心の旅 3



 「青い煙が、まだ筒口から細く出ていました・・・」

 ウソップは静かな口調で、物語の最後を締めくくった。
 やはり、この報われない狐の話は我ながら心にグッと来るものがある。
 フゥ、と息を吐いて、ウソップは下げていた視線をサンジの方へと合わせた。そしてその瞬間、ウソップは己の目を疑った。
 サンジは泣いていた。声も立てず、滝のように両眼から涙を溢れさせて。彼の澄んだスカイブルーの瞳から、止めどなく透明の雫が零れ落ちていた。
 「サ・・・サンジ?」
 ウソップが思わず名を呼ぶと、サンジはハッとしたように慌てて両手で顔を覆い隠す。
 「ち、くしょ・・・なん、で・・・」
 悔しい事に、サンジはウソップの口から語られる物語の世界に、すっかり入り込んでしまっていた。あんなに大見得を切って「泣かない」と言ったのに・・・
 しかも、未だに胸が痛くてまともに言葉も出てこない。

 狐の『サンジ』が悲しくて、哀れで・・・心が堪らなく痛かった。
 報われない可哀想な狐に自分を重ねてしまう。
 自分は人間であるのに・・・ちゃんと人間の言葉を話せるはずなのに。
 物語の中で『サンジ』には叶わなかった『ヒト』としての言葉を発せられる存在なのに・・・
 架空の世界も現実も同じ。
 ゾロへの想いを伝えることは、叶わないまま・・・


 「サンジ・・・この話には、まだ続きがあるんだけど・・・」
 ウソップは顔を覆ったまま嗚咽を漏らすサンジを見かねて、声をかけた。サンジはその台詞にピクリと肩を揺らす。
 それを見たウソップは、布団をぽんぽんと叩いて優しげに微笑んだ。
 「この後な・・・ゾロはサンジを村で一番の医者の所へ連れて行くんだ。そうして、ゾロの懸命の看護もあって、サンジは何とか一命を取り留めるのさ。
 それから・・・サンジはゾロと一緒に、いつまでも仲睦まじく暮らしたんだってよ」
 サンジはウソップが語る物語の続きに、益々涙が溢れるのを感じた。
 「バ〜カ・・・そんなうまい話があるかよ・・・」
 涙に声を震わせながら、サンジは笑う。
 ウソップの優しい『嘘』が、今は心地良かった。
 「オレ様は真実しか語らねェゼ?
 信じるものは救われる、ってな!」
 ウソップも得意げに胸を張りながら笑う。
 お互い、今度は声を出して笑いあった。

 「・・・ったく、病人を泣かせるんじゃねェよ」
 ようやく涙も笑いも収まったサンジが、今更ながら恥ずかしそうに布団を口元まで上げて、恨みがましい目線を送った。
 ウソップは優しげに目を細めて、サンジの頭を撫でてやる。
 「病人だから、だろ?」
 「え?」
 「病気の時は、人間感傷的になるもんさ。普段のお前なら、オレの話で泣いたりなんかしねェだろ?」
 ウソップの、いつもの情けない姿とは別人のような落ち着いた笑みを見せられ、サンジは驚きを隠せなかった。
 解っていてなのかいないのか、こうしてプライドの高い自分に逃げ道を作ってくれる。
 「あ、当たりめェだ!」
 サンジはウソップの優しさに甘えさせてもらうことにした。
 しかし、いつまでも子ども扱いをして、頭を撫で続けられるのには我慢ならない。
 「テメ、いい加減それやめろよ!」
 サンジが堪らずにウソップの手を払い除けると、丸い目をして返された。
 「これ、気持ち良くないか?」
 「は?」
 「死んだオレの母ちゃんがよくこうしてくれてさ・・・そうすると、安心して眠れたんだ」
 ・・・やっぱり、こいつは天然だ。
 サンジは眩暈を覚えながらも、ただ純粋に自分を想ってくれているウソップを邪険にも扱えなくて。
 「か、勝手にしろ!」
 ウソップに背を向ける格好に寝返りを打って、サンジは寝る体勢に入る。ウソップはそれを肯定と解釈し、再び柔らかい金糸の髪に指を絡ませた。

 そうしていると、ウソップの故郷で頑張っているであろうカヤを思い出す。
 彼女にも一度、この狐の物語を話して聞かせた事があった。その時カヤは狐を可哀想に思うあまりか、声を出して泣いてしまって・・・それ以来、この話は誰にもしていなかった。
 そして今日、また同じように聞き手に涙を流させてしまった。
 自分の語る話にそこまで思い入れをしてくれたのは嬉しいけれど・・・やはり、この物語は封印する事にしよう。

 ウソップは手からサラサラと滑り落ちる髪の感触を楽みながら、僅かに苦笑を浮かべたのだった。



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 ああ、アタシもサンジ君のや〜らかそうな髪をさわさわしたい・・・
 ・・・さて、最後の最後でちょっとだけウソサンっぽくなってくれましたね(笑)
 まぁ、お互い想い人は他にいるんですけどね〜
サンジ君はやっぱりゾロ(でも、ここのゾロも例外なくルフィのモノだったりしますが(笑))
 ウソップにはカヤv
 やはりウソップには聖域でいて欲しいですもんねvv
 でも、結構楽しかったですvまた、機会があれば書きたいですね、ウソサンv(やめれ)

 元ネタの「ごんぎつね」からは、感情面、精神面でかなりの付け加えをしています。
 元ネタは所詮(?)お子さま用の解りやすい文章ですからね。。。
 もちろんゾロの設定やゼフの存在なんかは、こちらで勝手に考えて付けております(笑)
 でも、おかげで結構泣ける話に仕上がってくれたかと思うのですが。。。
 皆様、如何でしたでしょうか?
 もしよろしければ、是非ご感想をお聞かせくださいねv
 タイトルの「心の旅」は毎度のごとく、ハリソン・フォードの映画からでしたvv




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