので、
その重要度は意外と高くなっています。
ちなみに、ラティン、鉄鉱石共に、
最大の産地はドワーフの王国、その次が常夜の国です。



これら、鉄の一番の使い道ですが、
建材として使われるようなことはほとんどなく、
そのほとんどが武具の材料として用いられています。
これら武具の製作に関しても当然ですが、ドワーフたちが高い技術力を持っており、
この文明レベルにしては上質な武具を製作できるようです。
また、彼らはもともと、"炎"の影響のもとにある種族であるため
炎と切っても切れない関係にある鉱工業において
特別な才能があるのかもしれません。

また、鋼鉄を多く生産できるような
高度な施設は鉄鉱石とラティンの原産地が集中し、
炎を治める技術に長けたドワーフが数多くいる
アベリスム山脈(ドワーフの王国)に集中しており、
人間族の鍛冶師が彼らの技術を習得したとしても
ドワーフ族の治金術を外に持ち出す試みは未だにうまくいっていないようです。

また、鉄砲などは火薬がないので存在していませんが、
いわゆる板金鎧は存在しています。
これは、高い殺傷力をほこる気操法というものの存在や、
強力な魔物等の存在があるために、
防具が発達したためだと思われます。


また、この世界にはいくつかの特殊な金属が存在しています。
そのなかでも有名なのがミスリル銀
そして、イェローリルです。

ミスリル銀は魔力が銀を触媒とし、
実体を持った金属として顕現したものいわれており
魔法との相性が非常によく、
魔法の武器を製作するのには最適とされていいます。

あと、イェローリルですが、
この金属は純粋な精気が鉱石のかたちで表出した物であるといわれています。
イェローリルの光沢は虹色に輝くと称される程に美しく、
また、比類の無い硬度と粘り気をほこります。
その上、この金属は人の生命力との親和性が非常に強く、
イェローリル製の武器を手にした気操法の使い手は
まさに無敵の強さを誇るといわれています。

ちなみにこれらの金属は非常に貴重なうえに、
加工も難しいため、その値段もかなりのものになります。
イェローリル製の武具ともなると、
それ一つで、ちょっとした領地つきの城と同等の価値となる場合もあります。











 社会





ここでは、人々の生活に関わることで、
上に挙げた意外のことについて
いくつか触れたいと思います。




■ 暦


この世界の住人達の多くは四季の中で
様々な節目を定めて生活していますが、
暦というものを明確にきめて、
それにしたがって生活しているのは人間族のみです。

ここでは、人間のあいだで使われている暦を中心に、
一年の行事やその由来などについてふれていきます。


まず、一年は十ヶ月で構成されています。
それぞれ


始まりの月(一月)

雪の神の月(二月)

萌月(三月)

水霊月(四月)

緑の月(五月)

陽(ひ)の月(六月)

星神の月(七月)

実りの月(八月)

静かの月(九月)

夜の神の月(十月)



となっています。
これらの月(と暦)は、世界に四季が誕生したとき
神々と、それに仕える神官達によって定められ、
それ以来、千数百年間の間、うけつがれています。

ひと月は三十日で、
十日ごとの週に区切られており
(それぞれの日が月に対応して呼ばれています。)
最後の夜の神の日は安息日になっています。
(この一週間と言う周期は人間族の社会の中でもっとも身近な区切りであると同時に、
魔法的にも様々な意味のある周期と言われています。)

また、年の初めの日と、年の締めの日、冬至、夏至、秋分の日、春分の日は
これらの月に含まれない独立した日となっていて、
冬至は夜の神の月15日と16日目の間の一日、
春分の日は雪の神の月と萌月の間の一日、
夏至は緑の月の15日と16日目の間の一日、
秋分の日は 星神の月と実りの月の間の一日となっています。


また,これらの一年の間に様々な祭りや行事が行われる
日として以下のようなものがあります。
(ここで挙げているものはあくまでも代表的なもののみです。)




・聖誕祭(年初めの日)


一年の初めを祝う日で
だいたいは一家でこじんまりとしたお祝いをします。
庶民にとっては厳しい冬の中で唯一の楽しみといえるでしょう。





・聖天の碑の日(始まりの月20日)


この日はアーモリム(聖誓の礎)の始祖であるシャノンが
世界中をまわる旅をはじめた日とされています。

特に、派手なお祭り騒ぎなどをやったりすることはありませんが、
アーモリム(聖誓の礎)に属する者たちはこの日、
日の出から正午までの間、
この一年、世界と自分の身の回りの人々が
平穏に暮らせるように祈りをささげます。

この日の午前中に
教父や教母が多くいる大きな街の教会などの前を通ると
朗々と唱えられる荘厳な祈りの言葉を聞くことができるでしょう。

また、たいていの教会では、
この日、周辺の人々を招いての
ささやかな宴が催されます。





・萌黄祭(萌月1日)


森の女神であるミディールが、
ユイール山を訪れる日で、
この日から木々は冬の眠りからさめ、
芽吹くといわれています。

この日は、各地で祭りが催され、
冬の寒さからの解放と
春の訪れを祝います。

また、この日は、森エルフやコボルド、
獣人族たちにとっても重要な日で、
彼らのあいだでも、
いろいろな儀式や行事が行われます。





・蜜月詣(緑の月・第一の満月の日)


この日は一年で最も月が美しく映える日であるといわれ、
月を肴にしての宴などがよく催されます。
魔術師などの間では有名なことですが、
実際にこの日は月の影響力が強まる日であり
月の力に関連した魔術は力を増し、
月の光を恐れる呪われた死者たちもなりを潜めます。

また、この日に契りを交わした男女には
月の御使いであり、"よき縁"を取り持つといわれる
"蜜月"のエディンの祝福にあずかることができるという言い伝えがあり、
結婚式や"夫婦"の契りの儀式も数多く執り行われます。
(特に、王族や皇族などの結婚式などは、
たいていがこの蜜月詣の日に催されます。)
また、"蜜月"のエディンの加護は
"小さき民"だけでなくそれ以外の野生動物や木々など
あまたの生命にもその影響をもたらすといわれています。
現に、木々の中にはこの日を境に花を咲かせるものも数多く存在し、
また、動物の中にもこの日を中心に繁殖期を迎えるものが少なくありません。





・夏越の祓(夏至)
(なごえのはらい)

おもに農村などで夏至の日に行われる、
作物の無病息災と、
その豊作を祈る行事です。

基本的に、夏越の祓は神々や精霊達に
作物の無病息災と、
その豊作を祈る行事なのですが
災いを遠ざけるという意味で、
魔物や悪魔をかたどった
張り子などを燃やしたりすることもあるようです。

また、この行事は夏の厳しい農作業の合間の
息抜きも兼ねていて、
暑さがいくぶんましになる夕方頃になると、
村人総出で歌や踊りを交えた宴会が催されます。





・収穫祭( 星神の月〜静かの月の間の収穫期)


ここ一年の作物の収穫を感謝し祝う祭りです。
基本的には、おもな作物(ぶどう、小麦、綿など)の収穫が終わり
税としての分を、納め終わった後に行われます。
たいての場合、収穫祭は一年の祭りの中でも一番盛大に行われ、
収穫されたものが振舞われたりします。
大きい町では、祭りが数日にわたって行われることもあり、
武闘大会や、歌比べ、舞踏大会などが催されるところなどもあります。、





・星祭(星神の月14日)


この日は、星神ホーリスが
夜空に星を創った日と言われていて、
大きな街では、それにちなんで、
星空のもとで、吟遊詩人などによる歌比べが行われます。

また、余談ですが、
どういう訳か、この日の夜は
世界中が必ずといっていいほどいい天気となって、
一年のうちほとんどが霧と雨に包まれている
"霧の都"リーデ周辺でさえも、美しい星空を望むことが
できるといわれています。





・降霊節(静かの月の第二週)


静かの月の第二週は冥府と地上界との境が
あいまいになる期間といわれていて、
亡くなった人の魂のうち、いまだに冥府にとどまっている
魂が、思い出深い地へと帰ってくる日といわれています。
そのため、この一週間は亡くなった人との思い出の地へと赴き
その人の事を偲んで静かに過ごす人も少なくありません。

その時には、なつかしい人の魂がそこを訪れたとき、
花開くという銀雹花(リュネリア)という花を
かたわらにおいておく風習があります。

また、ニルアベールのとある地には、
この降霊節の時に、
死者と会うことのできる
場所があるとも言われています。

上に挙げた銀雹花や、死者に会えるといわれている場所の話に限らず、
降霊節にまつわる逸話や伝説は数多く存在していて、
降霊節に亡くなった人の姿を見かけたり声を聞いたといった
「不思議な」体験をしたという話も数多く知られています。







■ 様々な組織



◇ アーモリム(聖誓の礎) ◇


人々の生活に、関係深い組織として
まず一番に挙げられるのはアーモリム(聖誓の礎)という名で呼ばれる組織です。
このアーモリム(聖誓の礎)は"教会"と名がついていますが、
聖いわゆる"宗教的"集団ではありません。

たしかに、ある目的を果たすために
人々にいろいろな教えを説いていますが、
それは何か特定の存在への"信仰"に
基づいたものではありませんし、
彼らがふるう様々な魔法的な力も、
神々の力によるものではありません。
また、彼ら自身が、"神"の名のもとに教えを広めたり、
自らが神の代行者であり神の代弁者であると
主張する事もありません。

どちらかというと、ある特定の信念をに基づいて
活動している組織(例えば我々の世界で言うところの赤十字のような)
と考えたほうがいいと思います。




・歴史


アーモリム(聖誓の礎)の起源は
今から1000ほど前、"いまわしき冬"と
呼ばれる時代が終わろうとしていた頃にまでさかのぼります。

この"いまわしき冬"の時代、人間だけではなく
世界に住むありとあらゆる種族(妖精族でさえ!)が
戦いをくりかえしていました。

このような戦乱の時代が八十年ほど続き
世界中が荒れ果てていたころ、
一人の人物が歴史の表舞台に姿をあらわします。

それが、アーモリム(聖誓の礎)の創設者である(といわれている)
シャノン・リーヴです。

彼は、御使いの長のお告げを受けて
24人のハーフリングと、
18人の人間族、
そして、9人の妖精族の協力者と、
一体の偉大なドラゴンとともに
世界中をまわり
戦乱を治めてまわったと言われています。

とはいえ、世界中で荒れ狂っていた戦乱の嵐を
たったこれだけの人数でどうにかしたとは普通、考えられません。
現にシャノンに関する信頼のおける記録はほとんど残っておらず、
(というか、戦乱のせいで、この時代に関する記録自体があまり残っていません。)
詩人達の歌や、口伝という形で伝わっているだけです。
そのため、歴史を研究する賢者の中には
シャノンなどという人物は
存在していなかったという者さえいますし、
アーモリム(聖誓の礎)自体、シャノンと"いまわしき冬"の終息との
かかわりについて明確には言明していません。
創設者であるにもかかわらず、
教会は彼がなしたと言い伝えられている偉業について
みずからふれることをしようとはしないのです。
(このことを教会の人間に聞いても
はぐらかされてしまうのがおちです。)

ただ、シャノンがあらわれたと言われているこの時期に、
世界中で荒れ狂っていた戦乱が収束に向かったことは間違いのない事実です。


とりあえず、言い伝えられていることが
真実かどうかは別にして、
シャノンとアーモリム(聖誓の礎)の起源にまつわる話をかいつまむとこうなります。



後に忌まわしき冬の時代と呼ばれる戦乱の時代が
始まってから長い時が流れ
人々が希望を失い始めたころ…
ハグルス‘ギリス(雪の逃れる者の大地)に
暮らしていた少年、シャノンは御使いの長から、お告げを受け
彼の元に集った供とともに世界の"望まれざる"流れを変えるために
世界中を旅し、人とは思えぬカリスマ性と力で
戦乱を静めていった。

そして、"忌まわしき冬"と呼ばれる時代は
終わりを迎えたが、
今後、また同じことをくりかえさないように
世界を"良い"方向へ導くための組織を作り上げた。
それが、アーモリム(聖誓の礎)である。



つまり、アーモリム(聖誓の礎)とは"忌まわしき冬"のような時代を
再びくりかえさないために
他の種族との共存などの考えを
人々の間に根付かせるために
活動する組織であるということです。

シャノンの組織づくりが余程うまかったのか、
それとも、教会のような組織が人々に必要とされていたからなのか、
それとも、他に理由があるのか、
アーモリム(聖誓の礎)は、国に関係なく世界中に拡がり
その存在は、人々の生活にしっかりと根付きました。
特にシャノンがもたらした
魔物から身を守るための様々な知識とアーモリム(聖誓の礎)術法と呼ばれる魔法は
当時、勢いを増していた魔物に翻弄されていた
人々にとって大きな希望となったのです。
その結果、教会は一国でさえ
その存在をないがしろにできないほどの
強大な影響力をもつ組織となりました。

とはいえ、基本的に教会は
政治的な事には口をf出していません。
権力をもってその教えを広めるのではなく、
人々の生活の中に入り込み、
その一部となることで影響力を手に入れたのです。
ただ、その過程において教会が神と御使いの名を
もちいて教えを広める事はありませんでした。
あくまでも、教会は彼らが持つ"知識"と"力"を
糧にしてその影響力を大きくしていったのです。



ただ、これだけ巨大な組織が
長い歴史の中で腐敗せずに
そのこころざしを保ちつづけているというのは
いささか常軌を逸していますし、
各国の王や貴族などの権力者達が
これだけ大きな影響力をもった組織を
放っておくはずがありません。

それでもアーモリム(聖誓の礎)が創設当時の志を保ったまま
今まで存続してきたのには
教会を陰で見守る(見張る?)
御使いや、その他多くの存在があったためともいわれています。
(無責任なうわさですが、創始者であるシャノンが1000年もの永きにわたって
教会の存続のために暗躍しているという話もあります…。)





・教会の実態


上で述べたように、アーモリム(聖誓の礎)の目的は
世界を"良い"方向に導くことです。
その活動の中でも一般の人々の生活に
一番身近なのは世界中に存在する教会です。
普通、教会にいるのは
アーモリム(聖誓の礎)の組織の中でも
「教父」「教母」と呼ばれる者たちです。

教父、教母というひびきからすると、
一般的な「聖職者」のイメージがあるかもしれませんが
アーモリム(聖誓の礎)の教父や教母は
(「常識的な」範囲でなら)恋愛や結婚をしても全くとがめられませんし、
お酒や肉食を禁忌としていることもありません。
(ちなみに未婚者であろうと何歳であろうと男性なら教父、女性なら教母とよばれます)

特に末端の教会の教母や教父たちがやっていることというと、
住人たちの相談に乗ったり、
怪我や病気を治したりと
便利屋のようなことばかりです。
また、大きな街の教会では
孤児を引き取って育てたり、
貧しい人達に食べ物を分け与えたりしているところもあるようです。
(その資金源が一体どこにあるのかは後述します)
その一方で、そういったことによって得た信頼に基づき
(悪く言うと利用して)
日々の生活のなかで教会の教えをを
人々に説いているのです。
また、世界中には教会が無いような小さな村も数多くありますが、
そのような所にも、近隣の村から
週に一度や、月に一度ぐらいのペースで
教父や教母が出向いて
病気を診たり、講釈を行ったり
相談に乗ったりという事をしています。
また、一所の教会にとどまらず、
旅をしながら教会が無い小さな村を巡回する
教父や教母という者もいます。

彼らが説いている事というと、
妖精族などの異種族も人間と同等の存在であるとか
親は尊敬しなさいとか、
争いごとや人殺しはいけないはいけないとか
そのような、(どちらかというと)普通のことから、
この世界において人間族がいかに非力な存在であり、
神々やその他多くの存在のおかげで
この世界が存続しているということなど
いろいろなことを人々に説いています。

このようなことが、なぜ世界のためになるのか
疑問に思われるかもしれませんが、
人々の思いが、世界のありように強く影響を及ぼすこの地において、
人々の考えから変えていこうという
アーモリム(聖誓の礎)の方針はある意味、
理にかなっていると言えるでしょう。

その目的や、もたらされる結果はともかくとして、
彼ら教父や教母による、
800年にもわたる地道な活動によって
一般の人々の考えは教会の影響を大きく受けており、
多くの人々は異種族も一応は自分達と同等の存在である、ぐらいの
考えはあるようですし、(だからといって対立や差別が全く無いともいえませんが)
(難しい事は置いといて)神々や精霊達のおかげで
この世界が存続しているという認識ぐらいは
普通の人々にも一応あるようです。


また、彼ら教会に属する者達のもう一つの
役割として魔物、死霊などの人外の脅威から
人々の生活を護る事があります。
教父や教母を志す者は例外なく魔物、死霊、あやかしの類に
関する知識を身に付けており、
魔法を使えなくとも、それらの存在に抗う術を心得ています。
といっても、人の脅威となる存在が千差万別であるため、
やはり万能という訳にはいきませんし、
そのほとんどが予防策的なものではありますが・・・。

例えば、風の強い新月の晩は"地獄"の眷属が犠牲者を求めて彷徨い出るため
絶対に屋外に出歩いてはいけないとか、(迷信などではなくれっきとした事実です!)
西に向かって開けたの谷間のどん詰まりに生えた大木の下には
寄る辺のない死者の霊がわだかまるとかいったことから
村の北の入り口には楓の巨木の枝を、
南の入り口には胡桃の実を飾っておくと魔除けになる、など
それらの役に立つ"まじない"や"伝承"の類は多岐に渡ります。
また、いわゆる"魔法"にもちいられる魔方陣ほど本格的ではありませんが、
ある一定の法則にのっとって図形と文字を書きこんだ
"護符"も魔除けに効果があると言われています。
そのほか、彼ら教会の人間が日課とする"祈り"は
それ自体が魔除けの効果を持っているとも言われています。

教父や教母はそれらの千差万別な知識を駆使し、
戦士達とは別の形で人々の生活を護っているのです。


また、先ほど触れた旅の教父や教母は
数多く存在する教会がないような小さな村に
それらの知識を授け、加護を施してまわる役割も果たしており、
それと同時に彼らは辺境の村に伝わる埋もれた伝承(=知識)を収集する役割も担っています。
また、旅の教父でさえめったに訪れる事のないような辺境の村では
こうやって教会によって広められた知識が、
長い歳月経っても古老や村のまじない師などによって受け継がれ、
村独自の言い伝えと交じり合って独自の色を帯びて伝わっている場合も多いようです。


このように、教父や教母という職業はその役割からして
人々に尊敬され慕われることも多いのですが、
その苦労の割には得られる金銭的見返りが多い仕事ではありません。
それに、教父や教母として要求される知識や技術は膨大なものであり、
魔物との戦いの矢面に立つこともありえない事ではありません。
また、いわゆる一般的な宗教と違い、
アーモリム(聖誓の礎)ではいわゆる戒律がほとんどといっていいほどありません。
"教会がなすべきことを自ら見出し、それにしたがって自らを律せよ。"
それが教会によって教父と教母に課せられた唯一の規律であるともされています。
自ら何をすべきか見出し、そしてそれにしたがって己を律するということは
ある意味、与えられた戒律を盲目的に守ることよりはるかに難しいことですが、
教父、教母の称号はそれができる者のみに与えられるといわれています。
(それをどのようにして見抜いているのかは不明ですが・・・。)
そのような理由から教父、教母となる者は
その需要に対して人数が足りていない状況が常となっています。





・組織

アーモリム(聖誓の礎)といってもその組織は『教会』だけで
成り立っているわけではありません。
アーモリム(聖誓の礎)自体世界各地に点在する『教会』以外にも
多くの組織をもっています。




〜戦士団"ウルタ・フレデール(白き盾)"〜


アーモリム(聖誓の礎)の組織の中で「教会」の次に有名な組織として
挙げられるのが"白き盾"という名で呼ばれる戦士団です。

戦士団といっても彼らは"魔物"や"悪魔"と戦うために存在している戦力であり
彼らが人間同士の戦いで活躍することはまずありません。
(世俗勢力の背後に魔物や悪魔が潜んでいる場合、介入する事はありますが。)
そもそも、"白き盾"は集団戦で戦えるほど人数が多いわけではありませんし
大規模な集団戦で戦うような訓練も受けていません。
基本的に、彼らは少人数のパーティ−を組み、
強力な魔物など、一般の軍隊では手におえないような存在を退ける任務についていて、
その能力も少数精鋭での戦いに特化しています。
また、(戦闘的な)魔法の使い手が多いのも"白き盾"の特徴の一つと言えるでしょう。

魔物などの人外の脅威が日常的に存在するこの世界では
騎士団(やその旗下の軍隊)など一般的な戦力といえども
魔物に対して無力ではありませんが
(突出して)強力で特殊な力を持った存在を相手にする場合
やはり、力不足(と言うかそもそも向いていない)なのは確かで、
そのような時に、活躍するのが彼ら"白き盾"なのです。

そんな彼らの活躍が世間に伝わり、
華々しく伝えられることも少なくないのですが、
人外の計り知れない存在を相手にする彼らの任務は、非常に過酷なものです。
"白き盾"は精鋭ぞろいとよく言われますが
それは単に、白き盾においては精鋭しか生き残ることができないからであり、
世間の人々が耳にする華々しい活躍の裏には
戦いの中で人知れず死んでいった者達の死があるのです。





〜司教府〜


アーモリム(聖誓の礎)の事実上の最高指導者は
"大司教"と呼ばれる役職ですが、
司教府は、その大司教配下の組織で
アーモリム(聖誓の礎)の中枢をなしています。

司教府のおおもとはファルナローンの都、ハーランにありますが、
各地域を総括する支府が、
商都ラーデン、
公都ブランデス、
ユーテア国の都ナーデル、
ベルアルートの都ディアフ、
ラータイア王国の王都スィーレン、
ウィルローンの都ダークス

にあります。



司教府の役割は世界中に広がる
教会の運営に必要な雑務を行い、
また、"白き盾"などの
下部組織を統括する事です。
また、教会や教父、教母が何らかのトラブルにまき込まれた場合などは
この司教府が仲裁や交渉、そして、必要に応じた実力行使を行います。


また、司教府のもっとも重要な役割として
教会の資金の調達という仕事がありますが、
これは、大商人や貴族からの寄進だけではなく、
司教府は霊薬を作って販売し、
それによる収入を教会の運営にあてています。
教会が扱っているのは"治癒"と"健康"の霊薬だけですが、
魔術師などから購入するより多少安く、質が確かなので人気があり、
霊薬の販売による収入は教会の重要な資金源の一つとなっています。

また、アーモリム(聖誓の礎)には御使いや幻獣、その他人間以外の
協力者が数多くいるといわれ、
その事が司教府を含めた教会の維持に少なからぬ役割を果たしているといわれています。









◇ 荒駒の剣 (エラ・ジダール) ◇



人と人の戦い、魔物との戦い…
この世界では日々の生活のすぐ隣で
命を懸けた戦いがおこなわれています
そのため、戦うことで日々の糧を得る者も少なくありません。
彼ら戦士の中には、主君に仕える騎士、
自らの身を守るために組織された自警団、
何かの志を持って戦う戦士達などさまざまな者達がいますが、
金で雇われ、自らの危険と引き換えに戦いに参加する
傭兵達も数多くいます。

傭兵によって単独で仕事を探すもの、
傭兵団を組織するものなど様々ですが、
傭兵達にかかわるひときわ大きな組織として
"荒駒の剣"と呼ばれる組織があります。

この"荒駒の剣"の規模は非常に大きく、
アーモリム(聖誓の礎)と並んで
ほぼ全世界にわたって存在しています。
その性質は傭兵の仕事の斡旋を主に行う一方で、
重症を負った際の医者や癒し手の斡旋、
"素行不良者"の処罰など傭兵の生活に大きく関わっています。



"荒駒の剣"に属する傭兵は
独自の戒律を守ることを守ることを要求され、
好き勝手に行動することはできませんが、
(基本的に)モラルも高く、社会的な信用もあるため、
この組織に属して戦う傭兵も少なくありません。





・歴史


"荒駒の剣"の起源はおよそ300年前、
マバールの地にさかのぼります。

マバールは当時から貧しく、生活の糧を得るために
多くの者を傭兵として送り出していました。
しかしながら、当時の傭兵の扱いはひどく
戦場において捨て駒として用いられることも日常茶飯事であり、
戦場で怪我を負っても、そのまま捨て置かれ、
野ざらしのまま死んでいく者も少なくありませんでした。
その一方で、傭兵達も仕事にあぶれたときには
野党と化して略奪を行ったり、
雇い主を殺してその財産を奪ったりといった行為を繰り返していたため、
世間からはならず者も同然と見なされていて、
"まっとうな"傭兵でさえ、まともな生活は望めませんでした。
当然のことながら傭兵として暮らすマバールの民も同じような境遇にあり
一度、傭兵として故郷を旅立ったが最後、
再び故郷の土を踏むものは
ほとんどいなかったといわれています。


しかし、世界暦の1700年ごろ
その状況を見かねて行動を起こした人物がいました。
それが、"荒駒の剣"の創設者であるといわれる
イザール・エラ・シダールです。

マバール人の傭兵であった彼は
偶然、発見した廃墟の宝物によって
若くして、莫大な財産を手に入れたといわれています。
普通であれば、その財産で一生遊んで暮らす・・・のが普通であったのかもしれませんが、
同郷の者のひどい境遇を目にし、それを何とかしたいと思っていた彼は
あろうことか、自分の財産を元手にして傭兵の互助組織を作ろうとしたのです。
そして、多くの協力者の助けもあって
"荒駒の剣"といわれる組織が誕生しました。
といっても、最初はマバール出身の傭兵や彼の知己のみが参加する
傭兵団のようなものであり、
また、得られる仕事も最初はイザールのつてを頼ったものばかりであったといわれています。

しかし、それから300年。
創始者であるイザールの死、外部の勢力との抗争、"荒駒の剣"内部の内紛など
さまざまな危機を迎えながらも、
少しずつ規模を拡大していった"荒駒の剣"は
現在、世界中に広がりを持つ大きな組織となりました。
300年の時の中でそのかたちは大きく変わり
"荒駒の剣"にはマバール人以外のものはおろか、
人間族以外の種族までもが属するようになりましたが、
今でもイザールの志は脈々と受け継がれています。






・"荒駒の剣"の組織と実態


―戒律―

"荒駒の剣"の大きな特徴としてまず挙げられるのはその戒律です。
"荒駒の剣"は戒律として

"裏切りを受けない限り、裏切るべからず"
"我等は汝を助け、汝は我等を助く"

という二つのことを掲げており
その一員のなるものは
この戒律を守ることが要求されます。

"荒駒の剣"に属する者は
その証として"荒駒の剣"の紋章が掘り込まれた
小剣を所持しているのですが、
"荒駒の剣"の一員となる際には
この戒律を守る"誓い"をその小剣に対して立てるといわれています。
この"誓い"には何らかの特別な意味があるといわれ、
"荒駒の剣"に属しながら戒律を破ったとき
この小剣はぼろぼろにさびてしまうといわれています。
"荒駒の剣"の一員となるには
その員としてふさわしいかどうかの
さまざまな"試し"が行われるため、
戒律を破るものは少ないといわれていますが、
"荒駒の剣"に属する傭兵達が自分の身分を証明する際には
この小剣を相手に示し、身の証を立てることが慣例となっています。


ちなみに、この戒律をやぶった者は、
基本的に"荒駒の剣"からの追放、という事になるのですが、
(もちろん、その地の法に背いていれば役人に引き渡されることになるでしょう。)
目に余る行いを行った者については
"賞金首"として"荒駒の剣"内から追っ手が差し向けられることになります。
賞金首は手錬が多く(徒党を組んでいる場合も少なくないでしょう)
また、賞金首がどこにいるかを特定することは非常に難しいため、
追手を引き受ける者は多くありませんが、
なかには、この仕事だけを専門に行う"賞金稼ぎ"もいるようです。









―組織―


"荒駒の剣"は
一般に現役の傭兵を引退し、一線から身を引いた世話役達が束ねる
"寄合い"と呼ばれる組織が末端にあり
さらにそれらを束ねるいくつかの中間組織、
そして、各地域の組織を束ねる"長"による
合議制の"長会"と呼ばれる組織を頂点にした
ピラミッド状の組織となっています。


"荒駒の剣"の組織の最小単位である"寄り合い"の主な役割は
傭兵同士の相互扶助の提供です。
"荒駒の剣"の属するものが寄り合いを訪れたときは
たとえ見知らぬ土地の"寄り合い"であったとしても、
怪我の治療、武器の貸与、宿の提供、(常識的な範囲での)お金の貸し借り、
仕事の斡旋、情報の提供などを受けることができ、
"荒駒の剣"が担っている表立った役割のほとんどは
この"寄り合い"によってまかなわれています。

ただ、地域同士の交通の便が悪いため、
互いの"寄り合い"間の交流や、情報交換というものはあまりなく、
隣の町や村の"寄り合い"に属する者同士でも
顔も知らないという状況であることも珍しくありませんし、
何らかの理由で旅を続けている傭兵が
旅先で見知らぬ土地の"寄り合い"に立ち寄ることも少なくありません
普通、このような、お互いの信頼関係が成立しないような状況では
"寄り合い"がその機能を果たすことはできないはず…、なのですが、
"寄り合い"を訪れる"荒駒の剣"の傭兵達は
証の短剣によって同じ掟の元に戦う者であることを確認しあい、
見知らぬもの同士の信頼関係(の第一歩)を確立しているのです。

もちろん、この証の短剣の確認が
万能、というわけではありません。
しかし、"裏切りを受けない限り、裏切るべからず"
"我等は汝を助け、汝は我等を助く"
という掟と、皆がその掟の元に戦っている、という認識が
この"荒駒の剣"の特異な広範性と"寄り合い"の機能を支えている
大きな要因の一つである事は間違い無いと言えるでしょう。


この"寄り合い"は一般には
世話役と十人前後の傭兵達によって構成されていることが多いのですが
時には、現役の一人の傭兵だけで構成され、
その人物が仕事探しやそのほかの雑務をこなす世話役と
実際の傭兵としての仕事を、
かけもちでこなしているところもあります。
しかし、どんなに小さい"寄り合い"でも
馬と剣をあしらった看板を掲げており
"寄り合い"がある場合、
一目で分かるようになっています。

また、これらの"寄り合い"のサービスの提供は
地域との結びつきが非常に重要な場合が多いため、
"寄り合い"を預かる世話役は"長"直々に審査を受け、
それにパスすることによって
はじめてその職務につくことができるようになっています。






―仕事―

"荒駒の剣"が引き受ける仕事は
いわゆる傭兵稼業だけではなく
護衛や魔物退治、探索の補助など
多岐にわたっています。
基本的に同士討ちが予想される戦いや、
明らかに無法な依頼以外は受けるというのが
組織の一般的な方針となっています。
また、仕事の性質上
傭兵といっても武器をもって戦うものばかりではなく
魔法使い、野外での活動に長けた者、
罠や鍵の構造に精通している者なども、
"寄り合い"によっては属している場合があります。

また、どのような仕事を請けるかどうかについては
世話役の考え方によって多少左右されることもあり、
寄り合いによっては
近所の厄介ごとの世話までかかわるようなところもあるようです。





World index

index