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   ○症例  ○考察

 ーリウマチに対する刺絡の一治験ー
 刺絡は経絡治療の補助療法・救急法の一つとして用いられるもので、打撲、捻挫、肩こり、口内炎など様々な症状に効果があります。
 主として三稜針を用い、愁訴部の血絡などを1、2ミリ切り、数滴から数CC採血する療法です。
 西洋医学における瀉血とは手技、効果、適応症など全く異なるものです。
 現存する古典の中で最も古いと言われる黄帝内経素問・霊枢には刺絡について詳細な記載があります。 
 素問・陰陽応象大論篇第五には「血実宜決之」とあり、「鬱血している時は刺して血を取れ」と、また三部九候論篇第二十に、「必先去其血脈而後調之」とあり、「必ず先に鬱血している所から血を取り、しかる後に虚実に随い補寫を行え」ということ。
 霊枢九鍼十二原篇には、「宛陳則除之」とあり、これもまた鬱血している所から血を取れということ。このように多くの古典の所々には、「まず血絡を除く」等と言う記載があります。
 このことからその昔、鍼灸術は刺絡によって始められたといっても過言ではありません。現在においても、その証法一致を得るならば素晴らしい効果があります。

 刺絡には3つの方法があります。
1.乱刺し、それに吸角をかける。面をなして鬱滞し、こりや重圧感のあるものに施します。
2.愁訴部の血絡を見つけて三稜針を当てる。
3.井穴刺絡、指端刺絡ともいい、病症により、随経的に行います。
 針としては手持ち三稜針、バネ式三稜針、使い捨ての注射針など。
 今回の治験は井穴刺絡によるものです。

<症例>
 患 者、51才、女性、店員(鞄販売)。
 初 診、6月27日
 主 訴、左足首の痛み。
 現 病、以前から少し痛みがあったが、1ヶ月前に捻挫をしたのと、立ち仕事が忙しく痛みがひどくなる。
 望 診、150CM、50KG、中肉中背。
 問 診、鍼灸は初めてとのこと。10年位前からリウマチで鎮痛剤服用、食欲、便通は普通、痛みでよく眠れないとの事。指が良く曲がらない。
 切 診、主訴部は腫脹、やや熱感あり。胆、胃、膀胱経にわたっている。ナソ部はゴム粘土様所見。左示、中指、右母、中指関節に腫脹、曲げると痛み。足がだるい。 左ムノ部に著名な反応あり。
 脉 診、脉状はやや浮、数、実。比較脉診では脾最も虚、次いで心、虚、相克の肝実。陽経は胃、実。
 腹 診、脾の診所力なく虚。心のは所ざらつき虚、肝の突っ張る感じで実。
 弁 別、足首、指の腫脹、だるいは脾の変動、痛み、熱感は肝の変動。
 証決定、以上のことより脾虚肝実証、適応は右とした。
 本治法、金1寸1番鍼で右太白・太陵に補法。肝実は治まったようなので、陽経はあえていじらず標治法へ移る。
 標治法、腹部の中かん、天枢、関元に補鍼。ナソ部、ムノ部の処置。肩、背腰部に適宜散鍼、腎愈、三里、左丘墟、崑崙にゴマ灸2〜3壮。確認の検脉をして終了。少し楽になる。 
 2回目:6月30日
 3回目:7月6日、昨日から痛みが強くなる。今回より足の胆経・竅脂A、胃経・児[から刺絡。
 6回目:7月17日、よく眠れるようになったとのこと。
 8回目:8月4日、手にも刺絡を行う。
 以後、週に1、2回から月に2回程度、定期的に治療を続けている。
 現在では薬はやめている。無理をすると痛みがでるが、日常生活には不自由しなくなったとのこと。

<考察>
 足首の痛みはムノでかなり取れますが、随経的に刺絡をすることでさらに効果をあげる事が出来ます。
 血絡があるときは、それを刺絡するならばさらに効果があります。


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