仕方がない



 ――――ギィンッ!

 刃と刃のぶつかり合う音。
 彼は剣士であるにもかかわらず、それを聞くのが酷く久しいと感じた。
 そうだ。
 そう言えば空島以来、戦ってきた相手は剣を持たぬ者ばかりだった。

 こうして久々に剣を交えると、自分はこの音が本当に好きなのだという事実に気付く。
 この、鍛え上げられた鋼が奏でる音の、なんと心地良いことか。
 心が・・・身体が、高揚する。


 けれど、昂ぶる欲望のままに刀を振るったら、その者達は簡単に吹っ飛んで散った。
 一人、船番として残っていたゾロの、寝込みを襲ってきた賞金稼ぎ6、7人。
 その全員が、ゾロのただの一振りで海へと落ちていってしまった。
 なんて呆気ない。

「くだらん・・・」

 ゾロは一気にカタをつけてしまったことを、僅かに悔やんだ。
 もっと手を抜いて遊んでやれば良かった。
 そうすれば、自分だってもう少し楽しめただろうに。
 妙な気配を感じたから、わざと一人船に残ったというのに。
 せめて、火照ったこの身体を鎮めるくらいには、役に立って欲しかった。
 全く、使えない奴らだ。


 ゾロは再び襲われる前の体勢に戻り、目を閉じた。
 けれど、興奮したままの精神状態では眠気など訪れるはずもなく、「ちっ」と一つ舌を鳴らす。
 解っている。
 あんな雑魚相手でも、久方ぶりの戦闘だ。熱くならないわけがない。
 けれど、もう相手は居ないから、ゾロにはこの熱を自らなんとかするしかなかった。


 その方法として、この時はただ一つしか思い浮かばなかった。


 浮かんだそれに従って、ゾロは股間に手を伸ばす。
 すでにそこはボトムごしにも解るほど育っていた。
 これも、生理的に仕方がないことだ。
 セックスの何たるかを覚えて以来この方、戦闘の興奮をも身体が勝手に『快楽』と認識し、反応を返すようになってしまった。
 いつもなら、その熱を共に昇華し合える相手がそばにいるのだけれど。
 彼は何よりも冒険が好きだから、今は辿り着いたこの不思議な街に夢中で、こちらのことなんてすっかり忘れてしまっているだろう。

 それでもいい・・・と、ゾロは思う。
 自分のこんな暗い欲望なんて、純粋な彼には知られたくないから。
 本当はいつだって欲しいのは自分ばかりだ。
 それは勝負する相手としても。
 例えばちょっとした力比べで喧嘩する相手としても。
 もしくは、性欲を解消する相手としても。
 彼は今までに会った誰よりも、ゾロとウマが合った。
 自分と同じくらい力も体力もあるから、壊れることを気にして手加減する必要もない。
 いや、それどころか、うっかり手を抜こうものなら、メチャクチャにされるのはこっちの方なのだ。
 熱くなるには、最高の相手だった。

 仕方ない。
 それを『恋』だと錯覚するのも。


「ふっ・・・く、ぅ・・っ」
 さすがに乱れ始めた息を、ゾロは天に向かって吐く。
 目の前に広がるのは、どこまでも透明な空。
 深い深い、青。
 眩暈のするようなそれが、脳裏に焼き付いた笑顔とダブって。

 血は一気に沸騰し、爆ぜた。







  Prodused by ヨーグルト




原作325話『ゾロ、寝込みを襲われる、の巻』その後ネタでした。
うちのゾロはホントにいつもいつもルフィが好きでスミマセン(笑)

ええっと、これはなんかゾロ→ルフィの片思いっぽいですが、
多分同じようにルフィもゾロのことを好きです。
例によって例のごとく。
そして、この後ゾロはカクさんと遭遇?(爆)




戻る