神々と世界の成り立ち

ここでは、まず、
この世界が我々の現実世界とどう違い、
どのようにして成り立っているのか、

また、この世界において、どのような神々が存在するのかについて触れます。




 “世界"の成り立ち

 

この世界は、われわれの世界とある意味似ていますが、
かなりの部分で異なる点があります。
ここでは、それらの点について触れます。





■ 世界


このサプリメントの舞台となるところとしては、
まず、この世界の住人達によって"ハーナ(世界)"="ユーム(地上)"と呼ばれている大地(ワールドマップで示される大地)が挙げられます。
しかし、このサプリメントでは"地上"以外にさまざまな"異界"がその舞台となる可能性があります。
"異界”とはすなわち、"地上"と隔絶した『どこか』のことで、その規模は地上より広いといわれるものから
小さな庭程度のものまでさまざまで、そのありようも地上とほとんど変わらないものから、まったく異質なものまでさまざまです。



"ユーム(地上)"について

"地上"は空の下に在って、海と陸あり、森と川があり
あまたの民と数多くの動物達が暮らす世界です。
このワールドの住人達が"ハーナ(世界)"という単語を使う場合、
それは基本的にこの"ユーム(地上)"指します。


夜の女神が住まい常に夜の闇に包まれた"常夜の国"リュナローン
古い歴史を持ち、長き平和にの中にまどろむ"白暁の王の国"ファルナローン
世界の頂ユイールを擁し、神秘と伝説に彩られた"神々の地"ミスラス(北辺郷)
これらの地域を擁するミズダーナ(北方)

果てしない森が広がりその再奥に世界樹をいだく"ニフ`メディリ`ディン(冥幻の樹海)"
商人達によって支配される活気にあふれた地域"フリムアベール(西アルベール)"
暗く深い森に覆われ、戦乱の絶えない"ニルアベール(東アルベール)"
東大陸を南北に分断し、世界で唯一の火山がある"デアドリス`アベリスム(アベリスム山脈)"
数多くの龍と共に人々が暮らす"龍の国"ユーテア
世界一の大きさを誇る"レスィナ`ミレ(レスィナ湖)"を擁し、活気にあふれた新しき国"ベルアルート"
そして、ある日一夜にして滅び、それ以来地上の魔界と化した"旧ナイアラ"
これらの地域を擁し、世界の東半分を占めるニルダーナ(東方)

ニルダーナのさらに南、ウルデワール(帰らじの峰々)を越えた先にあり、幻と現実の狭間にたゆたう"メレディース(うたかたの大地)"

肥沃な大地と穏やかな気候によって類稀なる実りに恵まれる"ラータイア"
穢れた大地よりあふれ出る魔物に対する防波堤として、長い戦いの中にある武人の国"ウィルローン"
険しい自然の中に数々の美しき秘境が点在する南の最果ての地"ニブリア(南方辺境)"
地上の楽園と謳われたかつての面影はなく、いまや魔物が跋扈する大地となった"モグルス‘ギリス(瘴気の吹き溜まる荒野)"
ハーフリングたちが数多く住まい、遥か天上に届く塔があるといわれる草原の地"セトニア`ギリス(南風と陽光の平原)"
豊かな森に覆われ、獣人たちが気ままに暮らすイザリーア`ガウル(始まりの森)
これらの地域を擁し世界の南半分を占めるヴォナダーナ(南方)

そして、西の最果て、雪と氷に覆われた雪の女神の住まう地、"ハグルス`ギリス(雪と逃れる者の原野)"

これらの五つの大地とその外に広がる海をひっくるめて、
賢者達はこの地を"ユーム(地上)"もしくは、"ハーナ(世界)"と呼びならわしています。
ただ、世界をこのようなものとして理解しているのはごく限られた賢者達ぐらいのものです。
("地上"にどのような大陸が存在し、それらの大陸にどのような地域が存在するかという上記の知識については、 
地域知識/地上:13、歴史:15、地理(地理学)/地上:13のいずれかを満たしていれば、知っていることにできます。
ただし、メレディースの存在を知っているためには、さらに2レベル余分に必要になります。)

農民や職人、商人などいわゆる市井の者の多くも詩人達の歌う物語やアーモリムの語りから
自分達が暮らす土地というのが、広大な"世界"の一部であることは知っていますが、
"世界"というものに対する認識は非常に曖昧なものに過ぎません。
日々が旅の空の下にあるものならともかく、
普通に定住している者達にとっては、隣の国のことすら物語や旅人の話でしか知りえないことですし、
"地上"の外に"異界"なるものが存在するなど考えにもよらないでしょう。
(実のところ、"異界"は普通に暮らしている人々にとっても意外と身近にあって
知らず知らずのうちに接触していることは珍しくないのですが)




"異界"について

"異界"とは、"地上"とは別の『どこか』のことです。
そのありようはさまざまで、その一部が"地上"の森と重なっていて、
その理も似通っている"ギムリア(幻界)"のようなものもあれば、
完全に地上から隔絶しており、非常に特殊な方法によってのみ
接触が可能な"ミド`ミセラ(真なる異界)"と呼ばれるものまでさまざまです。

"異界"の中でも"ギムリア(幻界)"、"アリエラ(冥府)"、"ニダリア(魔界)"、"モーグリア(地獄)"などが
(上記に挙げた四つの異界については 神秘学:10、歴史:12のいずれかを満たしていれば、
そのような異界が存在していることを知っていることになります。)

よく知られていますが、これらは無数にあるといわれている異界の極一部に過ぎません。
このような異界については ワールドセクション>異界に詳しく記述してあります。




■ 世界の理


この"世界"のありようは、
我々の現実世界とよく似ていますが、
全く同じではありません。


最初、この世界が創造者によって見出されたとき
そこには大地を渡る風もなく、恵みをもたらす森もなく、
夜と昼の区別さえなかったといわれています。

その薄闇におおわれた砂と岩だけの大地に
風を呼び込み、森をはぐくみ、"世界"を形作ったのが神々でした。

いってみれば、この世界に当然のごとく存在する現象のほとんどが
神々によってこの『世界』にもたらされた
偉大な『魔法』のようなものだといえるのかもしれません。
この『魔法』が解けた時、世界は再び
石と砂だけの不毛の地と化すとも言われてます。




・太陽と月

この世界の太陽と月は、地上のはるか上空に浮かぶ、球形の天体ではありません。
この世界において、太陽と月とは、世界のいずこかに眠るといわれる
二柱の創造者の命の輝きの顕れであるといわれています。

太陽と月は二柱の創造者より人を見守る役を託された二柱のアラス(暁光と昏暮の守護精霊)の手によって、
天を巡っているといわれていますが、夜の女神ナティアによって夜が創造される以前は
太陽も金の月と呼ばれ銀の月(現在の月)と共に天頂に在ったといわれています。
(昼が存在しない"夜の国"リュナローンでは、現在でも、穏やかに
地上を照らす昔の姿のままの"金の月"を見ることが出来ます。)

また、この世界でも日食、月食が起きますが
それは言ってみれば何らかの理由で創造者の命の輝きが
地上から失われるという通常では考えられない現象であるため、不吉の証とされています。
また、冥府と死者の守護者である"静月のアリン"は
月を"鏡"として地上を望むとされ、
月が一時的に姿を消す新月の晩には、普段、彼女の視線を恐れ、なりを潜めている
悪霊や地獄の眷属がさかんにうごめくといわれています。








はじめ、この世界には夜が存在せず、太陽と月は互いに寄り添いつつ
天頂に留まり続けていたといわれます。

しかし、上古の時代、偉大な"魔法使い"であった女性が
休息と新たな命をはぐくむ闇に包まれた時を定め、夜が誕生しました。

そして、その時から月と太陽は天を巡りはじめたのです。
その後、その女性は夜をつかさどる神となり、
いまも、休息と創造の時である夜を見守っています。




・四季

この世界において、四季は世界が創造されたときから存在していたわけではありません。
上古の時代、火の神によって世界に遍在する"うつろい変転させる力"の顕現として炎がこの世界にもたらされたとき、
その秘めたる力があまりに強烈で無秩序であったために
危惧を抱き、炎とは対極に位置する"なにものか"を見出そうとした者がいました。
そして、その者が危惧したとおり
世界ににもたらされた炎は、人間族を中心に急速に広まり、
結果として世界は均衡を大きく崩したといわれています。
そこで、神々はその者 ―"雪と逃れるの者の大地"の守護者であった女性 を雪の神として迎え、
世界の均衡を取り戻したといわれます。
"うつろい変転させる力"が世界に満ちる夏は、生命がいきいきと活動し、成長する季節。
"停め滞らす力"が世界に満ちる冬は、、ひっそりと寒さに耐え、静かに休息する季節。
その後、世界は暦に従って、
ミスラス(北辺郷)にある"神々の峰"の最高峰、カルド`ユイール(ユイール山)に
火の神が在るときは、夏になり、雪の神が在るときは、冬になるようになったのです。

ちなみに、春と秋には森の女神がユイール山を訪れ、
世界中の木々の芽吹きと実りを見守り、その手助けをしているといわれています。





・星と星座


この世界に夜が誕生した時、
天に輝く星はなく、静かに輝く月が在るだけだったと伝えられています。
しかしそれから幾千もの夜が過ぎ去ったころ、
ある日突然、瞬く星が夜空に現れたといわれています。
このようにして生まれたと伝えられる天に輝く星々のうちいくつかは
星座として、世界に伝わる物語になぞらえて語られています。

しかし、一見、無意味に思える星の羅列が、どうして星座として語られるのか…。
それは夜空を彩る星々が星の神が今までに見守ってきた、
あまたの人々の物語を示しているからなのだと言われています。
彼の神が見守ってきた、名もなき人々の忘れられてはならない物語を天に刻みつけたもの
それこそが夜空に浮かぶ星々なのであり、
その物語を人々に伝えているのも彼であるといわれています。

では、そもそも、人々が目にする星とはなんなのか、ということになりますが、
それに関しては、賢者たちの間でも色々な説があります。
星の中には、ある特定の人にしか見えないものや、
人によって見えかたが変わるものもあるといわれているため、
彼らのあいだでは、空のかなたに在る星の姿を自分達が目にしている、という訳ではなく、
『星が見える』という現象が、星神が世界にかけた『魔法』である、と言う説が有力のようですが、
はっきりとした事は、結局のところ分かっていません。








 "神々"






■ 神々とは


この世界において、「神」と呼ばれる存在は二種類存在します。


まず第一に、この世界を創造したといわれる名も知れぬ二柱の創造者。
そして、この世界の様々な現象と事物をつかさどり、一般に"神"と呼ばれる存在です。
普通この世界で「神様」という場合、たいていがこちらの後者のことをさします。

この世界において"神々"という存在はごくあたりまえのように
受け入れられており、日常生活においてもその存在は身近なものです。
そのため、この世界において「神々など存在しない」と主張することは、例えていうと、私たちが
"この世界は平らである"とか"月にはうさぎが住んでいる"と主張するのと同じようなことだといえます。





■ 二柱の創造者


世界がいかにして生まれたか――世界創生の真実を明らかにするという偉業は
賢者たちにとって長年にわたって変わることのない目標の一つです。
しかし、世界の創生が行われたのは遥かに遠い過去のことであり、
その真実の多くはいまだに謎に包まれたままです。

ただ、世界創生について触れた伝承は(その内容が正しいかどうかは別として)世界に数多く伝わっており、
それらの伝承の大半において、この世界は二柱の
偉大な存在によって創造されたとされています。
この二柱の創造者がいったいいかなる存在であったのか、という点については
かれらが男性と女性であったいうことこと以外ほとんど知られていません。

それ以外のこと、たとえば、その名前やいったいどこから来たのか、
そして、なぜこの世界を"創った"のか、ということについて伝える確かな伝承は
ほぼ皆無といってよく、この二柱の存在は非常になぞめいたものとなっています。
かれらはこの世界に辿り着いた後、自らの生命を吹き込んだ海をこの地に創り、
海の夫婦神と二柱の守護精霊を生み出したとされます。
その後、自らが生み出した四柱と協力して"人"を生み、
ゼフルやミディールといった(後に神々となる)者達に世界の行く末を託して、
永き眠りについたと言われています。

これら世界の創世を語った物語は一見、一貫性に乏しく、
(これらの物語は辻の詩人たちによって語られることが多く、そのような場合、
彼ら一人ひとりによってアレンジが加えられるので当然といえば当然なのですが)
面白おかしく脚色されているものも多いため、そこから"真実"を見出すのはなかなか難儀なことのようです。
無数にある世界創生の物語のうち信頼性が高いと賢者たちの間でいわれているのは
聖誓の礎の者たちによって語られる"はじまりの物語"や"賢者の街"レナーダの大図書館に所蔵される"上古断章譚"内の一節のほか、
南方辺境にあるという"静かの塔"の神語によって記された碑文、奥ノウロンに澄む隠者たちの口伝などが挙げられますが、
それらも内容の一部が食い違っていたり、空白の部分があったりと決定的なものではありません。

ただ、世界創生の物語というのは、過去の英雄譚とともに語られることも多く、
確かに遠い昔にあった"はじまりのものがたり"として多くの人に受け入れられています。





 神々


神々とはいったいどのような存在であるか、そう賢者に問えば、
世界に満ちる無数の精霊達の大いなる守護者、森羅万象という偉大な『魔法』を司るもの…etc
さまざまな答えが返ってくるでしょう。
彼らは数十柱いるといわれていますが、その正確な数は知られていません。
ちなみに、多くの物語に語られているため、よく知られていることなのですが、
神々のうちほとんどはもとは人間族、妖精族のような"小さき民"であった者達です。

世界に一般に知られている創世説話では、
二柱の創造者がこの地に降り立ったとき、
この世界にあったのは岩と砂で覆われた不毛の大地だけだったとされています。
そこで、彼らはこの地で数多の生命が暮らしていけるように、命の源を湛えた海を創り、
後に森の女神となるミディールに"世界樹の種"を与え、
後の風の神"ゼフル"には、海に満ちる命の源を世界に蒔く力――風の存在を教えたとされます。

世界創造の後も、世界の歴史が刻まれていくにつれ、
四季や昼夜に代表されるさなざまな事象や法則が生み出され、
そのたびごとにそれをつかさどる神々が誕生していきました。
たいていは、それらの事象や法則を作り出した小さき民が、
それをつかさどる"神"となってきたと言われています。

大いなる力と不死の定めを持つといわれる神々ですが、
彼らのほとんどはもともとが人であるためか、人に対する情は浅からぬものがあるようです。
しかし、人々の願いを安易にかなえたり、"個人的"な感情に基づいて世界に干渉したりすることはまずありません。
(半神と呼ばれるにふさわしい高みにまで至った者であれば、
直接、神々の助力を得ることができるとも言われていますが…。)
これは自身が持つ強大な力を恣意的に振るわないよう、自らを戒めているというのもあるのでしょうが、
それ以上に、森羅万象という偉大な『魔法』を司るという自らの役目をおろそかにしないためであるといわれています。

なお、彼らは元が人である以上、世界のどこかに"居る"といわれていますし、神々との邂逅を記す伝承も多く存在しています。
また、神々の中にはその住まう場所がよく知られているものもある(森の女神ミディールは冥幻の樹海の世界樹のたもと、
火の神リガートはアベリスム山脈にある火の山の深奥、雪の神ミルダは雪と逃れるものの台地にある雪神の座など)のですが、
それらの場所は到達することが容易ではなく、辿り着けたとしても神々と合えるとは限らないといわれています。

ただ、神々の存在は世界に満ちる森羅万象と、日々の生活の中でもたらされるささやかな祝福と通じて
人々の心に深く根付いていますし、高位の神官や巫女達がもたらす"奇跡"は
神々に対する畏敬の念を人々に抱かせるに十分といえます。

それではこれから有名な神々をあげます。




・海の神「ホーリス」と「ウルダ」


海の神であるホーリスとウルダは海と、そこに満ちる生き物達、
そして水に宿ると言われる"命の源"をつかさどる神であり、
この世界に生きる者たちの父と母というべき存在です。
この二柱の神はラータイアの沖、ウラドリエラ(琥珀海)の底深くに在るといわれています。
ホーリスとウルダは数多くいる神のなかでも
特別な存在で、夫婦ふたりでひとつの役割を担っています。

この世界において、海は生あるものが生きるために必要な"命の源"を湛えているとされ、
その"命の源"は海から生まれた水の精霊たちに宿って風の力を駆り、
雲となり雨となって世界に蒔かれ、そこに生きるものたちを潤しています。
つまり、世界の生きとし生ける者の命の源、海の守護者である彼ら海の夫婦神は
まさに全ての生ある者全ての守護者あるといってよいでしょう。

ちなみに、琥珀海に面した"黄金穂の国"ラータイアの王家は古より繋がる海の夫婦神の神官の家系でもあります。
このラータイアの豊かな実りは、穀物の神であるウズルによってもたらされた豊かな台地とともに
ラータイア王家によってもたらされる海の夫婦神の守護が深く関わっているといわれています。
そのため、ラータイアの国内の農民たちはウズルと海の夫婦神を特に篤く信仰する傾向にあります。
また、ラータイアの海軍は精強なことで知られますが、これもまた海の夫婦神の加護が強く関係しているといわれています。




・風の神「ゼフル」

風の神であるゼフルは二柱の創造者より風を駆る力を授けられた古き神の一柱です。
彼の腕の一振りによって生まれた
元をたどれば全て彼に辿り着くといわれています。

彼は、たいていの場合、
ゼトニア`ギリス(南風と陽光の平原)のはるか天上、
風エルフ達の楽園、ルジェナールという地に在るといわれています。
彼のおもな役割は、自らの領域である空と風の管理、
そして、みずからのしもべである風の精の加護です。
ゼフルのしもべである風の精達は海から水の精を世界中に運び、天候を操って雨を降らせたり、
森の女神ミディールの春を告げる声を、世界中の草木に届けたりと
様々なものを風によって運ぶ役割をになっています。
このように海から遠く離れた地でも雨というかたちで
生命の恵みがもたらされているのは風の精のおかげとされているため、
(数は多くないものの)ゼフルを天候をつかさどる神としてあがめている者達もいます。

ゼフルは線の細い、美しい銀髪の男性です。
神として過ごした時間はホーリスとウルダと変わらないばずですが、
どういうわけか、彼は若々しい姿のままです。
それは彼が気まぐれな性格であり、あまり気苦労を背負い込まないたちであることが関係しているのでしょう。
とはいえ、この世界の美しい空を、誰よりも愛し、見守ってきた彼が
風の神としての役割をおろそかにすることはありません。



・森の神「ミディール」

森の神であるミディールもまた、ゼフルと同じく
海の神であるホーリスとウルダに次いで古い神であり、
世界の始まりに誕生した『人』の中の一人であであったといわれています。


彼女は、この世界が創造された後、幻界より世界の木々の母である世界樹を導くべき地を探して、
森エルフの始祖たちと共に創造の地より西に旅立ち、
現在、ニフ`メディリ`ディン(冥と幻の樹海)と呼ばれている地にたどり着いたと言われています。
その後、彼女はニフ`メディリ`ディンに入り、
森と世界樹の加護者として、世界中の草木を見守ってきました。


彼女は一年のうちで秋と春に、神々の峰のユイール山を訪れては
世界中の木々の芽吹きと実りを見守って、その手助けをし、
そうでないときは、冥と幻の樹海のどこかにある、
世界樹のたもとで、まどろみながら世界中の草木を見守っているといわれています。
春を迎えるときにあまたの草花が、いっせいに芽吹き、
冬を迎えるときに木々が葉を落とすのは偶然などではなく、
彼女が、その時を世果中の草花に告げているからだといわれています。


ミディールは、草色の髪の森エルフの女性、といった容貌をしています。
彼女はかなり穏やかな性格で、怒りをあらわにするようなことは、まずありませんが、
過去に何度か、欲望に駆られた人間たちによって、
森と、森に暮らすものたちが数多く傷つけられたことがありました。
そして、その時、人間たちは、森の女神の怒りに火をつけるとどうなるか、思い知らされたのです。
森の女神から見捨てられたその国はからはすべての木々と草花が失われ、
あまたの動物達が去り、不毛の地となりました。
その後、不毛の地となった自らの故郷を捨て、活路を見出そうとした者達もいたようですが、
森の女神の呪いはその先々に付きまとい、結局は滅びの道を歩むことになったといわれています。

人間たちが、恵みをもたらしてくれる森への感謝を忘れないかぎり、
そのようなことが起きることはないのでしょうが・・・。








† 木々や草花について †

この世界の草花や木々には、動物や小さき民と同じように魂が宿っているといわれています。
霊感に秀でた者や、偶然に恵まれた者は(まれではあるとはいえ)
この"木の精"の姿を目にすることがあるため、
この世界の住民達はより強くその存在を実感しているようです。
そのためか、特に木々や草花に触れる機会が多い者達は、
"彼ら"をに対して、ある種の敬意を払う者もいるようです。

もちろん、ほとんどの草木は自らの意思を伝えるすべを持っていませんし、
そもそも大部分の"木々の精"は意思が希薄で、
自我と呼べるものさえ確立していない者が殆どです。
しかしながら、森と共に暮らし、木々のことをよく知る者は
森の木々に自分たちと同じように魂が在ることを実感しているのでしょう。


また、長い年月を経たり、人の"思い"に触れつづけた結果
樹の精が確固とした"意思"を持つということが、珍しいもののたまに起きたりします。
このような樹の精は意思を通じ合わせることのできる動物を使ったり、
依代に乗り移ったりして自らの意思を伝えることがあるようです。
また、樹の精が直接、(誰にでも見えるかたちで)人や動物の形をとることも数多くあるといわれています。
これらの木々は周囲の草木の実りにも影響を与え、
また、森を護るといわれているため、多くの場合が"神木"や"森の主"として大事にされています。








・炎の神「リガート」


この世界において炎の本質とは
"熱と光の発生を伴う激しい連鎖的な酸化反応"ではなく
"変化をもたらす力"の発露だとされています。
すなわち、炎によって物が燃えるという事は
炎に秘められた、変化をもたらす力が急激に作用して、
その形が壊されるということなのです。
また、炎が破壊と共に浄化と再生をもたらすのは、
強烈な"変化をもたらす力"に晒されることよって
従来のかたちが破壊されると同時に"もの"の中に存在する"停滞"を駆逐し、
新たな活力を呼び覚ますからだと言われています。


この、"変化をもたらす力"が純化された形である炎の存在を見出し、
その扱い方をもたらしたのが火の神であるリガートです。
この"変化をもたらす力"は世界が"創られる前"から大地に存在していたといわれています。
そして、世界が"生まれて"間もない頃、
炎が見出されるまでのあいだ、この"変化をもたらす力"は
何の規則性もなくでたらめな形で発露していたといわれています。
当時、神々や御使い、小さき民が協力しこの力を無理やり封じようとした事もあったのですが、
無尽蔵にあふれ出る力を抑えきれず結果として大規模な力の暴発を招いた事もあったとされています。
(西大陸と南大陸を分かつ"デル`オウリ"(大いなる爪痕)と呼ばれる巨大な谷は
この時代、"変化をもたらす力"の大規模な発露によってつくられたといわれています。)

そのように無秩序に発露していた"変化をもたらす力"を
治める方法を見出したのが、当時、優れた賢者であったリガートでした。
彼は、"変化をもたらす力"について探求を続け
その結果、"変化をもたらす力"が炎(熱)という形で発露する事を見い出したのです。

そこで彼は世界に満ちる"変化をもたらす力"(のうち大部分)について、
その流れを定め、特定の場所で特定の形で発露するようにしました。
それが、デアドリス`アベリスム(アベリスム山脈)に在って、
この世界において唯一の火山である"怒れる"リムラスです。
つまり、リガートは"変化をもたらす力"をリムラス山へと導き
火山というかたちで継続的に発散させるようにしたのです。
また、その一方で、"変化をもたらす力"を発散させる手段として利用するだけではなく、
炎の特質に興味を持ち、炎を用いて大地に眠る力の欠片を利用する技術 ―冶金術を
"小さき民"に教え広く伝えたのも彼です。

リガートによって世界に炎と冶金術がもたらされた結果、
世界のありようは一変したと言われています。
冶金術の伝播によって鉄製の道具、武器が用いられるようになり、
それによって、利便性の高い生活と魔物に対する力を得た人々(特に人間族)は
一気にその勢力を増し、自らの版図を拡大させました。
(その結果、人間族同士の争いも急増したのですが・・・)

ちなみに、森エルフなどの妖精族は
鉄に頼らなくとも充分な程の"力"をすでに備えており、
自らの現状にも満足していたため、彼らの間に冶金術は広まりませんでした。
また、妖精族は"鉄"に秘められた"力"を危惧し、
それに触れる事を避けた、というのも
冶金術が彼らに広まらなかった理由の一つともいわれています。

結果としてリガートがもたらした炎と冶金術は世界に繁栄をもたらすと同時に
絶え間ない争いをも同時にもたらす事になりました。
それが果たして"小さき民"と"世界"にとって
善い事であったのか、いまだに彼はその答えを見出せずに、
自らに問いつづけているいわれています。

また、この世界に炎がもたらされたことによって
その後も世界に様々な変化が訪れる事となります。
はからずも、"変化の力"の顕現である炎の力は
世界のありよう全体をも大きく変える結果となったのでした…。


現在では、夏の間、リガートはユイール山に在って
生命がいきいきと活動する季節をもたらし、
それ以外の季節はアベリスム山脈に数多くある洞穴の一つ、
ユドハイル(御神の岩屋)の奥に存在するといわれる神殿で、
世界に遍在する"変転の力"をリムラス山に導いていると言われています。










・夜の神「ナティア」

この世界が始まったとき、世界は常に明るいままで
夜と昼というものは存在していなかったといいます。
また、夜と昼の区別が無かったせいか、世界の全ての生あるものは
今のようなかたちで"眠る"ことも無かったといわれています。
世界創生からしばらくの間はこの"奇妙な"状態が続き、
それで特に不都合はなったようなのですが、
世界に様々な存在が満ち溢れるうちにいろいろと困ったことが増えてきました。

ひとつは世界に様々な存在が満ちた結果、
新たな命をつくり出す"創造の力"が衰えたということです。
はたしてここでいうところの"創造の力"というものがなんなのか、
それがどのように新たな命の誕生に関わっているのかを知る者は
賢者達の間でもほとんど居ないといわれているのですが、
その結果は新たな命の誕生の減少という形ではっきりと現れたといいます。
また、世界の成熟に伴って多くの命の生の在り様も少しずつ変化を迎え、
休息を得ずに生活を送るという生の在りかたに無理が出始めてきていました。
(その兆しは特に人間族の先祖に特に顕われていたといいます)


そのような状況に世界があったとき、それを憂い、何とかしようとしたのが、
当時、稀代の賢者であり、"魔法使い"でもあったナティアでした。
今もって多くの賢者達が到達し得ない"創造の力"の秘密に至り、
また、世界の外にある"暗闇"の存在とそれに秘められた力を知った彼女は、
世界の現状を変えるべく行動を起こしました。(当時の神々の助力もあったともいわれていますが…)
彼女は遥か北西の地、世界の果てにあって、
世界の外の闇と通ずるといわれる"オルイェーズ`アサルーン(黒玉海)"に赴き、
暗闇に包まれる"夜"という形を与えて、かの海が秘める力を世界中に解き放ったといわれています。
そして、今まで遍在していた"創造の力"を新たに生まれた"夜"という時に集め、
その衰えた力を(夜に限ってであるものの)甦らせたのでした。

このようにして夜がもたらされた結果、
その暗闇に秘められた力によって世界中の生命に
眠りという形での休息がもたらされるようになりました。
(夜行性の動物や昼夜が逆転している人間のような例外もたまには居るのですが)
また、"創造の力"が夜に集められたことによって夜は新しい生命を育む時ともなったのです。
あと、これはナティアが意図したことではなかったとも言われていますが、
夜の創造に伴ってオルイェーズ`アサルーン(黒玉海)に接する地域(現リュナローン)は
常に闇に包まれた特異な土地となりました。
暗闇は人に安らぎを与えると共に恐怖と不安も与えるものですし、
そもそも陽の光がなければ作物も育ちません。
そのため、最初、この闇に包まれた地域に住まっていた人々は次々と他の土地に移り住み、
この土地は夜を護るために留まった
ナティアと彼女の伴侶、そして数少ない従者しか住む者のないところとなりました。
しかし、その後、様々な経緯を経て、
現在、リュナローンは(いろいろと不便なところはあるものの)世界でも有数の平和で豊かな地域となっています。

ナティアは長い黒髪の美しい女性で
現在、リュナローンの都、リュナレイトのにある"夜闇の宮"の最奥に住まっているといわれています。
彼女はリュナローン成立の経緯から、その女王でもあるのですが、
国の政のほとんどは執政たちに任せ、神々としての役割を果たしているようです。
(重要な決定を行うときや、大きな催しごとの際には、夫である黒龍公と共に人々の前に姿を現すこともあるようですが。)
大抵の場合、このような政を行うと家臣の専横を許すことになるのですが、
そこは人ならぬ神の身であるためか、そのようなことはないようです。





・湖の神「アーリス」

・川の神「ラハーナ」

・雪の神「ミルダ」

・星の神「ハレス」









 精霊





"神々とは"のところで触れましたが、神々は、この世界の様々な事象をつかさどっています。
そして、世界が創生されて間もないころは、彼らが世界の事象全てを見守っていました。
しかし、いくら彼らが強大な力をもつとはいえ、世界の創生から時が経ち、"世界"が広がって行くにつれ
この世界の事象全てを見守ることは不可能になっていきました。
そこで、神々、特に世界の根本的な事象をつかさどる神々は、
自らの力を分け与えた小さき存在を生み出し、定められたように役目を果たすよう命じて、
世界中に放ちました。

それが、世界中に存在する風の精や水の精など精霊と呼ばれるものたちの起源であるとされています。
普通の人がこれらの精霊を目にする事は滅多に無いのですが、
実は精霊達はあらゆるところに存在していて、定められたように、その力を振るうことによって世界に影響を与えてます。
たとえば、夏に風が南から吹くのは、神々の定めにしたがって、風の精が、南から北へと
駆け抜けているからであると言われ、
この世界の自然現象のほとんどに精霊が関わっているといわれています。


基本的に、これらの神々のしもべとして生を受けた精霊の多くは
自我が非常に薄く、定められたことしか行わないのですが
ある特定の地に留まり、その地住む者達と触れ合っていくうちに
確固たる自我をもつに至った精霊もいるようです。
(いわゆる泉の精霊などがその典型です。)


また、普段は目に見えず、触れることもできない存在である精霊ですが、
"精霊使い"の手によって、かりそめの身体を与えられたり、
大地にあふれる精気に触れることによって、実体をもつ場合があります。
その場合、精霊の自我が薄いと、不定形の訳のわからない形をとりますが、
自我が強くなっていくにつれて、
何故か知性の高い生き物の姿をとるようになる事が多いようです。

また、精霊の中には小さき民よりもはるかに強い自我と、
優れた知性、そして、神々に次ぐ力を持った、
大精霊とも呼ばれる存在がいるとも言われています。
彼らは自らに関係する力が集まるところに存在し、
神々の手助けとなるよう、小さき自然精霊たちを守護していると言われています。

以上のように、精霊の多くが神々や力ある精霊の下にあり、
"あるべき在り様"に従って存在しているのですが
中には自らの意思を持った上で、明らかに自分の領分を逸脱して振舞うものも多くはありませんが存在し、
その中には人間やその他小さき民に対して明らかに敵対的なものや
いわゆる"祟り神"的な性格を持つものも存在しています。
これらの″狂える"精霊はおしなべて強大で周囲の自然現象にも強い影響力を持ち
並の人間では太刀打ちできないほどの力を持つため、
地理的、霊的に孤立した地域では一種の"神"として信仰されている場合もあるようです。

このような本来、"ありうるべきではない"存在は、
(はっきりとはしていませんが)、"嘆きの夜"の時代あたりから現れはじめたといわれています。
それはすなわち、"嘆きの夜"の時代を境にして神々の力が弱まったという事を示しますが、
なぜ、そうなったのかについては明らかではありません。









 生と死




この世界では、動物や小さき民以外にも、
魂が宿り、意志をもつ存在が多くいます。
ある意味、それらの存在も、動物や小さき民と同じように
生きているということができるでしょう。
(この世界の住民達がそう考えているかどうかはまた別の問題ですが・・・。)
そして、"生きている"かぎり、いつか死を迎えるのもまた、動物や小さき民と同じです。


この世界において、生ある者が死を迎えた時、
その魂は、冥府、幻界、地上を貫いて存在する、
世界樹を通って、"冥府"に向かうといわれています。
この冥府というものが、地上の人々に知られているのは、
冥府や生まれ変わり、そして、冥府と死者の守護者である"静月のアリン"に関わる言い伝えが、
詩人たちの歌や口承の物語を通じて市井に広く伝わっているためです。
ただ、そのような伝説で伝えられている冥府の風景は、
霧に包まれたほの明るい森であったり、
島が所々に浮かぶ果てのない湖であったり、
永遠に続く黄昏に包まれた平原であったり、
静謐な空気に包まれた果てのない白亜の建物であったり、
雲の上の美しい庭園であったりとまったく一致しません。

死後、冥府にいたった魂は、冥府でいっときの休息をえた後、
今までの、人生(?)を忘れ、
新しい生命として、地上や幻界に生を受けるといわれています。
つまり、いわゆる「前世」の記憶は一度死を迎え、冥府へといったった後に忘れ去られてしまうわけですが、
まれに、何らかのきっかけで、「昔」の記憶がよみがえることがあるとか、前世で縁が深かったものは、
次の生でもなんらかの形でひかれ合い、関わりを持つともいわれています。



この世界において、生者と死者の間に横たわる溝は
そこまで深いものではありません。
死せる者の声を聞き、その姿を目にする事のできる者達も
ありふれてはいませんが、少なからずいますし、
ごく普通の人間でも一生に何度かは死の向こう側を覗く機会があるでしょう。
また、生きていく中で魔物の脅威や戦乱にさらされる機会が多いため、
"死"というものが意識される事も少なくありません。
そのため、この世界の人々の生死観は
我々のそれとは多少異なるものがあります。



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