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    ・シルバートン紀行・コロラド州

075.  処女列車のシルバートン到着風景 シルバートンの街


〈0001:〉
シルバートン|到着の処女列

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〈紀行文〉
 今日は観光鉄道としての“シルバートン・トレィン”の処女列車が12両の木造のボギー車を重連のナロー・ミカドが牽引して、アニマス渓谷を3時間掛けて走行,正午前に鉱石の集積地として栄えたシルバートンに到着したのだった。この列車に乗るため予約を取ることの難しさは、これまた有名な話で、この幸運を掴んだ人々は三々五々町に散って行った。

この列車は街の外れにある昔の駅舎の有る場所には停まらずに、乗客の便を考えて町のメインストリートから僅か2ブロックほどの所まで直角に二本の側線を道路との併用軌道のように延長して、丁度 街の中心に頭を突っ込んだ形に列車は到着したのであった。
ここに二列車が並ぶことになるのであろうか。この人々の降りる情景を木造りの廊下のあるレストランとみやげもの屋の店先から撮った写真である。この大きな廊下を覆うほどの長い軒先は激しい驟雨やヒョウやあられを避けるためのものであろうか。この日は、高原にふさわしくめまぐるしく変わる転向に写真撮影は悩まされ続けた。私もSLの撮影を一休みして街に出かけた。
1万フィートを超える山々に囲まれたシルバートンの街は夏の観光シーズンは毎日のナローゲージのシルバートン・トレィンで賑わうが、その他にも鉱業の中心地としても活動している。そして、広い砂利道のメインストリートを挟んで、緑青の鮮やかな銅葺き屋根の3階建て、石造りのホテル、一泊300ドルとか、メキシカン・レストラン、鉱石分析屋、そして、威厳を装った裁判所、それに町役場やSan Juan郡歴史s博物館、それに牢獄などが古色蒼然として立ち並んでいる。それらに混じって派手な看板を掲げた「みやげもの屋」も多く店を開いていた。そのホテルの一回には飴(あめ)色に輝く樫(かし)の木の分厚いカウンターのある酒場がオープンしており、私も仲に入って、コロラド・ビールのジョッキで喉を潤してから、人の群がっているメキシカン・レストランで何とか春巻き風の昼飯にあり付いた。
そして近くの丘に登ってみると、白く背の高いキリスト像がてを大きく広げて、町を見下ろし、人々に祝福を与えているのが印象的であった。その丘の上から街を一望してみたが、まるで鉄道模型のレイアウトを眺めているような錯覚を覚えるようなナローゲージの廃線がハッキリとみえて、出発が間近いのであろうか、盛んに黒煙を上げているSLの姿も望遠出来た。山裾を流れるアニマス河と市街との間の広い荒れ地には、その昔には、ナローゲージの貨物ヤードの側線が何本も敷かれてあって、鉱石の麻袋が山のようにあちこちに積まれていたのではなかろうか。
実は、この「シルバートン・トレィン紀行」を投稿した「レイル」誌の編集をやられ、車掌役を任じられていた、今は亡き大先輩の黒いわ保美さんが編集後記のカレチでは、「ナローの列車の一切の動静が手に取るように判るような風景だと」書かれていたのを思い出すのである。
また、シルバートンへの鉄道が開通する以前から、山奥の鉱山から駅馬車や駄馬の背に乗せられてシルバートンをめざして集められた鉱石は、シルバートンの精錬所で処理されて純度を高められてから再びデンバーへと駅馬車で運ばれて行ったのであった。その後にデュラランゴがナローゲージの十字炉となって各方面からの鉱石が容易に集められるようになると、D&RGWの後押しもあって、シルバートンの精錬所をデュランゴに移すと同時に新鋭化して、色々な成分に適した精錬施設をもった大精錬所が、ナローゲージの貨物ヤードに隣接して設立されたと云うのであった。私にはシルバートンの古い精錬所の痕跡をみる機会には恵まれなかった。
そして、列車の所へ戻って見ると、転校をすませて先頭に納まっているSLは黒煙を上げて発射準備完了と云う構えであった。そこで3,000mを超すサン・ファンの山々を背景に写真を撮ろうとして、じっと後ろの方で見物人の途切れるのを待ち続けたのだが。やがて、太いパイプオルガンのような汽笛が山々にこだまし,帰途の時間が迫って来たことを知らせるのであった。私は一足先に峠のどこかで帰途につく列車とシルバートンの盆地全体を収める場所を探しに出発した。

撮影:1982年
発:「塗装技術誌表紙・1992年3月号
ホンダ文化展(狭山)入選(1992)

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・シルバートン紀行・1〜7(コロラド州)
094. デュランゴ&シルバートン・ナローゲージ鉄道の開幕
078. ナローゲージのキャピトル“デュランゴ”・コロラド州
081. コロラドの宝石箱 シルバートンへ登る処女列車
096. シルバートンを目指した人々の歴史・コロラド州
026. デンバー&リオグランデ ウエスタン鉄道・シルバートン駅
079. さらば、しるばーとん、永遠なれ・コロラド州