ＳＬ写真展 （ ＩＮＤＥＸ )～アメリカ保存 ＆ 日本現役
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・八高線の北部を訪ねて（高麗川以北）
３４６． 外秩父山地を行く ⅰ ・越生～小川町
〈０００１：№０８０７６５、学頭沼を見下ろして、越生－明覚間〉
〈０００２：№０８０８１２、明覚への切り通しを登る、越生－明覚〉
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普通なら短いトンネルを掘った方が楽ではないかと思うのだが、深い切り通しを設けて尾根を越えていた。
今朝は何故かＤ５１ ５６６号がやって来たのには驚いた。
〈０００３：№０９０６６５：寄居へ急ぐ“トンボ”重連回想、小川町→明覚〈
〈０００４：№０９０６６３、朝の陽光を浴びる６２７７レ、小川町→明覚〉
〈０００５：№１３８５１：槻川鉄橋のある風景・小川町－明覚〉
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〈紀行文〉
ここでは関東平野のはずれ、埼玉県西部に広がる｢比企（ひき）｣と呼ばれる地域を縦断して走る八高線沿線を探訪した。ここを駅名で云えば、東部鉄道の越生セントの接続駅でもある越生（おごせ）から小川町を経て秩父鉄道、東武鉄道との接点である寄居（よりい）との間に当たっている。この聞きなれない“比企”の地名は平安時代の公文書であ『延喜式』に武蔵国比企郡として初登場すており、関東での文化の先進地域であったようだ。このひき”は｢日置｣が語源とする説が有力である。この古墳時代に当地で栄えた日置部（ひおきべ）は太陽祭祀を司り、暦に精通した部族で、武力集団でありと同時に測量・製鉄などの新しい技法を身につけた技術集団でもあって、都から関東へ派遣されたと推測されている。その存在は大谷瓦窯跡（東松山市）の近くで日置部一族の墓と覚しき古墳群が発見されているからである。
さて、都心の池袋から関東平野の西へ向かう東武鉄道東上線に乗って川越を過ぎて、越生線を分岐する坂戸駅に近ずいいた辺りは関東平野の西に広がる荒川低地である。ここから北西を眺めると、やまなし、永野、埼玉の県境をなす秩父山地の最も東側に連なる外秩父山地、中でも“比企三山”の呼ばれる「笠山（８４２ｍ）」、「堂平山（どうだいらさん、８７５ｍ）」、「大霧山（７６６ｍ）」などの標高千m以下の山々がそびえていつ姿が見えた。その山々の前衛のように東西に沿うように横たわる標高１００m前後の緩やかな丘陵が比企丘陵である。近年は、この丘陵を大きく二分して次のように呼ぶようになった。それは『県立比企丘陵自然公園』が制定されて、その大部分を占める岩殿丘陵を比企南丘陵と呼ぶようになったからである。ここには最高点の物見山（標高 135mがあり、南は越辺川（おっぺがわ）、北は都幾川であり、駅で云えば越生-明覚間である。
一方は比企北丘陵で、標高は100m前後で二ノ宮山（標高132m）、大立山（標高113m）、高根山（標高105m）などがある。この地域はさらに小川町を流れている槻川を境にして二つに分けらレていて、南を南比企丘陵（駅で云えば明覚-小川町）、そして北は北比企丘陵（駅で云えは小川町～寄居）と云うことになる。この北比企丘陵はへの訪問は次のサイトで紹介することにした。この越生（おごせ）から小川町を経て寄居に至る山間を縫うように走る八高線の線路が敷かれているルートにはトンネルは一つもないが、切り通しと鉄橋が交互に現れる起伏の多い路線となっている。
秩父盆地の東側に連なる外秩父山地から東の関東平野に向かって多くの尾根が分岐しており、その同志の間には谷が刻まれ、尾根と谷が交互に並んでいた。所が越生から寄居までの間では関東平野の低地に至るまでには比企丘陵が横たわっていた。その八高線は外秩父山地の山麓のすそを等高線に沿うようにしてルートを選んでいたのであった。
それで、外秩父山地を源とするいくつもの川は東流し、それほど高くない比企丘陵を渓谷を刻んで横断して関東平野に出て、入間川から荒川に注ぐことになっていた。八高線はこの二つの山地の間を通っている八王子構造線と云う地質学手日に有名な断層の上を南北に通り抜けているのであった。
そこで、高麗川を出て、越生から明覚、小川町に至る沿線の風物を描いておこう。まず大宮へ通じている川越線が分岐する高麗川駅を北へ向かい、やがて高麗川鉄橋を渡って20‰の葛貫峠(つづらぬきとうげ)の切通しを抜け小さな谷を築堤で通過した。そして次の谷では上流に鎌北湖がある大谷木川鉄橋を越えると毛呂駅となる。ここを出て、やがて左へカーブすると右側から東武越生線が寄り添って来ると複線のようになって毛呂川橋梁を渡り、低い丘陵を抜ければ越辺川（おっぺがわ）の谷口集落である越生（おごせ）の町の中心にある越生駅となる。この越生の西側にはかっては修験の｢神の倉山｣と呼ばれていた大高取山（標高 376ｍ）が迫っていた。この地が外秩父山地を挟んで秩父と尾根道越でつながっていたことに由来した地名であると云う。ここは鎌倉から北関東の上野（こうずけ、とちぎけん）とを結ぶ鎌倉街道が通じており、秩父への街道との交通の要所を占めていて、中世から越生氏の拠点として城が設けられていたちでもあった。江戸末期から明治大正では生糸街道として栄えていたのであった。ここを流れ下る越辺川の上流には黒山三滝の名称がちがあり、それに梅園でも名高い。近年、｢ヤマブキの里歴史公園｣が整備され、太田道灌の故事がクローズアップされている。
それは、『鷹狩りの途中、にわか雨に遭った若き日の太田道灌が、蓑を借りに貧しい民家を訪ねた際に、出てきた少女は何も言わずに一枝の山吹を差し出した。しかし、道灌は少女の謎掛けが解けず、後に“七重八重花は咲けども山吹の実の一つだに無きぞかなしき”という古歌を教えられ、「蓑がない」悲しさを山吹に託した少女の想いを知り、また歌道に疎い自分を恥じた道灌は歌道を志し、文武両道の名将になった。』とのいつわである。
さて、越生を発車すると越辺川を長さ約５３mの下路 プレートガーダー５連の鉄橋で渡り、やがて住宅地が途切れると山あいの田園地帯を進み、｢学頭沼（がくとうぬま｣と呼ばれる灌漑用の｢ため池｣を見下ろしながら、深い切り通しへ向かって登って行く。やがて、谷が開けて来ると都幾川（ときがわ）の谷間に設けられた明覚（みょうかく）駅となった。この仏教の匂いのする駅名は近くにあった“妙覚寺”が起源のようである。それは明治の初めに近隣の村村々が合わさって明覚村を作ったことに由来していると云うのだった。
私は五万分の一地形図によって、この池を見つけて、何回も早暁に訪れて陽光が水面を輝かせるミーンを狙ったが成功しなかった。それに興味をそそられたのが“学頭”と云う地名であった。地誌によると、江戸時代の初期の頃、隣の谷の都幾川の上流の山中にある｢外秩父の慈光寺｣の住食の性尊和尚（おしょう）が江戸に赴く途次に、村人たちから古池の修理の嘆願を受け、それを幕府に取り次いでやった。そのお蔭で修理が順調に完成したのであった。その頃の性尊和尚は天台宗の学頭職（教理教学の責任者）であったことにちなんで、このため池を『学頭沼』と呼ぶようになったと云うのであった。
調べてみると、中世の頃の慈光寺は仏教のみならず、この地方の政治、経済、文化の中心として栄えた大寺院であったと云うことが判った。この寺の始まりは、７世紀に奈良の興福寺の僧・慈訓が千手観音堂を建てて修験（しゅげん）の道場を開いたとある。その後の宝亀元年（770年）になると唐から弐本へ渡来した鑑真和上（がんじんわじょう）の弟子で、民衆から菩薩と崇められた釈道忠が釈迦如来像を安置した慈光寺を創建し、一山学生修学の大講堂を開いた。やがて、延暦二年（７８３年）には天台密教の教旨が伝わり、勅願寺に選ばれ天台宗別院となって、関東一円の中心寺となり、天台密教の教法を修学する学徒の修行道場となった。それに千手観音信仰の霊場でもあった。この頃が寺の全盛じだいであって、山中には７５の僧坊が立ち並ぶと云う関東屈指の大寺院として栄えた。続く戦国時代になると、寺でも僧兵を傭し、近隣の城主との抗争に明け暮れるようになった。その中でも
康正二年（１４５６年）に太田道灌の軍勢によって焼き討ちの憂き目に遭遇し衰運を迎えた。時代が下って関東の支配に乗り出した徳川家康から天正19年(1591年)に寺領100石の朱印状を与えられたり、続く家光が上野に寛永寺を創建すると、慈光寺をその末寺とするなどの厚遇を受けていたと云う。今は山中に多くの礎石が散在するのを見受けることができるだけで、残るのは慈光坂の丈余りの板碑群、山門、十一面千手千眼観世音菩薩像を本尊とする観音堂、霊山院（臨済禅路場）などが映画の名残を留めている。それに、
｢法華経一品経（国宝、三大装飾経のひとつ）｣
｢大般若経典６００巻（貞観１３年：８７１年写経、重要文化財）
｢般若心経 33巻（慈光寺経、重要文化財）
などが所蔵されている。何と云っても注目されるのは、ここから伝えられた伝統的技術である｢都幾川村の建具｣・｢小川町の手すき和紙｣・、そして｢狭山茶｢｣などの地場産業が今なおさかんであることであった。なかんずく、小川和紙は平安の古に時代に始まり江戸期に産業として栄、今やユネスコの定める“世界遺産”となって伝統の
の主峰により“細川和紙”が造られつづけているのである。
さて、話を鉄道へ戻そう。この都幾川町の中心駅である明覚駅から次の小川町駅までは 8㎞もの最長駅間が存在していた。ここは外秩父の主脈から分岐した尾根が都幾川と、その支流の槻川との流域を分ける分水嶺となっている山間区間を走り抜けることになる。
この明覚を発車後は都幾川を長さ約７８ｍのプレートガーダー ６連の鉄橋で渡り、右手に町並みを遠望しながら左へカーブし、再び山あいの谷間を進んで行く。しばらくは雀川に沿って走りますが、やがて完全な山間部へと入り、峠を越えて小川町へと変わります。その後は谷間を北上しますが、やがて周囲が開けて市街地へと入り、プレートガーダー ３連の長さ 約４０ｍの槻川鉄橋を渡って築堤高架を進み左へカーブすると東武東上線をオーバーパスした後に並走し、小川町駅に到着する。この駅は東武鉄道東上線トの共同えきであった。この小川町の市街地は外秩父山地に囲まれた小川盆地にあって、そこを槻川の清流が流れ下っていて、その流れを生かした｢手すき和紙：小川和紙（細川紙）｣の生産地として名高い。小川町では主に秩父や群馬産の｢楮（こうぞ）｣を原料として、繊維が長く強度に優れる「細川紙」が伝統的につくられている。特に太平洋戦争末期、風船爆弾の製造に当たっては、この和紙の特性が注目されて使われたことでも有名である。
この槻川の水源は、1962年に東京天文台の堂平観測所が山頂に設けられていた堂平山である。この山の名前は先に述べた古寺の慈光院の奥の院が山頂にあったことに由来していると云う。川は外秩父山地に平行して北流するが、やがて流れを東へ、そして南から北へ曲流しながら小川盆地へ向かってテいる。そして兜川と合流し、小川盆地を抜けて、比企丘陵の横断に掛かる。そしてかわの流れは次第に狭窄な地形となり谷底平野を大きく蛇行しながら武蔵嵐山と懐けられた峡谷を抜けて２３㎞の行程を都幾川に注いで終わっていた。
この沿線は八高線を通し運行するＣ５８牽引の貨物列車の他に、秩父鉄道から寄居駅で引きついだ石灰石専用列車を高麗川へ運ぶ９６００牽引の列車が設定されていた。高麗川からの往路は貨物列車の最後尾に逆向きで連結して回想されるのが常であった。この９６は大宮区所属のカマで川越線と共同運用されていたのであろう。
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･｢八高線の北部を訪ねて（高麗川以北）｣シリーズへのリンク
４０４． ｢新しき村｣から・八高線／毛呂－高麗川
３４７． 外秩父山ろくを行く Ⅱ ・八高線/小川町～寄居
３０６． 上武鉄道（元 日本ニッケル鉄道）の古典ＳＬ･八高線/丹荘駅
186. 春の 神流川 鉄橋・八高線／小川～群馬藤岡