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「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何」 「もっと丁寧に干せ」 「ちゃんと干してるわ」 「前々から思っていたが、お前は雑だな」 「ちゃんと干してるってばっ!」 「まだケンカする元気があるの?じゃあ、この籠の分もやってもらおうかしら」 「「・・・・・・・・・」」 ヨシノの声に、二人は揃って口を閉じた。 また黙々とザムザがロープにシーツをかけ、ナナミがそのシワを伸ばし形を整えて干す。 傍から見れば、妙に息が合っているのが微笑ましい。 洗濯物干し場でケンカを始めた原因は何だったのか、 巻き添えを食った周囲の者は覚えているが、当の本人達はもう忘れている。 この通り、ヨシノから罰として仕事の手伝いを命じられる程の大ゲンカだったというのに。 一時間程で開放されて、ザムザは木蔭に腰を下ろした。ナナミもその横に続く。 「こういうの、何度目だっけ」 「さあな」 ハイ・ヨーのレストランを手伝わされたのは先月。 そのすぐ後に図書館でやはり大ゲンカをしてしまい、エミリアの手伝いをさせられた。 まあ、所かまわずの二人が悪いのだが。 Stella Polaris +++ すたすたすた ぱたぱた・・ぱた ぱたぱたぱたっ ザムザは歩くのが速い。振り返りもせずに、平気でナナミを置いて行く。 ナナミも決してとろくはないのだが、花壇の花やら通りすがりの女の人の服やら、あれこれと気を取られては立ち止まる。 結果、気づけばザムザは遥か前方。慌ててぱたぱたと追いかける様子もまた、傍から見れば微笑ましい。 「ねー、何処行くの?」 「城外だ」 「わたしも行っていい?」 「好きにしろ」 城を出れば、サウスウィンドゥまでは平原が広がる。 冬は真白い雪原だったこの場所も、今は色鮮やかな花が一面に咲いている。 もっとも、ザムザは花を見に来たわけではない。 時々、こうして何もない空間に身を置きたくなるのは砂漠育ち故か。 「地平線が見えるね。ここからどのくらいの距離があるんだろう」 「知りたいのか?」 「うん」 「3.83√h(地上から目の位置までの高さ)=地平線までの距離だ。単位がキロメートルならな。 ついでに言ってやるが、地平線ではなく目標物に高さがあれば+3.83√h(目標物の高さ)だ」 「う?わ・・わかんない」 ザムザという人は、答えまでを教えてくれる程、親切ではない。 『ルート』という聞き慣れない単語が頭の中をぐるぐると回っているナナミの事など放って、彼はしばらく歩き、やがて、立ち止まった。 花も見ず、空も見上げず、ナナミに背を向けたまま、ただ風を体に受けて立っていた。 「ねー、砂漠や海の上では星を読んで方角を知るんでしょ?昼間はどうするの?星、見えないよ?」 「知りたいのか?」 「うん」 「・・・これを使う」 ザムザは懐中時計を取り出すと、面倒そうに太陽を見上げた。 「短い針を太陽の方向に向ける」 「えと、こう?」 「短い針と文字盤の12の数字との間の2分の1の場所」 言葉こそ少ないものの、分かり易いようにその場所を指先でトントンと叩いてやる。 そして、そのままその方向を指差した。 「それが?」 「南だ」 そこから少しずれた場所に、サウスウィンドゥの町がある。確かに、南だ。 ナナミは感心し目をキラキラとさせてザムザを見上げたが、彼は南ではなく南西の方角を見ていた。 きっと、その遥か先に、彼の故郷があるのだろう。 ナナミはきゅっとザムザの服の端を掴んだ。 そして、キャロの街がある筈の方向を見た。そう、ある筈だ。そこにいないのは自分達の方なのだから。 「みんな、それぞれに色んな事があって、故郷を放れてここにいるんだねぇ」 「そう。みんな、だ」 「うん・・」 帰り道、 日は落ちたばかりで、トゥーリバーの町のシルエットが切り絵に見えた。 廃墟となり、誰もいないかのような、静かな光景だった。 「ねー、これからも色々と教えてね」 「面倒だ」 ザムザは纏わりつくナナミの顔を手の平でぐいぃっと押しやる。 ナナミはめげずにぎゅうぅっとザムザの左腕にしがみつく。 鬱陶しげな目で見られるのはいつもの事。今更挫けたりはしない。 「何のためにわたしより早く生まれたのよ」 「知らんよ。少なくともお前に世の中というものを教えるためではない」 「違うわ。わたしに世の中というものを教えるためなのよ。だからわたし、あなたみたいな年上の人を好きになったんだわ」 「・・・・悪かったな年寄りで」 「年上って言ったの!・・・もしかして、気にしていたの?」 「別に」 +++ (2003.3.1作品) ■幻水2小説TOP■ ■TOP■ |