ＳＬ写真展 （ ＩＮＤＥＸ )～アメリカ保存 ＆ 日本現役
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・山陰本線に日本海沿岸を巡る Ⅳ
３６４． 石見海岸を行く Ⅰ ：琴ヶ浜海岸 ・仁万（みま－馬路
〈０００１：№２４０８２２：仁摩（にま）の海岸 Ⅰ〉
遠〈撮影メモ：昭和６１年１２月２８日撮影〉
手前は刈り取った稲田と２軒の民家、背後に高い枯草の築堤。左から出雲市方面行きの旅客列車がやって来た。冬の日本海は雪曇りか、空との境目はどんより。
〈０００２：№２４０８３１：仁摩の海岸 Ⅱ〉
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〈０００３：№２４０８３２：仁摩の海岸 Ⅲ 〉
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この二枚は仁万駅と馬路駅との間のどこかである。
琴ヶ浜は大田市沿岸に存在する湾の中では規模の大きい砂浜である。琴ヶ浜の陸側には，海岸線と平行に標高10 m前後の砂丘が位置しており、
馬路、神子路の集落がある。湾に浮かぶ小島の風情に見とれて列車を待ち続けた。しかし、日本海特有の冬の雪空はなかなか晴れては来なかった。細い道路に沿って数軒の民家、土蔵などが並んでいる。高い枯草の築堤、右から黒い煙の貨物列車、左からは転がる様なおとなしさで各駅停車の旅客列車が通り過ぎて行った。
〈０００４：№２４０８４２：琴ヶ浜のなぎさを見下ろして〉
〈撮影メモ：昭和４６年１２月２９日撮影〉
国道を西下していて沖の風景に魅せられて立ち寄ってみた。ここは大田市仁摩町馬路琴ヶ浜の海岸に約1.４kmも続く円弧状の砂浜は、砂の上を歩くと｢キュ ュ｣と砂が泣いてくれる｢鳴き砂｣で世に知られた『琴ヶ浜』であった。年末の幻燈だったが、日本海側の冬の厳しさを表す荒波はなりをひそめていたが、冬場レとはならず雪雲に覆われていた。
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〈紀行文〉
次に訪れた山陰の海岸は岩見の国に入って島根県中部の中心である太田市街から少し西へ行った仁摩（にま）町馬路（まじ）にある｢鳴き砂｣で知られる琴ヶ浜｣であった。
そこで、先ず最初に島根県中部から西武に掛けての石見の国の特徴ある地形を眺めておこう。
先ず中國地方の脊陵である中国山脈に注目すると、出雲から岩見の国へ入る辺りには赤名峠（標高 599ｍ）の鞍部があって広島と出雲を結ぶ出雲街道（国道５４号線）が通じれいた。この道は西方にある世界遺産に登録された石見銀山との要路でもあった。その２㎞西南の稜線上には女亀山（標高 ８３０ｍ）があって、その山陰側を源流とする延長８い㎞の神戸川（かんどがわ）が、三瓶山の東斜面の湧水を合せて出雲平野を流れ下り日本海の大社湾に注いでいた。この女亀山からにしへの脊陵は次第に標高が低くなって、｢江の川関門（標高 約４００～６００ｍ）と呼ばれる江の川が中国山脈を横断する大先行谷の区間となり、ここまでが島根県中部と呼ばれる地域である。続いて西へ進んで島根県西部に入ると、再び中国山脈の脊陵は浜田市の阿佐山(標高 1218m)から標高 １０００ｍ前後の山々を連ねて大佐山(おおさやま、標高 1069m)を経て益田市の恐羅漢山 (おそらかんざん、標高 1346m)で石見の西端となる。
少し話を前に戻して、島根県中部山岳地形の特徴である火山群れについて触れたい。この中国山脈の脊陵の線の北側には並行するように大山火山帯（白山火山帯とも云う）が走っていて、東から出雲と石見の境を接する辺りに三瓶山（さんぺさん、標高 1126m）で総称される火山群があり、少し西に大江高山（おおえたかやま、標高 808m）を主峰とする火山群の山々が中國山脈から独立した山々として東西に連なっている。三瓶山は約5000年前に出来た中国地方で最も若い火山であり、後者は200万～90万年前に活動した火山であると云う。それに加えて、島根県中部から西部（太田市から浜田市）に掛けての中国山脈の脊陵の北斜面の浸食面に南北に標高 300～500mの石見高原が広がっていることである。この地域では神戸川、江の川、高津川やその多くの支流によって深く開析され段丘地形や山間地形が見られ、明瞭な平坦地は少ない。これらの成因は火山噴出物（火山灰、軽石、スコリア（岩滓（がんさい）、暗色多孔質の塊状の岩）、火山礫など）の堆積とされている。特に三瓶山から大江高山一帯では平滑なスカイラインを海岸から望むことができた。
この岩見地方を縦断する山陰本線は海岸近くまで迫っている岩見高原の地形の複雑さを避けてリアス式の日本海の波打ち際を見下ろすような高さの位置を維持するように築堤を築き、海へ突き出した尾根をトンネルや切り通しを設けて走り抜けていた。
さて西へ向かった山陰本線の下り列車は出雲市から約３３㎞ほど西の日本海沿岸に面した太田市駅へと滑り込んだ。
ここは2007年（平成19年）に
ユネスコの世界遺産に登録された岩見銀山への玄関口として世の中に知られるようになった。あの三瓶山のすぐ西にあって大江高山火山群に属する仙ノ山（標高 538m）は大きな火山砕屑丘であって、銀および銅の鉱床を埋蔵していたから、これを採掘して反映したのが石見銀山なのてあった。
さて太田市駅を出て市街を抜けると両岸に避溢橋６ｍを従えた全長 ３８ｍの静間川鉄橋を渡った。こレから西の大田市の沿岸は，標高50～70 m前後の丘陵地が直接日本海に接し、複雑に入り組んだ岩石海岸が連続する、いわゆるリアス式海岸となっている。やがて五十猛駅（いそたけえき）の面した浜辺が尽きると、その岬の先は仁摩（にま）海岸となり、古代の石見の国仁摩郡のあったところで古い街並みの中に仁万駅があった。不思議なことに、地名と駅名が同じ読みの｢にま｣であるのに、漢字で書くときには地名は｢仁摩｣、駅名は｢仁万｣が用いられていたのであった。
この仁万駅から西へ約４００ｍほどの地点に二級河川の全長 ７㎞の潮川が仁摩海岸へ流れ込んでいて、その川沿いに世界最大の一年計砂時計を展示する｢仁摩サンド ミュージアム｣が設けられていて、その河口から西へ約１㎞の海岸には巨大な化石である珪化木と旧火道（火山のマグマの通り路跡）が見られる岩場がある。ここから岬を越えて西へ約２.2kmほどで｢鳴き砂の琴ケ浜｣となるはずです。
さて、仁万駅に戻って下り列車を待って乗り込む。発射して直ぐに全長４０ｍの仁摩川鉄橋で潮川の谷を渡って、やがて右手に海食崖に囲まれた岬が見エて来ると馬路（まじ）駅に付いた。ここから海へ向かって５分も坂を下れば琴ケ浜である。国道９号線からは馬路地内に入った所で右に入り、山陰本線の築堤の下を赤煉瓦のトンネルをくぐって海岸の左手に円弧を描く琴ケ浜がながめられるであろう。
これが日本海へ西北西方向に開口した円弧状の長さ 1.38 kmで、幅約30～50mの砂浜なのである。
このワンの地形を詳しく云えば、湾口 ２．５km、奥行き長 1.2kmで、南北両端の岬は，最大比高約60mの切り立った海食崖で北東方向からの風波を防ぐ形態となっている。一方、西北西方向へは大きく湾が開いており、冬季の西北西の季節風やそれによる風波が直接入り込む形状となっているのが特徴である。
このような条件が揃ったうえで、島根県中部の最大の川である江の川が吐き出す土砂が北流する津島暖流にのって運ばれてきて湾内の浜に打ち上げられたという。そして冬の荒波が砂浜を洗って清浄さをたもっているからこそ｢鳴き砂｣現象｣が維持されているのであった。この砂は丸みをもった石英の砂粒であることが必須であるようだ。
琴ヶ浜の陸側には，海岸線と平行に標高10 m前後の砂丘が位置しており、馬路、神子路の集落がある。この浜辺の背後には標高 10～80 mの開析された古期扇状地を経て，馬路高山（
まじたかやま、標高 499m）があり、この山は大江高山火山群の一つであって小規模なドーム状の形状をしているのが眺められた。
この砂浜は『日本の音風景百選』と『日本の渚（なぎさ）百選』に１９９６年に選ばている。音は｢鳴き砂｣であり、夜のイカ釣り船の漁火（いざりび）の見エル｢なぎさ｣でもあった。
この鳴り砂とは、丸味を帯びた石英の砂粒を多く含まれている砂浜だけに起きる現象であると云う。
鳴り砂海岸は日本中に数ヶ所あるといわれていますが、浜が汚れていない事や砂粒が小さく揃っている事など稀な条件の下、浜の全域にわたってよく鳴る砂浜として貴重な存在です。
浜のなとなっている平家の琴姫伝説の地です。
長門壇ノ浦の源平合戦で平家が敗れ去った寿永4年(1185年)春のこと、激浪に洗われて痛々しい姿になった1艘の小舟が馬路の浦へ漂着しました。その中には、みめうるわしい姫が、気を失って倒れていました。その優しい腕には、しっかりと琴が抱かれていました。
姫は村人達の手厚い介護により、ようやく元気になり、若き命は助かりました。姫は平家の一門でありました。哀れな平家の最期に寄るところ無き身を、情け厚いこの馬路に留めることにした。それから、せめて村人たちへのお礼にと、日毎夜毎、姫が奏でる琴の音が、浜一帯にやさしく、時には悲しく、白浜に響き渡りました。奏でる琴の音色は村人たちをはげまし、なぐさめたといいます。村人たちは姫を心から慕いうやまうようになりました。しかし姫は、恐ろしかった戦いを思い、また都の生活をしのび、いまの運命のはかなさを嘆かずにはいられませんでした。そうして1年、春がめぐってきたある日のこと。漁から帰った漁師たちは、いつも響く琴の音が聞こえないことに気付きました。これをおかしく思い姫の住家を訪ねてみると、美しい姫は舟の中で琴を抱いて倒れていました。ちょうど、この浜に流れ着いたときと同じ姿で、すでに息絶えていたのです。村人たちは、姿美しく心優しかった姫の死をいたみ悲しみ、浜一帯が見下ろされる丘に、琴と一緒に葬りました。翌朝、漁に出ようとした漁師たちが浜を歩くと、琴を奏でるような美しい音が鳴りました。村人たちは、きっと姫がこの浜に心を残していったに違いないと言い合い、この浜を琴ヶ浜と呼ぶようになりました。これがここに伝わる地名の伝説です。
『山陰本線に日本海沿岸を巡る Ⅰ ～ⅵ 』シリーズのリンク：
０７７． 冬の漁村と余部鉄橋・山陰本線／鎧-餘部
３６２． 斐伊川 （ ひいがわ）旅情 ･ 直江-出雲市
－神話･｢やまたのおろち｣の舞台-
３６３． 出雲の海岸を行く、小田・田儀海岸・小田－田儀－波根
１４１． 岩見の海岸を行く Ⅱ：小春日和の三隅海岸・折井－三保三隅
161. 惣郷川橋梁のある長門路へ ・須佐－宇田郷