WHITE LOVE

 俺は、ロロノア・ゾロ。
 代々『サンタ』という家業を受け継いで来たロロノア家に生まれた。
 『サンタ』は、12月24日という日にだけ働く、特殊な職業だ。この日ばかりはあちこちの家をこっそり訪れ、プレゼントを配って回り大忙しになる。
 それではそれ以外の日はどうしているのかと言うと、決して遊び回っていたり、だらだらと眠って過ごしているという訳ではない。
 次の12月24日にサンタからのプレゼントを受け取る『資格』を持った者を探しているのだ。それゆえ、サンタは常に人間を観察している。
 しかし、そんなサンタも人間にとっては空気と同じ、目に見えない曖昧な者。在って無き存在。
 一年にたった一日しか人間に逢いまみえることができない。しかも、その一日も、夜の闇に紛れて、盗人のようにこっそりと訪れ、そしてプレゼントだけを置くと、そのまま話を交わすことも許されずに、帰るしかないのだ。
 サンタとは、酷く孤独な務めだった。
 しかし、俺は生まれる前からサンタとして生きていくことを運命付けられていたのだ。人と触れ合うことが叶わなくても、それが当然で、どうしようもない事だと、思い込んでいた。


 世界には数人のサンタが存在し、毎年それぞれ担当の地区を定められることになっていた。公平に、資格を持つ者を選ぶためだ。
 今年、俺の担当になった地区には、7人の候補者が居た。
 その中でも、ひときわ目を引く存在がいた。俺がこれまで9年間サンタとして見てきた人間の中でも、そいつほど存在感のあるやつは居なかった。
 その少年の名は『ルフィ』と言った。
 酷く心惹かれて、気づいたらルフィばかり見ていた。
 そして、彼のことを知るにつれ、その強さと純真さ、カリスマ、心意気、全てに心奪われた。
 この世に存在したときから定められた、サンタとして生きる運命に縛られた俺に、新しい世界を教えてくれた。
 ルフィと話をしてみたい、俺のことを知って欲しい。
 初めて、そう思ってしまった。
 しかし、それはやはり俺にとっては叶わぬ夢で。
 どうせ一年しかルフィを見てはいられないのだ。12月24日が過ぎてしまえば、俺は他の地区に移され、もう二度と逢うこともなくなるだろう。
 こんな感情は必要、ない。
 揺れる心を押さえつけて、一年間をただ遠くから見ているだけで過ごしていた。

 そして、遂にこの日が来た。
 12月24日。
 初めて肉体を持って人間のそばに舞い降りる日。
 そして、ルフィに逢える、最初で最後の日。


 プレゼントを持っていくルート作りで、ルフィの家を最後に回したのは、俺の醜い未練だろうか。
 後のことを考えずに、時間ぎりぎりまで彼のそばに居たかったのだ。
 ああ、やはり・・・これは俺の女々しい下心だな。

 「・・・ゾロ?これで最後の家だよ?」
 物思いに耽っていた俺を、現実に引き戻す声。
 俺がサンタを受け継いだ時から、ずっとパートナーを組んでいたトナカイのチョッパーだった。
 サンタは必ず一匹のトナカイとタッグ組んで、割り当てられた地域を担当することになっていた。
 サンタは贈り物を与える人間を。
 トナカイはその人間が欲している贈り物を。
 それぞれ探し出して、一年に一度のこの日に与えるのだ。

 「ゾロ、疲れちゃった?」
 心配げなチョッパーの視線に、俺はハッとして苦笑した。
 「悪い、大丈夫だ」
 チョッパーには、俺の想いは知られていない・・・と思う。
 今日一日ずっとソリを引いてきて、本当に疲れているのはチョッパーの方なのだ。俺がこんなことでは・・・
 ・・・と、不意に俺はチョッパーに抱きしめられていた。
 「?どうした、チョッパー?」
 あまりに突然の事に驚いて尋ねると、一層ギュッと抱きついてきて。
 俺はよくわからないままに、その少しごわごわした毛皮を撫でてやった。
 チョッパーはトナカイには珍しい青鼻で、そのことに酷くコンプレックスを感じていたようだが、俺にとっては唯一のパートナーだった。方向音痴な俺を、いつも先導して導いてくれた。
 「ゾロ・・・今までお疲れ様」
 「あ?ああ・・・」
 まるでサンタの務めがこれで最後であるかのように言うチョッパーに、俺は不審に思いつつも頷いた。
 ナニ言ってんだ、来年もまた一緒だろ、と笑いながら。
 「ほら、ゾロ・・・最後の家だよ?ルフィに、プレゼントを渡してきて?」
 チョッパーがフッと離れて、俺の前にさし出してくる。ルフィへの贈り物だ。ルフィが心から求めている物だ。
 手渡されたのは、綺麗にラッピングされた骨付きの肉だった。こんがりと焼かれた美味そうな肉だった。
 あまりにルフィらしい望みに、俺は思わず破顔してしまう。
 「あいつ、ホントに肉が好きなんだなぁ」
 サンタはこの瞬間まで、選ばれし者への贈り物の内容を知らない。それはパートナーのトナカイが、望みを聞き出して決めることだった。
 だから俺は内心、ルフィが何を望んだのか気になっていたのだ。俺にとって胸の痛くなるような物を欲しているのかもしれない・・・そう、不安になっていたのだが。
 ルフィの欲の無い望みに、俺は何だか気が抜けてしまった。
 彼らしいといえば誠に彼らしい。
 「ほら、早く行って来て」
 「ああ、今年最後だ。行ってくる」
 俺はチョッパーに背中を見送られて、そのままルフィの家の煙突に潜り込んだ。


 部屋に入ると、そこはすでに電灯が落とされていて、薄暗かった。ベッドでは、ルフィがすやすやと寝息を立てている。
 結局起きているルフィとは顔を合わせることも、言葉を交わすこともできなかった。
 それが残念だと感じる一方で、少しホッとしている自分も居た。
 きっと、目を合わせてしまったら、一生忘れられなくなってしまうから。サンタの務めも忘れて、彼を見守りつづける道を選んでしまうから。

 「メリークリスマス、ルフィ」
 俺はルフィの枕元にそっとプレゼントを置いた。ほのかに漂ってくる肉のジューシーな香りに、きっとご馳走を頬張っている幸せな夢を見られることだろう。
 今までルフィを遠くからずっと見てきたが、これほど近くに寄るのは初めてだった。胸が高鳴り、目の奥がじんわりと熱くなってくる。
 俺はしばらく彼から目が離せずに、じっとベッドの脇で立ち尽くした。
 もう、これで本当に最後なのだ。
 明日からは、また新しい別の地区へ移らなければならない。こうして、ルフィのことを見ることができるのは最後。
 そう思うと、胸が引き裂かれそうなほどに痛い。
 これほどまでに、俺はルフィに惹かれていたなんて。
 自分のルフィへの想いをハッキリと自覚した瞬間に、もう別れが待っているなんて。
 残酷な運命に、生まれて初めて涙が溢れそうになった。

 どれくらいの時間、そうしていただろうか。
 チョッパーが待っている。早く、戻らなくては・・・
 「ルフィ・・・さよならだ」
 最後に、一度だけ。お前に触れさせてくれ。
 多分一生、俺はお前を忘れられないだろう。
 だけど、お前に触れることが出来たなら・・・その思い出だけで、俺はこれからもやっていける。

 そっと手袋をはずして。彼の柔らかそうな頬へと手を伸ばした。


 「やっと、手に入れた」

 「!?」
 不意に響いた声に、俺は咄嗟に手を引いた。その手を、強く握り取られる。
 眠っていたはずのルフィの目が開かれ、その深い蒼の瞳に、俺が映っていた。
 次の瞬間、それが俺の目の前に迫ってきて、俺の唇に温かいものが触れていた。
 一体何が起こったのか解らなくて、俺はただ目を見開く。
 「お前、名前は?」
 離れた唇から問われた質問に、俺は操られるかのように答えた。
 「ゾロ・・・ロロノア・ゾロ」
 「ゾロか!」
 ルフィが嬉しそうに抱き付いてくる。
 もう俺は、事態の展開に付いて行けなくて、頭が真っ白になってしまった。
 ただ、初めて感じた人肌の温もりに、心臓がやけに煩くざわついた。
 「・・・やっと、おれんとこに降りてきたな。もう、おれのものだ、ゾロ」
 「え?何を・・・」
 さっきも言っていた。『やっと手に入れた』と。一体それはどういうことなのか。
 人間には悟られていないはずだ。
 見えないのだ。人間には。サンタの姿は。
 今日、こうして初めて姿を見せて。夜中に突然人の家に押し入ってきた盗人、と思われてもおかしくない状況だ。
 「おれは毎年この日にプレゼントをもらってきた。毎年誰かが、交代でおれのことを見ているのは知っていた」
 それを、お前は感じていたと言うのか。
 「今年、おれのことを見てたのはゾロだろ?」
 俺はドキリと心臓が跳ね上がったのを感じた。
 図星を指されて顔を真っ赤に染める俺に、ルフィは自分の予想が正しかったことを確信したのか。酷く嬉しそうに微笑んで、俺を腕に抱き込んだ。
 俺は引き寄せられるままに、ベッドに乗り上げてしまう。
 「スゲェ気持ち良かった。ゾロの視線。優しくてあったかくて。」
 「る、フィ・・・」
 「ずっと、こうしたいと思ってた。だから、今年はそれを願ったんだ」
 さっきから、ドクドクと俺の心臓が壊れそうなほどに高鳴っている。身体が、ルフィに抱き締められている身体が熱い。
 どうにかなってしまいそうだ。

 ルフィが・・・俺に、気付いていた、と?そう言ったか?
 それじゃ、彼の『望んだ物』とは・・・
 「お前は、トナカイに何を望んだんだ?」
 贈り物を与えられる『資格』を持つ人間として選ばれた者の望みは『絶対』だ。そのために、人間達は厳しい審査を受けるのだ。
 一度選ばれた者の願いは、必ず叶えなくてはならない。
 ルフィが・・・何を願ったって?
 「お前だ、ゾロ。お前をくれって言ったんだ」
 「そ、んなこと・・・」
 「ああ、トナカイにも言われたな。でも、おれはゾロ以外に欲しいものは何もなかった」
 その瞬間、鼻の奥がツーーンとなって・・・


 それからどうなったのか、もう何も分からなくなってしまった。

 「ゾロ、好きだ。お前以外、何もいらねェ」
 ただルフィが俺を抱き締めて、口付けて、そう囁いてくる。
 狂おしい程の熱に追いかけられるままに、ルフィと一つになって。

 遠くで、チョッパーが最後のお別れを告げるのが聞こえた。
 幸せになってね、ゾロ・・・と。

 ごめんな、チョッパー・・・



 そうして、俺はサンタを退職した。
 これからは、ルフィと生きていく。
 永遠に・・・




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<注>これはギャグです。ゾロがサンタってアンタ・・・(爆)
でも本人は一応真面目に書いてます。かなり楽しかったです。
ルフィ好き好きなゾロは楽しい♪
つか、乙女過ぎですか(笑)

これは2001年のクリスマスに書いて、期間限定でサイトにアップした物ですが
今回続きを書いたのでそれに合わせて再納入です。
よろしければ下の窓から、この二人の行末をご覧下さいませ♪
表のクセにエロ表記ありなので、ニガテな方はご注意くださいね(笑)



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