腰 痛 【ホーム】【戻る


   ●症例 1  ●症例 2  ●症例 3  ●考察

<症例1>
 患 者、55才、男性、会社員
 初 診、3月23日
 主 訴、右腰痛
 現 病、3月21日にゴルフの練習をしていて捻った時にギクッとなったとのこと。
 望 診、170cm、55kg
 問 診、腰は曲げたときに痛む。食欲、便通、睡眠は正常。
 切 診、ナソ部は生ゴム様所見があるが、肩凝りの自覚はない。右ムノ部に反応、背腰部は全体に堅く、疲労の色がみられる。右腎兪に圧痛がある。
 脉 診、脉状はやや沈、遅。比較脉診では肝虚、胆ややあり。
 腹 診、肝の診所ざらつきあり虚、腎は冷えていて虚。
 弁 別、曲げた時の腰痛は肝木の変動。
 証決定、以上のことより肝虚証、適応は左とした。
 本治法、金1寸1番鍼で左太衝、太谿に補法、コバルト1寸1番鍼にて右光明に枯に応ずる補中の瀉法。
 標治法、腹部の中脘、天枢、関元に補鍼。ナソ部の処置。右ムノ部に補鍼。背腰部の隔兪、腎兪、右志室、大腸兪、承山にゴマ灸2〜3壮。確認の検脉をして終了。
 2回目、3月24日
 痛みは少し残っているが、動作が楽になったとのこと。本治法、標治法とも前回同様。
 3回目、3月25日
 長いこと座っていたら、朝起きたとき少し痛かったとのこと。治療は前回同様、右腎兪にステン寸3‐1番で1cmほど刺入し深瀉浅補。
 4回目、4月3日
 腰にはまだ少し疲労の色がみられるが、痛みは殆ど無いとのこと。治癒。

<症例2>
 患 者、45才、女性、主婦
 初 診、3月23日
 主 訴、腰痛
 現 病、今朝ギクッとなり、友人に連れられやっとの思いで来院。
 望 診、158cm、58kg
 問 診、腰は伸ばしたときに痛む。頸肩凝りがある。食欲、便通、睡眠は普通。
 既 往、胆石
 切 診、ナソ部はゴム粘土様所見がある。ムノ部にも筋張った所見、頸肩部に凝り所見。腰部には疲労の色がみられ、腎兪に圧痛がある。足が冷たい。
 脉 診、脉状はやや沈、虚。比較脉診では腎虚。大腸ややあり。
 腹 診、胆石の手術跡がある。腎の診所力なく虚、次いで肺、陥下していて虚。
 弁 別、伸ばした時の腰痛は腎水の変動。肩凝りは肺金の変動。
 証決定、以上のことより腎虚証、適応は右とした。
 本治法、金1寸1番鍼で右復溜、尺沢に補法、コバルト1寸1番鍼にて右偏歴に塵に応ずる補中の瀉法。
 標治法、腹部の中脘、天枢、関元に補鍼。ナソ部の処置。左右のムノ部に補鍼。頸肩背部、腰部に適宜散鍼。腎兪、志室、大腸兪、三里、承山にゴマ灸2〜3壮。確認の検脉をして終了。
 ベッドを降りるときの動作が早くなり、腰も伸びるようになり、体が軽くなったとのこと。
 2回目、3月24日
 昨晩、入浴後に少し痛みが出たが、一晩ぐっすり寝たら殆ど痛みが取れたとのこと。本治法、標治法とも前回同様。治癒。

<症例3>
 患 者、47才、男性、会社員
 初 診、3月18日
 主 訴、腰痛
 現 病、昨日仕事中にギクッとなったという。
 望 診、175cm、70kg
 問 診、腰は曲げたときに痛む。仕事柄車に乗っている時間が長いので気疲れ、肩凝り、疲労感があり、腰の疲れも感じていたという。食欲、便通、睡眠は良。
 既 往、痛風
 切 診、ナソ部はキョロ所見があり、ムノ部にも反応がある。頸肩部に少し凝り所見。腰部には疲労の色がみられ、大腸兪、右胞肓、崑崙に圧痛がある。
 脉 診、脉状はやや浮、数。比較脉診では肺肝相剋。大腸ややあり。腹診、肺の診所力なく虚、次いで脾、肝ざらつきあり虚。
 弁 別、気疲れ、肩凝りは肺金。疲労感は脾土、曲げた時の腰痛は肝木の変動。
 証決定、以上のことより肺肝相剋の証、適応は左とした。
 本治法、金1寸1番鍼で左太淵、太白、右中封に補法、コバルト1寸1番鍼にて右偏歴に枯に応ずる補中の瀉法。
 標治法、腹部の中脘、天枢、関元に補鍼。ナソ部の処置。左右のムノ部に補鍼。頸肩背部、腰部に適宜散鍼。腎兪、志室、大腸兪、三里、右胞肓、崑崙にゴマ灸2〜3壮。確認の検脉を  して終了。
 2回目、3月20日
 かなり痛みが取れたとのこと。本治法、標治法とも前回同様。大腸兪にステン寸3‐2番で1cmほど刺入、深瀉浅補。
 3回目、3月21日
 右胞肓付近に違和感がすこしある。治療は前回同様。治療後違和感も取れ全治とする。

<考察>
 症例は何れもギックリ腰という急性症で短期間に治癒したものであるが、同じギックリ腰といっても証は肝虚、腎虚、肺肝相剋とそれぞれ違う。
 症例1は仕事柄立っていることが多い、五労の立(腎)と修理工場の床はコンクリートなので冷える(寒邪)と疲労の蓄積(労倦の邪)、これにゴルフの練習中に捻った(肝)ことにより発症したものと思われる。
 症例2は主に冷えからきたのであろうと思われる。
 症例3は長時間の運転ということから気疲れ(肺)、五労の坐(脾)と疲労の蓄積(労倦の邪)から起こったものと思われる。
 治療では本治法はもとより、標治法における腰部と足への灸が効果が大きいように思われる。
 症例1で太衝、太谿を用いたのは、この方が反応及び脉が良くなるからで、2例では定則通り復溜、尺沢を、3例では太淵、太白そして反応から中封を用いた。その他にも取り扱う腰痛は慢性症をはじめ治りにくいものまで数多く、証も肺虚肝実、脾腎相剋等様々である。病症、脉証、腹証等よく検討して主証を決定しなければならない。


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