大晦日 「おれ、今年はゾロん中で新年迎えたい」 そう、真顔で言われたのは、大晦日を一週間前に控えた寒い夜のこと。 俺とルフィが二人で暮らし始めて、初めての年の瀬が近づいていた。 そりゃあ、アレだ。こうして同棲みてェな暮らしをしてるんだ、ルフィがそんなことを言い出してもなんら不思議はない。 俺だってルフィと二人きりで過ごせる年末年始に期待はしていた。 けどなぁ・・・ 「お、お前・・・俺ん中でって・・・」 そこまで露骨に言われて、それでも何を言われてるのか勘付かないほど、俺は鈍くはない。 思い当たった意味に、俺は顔を真っ赤に染めるハメになった。 「セックスしながら、一緒にカウントダウンしようよ」 ルフィはニッコリと笑って、そうして強引なまでに約束を取り付けてしまった。 分かったよ。 俺は、ホントにお前に甘いよな。 「次、誰?」 「ああ、浜崎あゆみ・・・で、次がゴスペラーズだな」 「そっか、んじゃソレ見てから風呂入るよ」 ルフィはつまみのさきいかを口に放り込んで、焼酎のロックをゴクリと一口。 俺は新聞を開いたままソファの上に放ると、使用済みの食器をシンクの流しに持って行った。 昼間、二人でスーパーに行って買い込んできた寿司は、全て平らげてしまった。その上、年越しそばまで腹に収めてしまったところだ。今は、年末の紅白歌合戦を見ながら優雅に酒を飲んでいる、という状況だった。 年末年始と言えば、意味もなく何時間もやっている特別番組ばかりで、テレビをつけるのも辟易するような時期だ。けれど、ルフィが「紅白歌合戦を見ないと年を越せない」なんて言うもんだから、今晩は七時半からずっとチャンネルはNHKのままだ。 別に、俺としても特に何かある時以外は年末といえばこれを見ていたから、何の文句もあるわけではない。 食器洗い機に小皿やどんぶり鉢を並べながら、俺はルフィがテレビに見入っているのを眺めていた。 『続きまして、ゴスペラーズで「星屑の街」』 白組司会の紹介に続き、ルフィが「おっ!待ってました!」とばかりに身を乗り出す。 ルフィはこのアカペラグループが大層好きなのだ。特に芸能人に興味のないルフィが、唯一CDを買い揃えているグループでもある。俺も、ルフィと一緒に聞いているから、この歌はよく知っている。 透き通るような声が、とても魅力的だと思う。 「あ、歌詞間違えた!」 ルフィが目敏く見つけて突っ込みを入れるのに、俺も笑い返して。 あっという間に、その歌は終わってしまった。 「ふぅ〜!じゃ、風呂入るかな・・・」 一緒に入る?・・・と悪戯っぽい笑みを浮かべて聞いてくるのを素っ気無く返して、俺はベッドを整えるために寝室へと向かった。 「ゾロ!次入れよ、んで早くシよう!」 バスルームに入ってから五分と経たない内に、ルフィは髪から水滴を滴らせながらバタバタと寝室へ入ってきた。 「お前、もう出たのか?」 その余りの早さに、俺はさすがに目を丸くした。いつものこととはいえ、まるでカラスの行水だ。 「髪、水が垂れてるじゃないか。ちゃんと温まったのか?」 俺はバスタオルでルフィの頭を少々乱暴に掻き回してやりながら、問いかける。まともに身体も拭かないルフィが、とてもガキっぽいと感じる瞬間だ。 「へへ、イイの!あとでゾロにあっためてもらうから♪」 「・・・アホ」 にしゃっと笑うルフィは、言っている台詞こそ『男』とはいえ、その屈託のない笑顔自体はまるっきり『子供』だった。 ったく・・・そんなところが、凄く可愛いと思っちまうんだよな。 「ほ〜ら!早く入った入った!」 「分かったから、ちゃんと髪乾かしておけよ?」 「は〜〜い!」 返事だけは調子の良いルフィに溜息を吐きつつ、俺は背中を押されるままにバスルームへと入った。 寝室から響いてくる細く透き通った歌声に、俺は「あいつ、今度は寝室で紅白見てるのか」と思い立つ。 この声は知っている。確か『亭主関白』を歌っていた・・・そう、さだまさしだ。 彼の名前は新聞の出演順リストでもかなり下の方に掲載されていたように思う。結構長い間湯に浸かってしまっていたようだ。どうせ身体の隅から隅まで舐め回されるだろうから、今日は念入りにゴシゴシとやったのだ。 「・・・ルフィ?」 一瞬、ルフィが眠ってしまっているのかと思った。 あいつはバスローブのままベッドにどっかりと寝転んで目を瞑っている。ベッド前に設置したプラズマテレビから、さだまさしの細くて何処か悲しげな声が流れている。 「この歌さ・・・『精霊流し』って言うんだって」 ルフィが、目を閉じたまま言った。 「スンゲェ、切ない歌だよな・・・」 「起きてたのか・・・悪い、待たせちまって・・・」 そう謝りながらベッドに近づくと、ルフィは不意に目を開いて俺の腕を掴んだ。そのままベッドへと引っ張り込まれ、ルフィの下へと組み敷かれてしまう。 「ゾロ遅ェよ!身も心も冷えちまったじゃねェか!」 ルフィは頬をぷっくりと膨らませて、俺の仕打ちに抗議した。 ああ、そうだな。俺が悪かった。 だから。 「ゴメンなルフィ・・・俺が、あっためてやるから・・・勘弁しろよ」 ルフィの頭を引き寄せて。 俺の謝罪はルフィの口の中に溶けた。 俺達は紅白歌合戦をバックミュージックに、互いに触れ合い高め合う行為に耽った。 身体中をまさぐってくるルフィの指が冷たくて、俺はその手を取ると息を吹きかけ胸に抱き込んでやった。 「なに?責任感じてる?」 ルフィは少し目を丸くして問うて来る。 「ああ、いつも俺よりずっと熱いお前が、こんな冷たかったら・・・な」 「口でシてくれたら、すぐに熱くなれちゃうかも。にしし♪」 「・・・はいはい、分かったよ」 ルフィのそんなオネダリも素直に聞いてやる気になるほど、俺は罪悪感を抱いていたようだ。 嬉しそうに脚を開いてくるルフィをチラリと見やり、俺はそのままルフィ自身に口付けた。 もう、かなり慣れてしまった行為だ。どこをどうすればルフィが感じるかも、すでに熟知している。俺が精一杯の手管でそこを高めていくのに、ルフィは甘い喘ぎを漏らした。 「あ〜〜スゲェいい・・・な?熱くなってきただろ?」 その言葉に視線を上げると、上気して頬をピンク色に染めたルフィの顔が映った。俺の髪を撫でてくる指も、随分と熱を取り戻したようだ。 紅白はクライマックスが迫り、遂に残す歌手も二人となったようだ。 「あ、『天城越え』だ。おれこの歌好き」 もうイイよ、とルフィが促すのを機に、俺はルフィのモノを口から解放した。俺の腰に腕を回して引き寄せてくるので、「ああ、今日は騎乗位から入るのか」と悟る。 俺は誘導されるがまま、従順にルフィの腰を跨いだ。 テレビのステレオから響く歌声に合わせて、ルフィも一緒に歌う。 「隠しきれない移り香が いつしか貴方に染み付いた。 誰かに盗られるくらいなら 貴方を殺して良いですか」 酷く物騒な歌だ。 だが、その気持ちは凄くよく解る。 「ゾロ・・・誰にも、渡さねェ」 「それはこっちの台詞だ」 そして、俺はルフィの楔の上に腰を落とし、深く繋がり合った。 紅白は赤組の勝利で終焉を向かえ、やがて『行く年 来る年』の厳かな番組に移り変わっても、俺達の営みが終わることはなかった。 「ゾロ・・・明けましておめでとう」 「ああ、おめでとう・・・今年も、よろしくな」 「うん、おれのムスコ共々・・・な」 「・・・あほ」 結局夢中になって互いに昇り詰めるうちに年は越えてしまって。 それでも、俺達は湧き上がる愛しさのままに、明け方まで何度も何度も熱を高め合い、鼓動さえも共有し合った。 こんな年越しも、悪くねェな・・・ルフィ。 |
え〜〜かなりノンフィクションなカンジで(笑) ゴスの薫っち、歌詞間違えたんですよ! 「遥か遠く」を「かなり遠く」なんて言っちゃって・・・ こっちがヒヤヒヤしちゃいました(汗) |