Birthday Fullmoon

 
 ゾロの誕生日も後半を過ぎて、後はディナーパーティを控えるのみとなった。
 おれとしては、今晩もゾロを堪能したかったんだけど、さすがに拒絶されてしまうことだろう。
 昨晩はほとんどノンストップで、何時間もゾロを抱き続けたから・・・
 おれは全然平気だけど、ゾロはそうはいかない。アノ行為は受け入れる側の方がキツイらしいから。

 優しくしてやれたのは、最初だけだった。
 一度イッちまうと、後は抑えが効かなくなる。
 おれに抱かれると頭が真っ白になって、何も考えられなくなる、とゾロは言うけど・・・
 本当は、溺れているのはおれの方。
 アツくて狭いゾロの中に入ったら、理性が焼き切れて。
 欲望に忠実な獣と化してしまう自分。
 そんなおれでも、ゾロは優しく受け入れてくれる。
 暖かくおれを包み込んでくれる。
 少し濡れた、あの綺麗な紅の瞳におれを映して・・・

 思考がそこまで行って、おれは下半身に熱が溜まっているのに気が付いた。
 ヤバイ。
 今日はもう、ゾロに無理させないって・・・我慢するって決めたんだ。
 おれは火照った身体を冷まそうと、甲板に出た。

 今日のグランドラインは、冬の到来を感じさせるかのような冷たさで。
 吹き付ける風が、耳を刺すようだ。
 でも、今のおれにはそれくらいの方がちょうど心地よかった。
 まだ日が沈むには早い時間だったが、辺りはすっかり暗くなってしまっている。
 初冬は太陽の軌道が少し短くなる。
 春夏秋冬が入り交じる非常識なグランドラインでも、そんな天体の法則は当てはまるようだ。
 
 しかし何故か、すっかり太陽が海に隠れてしまっているはずなのに、空がふんわりと明るいような気がする。
 おれはその光に誘われるかのように、船首の方へと歩みを進めた。
 
 その明かりの正体は月だった。
 それもとびきり大きな満月。
 まだ海面から這い上がったばかりで、海にも金色の光を落としている。
 おれは言葉もなく、ただただ見入っていた。
 美しい。
 それ以外の表現が思いつかなかった。

 ゾロに出会って、共に航海するようになってから、おれは月を眺めることが多くなった。
 ゾロと生活を共にするようになって、どうしようもなくゾロに惹かれて、ゾロにおれの想いを告げて、想いが叶ってゾロと愛し合うようになって。
 いつしか月を眺めると、安心する自分に気が付いた。
 その理由も解っている。
 月が、ゾロと似ているからだ。
 ゾロが月に似ているのではない。

 三日月の、少し切なくなるような儚さも。
 半月の、何処かホッとするような暖かさも。
 そして満月の、強くて豪華なのに何故か抱き締めたくなる美しさも。
 どんな月も、ゾロのことを思い起こさせる。
 だから、その日の月がどんな形なのか、おれが知らない日はなかったのだ。

 しかし今日は・・・
 ゾロの誕生日のことで頭が一杯で、今日が満月であることに全く気付かなかった。
 頭を占有されてしまう程に、今日のバースディはおれにとってもトクベツな日だったから。
 
 それにしても・・・
 神様はなんて粋なことをしてくれるのだろうか。
 トクベツな日に、トクベツ美しいプレゼントをくれた。
 それもおれの一番好きなまあるい月を。
 不意打ちの贈り物だから、その嬉しさも言葉では言い尽くせない。
 踊り出したいくらいの歓喜を抑えかねて、おれは身体をブルブルッと震わせた。

 ゾロにも、早く知らせたい。

 「どうした?寒いのか、ルフィ?」
 突然かけられた言葉に、おれは驚いて振り返った。
 そこにいたのはゾロ。
 興奮のあまり、ゾロの気配に気付かなかったのか。
 ゾロはおれが身体を震わせたので、心配して声をかけてくれたようだ。
 月の光を受けて朱金に輝く瞳には、おれの身体を気遣うような労りの色が混ざっている。

 おれは・・・
 タイミング良く現れたゾロにも、ただただ見入るばかりで。
 明るい月を浴びて佇むゾロが、酷く綺麗だったから。

 まるで奇蹟。
 この世に零れ落ちた一粒の輝石。
 奇跡的に舞い降りた、月の雫のようだ。
 
 「ルフィ?」
 心配げに呼ばれる声に誘われるかのように、おれはゾロの頬に指で触れてみた。
 良かった、ちゃんとゾロの感触を得ることが出来る。
 おれにも触れることが出来る。
 神の、指の間からすり抜けて、地上に降り立った至高の存在が。
 今、おれの手の中にある。
 「ゾロ・・・」
 その存在を、温もりを確かめたくて、おれは腕を絡めてぎゅっと抱き締めた。
 一瞬驚いたように身体を強張らせたゾロも、すぐに力を抜いておれの背中に腕を回してくる。

 ああ。
 やはり、月なんかよりもゾロの方がずっと良い。
 月はおれを抱き締めない。
 おれも月には触れることが出来ない。
 ゾロだけだ。
 ゾロだけがおれを心から満たしてくれる。
 おれに、こんな幸せをくれる。

 「好きだ、ゾロ・・・愛してる。どうしようもないくらい・・・」
 狂おしいほどの想いを、ゾロの肩越しに囁いた。
 でも、本当はこんなものじゃない。おれの想いは・・・
 言葉だけじゃ伝えきれない。
 おれは腕を緩めると、ゾロの顔を見つめる。
 頬を薄く染めて、恥ずかしそうに見つめ返してくるゾロ。
 可愛いゾロ。
 おれの。
 おれだけの。

 紅い唇に、引き寄せられるかのように、おれはゾロに口付けた。
 これ以上ないかのような優しいキス。
 外気の冷たさに少し乾いた唇を、舌で湿らせてやる。挟み込むように下唇を甘く噛んで。
 おれをいざなうかの如く開かれた唇に、そろりと舌を侵入させる。
 戸惑いながらも差し出してきた舌に、己のそれを絡める。
 そして、より一層唇を強く触れ合わせて・・・

 おれの想いを伝えたくて。
 ゾロがそばにいてくれるだけで、泣きたいほどに幸せな、おれの気持ちが伝わればいい。
 この口付けで。
 少しはおれの想いが伝わった?

 名残惜しげに引いた唾液の糸が途切れるのをも、感じ取れる。
 眼を開くと、少し潤んだルビーの瞳とかち合った。
 目尻を紅く染めて、ゾロは小さく囁いた。
 オマエがスキだ・・・と。

 おれは滅多に聞けないゾロの気持ちを、素直に言葉にしてくれた驚きに、一瞬眼を見開いた。
 そして次の瞬間、ニッコリとゾロに微笑いかける。
 「今日はゾロの誕生日なのに、おれがプレゼントをもらってばかりだな」
 昨夜は思う存分ゾロを抱き締めて。
 今日は神サマから不意打ちのプレゼントをもらって。
 そして今、ゾロからこれ以上ないほどの、嬉しい言葉をもらった。
 
 「それなら、俺にももっと・・・オマエをくれよ」
 ふいにゾロの口から零れ落ちた言葉に、おれは思わず自分の耳を疑った。
 「ゾロ・・・だって、身体、キツイんだろ?」
 「ばか・・・俺だって、お前が好きなんだ」
 身体なんか、どうなっちまっても良いくらいに・・・
 ゾロは耳まで真っ赤にして俯いた。まるでそんなコトを言ってしまった己を誤魔化すかのように。

 おれは心に何か温かいものがじわっと流れ込んでくるのを感じた。
 ゾロの想いが、おれの中に浸透してくる。
 ゾロも、おれと同じ想いを抱いていると・・・
 今なら確信できる。
 
 「・・・あとで、泣いて後悔しても知らないぞ?」
 「ちょっ・・・ルフィ!」
 その場にどさりとゾロを押し倒す。船床に押し付けて荒っぽく口付けた。
 覆い被さって、息もつかせないほどに舌を絡め取って。
 「もう、止まらねぇぞ?何もかも分からなくなるくらい、おれを感じさせてやるよ」
 ニヤリと笑うおれにゾロも、やってみろ、と挑発的な笑みを浮かべた。

 
 ――――結局
 その直後、食事の支度が出来た、というサンジの呼びかけに。
 その場は諦めざるを得なくなるのだが・・・
 しょげ返るおれに、またあとでな、と額に優しくキスをくれたゾロも。
 そんなゾロに嬉しくなって、もう一度掠め取るように口付けたおれも・・・
 

 知っているのは、空に輝くまぁるい月だけ。


 ゾロの誕生日にくれた神サマの贈り物は。
 おれ達の熱々ップリにあてられたかのように、雲の間にそっとその身を隠した。




  END


   Produced by ヨーグルト


 

 本当はクソ忙しいときにSSなんて書くつもりは全くなかったのですが。
11/11のバイト帰りに見た満月があまりに綺麗で。
 そしてよりによってゾロの誕生日である今日が、満月だったことの感動のあまり。
 思わず書きつづってしまいました。
 慌てて描いたモノだから、いつもにも増して駄文です!(汗)
 読みにくかったことでしょう、、、スミマセン。
昔はこういうルフィ一人称が凄くラクで、よくこういうパターンのSSを書いておりました(笑)
今となっては懐かしい過去の産物です。



戻る