飛  雲 (ひうん)

●あらすじ
 紀州三吉野の山伏、出羽の羽黒山へ参詣の道すがら山路にさしかゝって、一休みしていた。すると一人の年老いた樵夫が、柴を背負い、杖をついて通りかゝり、紅葉の本陰に柴を下して、これも一休みの態である。山伏は老人の風雅な様子に言葉をかけると、老人は大伴の黒主の歌を評した「薪を負える山人の花の陰に休めるが如し」をひいて、紅葉の木蔭に休むのは、戯れごとであると答え、なおも紅葉の名所、竜田、初瀬、八入の岡、嵐山などの美しさを語り合っているうちになって一夜を明かし給わぱ夜遊を慰めようと云って、谷深く姿を消してしまった。その夜、山伏の夢に、三熊野の末牡の神が現れ、ききの老人は飛雲という鬼神で、山伏の命を取ろうとしていると告げる。恐れをなして、山伏は祈念をこらし、読経をしていると、谷峰を動かし物凄い勢て鬼神が現れ、山伏を取り殺そうとしたが、法力にうち負け、忽ち弱り果てて雲や煙のように清え失せた。

●宝生流謡本      外十二巻の一   切能    (太鼓あり)
    季節=秋   場所=信濃国木曾山中   作者=
    素謡稽古順稽古順=平物   素謡時間=22分 
    素謡座席順   ワキヅレ=同行山伏
              シテ=前・老木樵夫 後鬼
              ワキ=山伏

           大伴黒主関係謡曲 3曲
                                  小原隆夫調べ
 コード   曲 目      概           説     場 所  季節 素謡  習順
5063  草 紙 洗  小野小町ト大伴黒主ノ和歌クラベ    京都   夏  50分  初序
3071  志  賀   大伴黒主歌道ノ舞楽          滋賀   春  34分  入門
5121  飛  雲   熊野ノ山伏鬼退治            長野   秋  22分  平物


●宝生流能楽師 内藤飛能
年 月    経   歴
S.55.8  内藤泰ニ(能楽協会名古屋支部長)の孫として生まれる
S.62.8  初舞台 「鞍馬天狗」花見
H14    熱田神宮奉納能「巻絹」 ツレ
H15.4   宝生英照宗家の元へ住み込みの内弟子となる
H20    「翁」 千歳 披き
H20.6   初シテ 「鵜飼」
H21    明治神宮奉納能 半能 「田村」 シテ
H23.9   宝生和英宗家の許しを得て独立 飛雲会 発足

○宝生能楽堂主催 謡曲、仕舞教室(火曜教室)講師・東京芸術大学邦楽科能楽宝生流専攻 卒業

日本の伝統芸能である「能」
最善を尽くして、無駄を削ぎ、もうこれ以上はできないと言うところまでやって立つ舞台。
心の中に能の謡があって、舞があって、その謡や舞が皆さんを励ましたり、元気づけたり、気分転換になってくれていたらいいな、、、。そんなイメージを持つことで能楽師としての自分は存在している気がします。
 ここでは飛雲会の活動をご報告して行きたいと思います。このページのご案内はしばらくの間、弟子の「いろ葉」がさせていただきます。

弟子の「いろ葉」でございます。皆様よろしくお願いいたします。ある日何か身体の中に埋まっていた「お能の種」が突然はじけまして、見たい見たい病にかかって3年。未だに重症でございます。猩々はどんどん進み、ついに2年半前からは謡、お仕舞を習うに至っております。師匠がご多忙につき、しばらくの間このページのご案内わたくしが代理でさせていただきます。何せ初心者でございますので、誤字、変な言い回しもあろうかと存じますが、何卒お許しくださってお付き合いくだされば幸いに存じます。

飛雲会  第一回 名古屋大会
平成24年6月18日 名古屋いりなか舞台で飛雲会  第一回 名古屋大会が行われましたの。名古屋に先立ちまして、東京のお稽古場でも、飛雲会第一回記念大会が開催されたようでございます。今回の名古屋の会には、先生のおじいさまのお弟子さんでいらしゃっいましたKさんも参加されてまして、師匠のお家のこの地での歴史を感じましたでございます。わたくしも将来師匠のお子さんにお世話になることが出来ますでしょうか。会は1時から始まりまして、今回は奥様もお手伝いに来てくださいましたの。写真やビデオを担当していただいて、助かりましたのでございます。本当にありがとうございました!以下、会の様子を番組順にご紹介いたしますわね。

  田村 内藤飛能(五雲会) 宝生流 宝生能楽堂 2009.4.18
     シテ 内藤飛能
     ワキ 梅村昌功、  アイ 高部恭史
     笛 成田寛人  大鼓 大倉栄太郎、 小鼓 住駒俊介
   
このブログを書き始めて以来、田村は三番見ているのですが、たまたまと言えばたまたま、すべて下掛り。18年に金春の本田光洋さんがなさった白式の小書付(鑑賞記は1、2)、19年には喜多流中村邦生さんの白田村(鑑賞記は1、2、3)、そして20年に同じく喜多流大村定さんの小書無しの演能(鑑賞記は1、2、3)ということで、上掛りの田村は本ブログでは初登場です。流儀による違いがそれほど大きい曲ではありませんが、気付いたことなどを含めて書いてみようと思います。
まず舞台には次第でワキ東国方の僧の梅村さんと、ワキツレの従僧、舘田善博さんと森常太嘯ウんの二人が登場し、舞台中央で向き合っての次第。ワキの名のりで、この度都へ上ろうとすることが語られて道行、そして着きゼリフとなります。
角帽子に水衣の着流し僧ですが、人待つ形でワキ座に着座します。 ここに一声の囃子で前シテの童子が登場してきます。 白式系の小書がつくと前シテも白の水衣になりますが、常の形では緑系の水衣が多いようです。この日も縫箔に緑の水衣。童子の姿で、右手に箒を持っての登場です。
シテの内藤飛能さん、実はツレやトモとしては何度も拝見しているのですが、シテはこの日が初めてです。たしか昨年に初シテをされたと思うのですが、ともかくお若いシテで、どの様になさるのか興味を持って拝見しました。

(平成22年9月22日 あさかんpユーユークラブ 謡曲研究会)


飛 雲

         飛 雲(ひうん)  外十二巻の一      (太鼓あり)
         季  秋      所 :信濃国木曾山中  素謡時間 22分
  【分類】切 能 (    )
  【作者】        典拠:
  【登場人物】前シテ:老木樵、後シテ:鬼神 ワキ:山伏 ワキヅレ:同行山伏

         詞 章                     (胡山文庫)
   次第
ワキワキヅレ上 遥けき国を三熊野の。/\苔路や旅のはじめなる。
ワキヅレ   詞 「これは本山三熊野の山伏にて候。我未だ羽黒山に参らず候ふ程に。
          唯今羽州に下向仕り候。
ワキワキヅレ道行上 行末も。遠山伏の摺衣。
ワキヅレ   上 遠山伏の摺衣。
ワキワキヅレ上 遥々きぬる旅をしぞ。思の末もいく日数幾夜重なる麻衣。木曽の掛橋谷深み。
        かけ路の末も 暮れかゝる。雲の八重山いかばかり/\。
シテ 一セイ上 馴れゝも。つま木の道の苦しきや。重なる老の。坂ならん。
       詞 「余りに苦しう候ふ程に。薪をおろし休まばやと思ひ候。
ワキ    詞 「不思議やなこれなる山賎を見れば。処こそ多きに。分きて紅葉の蔭に休む気色。
         心あり顔にて優しうこそ候へ。
シテ    詞 「元より賎しき山賎の。何の心の 候ふべき。
   カカル上 彼の黒主が歌の心は。薪を負へる山人の。花の木蔭に休むけしきを。
         残し置きたる筆の跡。われらが休むも紅葉の木蔭。いたづら事にて候ふなり。
ワキ    詞 「げに心ある答かな。まづ/\紅葉の名所々々。彼方此方に多けれども。
シテ    詞 「まず業平の心には。神代も聞かずといひおきし。名にも龍田の紅葉の色。
ワキ カkル上 初瀬の山は日は等が木の間に。色洩れ出づる村紅葉。
シテ    上 名にも八入の岡のもみじ葉。
ワキ    上 其外高雄。
シテ    上 あらし山。
地     上 色々を。四方に染めなす秋の日の。/\。朝には雪としぐれ夕べには雨とそゝぎ。
         このもかのもの草木のはや下染も時過ぎて。
         百入千入に薄き濃き梢の秋おもはおもしろや。
シテ    下 白露も。
地     下 白露も。時雨もいたくもる山は。下葉残らぬもみぢ葉をかたしく今宵山伏の。
         一夜を明し給はゞ。我 も帰りて夜もすがら。
         夜遊を慰め申さんと谷の戸深く入りにけり/\。
                 来序 中入り
ワキ     上 あら恐ろしの気色やな。小夜も半に更け方の。月影暗き山中に。
         行くべき方もあらざれば。あらたなりける夢の告に。
         頼みをかけて念誦する。
ワキツレ  下 南無や開山役の優婆塞。殊には三熊野三所権現。力を添へてたび?給へ。
地   ノル上 不思議や峨々たる石根に。/\。
         黒雲一叢起ると見えしが谷峰一同に響き震動し盤石を砕き。
         木を折る嵐に先立ち飛ぶ雲の光の中に。
         現れ出づる鬼神の姿面をむくべきやうぞなき。
                 舞働き
ワキ     上 東方に降三世明王。
ワキツレ  上 南方に荼利夜叉明王。
ワキ     上 西方に大威徳明王。
ワキツレ  上 北方の金剛夜叉明王。
ワキ     上 中央に大日大聖不動明王。
ワキワキツ 下 おんころ/\せんだりまとおぎ。おん阿毘羅吽剣そわか。
地   ノル上 鬼神の通力忽ちに。/\。明王の繋縛にかゝると見えしが飛行をなして。
         あらんとすれば。大地に倒れ伏し。
         起きつまろびつ己と身を責め苦しむ気色に行者の威力いよ/\増さり珠数。
         さら/\と押しもんで。見我見者。発菩提心。/\。聞我名者断悪修善。
         聴我説者得大智恵。智我心者即身成仏。即身成仏と祈り伏せ。行者は遥に立ちのけば。
シテ    下 不思議や今までは。
地     下 不思議や今までは。大勢力の鬼神と見えしが。立ち所に弱り伏して。
       上 唯茫然と起き上りて。たゞよひ行くと見えつるが。ありつる姿は雲煙。
         ありつる姿は雲煙と立ち消えて鬼神の姿は失せにけり。


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