Tarumi's芝居


青年座「見よ、飛行機の高く飛べるを」

この物語の主人公には非常に共感を感じてしまった。
明治の自然文学主義の中で、溢れてきた女性解放の空気。何も知らずに不自由なく育った主人公が、そうした空気に魅力を感じて、理想を追い求めていく姿には、同じように心が躍るような気持ちになった。「知る」ことの喜び、変わっていく時代の中で生きている鼓動を感じるようなことだろうと思う。
ところが、物語はそんな理想的にはすすまずに、ストライキはつぶされ、仲間はばらばらにされ、最後には主人公までもがあきらめざるを得なくなってしまう。権力という大きな力の前には、ばらばらにされた一人一人なんて弱いものだ。「民衆が集まれば強い」とは、口で言うのは簡単であるが、現実は理想を追い求めるよりもはるかに厳しく、冷徹なものなのだ。
僕もまた、主人公と同じような甘ちゃんであった。生半可な理想主義など通用しない現実がそこにはある。むしろ、そうした現実を知った後の姿こそが、本当に知りたいドラマの成り行きである。このドラマではそこまでは描かれておらず、「果たして主人公は再び戻ってくるのか」不安になってしまった。そのまま家庭に入り、二度と同様の夢を追い求めることはないのではないか、そんな気がしてならなかったのが、前半面白かっただけに残念な舞台であった。

2000/11/30


山田太一「黄金色の夕暮れ」

TARUMIは金沢市民劇場に入会しています。この前の例会は俳優座の「黄金色の夕暮れ」というお芝居でした。作:山田太一。
これが非常に面白く、感動しました。
ストーリーは銀行の支店長を勤める主人公が、総会屋への不正融資の容疑により地検の家宅捜索を受けるというもの。新聞とかではよく見聞きする話しであっても、ちょっと僕らの日常とはかけはなれた内容。ところが、ここに出てくる登場人物は、本当にどこにでもあるような私たちと同じ家族なのです。
不正融資した支店長は本当に普通にどこにでもいるような上司であり、会社の命令に逆らえずに仕事をしている真面目で人のよいサラリーマン。息子や娘たちが、大学や職場でそれぞれの悩みをかかえながらも、家族には全く無頓着で相談もしていないところなど、どこにでもある家族の姿でした。そんな息子、娘やマイペースで生活していた妻が、夫の危機に直面して、右往左往しながらも家族の結びつきを取り戻していくところは好感が持てました。
ストーリーはそれだけでなく、地検の捜査官の娘の写真が出てきたことによりとんでもない方向へ行くのですが、それがまた楽しく、大笑いしました。
最後はちょっとせつない。思うに、私たちと同じような家族、一人一人は普通に暮らしているのに、システムの中でいつの間にか罪を犯してしまっているということなのでしょうか。私たちの暮らしているこの世の中のしくみ、その軋みが描かれているように思いました。
最後で語られていた台詞。「家族が危機に陥ったからこそ、家族の絆もこうして取り戻せたように、悪いことの後には必ずいいことがある」というメッセージが非常に心に響きました。悪い世の中であるからこそ、その中から世の中を変えていく「いいこと」が生まれてくるのだということなのですね。

2000.10.17


「きらきらひかる」面白い

いまさらのようですが、最近ドラマの「きらきらひかる」のビデオを借りてきて、見ています。面白いっす。
テレビ放映していた頃にもたまに見ていたのですが、時間帯が悪かったのか見逃すことが多かった。しかも結末も見なかった。最近レンタルビデオ屋で見つけたので、とりあえず2巻と3巻を見ました。
いやあ、このドラマよいです。「真実とは何か」というテーマがはっきりと伝わってきます。しかも登場人物が5者5様の「真実感」を持っていて、よく練られているなあと思います。監察医という職業を扱ったところも興味深く、その人が何故、どのように死んだのかということを探求していくところがヒューマンだなあと思います。たいてい番組のラスト近くに、その人が死ぬ場面が回想されて、ここで泣けてしまうのです。第3話の阪神大震災被災者のおばさんの話、6話の手紙を残して死んだ恋人の話などは最高です。
どうやらこの春にスペシャル版が放映されるという話なので、それも楽しみにしています。


2000.3.5


3年ぶり「この子たちの夏」公演

今年金沢では3年ぶりの「この子たちの夏」金沢公演があります.7月30日金曜日.

金沢では96年までの12年間,連続して上演されつづけました.今年,久々に会えるということで今から期待しています.というのも,この芝居を観ることで,自分がこの3年の間にどれだけ変わったかわかるような気がするから.
さて,今年のチラシの裏文面には,いきさつ上僕の文章を載せてもらうことになりました^^;.書きながら改めて,「この子」と自分の歩みを感じさせられました.

以下そのチラシより

 生きよう生きぬこう  子どもたちの声が会場に響く.生きることがあたり前のように過ぎていく僕らの生活に,彼らは強烈に語りかける.「生きぬく」ことの尊さを.
 85年に始まった「この子たちの夏」金沢公演は,その後12年間,連続して上演し続けられてきた.
 毎年新しい人を誘いながら,手作りで行う上演運動.それは,彼らの問いかけに何かを突き動かされた人たちが,それに応えるように結び合い,続けることで自分たちの中に何かを刻もうとしてきた取り組みだったように思う.
 そして僕もまた,毎年彼らに会うことが楽しみになっていた.
 原爆の下での悲惨な事実を綴った朗読詞ではあるが,何故かそれは絶望ではなく,希望を感じさせてくれるのだ.人間が行ったこんなにも非人間的な現実を前にしながら,それでも人間を信じつづける力を与えてくれるのだ.母が子を思う気持ちはこんなにも強く揺るぎないものなのか,そして人が生きようとする姿,生きることとはこんなにも尊いものなのかと.
 3年ぶりに今年また彼らに会える.この間に自分も人の親となり,命の素晴らしさを改めて感じる機会を得た.だから今年はいつになく彼らに会えるのが待ち遠しい.彼らの問いかけに,もう一度見つめ直してみたいのだ.
 彼らの残してくれた今を,自分たちはどんなふうに生きぬいていけるのだろうかと.

('99「この子たちの夏」を観る会)

1999.6.8


壷中天 第1回公演 Super Liveを見て

壷中天は僕の友人のつくる太鼓サークルですが、これほどの腕を持っているとは知りませんでした。はっきりいってうまいし、何より楽しい。この日の参加者は120名ほどですが、それも会場のキャパを考えて呼びかけを押さえていたためで、今度はもっと広いところでやってほしい。

そもそも僕が壷中天と知り合うきっかけになったのは、長野県伊那市の民族歌舞団「田楽座」の金沢公演だった。この田楽座も非常に面白い太鼓をたたいてくれる。自由奔放で個性が花開くといったらいいのだろうか、変にそろっていない。でも決してばらばらでもない。そこが非常によい。

そもそも人間だって、顔も性格もみんな違うんだし、そんな違いを認め合った上で寄せ集まって形成していくのが人間社会なわけで、そんな人間くささがこの田楽座の太鼓にはある。
で、その田楽座に共通するものが、この壷中天にもあるなあと思った。こうして金沢でがんばっている太鼓集団と知り合いになれて大変うれしい。これからも活躍を期待しています。

1997年11月30日


わらび座公演「春秋山伏記」について

6月に金沢文化ホールであったわらび座ミュージカル「男鹿の於仁丸」に続く舞台でしたが、感想は(- -;)。
いったいわらび座はどうなってしまったんだ。かつてのあの民舞はどこへいってしまったんだ!

僕が見たわらび座の作品は「あらぐさ」、「絆」、「二月三月物語」、「ぶなのくれた笛」、そして今回の2作品だが、どうも「ぶな」あたりからおかしくなってしまったような気がする。「あらぐさ」や「絆」で見られた躍動感や力強さ(わらび座らしいきれいすぎる嫌いはあったが)はすっかり姿を消してしまった。かつての舞台からは、日本の地に根づく大衆文化のすばらしさを守り発展させるといった強い意志、主張みたいなものが感じられたが、今のわらび座にはそういったものは感じられない。

チラシを見てもなんかふにゃふにゃで、やれヨーロッパ公演に行っただとかアジアで舞台に立っただとかそんなことばかり書いてある。舞台の宣伝にしても「衣装は美しい絵巻物」だとか(確かにすごい派手だったけどさー)、そんなことどうでもいいのに。

いちおう内容についても述べるけど、まあ「於仁丸」よりはマシだったかも。「於仁丸」はなんかバカ殿様やらバカ長者やらが出てきて、ドリフターズみたいだったもんね。それに比べれば、今回はまだストーリーとしては面白かった。でも、ただそれだけ。主張として伝わってくるものは何もなし。唄も力量落ちてたし、演技もとりたててうまいわけじゃないし。

結局のところ、僕がわらび座に求めるものとは、一線を画してしまったかなという感じ。これがわらび座でなくて、時代演劇の舞台と割り切れば、そこそこには楽しめたでしょうが、ま、高いお金を払ってまでは絶対に観ないと思った。
というわけで、ぼろぼろに書いてしまったが異論があればメールください。なお、そんなわらび座ですが、興味ある方はホームページでも。→わらび座

1997年11月7日


平和サークルむぎわらぼうし

平和サークルむぎわらぼうしは、朗読劇「この子たちの夏」上演をきっかけにできた市民サークルで、86年にできてから今年で11年になります。
「この子たちの夏」はヒロシマ・ナガサキの原爆投下のもとでの母と子の想いを朗読でつづった芝居です。85年に始まり、金沢では連続12年の上演運動を行ってきました。この芝居を通して得た平和への想いをそのままで終わらせず、私たちにできることを考えていこうと、毎月1回例会を開いています。
興味ある方はTARUMIまで。