研究ノオト54 新しい国際関係学習?ウェブサイトと国際関係論の教科書のリンケージ

2003/11/02 第1稿

 

【テクスト】

 

Joshua S. Goldstein, “Understanding International Relations”, id., International Relations, 4th edition, 2001, Chapter 1.

 

 

【内容】

 

01  The Study of IR

 A  IR and Daily Life

 B  IR as a Field of Study

 C  Theories and Methods

 

02  Actors and Influences

 A  State Actors

 B  Nonstate Actors

 C  The Information Revolution

 D  Levels of Analysis

 E  Geography

 

03 History

 A  World Civilizations, 1000-2000

 B  The Great Powers System, 1500-2000

 C  Imperialism, 1500-2000

 D  Nationalism, 1500-2000

 E  The World Economy, 1750-2000

 F  The Two World Wars, 1900-1950

 G  The Cold War, 1945-1990

 H  The Early Post-Cold war Era, 1990-1999

 

【コメント】

 

 今回はやや変則的に、内容そのものではなく、国際関係について学ぶ上でのおもしろい試みとして、ゴールドスタインのそれを簡単に紹介したいと思います。

 

 http://www.joshuagoldstein.com/index.htm

 

 まず、ゴールドスタインのひととなりそれ自体はこのHPで伺えます。経歴などもありますが、War and Genderという本が最近の主著で、これはなかなかおもしろそうです。9.11以後の話をジェンダーの視点から考える論文はいくつかあって、いずれ論文評でご紹介しようと思っているのですが、彼の議論も参照する必要があります。War and Genderに関してもサイトを立ち上げていて、最初の1章はオンラインで読めます。フォーラムあり(彼自身も参加して書き込んでいます)、ニューズレターありと、ウェブサイトを有効に活用しています。

 

 もちろん、こうした自己宣伝というか場を作ることには常に両義的な意味があり、下手をすると著者の自己満足に終わってしまうのですが、彼の運営は概していい感じだと思います。両義性のよい面ということで言えば、やはりこの時代にただ活字を出すだけではなく、こうした場を作って自己の仕事を社会的な文脈の中へ開披することで、ある程度学術を公共的な空間の中へ還元し、風通しをよくしていくという意義はあるのではないかと考えます。

 

 それから、この教科書はベストセラーとして第5版まで行っているわけですが、2003年度のその第5版で付け加えたポスト911に関するチャプターも、ここから読むことが出来ます。

 

  http://occawlonline.pearsoned.com/bookbind/pubbooks/long_goldstein_ir_5/index.html

 

 さて、ここがとてもおもしろいサイトです(もちろんゴールドスタインのページからもいけます)。彼が書いた教科書の補助教材的な意味合いを持っているところです。(1)世界地図をどういうものをそろえたらよいか、さらにAtlasやエンカルタのCD-ROMの対応部分のリンクを、メールすると送ってくれたりします。(2)各章のサマリーが読め、また他の有名な教科書との比較対照すべきページ数なども示されており、大変便利です。(3)各種のクイズや問題がたくさんあって、点数をつけてくれたりします。リアルタイムで説き進めていくクイズもあります。

 

 教師用のパートもあり、ビデオ教材や教室内でのシュミレーション(私がおもしろいと思ったのは、黒板の両端に学生をたたせて、片方の学生には3秒に1回印を1つ書かせ、もう片方の学生には40秒に1回、100万ドルと書かせていくものです。これをしばらくやらせたあとで、3秒に一人子供が栄養不良で死んで行っている一方、世界の軍事費は40秒で100万ドルずつ使われている、と説明するわけです。このサイトの説明は下記に張っておきます)などの示唆で、まさにファカルティ・デベロップメントの参考になります。

 

 他にもチャットや掲示板をはじめ、各種のリンクなどなど、とても紹介しきれないほどにたくさんの内容があります。日本でこうした教科書をオンラインで作るのはなかなか大変だろうとは思いますが、大学で勉強する学生にとっても、また独学で勉強する人にとっても、実に便利なサイトを作っていて感心しました。

 

 もちろん、ネット上においてあるからすべてよい、ということにはなりませんし、そもそもゴールドスタインの教科書が最善であるかどうかというと、そこにも議論の余地があるとは思います。とはいえ、知識をdisseminateする、ないしはある種の啓蒙活動的な意味でこうしたことをやっていくことはとても大切だと思いますし、たとえばiBlogなどを使えば比較的簡単に著書や論文ごとのフォーラムを作ったりできるわけです。運営するのはまたそれなりに面倒ではあるのですが、彼の試みからは大いに学ぶことがありそうです。

 

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Chapter 1—Understanding IR

 

Idea being illustrated: IR is not abstract or distant; it involves real people, real choices, and present-time developments.

 

Ask for two volunteers with wrist watches. Give each a piece of chalk and have them stand at opposite ends of the blackboard. Tell one to make a hatch-mark on the board (every fifth mark being a cross-hatch) every three seconds. Tell the second one to write "$1,000,000" every forty seconds. Explain that the hatch marks show the rate at which children around the world are dying from malnutrition-related causes. The dollar amounts represent the rate of world military spending. You can then lecture or lead a discussion about either or both of these phenomena while the numbers pile up—e.g. how much money is -needed to prevent each of those deaths (a fraction of what's spent on the military in the same period). Then have students write a paragraph about what they got from the exercise; they will be variously shocked, defensive, outraged, etc. but it helps them engage with the subject.

 

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(芝崎厚士)

 

 

 

 

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