証の立て方 ◇

 


<証の立て方>

 経絡治療は病名治療ではなく、随証療法である。これは総ての病症を十二経の変動として捉え、そのうち、何れの経が主となってその病苦を惹起しているかを判定し、それによって治療の根本方針を打ち立てるのである。
 経絡治療において証決定とは、即ち診断である。色体表や臟腑経絡説等を考慮し、望、聞、問、切(切経、腹診、脉診)の四診によって主証を導きだし、直ちに治療へと発展する。
 このような診断即治療は東洋医学の、特に経絡治療の特色で、診察、診断から治療終了までの過程が「証法一致」の原則によって貫かれている。
 本会では臨床実践の中から「片方刺しによる相剋調整」の治療方式を開発し行っている。

 

<実際の実技の手順>

模擬患者を寝台に寝かせ、「臨床の手順」に従いながら診察、診断を進め、主証を決定する。

臨床と違い模擬患者であるので明確な症状が無い事が多い。

証に従い要穴に鍼をし、脉の変化を確認する。

治療の適否は脉状診にて判定するが、初心者でも遅数はわかるのでそれを目標とする。数が少しでも遅になれば良い。

 

<臨床の手順>

 

主訴、最も苦痛のある症状。

現病、いつ頃から、原因、部位(どの経絡)、どの様に、どんな場合に。

望診、身長、体重、動作、顔・尺部の色。

聞診、話し方、声の調子、匂い。

問診、鍼灸経験、医療・服薬の有無、食欲、便通、睡眠、月信、アレルギー、その他の症状。

既往。

切経、皮膚の状態(肌理、艶)、主訴部等。

腹診。

脉診、脉状診(浮沈遅数虚実)、比較脉診。

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証決定。

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適応側、原則として男は左、女は右。症状の片寄りのある場合は健康側。

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治療、本治法、標治法。

十二経の病症、五大病症、五臟の色体表等により病症の経絡的弁別を行い、腹診とあわせておおよその主証を見当をつけ、脉診により断を下す。
また現病と脉状等から予後及び手技、手法を決める

 

<五大病症>

咳嗽、肩凝り、気の病、皮膚病。 

消化・吸収障害、疲れやすく、身体重く、節々が痛む。

身熱し、むないきれする、五感器及び精神障害。

足冷え、のぼせ(逆気)、総て体液がもれ出て出血、元気衰弱。

心窩部につかえ、脇腹張り、目眩し、筋緩んでくよくよする。

 

<腹診について>

腹診図
 
      
<腹診図>

 大腹と小腹を比較し、各経絡の配当部位につき虚実を診る。虚は陥下、冷え、ざらつき、力なく軟弱等、実はつっぱり、硬い、按じて不快感や痛み等。

 脾…臍を中心にその下1寸、陰交より中?の上まで。

 心?の少し上より、鳩尾に至る部。

 肺…
右季肋下の日月、腹哀より臍の右側に及んでやや斜めに、左季肋部はその比較部位。

 肝…
臍の左下、側腹部、胆経の帯脈より居りょうまで。

 腎…
陰交より恥骨上際に至る部。

 

<本治法における原則的な取穴>

 

本治法は原則として定則通り行うが、病症によっては他の穴を使う場合もある。

 

肺虚証‐太淵、太白   脾虚証‐太白、太陵

腎虚証‐復溜、尺沢   肝虚証‐曲泉、陰谷