SWEET DAIRY LIFE
 



 「ん〜〜・・・むう〜〜〜」

 こうして先程から唸り声をあげているのは、小さな海賊船の若き船長。
 しかし別に、用を足すのを我慢している、とかお腹が空いて動けない、などというわけではない。
 耳の穴に指を突っ込んだり、頭を傾けて片足でとんとん飛んでみたりしている。
 「・・・一体どうしたんだ、ルフィ」
 かれこれ半刻程前から続いていたその様子に、見かねたゾロが遂に声をかけた。
 自分のそばで不可解な行動を取られ、気にするなと言う方が無理だ。
 「ん〜、ゾロォ・・・おれの耳の奥、何だか変なんだ」
 「変?どんな風に?」
 いまいちハッキリとしない物言いのルフィに、ゾロは先を促す。
 「ゴミでも詰まってるみたいに、ゴワゴワするんだ」
 唾を飲み込むたびに耳の奥から響いてくる音が、不快極まりなかった。
 成る程、それでようやく納得。
 長い間耳掃除もしていないのだろう。きっとルフィの耳の穴には垢が溜まっているに違いない。
 「そりゃ耳垢が溜まってんだよ。ナミに道具借りて自分で掃除しろ」
 ゾロは素っ気なく言い放つ。途端にルフィは、へにゃ〜と情けない顔をした。
 「自分では見えねぇのに、掃除なんて出来ねぇよ。今までこういうことはマキノがしてくれてたんだ」
 ゾロは「マキノ」という単語にピクリと反応する。
 ルフィの口から時々出てくる「マキノ」という名前。酒場で働いていた若い女性で、ルフィの親代わりのような存在であった、ということは薄々聞いている。
 しかし・・・そんなことまでさせていたのかと思うと、何故かゾロの胸にムカムカとしたものが込み上げてきた。
 馬鹿げてる。
 どうして俺はこんなことで苛ついているんだ。
 これではまるで、見たこともないルフィの故郷の女に嫉妬しているようではないか?
 ・・・嫉妬!?
 
 悶々とした考えがそこまで行き着いて、ゾロは途端に顔を真っ赤に染めた。
 ルフィは一人で百面相状態のゾロに首を傾げる。
 「どうしたんだよ、ゾロ」
 今度はルフィから尋ねる番だった。
 ゾロは耳まで紅潮させたまま、はぁっと溜息をつく。
 ―――いつの間にか、俺はこれほどまでにルフィに惚れちまってたらしい。
 ちょっと悔しいが、こればっかりは仕方がない。
 「分かったよ、俺が掃除してやるから・・・」
 ナミにピンセットと耳掻き借りてこい、と手をパタパタ振る。
 その言葉にルフィは嬉しそうにニカッと笑うと、急いでナミの部屋へと駆けていった。
 もしルフィに尻尾があったとしたら、きっと千切れんばかりに振っていることだろう。まるで無邪気な子犬のようだ。
 ゾロは耳と尻尾の付いたルフィの姿を想像して、思わず苦笑した。

 「ナミ!ピンセットと耳掻き貸してくれ!」
 ルフィはノックもなしに勢い良くナミの部屋のドアを開けると、大声で請求する。
 ナミはドアをブチ破ろうかという勢いのルフィに驚いて、椅子からひっくり返りそうになった。
 「ちょっと、ルフィ!急にビックリするでしょ!?ノックぐらいしなさいよ!!」
 慌てて体勢を立て直したナミは、ルフィに向かって、無駄だと知りつつも注意を促す。
 「そんなことより早く貸してくれよ!」
 やっぱり・・・聞いちゃいないわね・・・
 青筋を立てなからも、ナミは仕方なく化粧道具の入った箱を引っぱり出す。
 「こんなもの、一体何に使うのよ」
 箱から取り出したピンセットと耳掻きを、ルフィに投げてよこしながら尋ねた。
 「何言ってんだ、耳掃除に使うに決まってるだろ。バカかお前」
 それが人に物を借りる態度かーーっ!?と内心はらわたを煮えくり返しながらも、ナミは確かにもっともだ、と納得する。
 「あんたがわざわざそんな道具使って掃除する、って姿が想像つかなかっただけよ」
 腹立ち紛れにちょっとした嫌みを投げかけてやる。
 「ゾロがな、おれの耳掃除してくれるんだ!」
 ルフィはそれが嫌みだとは全く気付く気配も見せず、逆に嬉しそうにししし、と笑った。
 あのゾロがルフィの耳掃除を・・・?
 ナミはその姿を思い浮かべて、ブッと吹き出した。同時に意地悪な企みが頭をよぎる。
 ルフィを人差し指でちょいちょいと呼ぶと、その耳元にこっそりと囁く。
 それは耳掃除でのお約束。
 分かった!と言って元気良く部屋を飛び出すルフィを見つめながら。
 ナミは、後でこっそり様子を見に行ってやろう、とニヤリと口元に笑みを浮かべるのだった。

 「ゾロ〜〜!お待たせ〜〜っ!」
 バタバタとゾロに駆け寄り、ルフィはそのままゾロの膝を枕にして寝転がる。
 ゾロは一瞬何が起こったのか分からず、しかしあんまりなこの体勢に、ピクピクとこめかみを震わせた。
 「何なんだよ、このカッコは・・・」
 地を這うような声で一応聞いてやる。
 「何って、膝枕」
 ルフィはあっけらかんと答える。
 「耳掃除のお約束だろ?」
 バックに「どーーん!」という文字をしょって、何でもないことのように言い放った。
 どうして俺がこんなコト・・・と心の中で涙しつつも、確かにこの体勢が一番やりやすい、という事は否定できないところが悲しい。
 それにやっぱりゾロはルフィにとてつもなく甘いから。
 ・・・最後にはこの強引でワガママな船長の、思う通りにしてやりたくなるのだ。
 ふぅ・・・と一つ大きな溜息を吐くと、ゾロはそのままピンセットに手を伸ばす。
 最初は嫌々ながらだったゾロも、わんさか取れるルフィの耳垢に気分を良くして、次第にその行為に没頭していった。
 ルフィも意外と巧みなゾロのピンセット使いに、気持ちが良くてうとうとし始める。
 ゾロの膝の上はクセになりそうなほど寝心地が良かった。

 「おいルフィ!寝るんじゃねぇ!!」
 「ぐー・・・すかー・・・」
 「・・・ったく、しょうがねぇ奴だ」


 それは甘くて幸せな、ゴーイング・メリー号での日常。



  END


  Produced by ヨーグルト



 こないだのワタクシの経験を元に生まれた突発SS(笑)
 ホント、気持ち悪いのですよね!耳の奥でゴワゴワいうのが!!
そこからこんなゲロ甘なルゾロSSが出来たのですから、
まぁそれも良し!なんですけどね(笑)
 近頃は自分の日常からこのようなSSが思いつくコト、本当に多いです!
マジでルゾロを中心にアタシの世界は回ってる、という感じです(爆)
 それにしても、このゾロ・・・船長にベタ惚れですよ!
結構初期の作品なんですけどね。この頃から作風は変わってないみたい(笑)



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