「HydroFoilSailBoadχ」の開発


3.模型実験

 基本設計と並行して水槽にて模型による曳航実験を行った。この実験はどちらかというと、机上であれこれ検討しているがそもそも本当に翼走できるものなのだろうかという不安を拭い去りたいがために行った。

3.1 模型作成

 模型では翼走を確認したいためウィンドサーフィンのボードに相当する部分は作成せず、骨組みと水中翼のみの簡素な構造となっている。また曳航により実験するためセールもない。 基本設計と並行して作成したことから設計内容と模型が合っていない部分がある。 模型の諸元と写真を以下に示す。

  ・全長30p、全幅11p(水中翼を含めると20p)
  ・重量35g
  ・水中翼面積 9p×2p=18cu×3枚。
  ・制御機構  主翼有り、尾翼は迎角5°固定
  ・荷重配分  主翼15g×2枚=30g 尾翼5g
  ・材質    木


        模型全景


         主翼

3.2 実験

 実験装置は、曳航する力つまり推進力はおもりの落下を利用した。当初手で引いたが一定した力で引くことができずおもりによる方法とした。以下に実験装置の概略を示す。


       実験装置概略図

(1)単純曳航

  船首方向に曳航した。
  結果は良好で、スタートするとすぐに離水し安定した翼走状態になった。


浮上高も一定で極めて安定した翼走を見せる。

(2)荷重の偏り

 片舷側におもり(大き目の洗濯バサミを2つ)を載せ重心が片側に偏った場合を想定した。
 静止時は完全に横倒しになっているので強制的に水平な状態にしてスタートさせた。スタートするとおもりにより重量が増加した分若干離水に時間が掛かったが翼走するとおもりのないときと同じように安定していた。


静止時はおもりの重さで完全に横倒しになっている。


スタート時の翼走前はおもりの重さで傾いている。


浮上後は安定した翼走をしているが、おもりが載る左舷の滑走板が右舷より上に上がっている様子がわかる。これにより水中翼の迎角が大きくなり揚力が増しておもりの重量と釣り合っており、正に自動制御機構が良好に機能している。

(3)斜め曳航

 実際の帆走時を想定して斜め45°前方の水平方向に曳航した。なお、ウィンドサーフィンの場合、セールが風を受けて風下側に倒そうとする力はセーラーの体重で相殺されるのでその合力はボードを水平方向に押す力となる。
 スタート時横方向の力が大きいとうまく離水できないので強制的に翼走状態でスタートさせた。翼走するとやがて風上側の浮上高が高くなり滑走板が水面に突き刺さる感じになり沈み込んだ。次の瞬間風上側水中翼がつんのめってしまい着水した。


左舷側に引いているので右舷側が風上となる。翼走すると一時風上側の浮上高が高くなった後滑走板が沈み込んでいく。


風上側水中翼が急激につんのめってしまった。糸を引いている方向と逆の方に倒れるのが不思議な気がする。

 原因は、浮上しすぎることにより滑走板と水面の角度が浅くなり、あるいは水平になって滑走できずに沈んでしまったと思われる。沈めば角度はマイナスになり急激に沈み込む。同時に水中翼も大きなマイナスの迎角になり負の揚力が発生してしまう。
 対策として滑走板が容易に沈み込まないように、アームの取り付け角を変えて滑走版の迎角を大きくし再度実験を行った。
 アームの取り付け角を変えたことにより浮上高は若干低くなったが修正前のような問題はなくなった。しかし、滑走版の迎角や面積は微妙な調整が必要であろう。


滑走版の迎角を大きくすることで安定した翼走をすることができた。

(4)翼走と速度

 実験中偶然発見したが、ある一定の推力において翼走状態とそうでない状態が存在する。(1)単純曳航の項でスタート後翼走状態になる場合と最後まで翼走しない場合があった。離水するかしないかはそのときのちょっとした条件の違いによるものだろうが、興味深いのはその速度差である。1mの距離を翼走すると1秒で進み、翼走しないと倍の2秒掛かった。推力が同じということは実際の場面では風速が同じということである。海の上で実際に翼走すればその他大勢のウィンドサーフィンの群を抜いて目を見張る速度性能を披露することになるだろう。
 また、離水するのにぎりぎりの風速でも一度離水し翼走状態になればその後ある程度風が落ちても翼走を続けられるということでもある。



1.風速W2のとき非翼走状態で離水速度のVrに達する。
2.離水し翼走すると抵抗が減り速度V2まで急激に加速する。
3.仮に風速がW1近くまで落ちても速度はVr以上なので翼走状態を維持している。
4.風速がW1まで落ちると速度がVrを切り着水し速度が急激にV1まで下がる。

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