元旦編



 眩しい。
 目蓋を焼く光に、ああもう朝なのかと思う。
 それに、何だか少し冷える。
 なんでかと思って手で探って隣にいるはずの人物を探すと、そこにあるはずの温もりはすでに消え失せていた。
 一体どこに行ったんだ、と。頭では考えるけれど、身体が動いてくれない。気持ちの良い眠気はまだ脳を半分夢の世界にいざなっている。

 ふと、良い匂いが嗅覚をくすぐった。
 それに耳を澄ませると、トントンとまな板を叩く音も聞こえてくる。
 ああ、朝飯作ってくれてるんだなぁと。少し感動してしまった。
 昨日あんだけ無理させちまったのになぁ・・・
 おれは少しおぼつかない包丁の音を子守唄に、再び意識を飛ばしてしまった。


 「おい、起きろよルフィ。いつまで寝てるんだ?」
 ゾロだ。
 おれがプレゼントしたグリーンのエプロンをつけている。
 ああ、良いなぁこういうの・・・新婚さんそのものじゃんよ。
 ぼんやりまなこでそれを眺めていると、ゾロが「仕方ないな」と肩をすくめるのが見えた。
 次の瞬間。

 バッサァ!
 「うお!寒ぅっ!!」
 布団を一気に足元まで捲り上げられてしまって、全裸だったおれは突然襲われた寒気に飛び上がるハメになった。
 「いい加減にしろ!もう昼だぞ!」
 ゾロが腕組みをしておれに雷を落す。
 うわ・・・ヤだなぁ、これじゃまるっきり『だらしない息子と鬼のおかん』の図じゃねェか。
 さっきまでのあま〜〜い新婚さん♪の雰囲気が台無しだ。
 「ほら、さっさと着替えて・・・と、その前に、その元気になってるモノを抜いて顔洗って来い」
 ゾロが眉を顰めて額に手を当てるのに、何かと思ったら。
 なっはっは!おれのムスコは今日も朝から元気におっ勃っちまってた。
 「コレはな・・・アレだ、夢ん中のゾロがスゲェえっちだったからだ!おれのせいじゃねェ」
 おれは開き直って胸を張る。
 さっきまどろんでた時おれの夢ん中に出てきたゾロは、素肌にエプロンを身に着けた若オクサマだったのだ。そんなゾロにねちっこくご奉仕されてソノ気にならないヤツは、男じゃねェだろう。
 そういやアレってもしかして今年の初夢になるのかな?

 ゾロはおれのその発言にピクリと眉を吊り上げた。
 「・・・夢ん中の俺は、何してた?」
 問うて来る声が低い。
 ヤベェ・・・ゾロ、怒らせちまったみてェ(汗)
 「う・・・や、あの・・・裸エプロンで、おれのを口でイかせてくれ・・・マシタ」
 おれは妖気すら漂ってるゾロを伺いながらも、夢の内容を包み隠さず懺悔した。語尾が敬語になっちまってるのは、おれのカワイイ恐怖心ってヤツだ。
 「勝手な夢見やがって・・・」
 ゾロは溜息を吐くと、おもむろに服を脱ぎ始めた。
 「え?え?何??」
 ワケが分からずにドキドキうろたえるおれを尻目に、ゾロは器用にエプロンだけを残して服を全て脱ぎ捨ててしまった。
 な、なにするんだ?もしかして・・・
 「・・・ゾロ?」
 「夢より本物の方がイイって・・・思い知らせてやる」
 ゾロはおれを上目遣いに睨むと、ベッドに腰掛けていたおれの股座に顔を埋めてしまった。
 「うひゃ!」
 おれのムスコは、真っ直ぐにゾロの口内へと導かれる。熱い粘膜に包まれて、おれはたまらず情けない声を上げてしまった。
 ゾロはそんなおれを見つめながら、なおも大胆に舌と唇で雄を高めていく。
 コレってもしかしなくても、嫉妬?
 ゾロってば、おれの夢に出てきたゾロに妬いてくれたんだな。
 くぅ〜〜たまんねェなぁ〜〜ゾロってば、カワイイとこあるじゃんか♪

 「んっ、む・・・」
 吐き出したおれの体液を全て呑み込んで、ゾロはゆっくりと立ち上がった。
 「・・・で?他には?」
 夢の俺は何かしたか?と、不機嫌そうな顔で聞いてくるゾロに、おれのお調子者の口がついつい滑ってしまった。
 「『旦那様、俺のえっちなピーー♪にピーーー♪して下さい』ってオネダリされたv」
 にっこり笑って言ったおれの台詞に、ゾロの肩がブルブルと震えだす。
 あ、ヤベ・・・調子に乗りすぎた(汗)

 「このド阿呆ーーーーーーーーっ!!!」

 今度こそ、超ド級の雷がおれの頭上に落ちた。




 シャワーを浴びてサッパリしたおれを、ゾロは豪華なおせち料理と共に迎えてくれた。
 「うっほ〜!スゲェじゃん!コレ、どうしたんだ?」
 椅子についたおれの前に、ゾロが雑煮のお椀を置いてくれる。
 「さっきくいなが持ってきてくれたんだよ。マキノさんと作ったんだと。お前によろしくってさ」
 「そっかぁ」
 ま、ゾロが全部作ったとは思ってなかったけどな。おれと二人で暮らすようになってから、ゾロの料理の腕は随分上がったと思うけど、さすがにこういう伝統の味ってヤツはゾロにだって無理だろう。
 ちなみに、くいなっていうのはゾロと同い年のおれの姉貴だ。んで、マキノはおれの義理の母ちゃん。
 そっか、さっきおれがぐうぐう寝てた時に来てたんだな。
 だからゾロは早くに起きてたんだ。
 悪いことしたな。ゾロ、きっとくいなに散々からかわれたんだろうなぁ・・・
 チラリとゾロを見た。
 「・・・なんだ?」
 「ゾロ、好きだぞ?」
 おれの突然の告白に、ゾロはカァっと頬を染める。
 「俺もだよ、このアホ」
 「アホって酷いなぁ・・・」
 へらへら笑いながら言うと、ゾロはそっぽを向いて今度はお茶を淹れ始めた。それでも耳が真っ赤だから、全然誤魔化せてない。
 カワイイなぁゾロ。

 テーブルに並べられた料理をざっと見渡す。
 4段の重箱に入っているのは、黒豆の煮物や昆布巻、イカの網焼き、伊達巻と色鮮やかだ。よく見知ったこれは、全部マキノが作ってくれたモンだろう。
 小鉢に入った数の子は、昨日ゾロとスーパーで買ったヤツだ。薄皮剥いて、醤油と鰹節をかけてある。それを指でひょいとつまみ食いすると、ちゃんと塩抜きしてあってイイ味だった。
 「ゾロ!これ美味いよ!」
 誰かに教わったのだろうか。ゾロがここまで気が利いてるなんて、ちょっと意外だ。
 「惚れ直したか?」
 「おう!」
 今度は不敵に笑ってみせるゾロに、おれもニカっと笑って返した。
 二人分の湯飲みをテーブルに置いて、ゾロが席に座ったところで、おれ達は改めて背筋を伸ばす。

 「「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」」

 向かい合って改めて挨拶して。
 それじゃ、とおれは早速箸を取った。
 まずは雑煮から手を伸ばす。中の具はシンプルに、水菜とかまぼこと海老。そしてトースターで焼いたお餅が一つ。
 「出汁、どうだ?一応味見はしたんだが・・・」
 おれが茶碗からすするのを見つめながら、ゾロが少し不安そうに聞いてくる。
 おれは顔を上げてニッと笑うと
 「サイコー美味い!いい味出てる♪」
 と答えた。ゾロがホッとしたように肩の力を抜く。
 「くいなが押し付けてきた本見てやったんだけどよ。ちゃんと出来て良かったよ。
 ・・・ん、ちゃんと美味いな」
 そう言って出汁を一口含んで頷くゾロが、メチャメチャ愛しかった。
 どんな料理でも、ゾロが作ってくれたってだけで嬉しいんだけどな。おれのために努力してくれてるってのが、それ以上に嬉しい。
 おれはその朝飯兼昼飯の間に、雑煮を三杯もおかわりした。



 お正月といえば、誰も彼も『初詣』ってヤツに出かけるらしいけど、おれはハッキリ言ってそういうのに全く興味がない。
 わざわざ正月に人ゴミに揉まれに行ってどうなるんだ。
 その点に関してはゾロとも意見が一致しているので、おれ達の正月はもっぱらダラダラいちゃいちゃに終始する。
 昼飯の後は、お正月用にレンタルしていた映画を一緒に観た。
 最初に観たのは『ザ・ウォッチャー』っていう、キアヌ・リーブスの映画だ。キアヌ・リーブスと言えば『スピード』や『マトリックス』みたいな強いヒーローってのが主流だけど、今回の映画では悪役を演じていた。ちょっとストーカー入ってるヤバイ変態野郎の役だ。これはこれで珍しくて面白いよな。
 そのままの勢いで、今度はデンゼル・ワシントンの『戦火の勇気』って映画を観た。デンゼル・ワシントンはゾロが好きな俳優だ。確かに格好良いよな。ま、おれには負けるけど。にしし♪
 それは湾岸戦争を題材にしたアメリカ軍隊の映画だった。戦死したメグ・ライアン扮する女性大尉の調査をするっていうストーリーだ。これはゾロが好きそうな映画だな。もちろん、おれも楽しめたけど。


 今日の晩飯後片付け当番はおれだった。
 と言っても、食器洗い機に皿を並べて入れるだけだけれど。
 食後の焼酎を持ってリビングに戻ると、ゾロは何やらテレビをじっと見ているようだった。
 「ゾロ、何見てンの?」
 「ああ、ご苦労さん。別に見てたワケじゃねェけど・・・日本の温泉湯巡りだってよ」
 「温泉?」
 テレビを消そうとリモコンを取ったゾロに待ったをかけて、おれはじっとそれに見入る。
 ちょうど『雪見温泉の名所』を紹介しているところだった。しんしんと雪の降るところにホカホカ湯気の立つ露天風呂が構えてあって、なんともたまらない。
 こんなとこにゾロと二人きりで行けたら、そりゃあもう最高だろう。
 ・・・行けたら?
 何言ってんだ、行きゃあイイんじゃん。簡単なことだ。

 「よし!ここ、行こう!明日行こう!」
 「は、はぁ!?」
 ゾロは何言ってんだ、と呆れた目をおれに向けてくる。
 まぁイキナリだもんな、吃驚するよな。
 んでもおれは決めたぞ!もう決めた!
 「このまんまずっと寝正月ってのも勿体ないしな!ゾロ準備しろ!明日の朝一で出発だ♪」
 「・・・本気、なのか?」
 「もちろん♪」
 一度決めたら梃子でも動かないおれの性格を良く知っているゾロは、「分かったよ、ダンナサマ」と溜息を吐いて言った。
 そんな呆れたフリしてるけど、ちょっと嬉しいって思ってるだろゾロ?
 にしし、おれには解ってるんだゾ♪


 よし、そうと決めたら今日は早めに寝なくちゃな!
 えっちも三回くらいでガマンしとこう。
 なんたって明日はゾロと二人きりで温泉だv

 おれは俄然ウキウキとしてきた心を持て余して、ゾロをぎゅ〜〜っと抱き締めてキスを贈った。





ヨーグルト家のおせち料理一挙公開!な感じで(爆)
もはやこれは超海賊王の日記!?
スミマセン、おもっきしアタシの元旦の一日でした。
こんな感じでひたすらダラダラしてました(笑)
ああ、映画も・・・趣味が出てしまったわ(汗)
結局書けなかった温泉編は、そうさね〜〜2004年にでも書けるかしら?(笑)



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