インフルエンザ 【ホーム】【戻る


    ●症例 1   ●症例 2   ●考察

 インフルエンザは年によっては猛威を揮い、各地で学級閉鎖が相次いだり、また老人ホーム等で多くの高齢者が亡くなったというような報道がされることあります。
 過去には「スペイン風邪」「香港風邪」などと世界的に大流行し、多くの死者を出した例もあります。
 通常の風邪と比べ感染力が格段に強いウィルス性疾患です。

<症例1>
 患 者、18才、男性、高三、受験生
 初 診、12月30日
 主 訴、熱風邪
 現 病、都内の予備校から帰宅したところ、悪寒、発熱(体温を計ったら38.5℃あった)、頭痛、咳。正月をひかえ、また受験勉強もあり、鍼でなんとか治らないかと来院。
 望 診、167cm、51kg、色白で細身。
 問 診、発熱により倦怠感とやや食欲が落ちている。肩凝り、目の疲れがあり、時々頭痛がする。便通、睡眠は正常。
切診、ナソ部は生ゴム様所見があり、頸から肩、肩胛骨内縁にかけて凝り所見。
 脉 診、脉状は浮、数、実、洪。比較脉診では肺、脾虚、大腸実。
 腹 診、肺、脾の診所ざらつきあり虚。。
 弁 別、頭痛、咳嗽、肩凝りは肺金、倦怠感、食欲不振は脾土、熱は大腸の変動。
 証決定、以上のことより肺虚大腸実の証、適応は左とした。
 本治法、金1寸1番鍼で左太淵、商丘に補法、コバルト1寸2番鍼にて右偏歴に浮実に対する瀉法。
 標治法、腹部の中?、天枢、関元に補鍼。ナソ部の処置。頸肩部に瀉的散鍼、天柱、風池、百会に1〜2ミリの瀉鍼、大椎から身柱にかけての硬結を緩め、また腰部は補的に散鍼、腎兪に1〜2ミリの補鍼、大椎にゴマ灸7壮。商陽の井穴刺絡。確認の検脉をして終了。
 浮、数、実の脈は中位に治まり、頭痛も取れたとのこと。ショウガ湯を飲んで寝るように指示。
 *帰宅し寝たところ、ものすごく発汗し(蒲団に人型がつくほどで、2,5リットルの水を飲んだという)、翌朝にはすっかり解熱し、やや咳はでるものの元気になったという。

<症例2>
 患 者、47才、男性、水道工事。
 初 診、2月18日
 主 訴、咳をすると胸と背中から腰が痛む。
 現 病、4日前に風邪(インフルエンザ)を引き、解熱した後、昨日から咳き込むと胸と腰の痛みがひどくなり来院。
 望 診、170cm、83kg、がっしりした体格。
 問 診、喉が少し痛み、食欲がなくだるい、便通、睡眠は普通。
 切 診、ナソ部は生ゴム様所見。中府、雲門に圧痛、頸肩部にやや凝り。腰部には疲労の色。
 脉 診、脉状はやや沈、実。比較脉診では肺、脾、肝虚。膀胱、胃やや実。
 腹 診、肺の診所力なく虚、次いで脾、肝、ざらつきあり虚。
 弁 別、咳嗽は肺金。食欲不振、だるいは脾土、胸、腰の痛みは肝木の変動。
 証決定、以上のことより肺虚肝虚相剋証、適応は左。
 本治法、金1寸1番鍼で左太淵、太白、右中封に補法、コバルト1寸2番鍼にて右飛陽、豊隆に枯に応ずる補中の瀉法。
 標治法、喉の痛みは大腸経とみて、右大鐘に金30番鍼にて子午。腹部の中?、天枢、関元に補鍼。ナソ部の処置。左右のムノ部に補鍼。頸肩背部、腰部に適宜散鍼。肺兪、膈兪、身柱、腎兪、三里、承山にゴマ灸2〜3壮。確認の検脉をして終了。喉の痛みは子午治療により消失。腰痛は軽減。
 2回目、2月20日
 昨日はまだかなり胸の痛みがあったが、今日は痛みが軽減したとのこと。だるさも取れ、咳も少なくなる。本治法、標治法とも前回同様。治療後咳による胸の痛みなくなる。

<考察>
 症例1はインフルエンザの単純型で、脈状も浮、数、実、洪といった典型的な風邪によるものといえます。これは受験をひかえ、予備校へ通ったり深夜まで勉強といったことで大いに気を労し、所謂気虚、肺の虚に乗じ風邪が大腸経を冒して発症したと考えられます。
 本治法においては陽に浮いた実邪の処理がポイントとなります。
 標治法は頸肩部を瀉的に刺鍼または散鍼するのが発汗をさせるのに有効ですが、ドーゼに注意し決してやりすぎないことです。
 症例2は咳による胸痛からインフルエンザ気管支炎と思われます。仕事柄、水道工事は北側の寒い場所での作業が多いので、風寒の邪に冒されたものと考えられます。
 脈状のやや沈、実は解熱して変化したもの、陽経も虚性の邪になっています。
 鍼で風邪が治るというのを知らない患者さんもいて、「風邪を引いたので予約をキャンセルします」ということがときどきあります。鍼は風邪にも有効なのですが、なによりも風邪を引かないような体質に改善することが大事です。


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