讃歌 |
激しい砲撃音が轟き、そこかしこに海水の柱が立つ。 船上には火の粉が舞い、燻った特有の匂いが立ち込めている。 率いていた何隻かの船はすでに大砲の餌食となり、海の藻屑と化したようだった。 今や残っているのは母船のみ。それもいつ沈んでもおかしくないくらいの被害を被ってしまったようだ。心なしか、海の上に浮いているにしては不自然な傾き方をしているように感じる。 船の周囲は海軍の大艦隊。 船底一枚を隔てたそこは、冷たい海。 もはや逃げ場は、なし。 「どうする?」 三本の抜き身の刀を構え、剣士が問うた。 「ししし、ヤるっきゃねェだろ」 紅のコートを翻し、船長が答えた。 絶体絶命の非常事態をも楽しんでいるかのように、男は軽く笑う。それは幾多もの修羅場を乗り越えてきた、男の笑みだった。 「・・・だな」 剣士も、口の端を上げてニヤリと笑う。 二人の間には危機感や焦燥は感じられなかった。あるのは、強い信頼に支えられた穏やかな高揚感。 迷いはない。 目の前の敵を、ただ倒すのみ。 しかし。 「騒々しいバースディになっちまったな」 何もこんなめでたい日に、なぁ・・・と、少し乱雑に伸びた黒髪をかきあげて、船長が呟く。 「ンなもん、関係ねェだろ」 俺達は海賊なんだから・・・と、短い薄萌葱の髪を靡かせて剣士が答える。 船長の寵愛を一身に受けている剣士は、毎年この日にはそれはそれは盛大に祝われていた。 小ぢんまりとした数名の海賊団だった頃から、多数の部下を抱える大所帯になった今でも。それはずっと変わらないことで。 たった一人に注がれる船長の愛情は、彼の一人目の仲間である剣士だけのものだった。 そして、剣士の忠誠と恋情も、船長ただ一人に捧げられていた。 そう、剣士にとっては。 胸を焦がすような戦いの舞台と。 自由自在に刀を振るえる、五体満足な身体と。 「・・・お前がいれば、それでいい」 剣士は酷く満足そうに微笑んだ。 彼にとっては、それだけが全てだから。 ルフィの存在こそが、剣士の頂点に極めた彼を動かす、唯一の源。 「早く片付けちまおう。ゾロのそんな顔見て、おれが正気で居られる訳がねェ」 ニカッと笑って船長が答えた。 まるで朝食前の腹ごなしにでも出かけるくらいの気軽さで。 そして。 「それまでは、これで我慢しとく」 剣士の首に片腕を回し、素早く引き寄せる。 ごく自然に、二人は唇を触れ合わせた。 それは一度ゆっくりと離れ、すぐにまた重なる。 何度も顔の角度を変えて互いの唇を貪り合い、身体を寄せ合って鼓動を感じ合う。 勢い余って船長が剣士を床に押さえつけたところで。 轟音と共に、船室の屋根が吹っ飛んだ。飛んで来た大砲の玉が命中したのだ。 「・・・ったく、何だよ。うるせェな」 うざったそうに、船長はようやく身を起こした。 一度は床に縫い止めた剣士の腕を取り、今度は勢いよく引き起こす。 「馬鹿、こんな状況で盛るな」 呆れたように肩を竦め立ち上がりつつも、剣士の心も船長を求めていた。 「戻ったら続きだ。バースディプレゼントはいつものヤツで、な」 コートを脱ぎ捨て、ルフィ。 「ああ、期待してる」 手ぬぐいを頭に巻いて、ゾロ。 二人は半壊した船室を飛び出し、戦いの舞台へと赴いた。 外はよく晴れた、爽やかな空だった。 Prodused by ヨーグルト |
大剣豪のハードな誕生日でした(笑) 穏やかにいちゃいちゃしてるのも良いけど、常に危険と隣り合わせな日常も良いよね。 つか、これはもしかして死にネタなのか?(笑) とにもかくにも、お誕生日おめでとうゾロv 愛してるぜ。 |