−古の面影と伝統を残す"白暁の王"の国
 GURPS Original Supplement
―Regions

グリアの港を出て一刻ほど。短い船旅を終え、私は"白暁の王の国"ファルナローンの玄関口、ドーサに降り立った。
ドーサは西アルベールとの交易を一手に担う港街ということもあって、グリアと同じく活気に溢れていたが、
得も悪くも雑多で混沌としたグリアとはまた違う空気を帯びていた。
詩人たちの言葉によると、ファルナローンは古の白暁の王がもたらした、大いなる護りが国を守っているという。
その護りは、麦の実を蹴散らす凶風を涼やかなそよ風に変え、
作物や家畜から病を遠ざけ、街の暗がりによどむ澱を洗い流すという。

その話を聞いたときは眉唾物だと思ったものだが、
果たして、実際にファルナローンに足を踏み入れてみると、
その話もあながち嘘ではないのではないかと、思えてしまうのであった。
港を出た私はグリアの街とはまったく違う心地よい風を肌に感じつつ、
今日宿泊する宿屋を探しに、街路へと繰り出した。

・・・・・・

丘の宿屋の二階から眺めるファルナローンの国は非常に美しいものだった。
柔らかい日差しの下、緩やかにうねる丘の広がる麦畑にブドウ畑。
そして、その向こう側にけぶる深い森と山々。
ここしばらくは、西アルベールで巻き込まれた厄介ごとのせいで塞ぎがちだった気持ちも、
ここに来て一気に晴れ渡る気がした。確かにこの国には目に見えぬ"魔法"がかかっている。
そう確信しつつ、私はこれからの旅路に思いをはせた。







ファルナローン詳説

ファルナローンは世界でも最大の版図を誇る国であり、
ほかの地域と比べて平和で気候にも恵まれた地域です。
気候が安定しているうえに肥沃な土地が多いため作物の実りも豊富で
魔物の被害も(他の地域と比べると)少ないため、産業、商業も発達しています。
また、今現在、存在している主な国々の中では最も歴史が古く、
学問も盛んで文化も洗練されているため、
賢者や芸術家達が多く集まる国でもあります。
この国がなぜここまで恵まれた環境にあるのか――
それはファルナローンの始祖である"白暁の王"が
この地にかけた"護りの魔法"のおかげであるといわれています。
ファルナローンという広大な地域に
影響を及ぼす"魔法"とは一体どのようなものなのか、
その正確な実態は知られていませんが、
実際にファルナローンの気候は非常に穏やかで
魔物の活動も活発でないことから、
ファルナローンに住まう者たちの多くは
"魔法"の存在とその加護を信じて疑いません。
白暁の王の血筋に連なり、代々ファルナローンの王を務めてきたフレアナウル家、
および、六公家と呼ばれる白暁の王直接の家臣の子孫達は
ファルナローンの政治的な中枢を担うと共に、
祭祀としてこの"魔法"を護る役割を担っていると言われています。
実際、ファルナローン全土では様々な祭りや行事、儀式がほかの地域と比べて頻繁に行われており、
それらのほとんどがフレアナウル、および六候家(=ファルナローンの"魔法")と
何らかの関わりのあるものであると言われていますが、
それらは各々が複雑に影響しあっているといわれている上に、
秘匿されているものも数多くあるようで、
様々な儀式や祭り、行事が"魔法"に対して一体どのような役割を担っているのか、
白暁の王の"魔法"具体的にどのようなものであるかは
謎に包まれています。

周辺拡大図



社会

・体制

ファルナローンは古都ハーランに居を構えるフレアナウル一族から選出される王を頂点とした国です。
この国の中枢は、このフレアナウル家のほか、六公家と呼ばれる一族によって構成されており
長年の歴史の積み重ねに裏打ちされた政治的な権力もさることながら、
それ以上に白暁の王が遺した魔法の根幹を担う祭祀という立場が
彼らをファルナローンの支配者たらしめている理由でもあります。

国の都である古都ハーランの周辺はフレアナウルの直轄領となっており、
そのほかの地域は部分的な自治を認められた領主が治める地域となっています。
(そのほか、巡礼街道沿いとリュナローンへ向かう経路は
フレアナウルや六公家と関係の深い領主によって治められています)
これらの領主のうちフレアナウル家の直接の家臣といえるのは六公家と二十一侯と呼ばれる領主達だけであり、
そのほかの領主達は彼らの家臣であったり、
ファルナローン建国時に白暁の王の軍門に下った諸侯の末裔であったりするため、
政治的なまとまりは取れないはずなのですが、
フレアナウルと六公家が最終的に白暁の王の"魔法"の鍵を握っているということがあって
領主達も最終的にフレアナウル家と六公家に従わざるをえず、
国としてのまとまりは(少なくとも表向きには表向きには)強固なようです。



◆ 六公家

"六公家"とは
岩鏡のディナン(シグイル)、紫蘭(しらん)のエルル(ミスナム)、
風露のサロス(カスラハーザ?)、鐘朧(しょうろう)のハーラウル(ナーズ)、
冴月(こげつ)のユニル(イザリース)、叢雨(そうう)のモーザ(レザール)
これらの六つの家で構成される、ファルナローンの中枢を担う領主の家系で、
六公家はファルナローンの創始者である白暁の王の家臣であった者達のうち、
もっとも近かった家臣(および協力者)たちの血筋であるといわれています。
彼らは、そのほかの二十一侯と呼ばれる領主達とあわせて
ファルナローンに多数存在する領主の中でも数少ない、
フレアナウル家の直接の家臣という立場にあります。(フレアナウル家直轄領の領主を除く)

ファルナローンに施されているという護りの魔法の根幹は
彼ら六公家とフレアナウル家の手によって維持されているといわれ
六公家やフレアナウル家は一年を通じてさまざまな行事や儀式を執り行っています。
"魔法"を護る祭祀という役割を代々担っているためか
六公家は代々魔術の才能に長ける者達を数多く輩出しており、
特に当主に関してはその多くが当代指折りの魔法の使いとしても名を残しています。

また、六公家のうち、エルルは森の妖精族が、サロスは人魚族が当主であり、
当主自身が直接執務を執り行うのはいろいろと不都合があるため、
人間族の執政が彼らに代わって領主としての執務を執り行っています。



・他地域との関係


ファルナローンは勃興期、一時的に拡張の動きが盛んな時期があったのですが、
それ以降およそ八百年にわたって
領土を拡大しようとする動きは見られていません。


ファルナローンと特に関係が深い地域としては陸続きで隣接している
ミスラス(北辺郷)、及びにリュナローン(常夜の国)ですが、
双方共に基本的に良好な関係を保っています。
これはミスラス、リュナローンの双方が神々の領地であるという認識があり、
フレアナウルも国内の領主達がその領域を侵すことを禁じているためです。
また、リュナローンは常に夜の闇に包まれており、夜の女神の強力な眷族が数多く存在していること、
北辺郷に関しては山がちであり、様々な強大な存在が住まっていることなども
平和が保たれている理由のひとつだと言えるでしょう。

また、青鏡の海を隔てて隣接する
フリムアベールとニルアベール(双方合わせてアルベール地方とも呼ばれます)は
かつて、ファルナローンの拡大の動きが活発だったころ、
ファルナローンの領土となったこともあるのですが、
アルベール地方がファルナローンのものなってわずか14年の後にその支配から脱し、
それ以来、ファルナローンがアルベール地方に攻め入るということには至っていません。
(ニルアベールの領主がフレアナウル家に贈り物を献上するといった風習が、
その時代の名残として現在も残っていたりもするのですが…)
特に人間族の社会がファルナローン以上に発達しているフリムアベールは
いまやファルナローンにとっても重要な交易の相手となっており、
その関係は活発で良好なものだといえます。

そのほか、琥珀海を超えて南方に位置するラータイアとは行き来が難しいためか
特に国レベルでの交流はなく、力のある商人が自前で交易をおこうなう程度の関係しかありません。







地理

―製作中―



人間族以外の種族の暮らし


ファルナローン国には人間族以外の種族が多く住む地域が多くあり、
ヨール、テール、オビル、カダル、ムアルという五つの森林地帯には
様々な妖精族や小妖精、巨人族、小人族、獣人族が住まっています。
これらの森は国のものとされ、
勝手に切り開くことも禁止されている(その必要性もほとんど無いのですが)ので
人間族とその他の種族との諍いもほとんどありません。
また、彼らとの関係が特に良好な地域では
交易などを行っている地域もあるようです。
そのほか、ハニス内海には人魚族が多く住む海域もあるようです






シナリオにおけるこの地域の立場と使い方


ファルナローンという国はこの世界において
もっとも平和で人間族の社会が発達している地域のひとつです。

ファルナローンの初代王である"白暁の王"が作り上げた統治制度と
"世界"のおよそ8分の一を占める広大な国土を媒介として巧妙に築き上げられた魔法的な護りは
国が興されてから800年を経た今もこの地全体に深く根付いており、
@【歴史-2・神秘学-1・地域/ファ-3】
戦乱と魔物の驚異をこの地から遠ざけています。
そのため、ファルナローンにおいては国全体を揺るがすような戦乱や、
大規模な魔物との戦いというのはほとんどありえないことで、
ファルナローンをシナリオの舞台として選んだ場合、
それらを題材にするようなシナリオというのは困難でしょう。
ただ、戦闘型、諜報型シナリオを作る際に
比較的発達した人間族の社会を背景にした
騎士同士の対立や貴族達の権力争い、商人達の利権争い、魔術師・賢者達の対立などを
特に白暁の王の魔法をめぐっては、その秘密を守る六公家、フレアナウルとそれを狙う者たちの間で
熾烈な争いが歴史の影で繰り広げられてきた
@【地域/ファ-3、歴史-4】と言われています。)
積極的に利用することができるのが、この地域の大きな特徴だといえます。
(詳細は現在作成中の"周辺拡大図と各地の解説">地域別シナリオフックに記します。)

また、長期間平和だったため、ファルナローンには
かなり昔の時代の伝承や古い魔法に関わる資料(書物だけでなく口伝についても)が
数多く存在して
@【知力判定、地域/ファ+1、歴史】います。
(それらの代表ともいえるのがファルナローン北西部の山地に位置するティンターズの古城です)
そのため、ほかの地域からそれらの知識を求めてPCたちがこの地域を訪れたり、
賢者に弟子入りした弟子として、さまざまな知識を求める過程で
様々な厄介事に巻き込まれるといった傾向のシナリオもできるでしょう。
また、ファルナローンはそのど真ん中を巡礼街道が縦断しており、
宿場町が多数存在するため、街道を旅する旅人として、
また、逆に旅人に関わる地元民として、シナリオに参加することも可能です。

そのほかでは、各地に残る"白暁の王"の伝説や、
彼が遺したといわれるこの国を護る"魔法"と、
それに深く関わるといわれる六公家の謎に関わる探索型のシナリオというのも
この国を舞台とした特徴的なシナリオの作り方だといえると思います。

それに、いくら平和とはいえ、小規模な魔物との戦いや、人間族の同士での小規模な戦、
強大な魔物とそれに与する者たちの活動がまったくないわけではありませんし、
ファルナローン建国以前に起源を持つ、何らかの因縁がある土地も国内にいくつか存在しています。
これらの多くが白暁の王が施した"魔法"によって隔離、封印されたり、隠されたりしている@【神秘学-6、地域/ファ-5、歴史-6】わけですが、
その存在を知って、それらを開放しようとする者も出てこないとも限りません。)
もちろん、事態が深刻になる前の段階でファルナローン騎士団や周囲の領主、聖天教会の介入を招き
結果、PC達の手の届かないところで解決されてしまうようなことになってしまうことが多いのですが、
白暁の王が施した"魔法"と、ファルナローンという国さえも揺るがしかねない大きな事件を題材にして
さまざまな立場にある勢力を巻き込んだ展開の中で、
PC達を活躍させるような壮大なシナリオをつくってみるのもいいかもしれません。




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