REAL FRIEND



 ―――穏やかな風が真新しい帆を凪いでいく。
 
 
 ウソップの村を救った4人の若者を乗せ、ゴーイングメリー号は今はただ風のおもむくままゆったりと波をかき分けて進んでいた。
 ルフィはカヤにもらった新しい船で、早速自分のお気に入りの場所を見つけていた。
 その船を一望するとまず目に入る船首。たいていは若い女性をかたどった彫り物が施された船首が多いのだが、その船のそれはひと味違っていた。
 設計をしたというカヤの執事が言うには「羊」をモチーフにしたものだとか・・・そう言われてみると羊の角とおぼしきものがくっついている。
 ともかく、若き船長であるルフィはたいそうこの船首が気に入ったらしく、何かというとそこに座って水平線を食い入るように眺めていた。
 仲間も4人に増えたし、新しい船も手に入れたし。
 全ては万事順調に進んでいるかのようだった。


 しかし、キャプテンクロとの戦いでルフィにはどうも引っかかるところがあった。
 別に気にとめるほどのものではない。だがその小さなしこりが、本当はものすごく大事なことのような気がして・・・
 クロはかつての仲間を利用して、己の些細な野望を成し遂げようとした。しかも全てが終わった後には、自分の素性が漏れるのを防ぐために仲間を全員この世から消すつもりだったという。
 それを聞いた時、ルフィの中で激しい怒りが沸き起こった。
 何故その様な憤りを感じたのかは分からない。他人がどう言おうと自分は関係ないはずだ。
 そう・・・自分は絶対にそうはならないのだから。
 しかし海賊とはいえ船長と名をうった者が船員の命を駒としてしか見ていない。そんな独りよがりの持論を押し付けようとしたクロに、とにかく腹が立ったのだ。
 いくら海賊とはいえ、仲間というのはそんなものではないと思う。

 少し前に一戦交えたバギーは確かに悪党ではあったが、クロのように仲間をないがしろにするような奴ではなかった。少なくとも参謀のカバジだけは信頼している様に見えた。
 ルフィの憧れであるシャンクスは、言うまでもなく何をさておき仲間を大切にする人だった。あの人ならば自分の身を投げ出してでも、キャプテンとして船員を救おうとするだろう。
 それならば・・・

 「ゴールド・ロジャーってどんな奴だったんだろう」
 誰に語りかけるでもなく、何となく口から出た台詞に。
 ルフィのいる船首のすぐ隣に腰掛けて刀を研いでいたゾロは、ふと顔を上げた。
 「どうしたんだ、いきなり・・・」
 いつもの、悩みなど何もないようなあっけらかんとした口調ではない。今までにもほとんど見たことのないルフィの様子に、ゾロは手を止めて彼を振り返った。
 「何でもねぇ・・・別に、大したことじゃねぇ」
 素っ気なくそう言うが、とても何でもない様には見えない。
 ゾロはフッと肩を竦めると、磨いていた刀を鞘に仕舞った。
 もともとゾロがこんなところで用事をしていたのは、いつもと違うルフィを心配してのことだったのだ。

 新しい船と仲間に祝杯を挙げた後、皆それぞれ落ち着いて自分のことをし始めた。
 ナミはちゃっかり一番良い部屋を女部屋と決め、今は何やら海図とにらめっこ中だ。
 ウソップは自分の家から持ってきた荷物の整理に余念がない。
 ゾロはというと、たいしてするべきこともなく、天気も良いことだし甲板で昼寝でも決め込もうかと、横になるのに適した場所を物色していた、その時。
 珍しく何か考え込んだ様子のルフィがふと目に入った。
 それも、新しい船でこれから何処へ向かおうか、などという楽しい計画を思いめぐらせている、といった感じではなさそうだ。
 いつも明るく笑っている、という印象の強いルフィであるから、ゾロは何やら言いしれぬ不安を抱いたのだった。
 自分一人で解決できることなら、それで良い。
 しかし誰かに何かを聞いて欲しいのであれば・・・自分に何かできることがあれば・・・
 そう思って、何かあればすぐに対応できるよう、ゾロはこうしてルフィのそばにいたのだ。
 突然ボソリと呟いた突拍子もない一言でも、ルフィの悩みを聞き出せるきっかけになるのならば、聞き流すわけにはいかない。
 ゾロはすっくと立ち上がると、ルフィと同じように水平線を見つめる。
 「そうだな・・・伝説の海賊王ってんだから、当然でけぇガレオン船を何隻も引き連れてて。仲間も、数え切れねぇくらいいて・・・」
 何でもないと自己完結させた、実は本当に何でもなかった呟きに。ゾロはさっきまでしていた用事をおいてまで、精一杯答えてくれようとする。

 ルフィはゾロのこういう真面目なところがとても好きだった。そしてゾロがこんな風に懸命に世話を焼くのは、実は自分に対してだけだ、ということも知っていた。
 「船が立派で仲間の数が多けりゃ良いってモンじゃねぇぞ」
 答えてくれたゾロに対しても、ちゃっかり反論はしておく。
 「まぁな。お前には大所帯の海賊団なんて似合わねぇもんな。でも、なるんだろ?海賊王に」
 「ししし、そうだ!おれは二代目の海賊王になるんだからな!」
 ルフィはお決まりのはにかんだ笑顔を見せると、自信たっぷりに宣言した。

 こうしてゾロと話しているだけで、今まで自分を支配していた暗い胸のつっかえが急速に溶け去っていく。さっきまで考え込んでいたことが馬鹿みたいに思えてくる。
 そうだ。クロにはきっと、心から自分を想ってくれる本当の仲間がいなかったに違いない。だからあんな持論を振りかざさざるをえなかったのだ、と。 
 ようやくいつもの調子を取り戻したルフィを見て、ゾロもやっと心を巣くっていた不安を払拭することができた。
 やはりルフィには笑顔が似合う。

 「もう、大丈夫か?」
 麦わら帽子ごとルフィの頭をわしわしっと掻き回して、一応尋ねてみる。
 ルフィは驚いたようにゾロを見つめ返し、気付いてた?と舌を出した。
 そんなルフィにゾロは優しく微笑みかけ、まぁな、と切り返す。分かりやすいんだよ、てめぇは。と。
 「大丈夫だ、おれは・・・おれには本当の仲間がいるから、ゾロがいるからな!」

 嬉しかった。自分にはこんなに分かり合える仲間がいる。そう思っただけで、天に祈りでも何でも捧げたい気分になってくる。
 飛び跳ねたい様な気持ちを持て余して、ルフィは腕を大きく伸ばして深呼吸した。
 「そうか」
 ゾロもつられて大きく伸びをする。
 そうして再び目を合わせると、どちらからともなくころころと笑いあった。


 そう・・・今はまだ船長とその仲間、という関係。だけどそのままでいるつもりはない。
 いつかゾロに自分の想いを告げる。
 戸惑いながらもゾロは必ずそれを受け入れてくれるだろう。確信はある。何たっておれは海賊王になる男なのだから。
 でも今は。
 本当は抱き寄せて唇に触れたいけれど・・・
 今はまだ、このじれったい関係も悪くはない。

 「・・・なにニヤけてんだよ」
 「ししし!なーんでもねぇっ!」
 「?」
 

 近い将来、何かが変わる。




  END


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 うわ〜〜はずかし〜〜(照)
何を隠そう、これが初めてまともに書いた小説だったりします・・・
つーか、
ヘタ・・・(汗)
 最初は3人称だったのにいつの間にかルフィの1人称になってら(もはや笑)
最初は誰でもこんなもんでしょ!・・・と己を慰めてみる。
 それにしても、もうちょっと題名何とかならんかったもんでしょうか・・・
そのまんまやんけ!アイタタ・・・



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