腰痛 【ホーム】【戻る


 ひとくちに腰痛といっても、時々感じる痛みから、ギックリ腰のように突然襲ってくる激痛まで様々です。
 自動車の便利さに慣れて、歩く機会がぐんと少なくなっているなど、現代は腰痛になりやすい環境にとり囲まれています。
 腰痛は、大別して次の三つが原因となって起こります。
 1 筋肉の疲労
 脊柱を正しく保つうえで大事な働きをしているのが、背、腹、腰の筋肉です。この筋肉の力が衰えると、腰に負担がかかって腰痛の原因になります。
 腰痛の中で最も多いのが、骨や筋肉に異常がなく、これといった原因が見当たらないのに、強ばる、重苦しい、突っ張るといった感じの慢性の鈍痛がつづく腰痛で、これを「腰痛症」といいます。足腰の冷えからくる腰痛もこれに入ります。
 おなじみの「ギックリ腰」も原因はいくつかありますが、腰筋の疲労から起こるものが多いのです。
 2 椎間板の故障
 腰痛は人間が立って歩きはじめたときから生まれた症状だといわれています。重い頭をのせた脊柱、とりわけ、腰椎には大きい負担がかかり腰痛の原因となります。
 その代表的なものが「椎間板ヘルニア」です。これはクッションの役割を果たしている椎間板に、外部からの力や老化によって周囲をとりまく軟骨の繊維輪に裂け目が生じ、ゼラチン状の髄核がはみだし、それが神経を刺激して痛みとなるもので、負担の大きい腰の部分に発症しやすいのです。腰から足まで痛むのが特徴で、ときに歩けないほどの痛みや、痺れを感じることもあります。
 3 骨の異常
 老化によって脊柱が変形する「変形性脊椎症」や「脊椎分離症」「脊椎すべり症」等がその例です。
 その他、内臓疾患や妊娠、出産等を原因とする腰痛もあり、これを「関連痛」といいます。

 西洋医学的な治療法はその大部分が対症療法的なものであり、鎮痛剤や消炎剤、湿布、塗り薬、牽引、ホットパック、マイクロ等があります

 次に東洋医学的な解説をします。
 腰部では経絡の流注は、主として膀胱経と督脉が循っており、腎経も貫いています。また臀部も関係あり、内方は膀胱経、外方は胆経が循っています。
 「素問」刺腰痛篇(第41)や「鍼灸重宝記」等の古典によると腰痛は基本的に腎と肝の変動によっておこるとされていますが、実際には六経の懸る所としてあらゆる臓腑経絡が関係しています。
 病症について
 重宝記には「腰は一身の大関、六経の懸る所、太陽の腰痛は、項背尻に引きせなか重し。陽明の腰痛は、左右へかへりみられず強りかなしむ。少陽の腰痛は針にて皮をさくが如し俛仰ならず。太陰の腰痛は熱して横木あるが如く遺尿す。少陰の腰痛は張弓の如く黙々として心わるし」とあります。
 腰は腎の府であり、腎の主る所ですが、病症は幾つかの経の変動による如く、腰痛も種々の経の変動によって起こります。
 太陽‐膀胱経の腰痛は、項背部から臀部にかけて重苦しく痛みます。
 陽明‐胃経、体を左右にひねることができないのが特徴。
 少陽‐胆経、鍼でチクチク刺される様な痛み方が特徴で寝返りができない。
 太陰‐脾経、腰の中に横木が入っているように重苦しく痛む。
 少陰‐腎経、腰が突っ張ってまるで弓の弦の様です。
 重宝記には肝経の腰痛は記載されていませんが、この少陰の腰痛が素問によれば肝経の腰痛となっています。そこで素問では「足の少陰、人をして腰痛せしむ、痛み脊の内廉に引く」とあります。‐腎経による腰痛は背骨の近い所で、しかも深い所が痛みます。
 病因について
 「脾に熱たたかう時は、腰痛み俛仰せられず、腹満て泄す。腎に邪熱あれば腰痛み脛しびれ舌かわく。又曰く腰は腎の府、多くは色欲を過し、腎を労傷すれば常に腰を痛ましむ。
 日軽く夜重きは?血なり、陰雨に遇い久しく坐して発るは湿なり。腰背重く走注串き痛むは痰なり。頭痛悪寒発熱するは、風寒による、腰冷るは中寒なり。」とあります。
 腰痛の原因には種々あり、腎液不足して骨髄乾燥して起こるもの、肝血虚して腰筋を栄する事ができないもの、(腰は筋の大会するところ)、下焦命門の陽気虚するもの等です。又、風寒暑湿燥火の六淫の邪が腎経を侵すものもあります。
 脾土を諸邪が侵す時は、腹張り、泄瀉痢病をなし、腰痛み動き難くなります。
 腎経に邪滞る時は脛(こむら)痺れ、腰痛して舌乾く。又、腰は腎の府、故に色欲乱に侵す時は腎気を労傷して腰痛がおきやすくなります。
 日中より夜にひどく痛むものは瘀血の欝滞によるもの。多くは婦人科疾患や産後の影響によるもので、この腰痛の特徴は痛みの部位が変化せず一定の所に留まっています。脾肝が多い。
 濡れた衣服を長く着ていたり、湿気の多い所に久しく坐していたために起こる腰痛は湿です。この湿による腰痛の特徴は膝関節その他の腫れ、倦怠感等の症状が随伴していることです。脾腎が多い。
 腰、背中重く、痛みが上下に一定しないものは痰である。痰とは疲労、多飲、大食により脾胃を傷り、これによって気鬱を生じ、気鬱が津液を滞らせておこったもの。脾肝または気鬱が強ければ肺肝。
 悪寒、発熱、頭痛を伴うものは風寒の邪に侵されたもので、所謂風邪引きによる腰痛で肺肝相剋が多い。
 腰冷えるは寒邪が陰経をおかしたものです。これらの事柄は証決定に参考になるものです。
 又、重宝記には標治法として「腎兪、膀胱、腰兪、志室、崑崙に灸し。崑崙、肩井、環跳、陰市、三里、陽輔に鍼。委中より血をとるべし。両腿水の如く冷え腰脇肋痛むは、尺沢、三陰交、合谷、陰陵泉、行間、三里、手の三里。腰痛動き難きは風市、委中、行間。腰背強痛には腰兪、委中、湧泉、小腸、膀胱兪。」とあります。


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