設定例その1

 あなたはみなしごだった。
 親の顔も、住んでいた故郷のことも覚えていない。
 ただ頭の中にこびついているのは、
 生臭い鉄のような匂いと、よどんだ何者かの瞳。

 住むべき家と、守ってくれる家族を無くしたあなたを救ったのは
 一人の教父(教母)だった。
 彼(彼女)は教会がないような小さな村をまわりながら、
 病人を診たり、村人に知恵を授けるたりしてまわる
 旅の教父だった。

 それからあなたは、彼との旅の中で
 なぜ、教会というものが存在するのか、
 教父とはいかなるものなのか
 それを彼の背中を見ながら
 おのずと学びとっていった。
 彼との旅は決して楽なものではなかったが
 それでも、あなたにとってはかけがえのない時間だった。

 だが、その日々もある時、突然終わりを告げる。
 旅の途中で立ち寄った町で、人が次々と行方知れずになる事件がおきていて、
 彼はその元凶を究明するために、地下の迷宮に単身乗り込む事になったのだ。 
 
 そして、彼の手でその事件は解決された。
 だが、帰りを待ちわびるあなたの思いに反して
 彼が帰ってくる事はなかった。

 町の者達は、ひと月も経つと彼は死んだものだと決め付けるようになっていた。
 だが、あなたは彼が死んだとは信じられなかった。
 彼はあなたに約束したのだ。
 必ず帰ってくると。

 彼の死が信じられないあなたは、単身地下へ降りようともしたが、
 まだ子供であったあなたの願いが聞き届けられる事はなかった。


 そして、それから十年。
 あなたは彼の死を受け入れざるを得ないほどに成長した。
 だが、それでも、諦めきれないものがある。
 あの日、あの場所で何があったのか、
 そして、何故、彼は死んだのか。
 その答えを知る時をあなたはまだ待ちつづけている。







設定例その2

 子供時代、あなたのそばには必ず彼女(彼)がいた。
 周りの仲間達にそのことを事を冷やかされ、
 子供心に気恥ずかしく思ったこともあった。
 そのせいで、彼女にわざと冷たくする事も合ったかもしれない。
 しかし、あなたはそんな二人の関係が嫌いではなかったし、
 そんな、子供時代が永遠に続くものだと思っていた。

 だが、十年前。
 町の人間が次々といなくなっていき、
 あなたや彼女の周りの人間も何人かいなくなっていった。
 大人たちによると
 深い地の底からきた化け物が町の人間を
 連れ去っていっているとの話だった。
 あなたは不安がる彼女を励ましたりもした。
 何かあったら自分が助けてやるとも。
 そして、御守だといって祖母の形見だった
 そろいの護符を渡したりもした。

 しかし、ある日の朝、
 あなたがいつもどおり彼女の家を訪れると、
 そこには誰もいない家があった。

 それから、あなたは彼女との約束を守るべく
 地下への入り口があるという候主の城へと向かったが、
 危険だから、という一言で追い返された。
 どうしてもと食い下がるあなたに
 衛兵がこういった。
 ”ならば、強くなれ”と。
 ”おまえが、力を手に入れたのならそこに潜れるかも知れぬ”と。

 それから十年。
 あなたは、その言葉どおり力を手に入れた。
 大人となり、あの衛兵が言った言葉が、
 単なる子供を追い返すための方便だあったことに気付いても
 それでもあなたは前に進む事をやめなかった。
 もちろん、それまでには並々ならぬ努力があったが、
 あなたをそこまで駆り立てたのは、
 幼き日の約束だった。
 あの神隠し騒ぎの後
 地下への入り口は封印され、
 行方がわからなくなった人々は死んだのだと皆は言ったが、
 あなたにはそうは思えなかった。
 なぜ、と問われれば、答える事はできない。
 だが、あなたにはなぜか確信があった。
 彼女があの暗い闇の中であなたが迎えにくるのを待っているのだと。
 
 あなたは大人になり、力を手に入れた。
 そして、あなたは再びあの入り口が解き放たれる日を待ちつづけているのだ。
 幼き日の約束を果たすために。