BE WITH YOU



 「すっげぇ混雑してんなぁ〜」
 「ああ、この祭りの為に、色んな所から人間が集まってくる、って話だぜ?」
 「そっか〜〜」
 さして広くもない通りの脇には所狭しと出店が並び、一体どこから集まったのかというほどの人間が、流れに呑まれるようにゆっくりと前に進んでいく。
 ルフィとゾロはその流れの真っ只中にいた。

 事の発端はナミが入手した情報からだった。
 いつも購入している新聞の隅の方に書かれていた記事。
 『アリアケ島にて、恒例の新年祭が今年も盛大に開催される予定』
 このような内容だったな、と人混みに呑まれながらゾロは思い出していた。
 賞金稼ぎに身をやつしていたときも、時折耳にした事がある。アリアケ島の新年祭では、名のある賞金首や海賊達も自らの手に入れたお宝を陰で売りさばいている、と。
 もちろん海軍も取り締まりに目を光らせてはいるが、なにせこの人の多さである。そこまでは到底目が行き届かず、海賊の存在には気付いていながらも黙認している、というのが現状だった。
 おかげで、3千万ベリーの賞金首となったルフィもこうして堂々と通りを歩いているわけではあるが・・・
 ちょうどアリアケ島の付近を航海していたゴーイングメリー号は、ナミの脅迫的とも言えるお強請りのせいもあって、そのまま島を目指すこととなった。
 久しぶりの買い物に燃えるナミだけでなく、船長であるルフィも相当なノリ気を見せていたので、ゾロとしても逆らうつもりは毛頭なかったのであるが・・・

 「まさかこんなに混んでるなんてな・・・」
 なかなか進まない人の渦に頭痛を覚えずにはいられないゾロであった。
 ナミは島に到着すると同時に、何かお目当てがあったのか、真っ先に単身のり込んで行ってしまった。ウソップは食材を積むというサンジの荷物持ちにと、連れて行かれたようだ。
 そしてゾロはこうして、何事にも興味津々のやんちゃな船長殿のお守りを仰せつかったという訳である。
 アレを見たい、だの次はあっち、だのと先程から散々引っ張り回されている。体力自慢のゾロも、慣れない場所で人混みに揉まれるのにはさすがに堪えた。
 自分の目線のちょうど前にある麦わら帽子を見失わぬよう、必死に追いすがって行く。

 「ゾロ、大丈夫か?」
 不意に振り返ったルフィが、らしくなく心配そうな視線を投げかけてきた。
 ゾロがこのような賑やかな場所を好まない、ということはルフィにも十分に理解済みのことであった。
 しかし・・・
 いくら楽しい所へ来ても、どんなに嬉しいことがあっても。ゾロと一緒でなければ、その喜びも半減してしまうのだ。
 ルフィにとって、ゾロはそのようなかけがえのない存在だった。
 辛いことも、楽しいことも、苦しいことも、全てをゾロと共有したかった。それが、子供じみた唯の我が儘である、ということは理解しつつも。

 ゾロはそんなルフィの不器用な気遣いが嬉しくて、優しく微笑み返してやる。
 「今日は、お前に付き合ってやるって決めたんだ。これくれぇ、気にすんな」
 ルフィの頭を麦わら帽子ごと撫でてやると、ルフィは幸せそうにはにかんで見せた。鼻の頭を指で擦って、そして「ありがとな」と、ニッコリ笑い返す。
 「じゃあ、今度はあっち!一緒に行ってみようぜ」

 刹那、ゾロの手を温かいものが包み込んだかと思うと、ぎゅうっと握りしめられた。
 ルフィの温かい手。
 ゾロの手をしっかりと掴み、ぐいぐいと引っ張ってくる。
 「お、おい!」
 こんな人混みの中、他の誰にも気付かれはしないだろうが、さすがに男同士で手を握るということには抵抗を覚えて、ゾロは思わずルフィの手を振り解こうとした。
 どうした?というようなルフィの疑問符を浮かべた顔を向けられて。
 「こうしてた方が温かいし、ずっと離れずにいられるだろ?」
 ゾロの、恥ずかしいという気持ちを見透かしたかのように、ルフィは目を細めて答えた。そして、ニカッと笑う。
 一瞬見せられたルフィのオトナとコドモの表情の変化に、ゾロはドクンと胸が高鳴るのを感じた。
 時々こうして見せられるルフィの大人びた貌に、ゾロは滅法弱いのだ。
 顔中に熱が集まってくるのが、ありありと感じ取れる。
 「す、好きにしろ」
 紅潮した顔を隠すように、ゾロはそっぽを向いた。そして、ルフィの手をギュッと握り返してやる。
 「ししし、そうする♪」
 ルフィはいつもの笑みを浮かべると、ゾロの手を引っ張って再び人混みをかき分け始めた。ゾロが後ろからついてくるのに邪魔にならないように、周りの人間を少々強引とも言える風に追いやっていく。
 おかげでゾロは先程までの息苦しさは感じなくなっていた。

 きつく握った手から伝わる、ルフィの少し高い体温が心地よい。
 その温度が胸にまで達して、ゾロは心までも温かいもので満たされていくのを感じた。
 ゾロの手を引き、身体を使って必死に進んでいくルフィの後ろ姿に。
 こういうのも、悪くはねェ・・・か。

 今日初めて、ゾロはそんな風に思ったのだった。




  END


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 皆さん気付かれたことと思いますが、
これは冬コミ体験談から生まれたSSです。
「アリアケ島」・・・(爆)
「新年祭」になっているのは、書いたのが新年だったからです。
そんだけ。年末祭の方が良かったかしら?(笑)
 その時、アタシは年甲斐もなく海賊王ルフィのコスプレをしておりまして、
一緒に巻き込んだ友人(パンピー(汗))を連れ回していたのです(笑)
友人はもちろんゾロコスvvで、生まれた今回のSSでした。
 本当はルフィ視点で書いた方が良かったのですが、気付いたら何故かゾロ視点に・・・(汗)
おかげで、考えていたのと少々違ったお話となってしまいました。。。
友人もこのSSでのゾロのように、文句一つ言わず連れ回されてくれたのですが、
内心「解放してくれ〜(泣き)」とか思ってたかも〜〜(笑)
 このSSの二人はまだ恋人未満、って感じですねv
なんか、そういうの書いたのって久しぶり〜〜(笑)
たまには初心に返ってみるのも良いですね・・・
こんな風な友人と恋人の中間のような、くすぐったい関係も悦なんですvv



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