WHITE KISS

「い、痛っ!アッ・・・!」
「ゾロ?」
 先端をあてがってギュッと押し入れようとしたところで、やはり今日も同じ悲鳴が上がった。
 秘部を押し開かれるこの痛みには、どうしても慣れることができないのだろう。身体が硬直してしまっている。
 痛みと恐怖とで、ゾロの股間もすっかり縮み上がってしまっていた。
 とても、続きなんかできそうにない。
 無理矢理にでも身体を開かせて突っ込んでしまうことはできるけれど、そんなことが目的なのではないから。
「今日はここまでにしようか」
 そう、言ってやると、ゾロはハッとおれの方を見て、それがみるみるうちに泣きそうな顔になってしまった。
「ルフィ・・・」
 呼ぶ声も、とても心苦しそうだ。
 今夜もまた、おれの欲求を満たしてやれなかったことを、きっと申し訳なく思っているのだろう。律儀なヤツだから。
「そんな顔するなよ、無理強いしたくねェんだ」
 それでなくとも、お前をおれのそばに繋ぎ止めていることこそが、おれの一番の我侭なのに。
 おれは自分よりも少し逞しいゾロの身体を、ぎゅっと腕に抱き込んだ。
 本当はこれだけでも、十分満足なんだ。
「好きだよ・・・ゾロ」
「ルフィ・・・」
 ゾロは小さくそう呼ぶと、安心したようにおれの背に腕を回してきた。

 
 おれのせいで羽をもがれ、地上に堕ちたサンタ。
 それが、ゾロだ。
 元々ゾロは代々家業として受け継がれるサンタ『ロロノア』の血族とかで、去年のクリスマスにはおれの地区を担当したのだ。
 一方的におれは観察されるだけの立場だったけれど、人には見えないはずのゾロを、おれは一年間ずっと感じていた。
 だから、「何が欲しい?」と問うてきてトナカイに、ゾロを要求したのだ。
 それ以来、ゾロはずっとおれのものだ。

 でも最近思う時がある。
 ゾロはおれの我侭で人間にされたこと、実は恨んでるんじゃないかって。
 もちろん、おれはゾロを肉体的な慰みとして欲したわけではないけれど、でもゾロのことが好きだから、抱き締めたいし繋がり合いたいと思ってしまう。
 ゾロはこういう人間の欲求にはまるで無知で、おれが求めても自然にそれを受け入れてくれた。
 でも、狭いゾロの秘所にはおれのモノは到底入らなくて・・・
 本来セックスというものは男同士では行わない行為だということを知ったゾロは、いつだったかおれに言ったのだ。
 女として、お前のそばに来たかった、と。
 男の身体では、何も生んでやることはできないから・・・
 それ以来、ゾロはいつも哀しそうな目でおれを見る。
 ごめんと謝られたことも、もう数え切れないほどだ。

 そんなこと、どうだっていいんだ、ゾロ。
 おれは、そのままのお前が良い。
 なんて言ったら、おれの想いは伝わるんだろうか・・・

 幸せで楽しかった日々には、気付かないうちに少しずつ亀裂が入り始めていた。



 そうして、一年の年月が巡り、また次のクリスマスを迎えようとしていた。
 ここ三ヶ月ほどは、ずっとゾロを抱いていない。
 軽いキスはたくさんしているけれど、それ以上やったらおれの理性がもちそうにないから、我慢している。
 けれど、今回のクリスマスこそはゾロに一大告白をするつもりだった。
 ゾロに気付かれないようにバイトして、金を貯めて指輪も買った。ペアのヤツだ。
 この時期、ショッピングモールはカップルのためのペアリングやペアネックレスの売り場がひしめいている。まさか自分がこの波に埋もれて買い物することになるなんて、夢にも思わなかったけれど、プレゼントする相手がいるのなら、こういうのも結構楽しいものだと知った。
 ゾロ、これを見たらなんて言うかな。
 最近元気なかったから、これで喜んでくれると良いんだけど・・・

 そんなうきうきとした気分で、おれは自宅へと帰る。
 家では、いつも通りゾロが一人でおれを待っていた。
「ただいまゾロ!」
 明るくそう言って抱きついたら、ゾロはなんだかいつもと様子が違っていて、おれは何だろうと顔を上げる。
 寂しそうに笑ったゾロの口から出たのは、信じられない言葉だった。
「俺・・・また、サンタに戻ることになったんだ。今日限りでさよならだ」
「・・・え?」
 おれは、突然の告白に、頭が真っ白になる。
「今日はクリスマスだろ?俺がルフィのものになるのは、一年間だけだったんだ」
「なっ!そ、んなこと聞いてねェ!嫌だッ!」
「ルフィ・・・決まりごとなんだ。解ってくれ」
 駄々っ子をあやすように宥められて、おれは益々頭に血が上るのを感じた。
 そんな話、おれは聞いていない。
 ゾロはこの先もずっとおれのものだ。
 一年前のこの日、そうトナカイに頼んだのだから。
 それに、そんな大事な話をこんな急に言い出すなんて、あんまりじゃないか。
「嫌だ!帰さない!!これからもゾロと一緒にいるんだ!」
「ルフィ・・・いい加減にしろ。お前は俺のことを忘れて、これから幸せな家庭を築くんだ」
「嫌だいやだいやだ!!ゾロ!そんなこと言うな!!」
 言い争いは堂堂巡りだった。
 おれは、何があってもゾロを手放す気なんかない。
 しかし、これまで諭すような穏やかな口調だったゾロが、急に声を荒げて怒鳴りつけてくる。
「駄目だ!俺と居ちゃ、お前に未来はない!!もうさよならだ!!」
 それは、まるで悲鳴のような叫びだった。
 おれはハッとして、急に沸騰していた血が常温に戻るのを感じる。
 もしかしてゾロは・・・
「ゾロ・・・愛してる。行かないでくれ」
「うるせェ!止めるな!!俺は帰るんだ!!もうテメェのところには居られない!!」
 さっきとはまるで逆だった。
 今度は、おれがゾロを宥める番になる。
 ゾロの意図に気付いてしまったから、おれは余計に手放す気はなくなっていた。
 ゾロには、帰る場所なんてないのだ。
 冷静に考えてみたら、一度人間になってしまったゾロが、再びサンタに戻れるわけがない。
 おれのため・・・なんだな?ゾロ。
 自分がおれのそばに居たら、将来がないって・・・そう思ってるんだろう?
 それこそ、馬鹿な勘違いだ。

「・・・今お前を失ったら、おれは生きていけない」
 おれの言葉に、ゾロの肩がヒクッと揺れるのを確かに見た。
「お前がどうしても出て行くってんなら、おれは舌を噛んで死ぬぞ」
「なっ・・・!」
「本気だ」
 こんな脅迫紛いの言葉で、説得したくはなかったけれど・・・
 それほど、お前のことが必要なんだ、ゾロ。
 知らないうちに、おれの瞳からはポロポロと涙が零れ落ちていた。
 これは、ゾロへの懺悔の涙だ。
 お前に、そこまで思いつめさせていたなんて・・・おれは自分が許せない。
 お前を、不安にさせていたんだな・・・
 ゴメンな、ゾロ・・・

 ゾロはおれが突然泣くのを見て、あたふたしていたが、やがて自分も耐え切れなくなったのか、両手で顔を覆い隠してしまった。
 苦しげな嗚咽が零れて落ちる。
「俺は・・・お前の役に立ちたいのにっ・・・何も、出来ねェ・・・そんなっ、耐えられねェ!」
 ゾロがこんな風に泣くのを、おれは初めて見た。
 どうしようもなく胸が痛くなって、おれは衝動のままにゾロを抱き締める。
「ゾロ!好きだ、お前が好き!絶対一人ではいかせないッ!」
 そう、まくしたてたおれの言葉も、涙に滲んでしまう。
 おれ達は抱き合ったまま、互いの肩に顔を埋めて泣いた。

 なぁゾロ・・・
 変だよな。おれ達、お互いに不安になってたんだ。
 こんなにも好き同士なのに。
 もっと、ちゃんと話すれば良かったなぁ・・・
 何も、心配することなんかなかったのに。

「ゾロ・・・出て行く必要なんかないぞ?」
 お前は、十分おれの役に立ってる。
 少し落ち着いたら、おれはゾロの背中を優しく叩いてやる。
 ゾロはそれでもまだ肩を震わせて泣いたままだから、おれは何かまだ不安なことがあるんだろうかと思う。
「ゾロ?」
「お前・・・最近ずっと、家に居なくて・・・」
「うん?」
 顔を覗き込んだおれに、ゾロは相変わらず目を伏せながらも、ポツリポツリと胸の内を話しはじめた。
「俺と、同じベッドで・・・寝なくなったし・・・他に、イイ奴が出来たんだと・・・」
「・・・え!?」
 ゾロの告白に、おれは心底ビックリしてしまった。
 まさか秘密でバイトに出かけていたおれを待ちながら、そんなことを考えていたなんて・・・
「俺はっ!お前のを・・・その、挿れて・・やりたかったから・・・頑張って馴らそうとしたのに・・・お前もう、俺を抱こうとしねェし・・・」
 そう言ってしまってから、ゾロは急に恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして俯いてしまう。
 おれはもう、そんなこと聞いたらたまらなくなる。
 ゾロがおれを受け入れようと、そこまで頑張ってくれてたなんて・・・
 もう・・・好きすぎてしょうがない。
「ゾロ!」
 愛しい気持ちが溢れ出して、おれは衝動のままにキスをした。
 ほとんど飛び掛るように口付けたおれを、けれどゾロはしっかりと受け止めてくれて、二人は思う存分唇を触れ合わせ舌を絡め合う。
 こんなキスは、本当に久しぶりだった。
 きっとこれで、おれの想いがゾロへと伝わっただろう。
 魂までも吸い尽くような激しい口付けに、やがてゾロの膝がカクンと折れて、おれ達は二人一緒に床へと崩れ落ちた。そこで、一旦キスを解く。
「・・・おれ、我慢してたんだ」
「・・・?」
 息を整えながら首を傾げるゾロに、おれは「にしし」と笑う。
「でももう、我慢しねェ。今夜はゾロを最後までもらうぞ」
 そこまで言ってやると、ようやくおれの意図を悟ったのか、ゾロはまた顔を高潮させてしまった。
 ホントに可愛いなぁ・・・
 世間のどんな邪念にも染まっていない、純白のゾロ。
 おれのものだ。

 でも、先にもう一つの誤解を解いておかなきゃならない。
 おれはリュックを探って、中から取り出した箱をゾロに差し出す。薄翠のリボンで包装された、小さな箱だ。
「これを買うために、バイトしてたんだ。おれが自分で稼いだ金で、買いたかったから」
 慣れない本屋のバイトで、結構大変だったんだから。
 でも頑張った分だけ、おれの想いが詰まってるはずだ。
「な、開けてみて?」
「・・・ああ」
 ゾロは突然のプレゼントに戸惑いながらも、するすると包装を解いていく。
 箱の中身は、プラチナのペアリングだ。
「ルフィ・・・これ・・・」
 心底驚いた風に、ゾロはリングとおれの顔とを交互に見る。
「つけてあげるよ」
 おれはゾロの手を取り、リングをゆっくりとはめてやった。
 左手の薬指にはめたのは、おれの独占欲の証しだ。ゾロはその意味を知らないだろうけど。
 眠っているうちにこっそりサイズを測った甲斐もあって、リングは指にピッタリだった。
「で、こっちはおれの。ゾロ、はめてくれる?」
 箱に入っていたもう一つの方は、おれのためのリングだ。
 お互い左手の薬指にリングを付けたところで、嬉しくなってまたキスを交わした。今度のはすぐに離れるフレンチキスだ。
 けれど、焦点が合わないくらいの位置を保ちながら、おれはリングをゾロに見せて言う。
「見て。文字が彫ってあるだろ?」
 リングの側面には、『Forever with Zoro』とある。
「『永遠にゾロと一緒に』っていう意味だ。ゾロのにはおれの名前が入ってる」
 ゾロは自分の指のリングとを見比べると、また目尻を赤く染めた。
 その言葉の意味を、知ったのだろう。
 おれは真っ直ぐにゾロを見つめて、言った。
「おれと、永遠を生きてくれるか?」
 ゾロの綺麗な紅の瞳から、透明な雫がポロリと零れて落ちる。
「ああ・・・俺も、お前と一緒がいい」
 泣きながら、でも幸せそうに微笑ったゾロはとてもキレイで、おれは引き寄せられるように、再び口付けた。
 ああ。
 おれはこんなにも、ゾロが好きでたまらない。
 きっとゾロだっておれと同じ気持ちだ。
 そう思うと下っ腹が重いほど熱くなって、とてもキスだけでは終われそうになかった。
「ゾロ・・・お前が欲しい。ベッドに行こう」
 そんなおれの言葉に。
 ゾロは頬を染めながらもコクリと頷いた。


 二人きりのベッドルームに、熱い吐息が満ちる。
 ゾロを傷付けないように、おれは丹念に愛撫を施し、ゆっくりと馴らしていった。
 けれど、身を仰け反らせて快感に身悶えるゾロを目の当たりにしたら、おれの雄は正直に猛り狂ってしまう。
「ゾロ・・・もう、いくぞ?」
 おれの呼びかけにコクコクと頷いたから、おれはゾロの足を抱えて秘所に自身をあてがった。
 よく馴らしたおかげで、先端だけは僅かに潜り込ませることに成功したけれど、やっぱりゾロは苦しそうに眉を寄せている。
 まだ、駄目なのだろうか・・・
 思わず動きの止まってしまったおれに、けれどゾロはギュッと腕を掴んできた。
「やめるなっ・・・大丈夫だからっ」
「ゾロ・・・」
「ちゃんと、最後まで・・・して、くれ・・・」
 涙で滲んだ紅い瞳は、必死にそう訴えてくるから。
 きっと、これがゾロの最後の『わだかまり』なのだ。
 身体がおれを受け入れられないのを、酷くコンプレックスに感じている。
 おれはゾロが一番楽であろう態勢を取り直すと、ゆったりと覆い被さってキスを落とした。
「力、抜いて・・・ゾロ」
 好きだよ・・・と囁いたら、ゾロの肩から力が抜ける。
 おれはその機を逃さずに、ゾロの中へと侵入していった。
 一旦入ってしまうと、思いのほか容易に、全てを滑り込ませることができた。
 挿入した瞬間は「ああっ」と喘いだゾロだったけれど、全部埋め込んで腰を止めてしまうと、もう苦しげな表情は和らぐ。
「入ったよ、ゾロ・・・全部入った。判る?」
 ゾロはこれまであんなに辛かったのが嘘みたいだという風に、穏やかな表情を見せた。
「ああ・・・お前の、鼓動を感じる・・・アツイ・・・」
「ゾロん中だって、熱くてすげェ気持ちイイ・・・」
「ル、フィ・・・」
 途端、ゾロは手で顔を隠してしまった。肩が、小刻みに揺れている。
 泣いて・・・いるのだろうか?
「ゾロ?」
「・・・悪ィ・・・なんで、俺・・・」
 自分でも、何故涙が込み上げるのか解っていないようだ。
「嬉しいんだ・・・嬉しいのに・・・なんでか、胸が痛ェ・・・」
「ゾロ・・・」
 そっとどけさせた手の向こうには、両眼からボロボロ涙を零すゾロがいた。
 それを見たおれにまで、痛みは伝染する。
 けれど、なぜこんな風になるのか・・・おれは知っている。
 人・・・だからだ。
 人は幸せすぎると、胸が痛くなることがあるって、聞いたことがある。
 これまでおれはそんなことを言われても理解できなかったけど、今なら解る。
 きっと、今みたいな気持ちのことなんだ。
「自然なことだ、ゾロ・・・胸が痛い分だけ、ゾロは幸せだってことだよ」
 そう言ってやると、ゾロは泣きながらも「そうか」と笑って返してきた。
 ゾロは『人』になったんだ。
 これから、おれと一緒に色んな気持ちを覚えていこう。
「好きだ・・・ルフィ」
「おれも・・・ゾロ」
 おれ達は強く抱き締め合って、痛みも幸せも全てを共有した。


 聖なる夜、クリスマス。
 それは互いに恋をしたおれとゾロが、初めて逢った刻だ。
 そして今年は、初めて心も身体も繋がり合った日。

 今度こそ、永遠を誓い合ったおれ達は
 もう二度と離れることはない。




  Prodused by ヨーグルト


激しく馬鹿ップルでスミマセン。
ゾロが乙女まっしぐらでスミマセン。
見てるこっちが恥ずかしくてスミマセン。
でも一番恥ずかしいのはこんなモン書いてるアタシです・・・(汗)
けど、これもルフィとゾロが勝手に動いてくれたので、楽しかったといえば楽しかった(笑)
最近ゾロ一人称が多かったので、今回は久々にルフィ一人称です。
元はといえば、何も知らないゾロをゆっくり堕としていくルフィが書きたかったんですが
知らん間にえれェ紳士なルフィになっちゃいました(爆)
アレだな・・・表に置く為に必死でエロ度を抑えたから、だな・・・
ゾロ主体だったらもっと事細かに書けたハズのアレやコレやは心残りですが
今回はコレで良しとしますか(笑)
設定については、全く考えていないので深くは考えないで下さい(オイ)



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