近年のCDは粗製濫造で音質がゴミ同然のため買わなくなったが十数年前のCDにはそこそこ聴ける音質の物がある。
”CDの製造品質”はレコード会社の領域で消費者にはどうにもならないが仮に最高品質のCDでも”再生機器”や”再生環境”に問題があるとその分再生音質が悪化する。
現実には”再生機器”や”再生環境”にも問題点がありCDの音の再現は結構難しい。
手の出しようが無いCDの製造品質は置いといて”再生機器”と”再生環境”に焦点を絞りCD再生音をなるべく元の音に近づける方法を紹介。
(2023/7 NO.110掲載)
ここでの再生環境とはコンセント等の電源周りを指し、いわゆる使いこなしに当たる部分。
1-1「アース」
重要な点はアースが有るか無いかです。
国内の家庭用AC100Vコンセントは二極タイプが主流で昔からの家屋はアースが有りません。
コンセントが三極タイプの場合やコンセントとは別に保安用接地端子(アース)が設けて有る場合はアースが使えます。
[写真1]
保安用接地端子付コンセントの例
保安用接地端子はオーディオ製品のアース線接続先としても使えます。
オーディオでは値段に関係無くどの様な製品でもアースを使える事が重要でアースが使えないとそれだけで再生機器の音質がだいぶ悪化します。
一般的に国内向け家庭用オーディオ製品はアース線を繋ぐアース端子が無いため音質の悪化した音楽を良い音と勘違いして聴いている事になります。
音の悪さに気づいても価格等を理由に仕方無いと諦めている場合も有るかと思います。
この件についてメーカーは昔から知らんぷりで説明はありません。
アースの使い方は「再生機器」の項目で説明します。
電源タップ(マルチタップ)の差込み口は左右共に同じ長さの物も多いため、使用する前に差込プラグと本体の差込み口の導通をテスターで確認して印を付けると間違いを防げます。
1-3「コンセントと電源タップ(マルチタップ)」
オーディオ製品の音が良いのは電源コードの差込プラグをコンセントに直接挿した時です。
電源タップを使用すると音質が少し悪化します。
電源タップは便利ですが音質を悪くする要因な事を忘れずに。
尚、電源タップも汎用やオーディオ用などの種類によって変化の度合いが異なります。
1-4「電磁波」
他の家電製品から出る電磁波もオーディオ製品の再生音質を悪化させます。
電磁波は目に見えないため厄介ですが電波を出す物や放電を利用した空気清浄機等には注意が必要で影響が大きい場合は電源を切ります。
盲点はスイッチング式ACアダプタで他の製品の物が近くにあると音がこもるため影響の大きい物は音楽を聴く間は抜いて置きます。
(※該当製品のACアダプタを抜き差しして音の変化を調べる。)
[写真2]
YAMAHA TSX-140
mp3再生用USB端子付で電源はACアダプタのため直流安定化電源も使用可能。
(このモデルの型としては少し古い)
スピーカー部の上に載せているのは防振ゴムとオーディオテクニカのディスクスタビライザーで箱鳴りを抑えるための重し。
(※防振ゴムは洗濯機等に使う汎用の物。)
一体型の場合は重しで過度な箱鳴りを抑える事が音質改善の大前提。
重しの効果は大きく、比較的小型のオーディオ用単体スピーカーの場合は揺れが抑えられて音がより明瞭に成る。
TSX-140は再生機器が抱える問題点が分かりやすく改善策を行える機器構成になっている事からこれを例に説明する。
通常の再生音は音場が前方に迫り出すように広がり音像もぼやけているのが特徴。
音像のぼやけは音の悪化による物でこの様な特徴はメーカーや機種を問わずどれも似た状況と云っても良い。
これは本体にアースが無いためでアースを付ければ音を良い方向に変えられるがアース端子の無い物に無闇に付けるのは逆効果になる。
何処かにアース端子の代わりになる物が無いか探した所、TSX-140の様にUSB端子付の製品ではUSB端子がアース端子の代わりになる事が判明。
アースの役目をするのはシールドでこれにアース線を繋ぐと奥行きのある再生音場に変わり音像にも明瞭さが出てきてCDが持つ音に近づく。
(※シールドが内部回路のアースラインに繋がっているためと思われる。)
ただ、クリップ等で挟むやり方ではアース接続が不安定で安定的に接続する方法が課題となった。
安定的なアース接続として見いだしたのが写真のアース端子付きUSB外付けハードディスク。
内蔵電源型ハードディスクで安全のために筐体にアース端子が付いている。 (※製品としては古い物。)
USB-Bレセプタクルのシールドと筐体のアース端子が繋がっているため、USBケーブル経由で安定したアース接続が行える。
使い方もこのハードディスクとTSX-140のUSB端子をUSBケーブルで接続するだけで済む。
ハードディスクの電源は”OFF”のままで電源コードの接続もしない。
(※あくまでシールドを利用したアース接続として使う。)
この方法はUSB端子付のオーディオ製品ならどれでも有効でAC100Vの内蔵電源型も同じです。
特別な加工などをしないため何時でも元に戻せるのがこの方法の利点。
[写真5]
USBケーブルでアース接続したTSX-140
USB端子に接続したUSBケーブルはアース線の役割でHDH-SUE400のアース線に繋がっている。
希にUSBケーブルのシールド線が断線している場合があるので事前にテスターでシールドの導通確認をする。
※現在の外付けハードディスク製品はアース端子付きの物が見あたらず新規入手は困難な状況。
現状では既に該当製品を所有している場合のみ有効です。
HDH-SUE400の様なアース端子付きのUSB外付けハードディスクが無い場合は、USB-Bのレセプタクルとターミナルを使いUSB端子用のアース接続部品を作る方法がある。
レセプタクルとターミナルを半田付けするだけの簡単作業で作れ費用もだいぶ安く済む。
基板取付用USB-Bレセプタクル(メス)とターミナル(黒)を半田付けした物でアース線とUSBケーブルのシールドを接続する部品。
これが有ればアース端子付きのUSB外付けハードディスクを用意する必要はない。通販(※秋月電子通商)で入手した基板取付用USB-Bレセプタクル(メス)とターミナル(黒)
レセプタクルの外側を覆っている金属がシールド。
ターミナルの下側は外してネジの部分を半田付けする。
半田付けの際には上側の留めネジ部分を一旦外し、ネジ溝を無水エタノールで拭いてからネジ単体で予備半田付けを行う。
ターミナルのネジ部分はレセプタクルに比べて熱容量が大きく半田が付きにくいためで予備半田付けした半田を溶かす形でレセプタクルに付ける。
予備半田付けの際にネジがかなり熱くなるためピンセットやラジオペンチ等で挟み作業する。
レセプタクルもターミナルを付ける金属部分を予備半田付けする。
半田付けで付いたフラックスはティシューに染みこませた無水エタノールで拭けば取れる。
保安用接地端子に接続したアース線のもう片方をターミナルの留めネジ部分に取付けUSBレセプタクルにUSBケーブルを接続する。
反対側のUSB-A端子をオーディオ製品のUSB端子に接続すればアース接続の完了。
電極部分は剥き出しながらアースは電圧0Vのため触れても大丈夫です。
剥き出しでは埃が付き易く予期せぬトラブルを避けるためにもプラスチック容器等に入れて使用すると良い。
綿棒の空容器を利用した物で柔らかめのPP製容器のためカッターナイフで穴開け加工が出来る。
蓋にアース線とUSB-B端子を通せる穴を開けて、中にアース接続したアース接続部品を入れる。
電気絶縁性があり蓋をすると比較的丈夫で穴の部分をテープで塞げば中に埃が入るのを防げる。
直流安定化電源を使う場合は電源にアースを接続すれば済むのでアースとしては簡単です。
AC100V内蔵電源型のオーディオ製品は直流安定化電源が使えないため使用者側で動作電圧ずれを調整する手段はありません。
-----