Thier Life ポカポカ陽気が心まで暖かくしてくれるような、そんな春の日だった。 こんな気持ちの良い日は、二人手を繋いで近くの河原へ散歩するのが『お約束』だ。 河原には見事な桜並木が続いており、ちょうど満開を迎えている今は、まさに『壮観』と言っていい素晴らしい光景が広がっている。 「ゾロォ!すげェ!」 「走るなルフィ、転ぶぞ」 手を引いてパタパタと走り出す少年に、ゾロと呼ばれた青年は少し困ったような、しかし穏やかな笑みを浮かべた。 ルフィ 九歳。 小学校に通う、元気一杯の腕白小僧。 ゾロ 十九歳。 剣道で鍛えた身体が逞しい、ちょっと強面の大学生。 一見ちぐはぐな取り合わせに見える二人は、不思議な縁あって生活を共にしている『同居人』だった。 今はルフィもゾロも春休みの真っ最中。天気の良い日には二人きりでのんびり散歩できる今の環境を、お互いこの上もなく幸せだと感じていた。 ルフィはゾロのことが誰よりも好きだったし、ゾロもルフィのことが何よりも大切だった。 もっと近くで見たいとねだるルフィを、ゾロは肩に乗せてやる。 「すげェ!キレーだ!」 すげェを連呼してはしゃぐ様は年相応のそれだ。けれどゾロはそれを鬱陶しがることもなく、キョロキョロ辺りを見回すルフィが落ちてしまわないように、ゆっくりと桜並木を歩いていく。 端から見て彼らは、今時珍しく仲の良い『年の離れた兄弟』だった。 そして確かにその通り、二人は血の繋がった兄弟だ。 けれど、実体はもう少し複雑だった。 「マキノにお土産しよう」 ルフィは良い事を思いついたとばかりに、近くなった桜の枝に手を伸ばす。 マキノというのは、ルフィの実の母親だ。彼女の艶やかな黒髪と勝気な性格を、ルフィは色濃く受け継いでいた。 ゾロの方は、マキノとの血縁はない。けれど、彼女はそんなことにこだわったりするような、狭い心の持ち主ではなかった。ルフィもゾロも、等しく息子として接してくれる。 「新しいお母さんだ」と紹介された九年前から、ゾロもそんなマキノを実の母親のように思っている。 ルフィは綺麗な形の花弁を選りちぎっては、ゾロの頭に並べていった。 「・・・オイ、何してんだ」 「落とすなよゾロ。大事なお土産だからな」 花茎を髪に何本も差して、ルフィはゾロの頭に花を咲かせていく。ゾロの髪は珍しい若草色をしていて、それが桜のピンクと調和して、とても綺麗だ。ゾロの頭はみるみるうちに花畑へと色付いていった。 ゾロはルフィが一度こうと決めると、頑として譲らないということを知っているから、とりあえずしたいようにさせておくことにする。 年の離れた兄弟というものは概してこういう傾向にあるのだろうか。ゾロはこの十歳下の弟に、ひたすら甘かった。 今度は喉が乾いたと駄々を捏ねるルフィに、ゾロはポケットに裸で入れてあった小銭で、缶ジュースを一本買ってやった。 ルフィの好きなオレンジジュースだ。 桜を眺めるのにちょうど良いベンチを選んで、二人は仲良く並んで座った。 半分ほど飲んだところで、ルフィは「ん」とゾロに缶を差し出す。ゾロは「おう」と言って受け取ると、一口だけ飲んでまたルフィに返した。 道行く人々が、ゾロの頭を見ては様々な反応を見せて通り過ぎていく。 堪えきれずにプッと吹き出す者。 驚いたように眼を丸くして、その後すぐに目を逸らす者。それぞれだ。 もちろん、ゾロの頭に咲いている桜の花を見ての反応である。 ルフィは一体どんなテクニックを使って植花したのか、ちょっとやそっと頭を振ったくらいでは落ちてしまわないように、しっかりと固定されている。 さすがに自分だけ注目を浴びるのは忍びなくて。 「お前にもお裾分けだ」 ゾロは自分の頭から花弁を一本抜くと、ルフィの左耳近くにそれを飾ってやった。 「おお!どうだ?イカスか?」 そんなゾロの意趣返しに、しかしルフィは嬉しそうにはにかんでみせる。 「ああ、意外に似合うな」 ゾロも、思いの他可愛らしく仕上がった愛弟に、優しく微笑んで返した。 この間仲良しのウソップがどんなホラを吹いたとか、ルフィの好きな連載マンガの主人公が今週号でどうなったとか。 休む間もなく喋り続けたルフィが、一瞬考え込むように黙り込んだ。 この後、唐突に出てくる台詞を、ゾロは知っている。 「腹減った」 ルフィの体内時計が、おやつの時間を告げているのだ。 そういえば、今日はマキノが得意のクレープを焼いてくれると言っていた。 「そろそろ帰るか」 空き缶をそばのくずかごにポイと入れたゾロに、ルフィは「おう」と元気よく立ち上がる。 二人はまたどちらからともなく手を繋いで、家路への途に着いた。 髪に飾った春を、お土産にして。 |
![]() Illustrated by ヨーグルト |
え〜〜ヨーグルトがまたパラレルの新シリーズを始めやがりました(笑) しかも10歳差現代パラレル・・・ どうも最近趣味がおかしな方向に飛んでますな(汗) とりあえずこのシリーズは平和なホームドラマタッチでイきたいと思います♪ って、続ける気か!? |