宝生流謡曲 翁
                                              2009/1/1 更新
 翁(おきな)は、露払いの千歳の舞の後、五穀豊穣、天下泰平を祈る白い翁の静謐な舞。大地を踏みかため、精霊を呼び起こす黒い翁の躍動的な舞。素袍大紋、侍烏帽子で威儀を正し、舞台披きや年頭に舞われる儀式的な一曲。

    翁           

                           
        シテ   翁                千 歳
 
シテ 上「とうどうたらりたらりら。たらりあがりららりどう
地  上「ちりやたらりたらりら。たらりあがりらららりどう
シテ 上「所千代までおはしませ
地  上「我等も千秋さむらはふ
シテ 上「鶴と亀との齢にて
地  上「幸心に任せたり
シテ 上「とうどうたらりたらりらたらりら
地  上「ちりやたらりたらりら。たらりあがりららりどう
千歳 下「鳴るは滝の水。鳴るは滝の水日は照る
地  上「絶えずとうたり ありうどうどうどう
千歳 下「絶えずとうたり。常にたうたり (舞)
千歳 上「君の千年を経んことも。天津をとめの羽衣よ 鳴るは滝乃水日は照るとも
地  上「絶えずとうたり ありうどうどうどう
シテ 上「総角やとんどや
地  上「ひろばかりやとんどや
シテ 上「座して居たれども
地  上「まいろふれんげりやとんどや
シテ 上「千早振る。神のひこさ乃昔より。久しかれとぞ祝ひ
地  上「そよやりちや
シテ 上「およそ千年乃鶴は。萬歳楽と歌うたり。また萬代の池の亀は。甲に三極を戴き。
     渚の砂さくさくとして朝の日の色を朗じ。滝の水冷々と 落ちて夜の月鮮やかに浮んだり。
     天下太平国土安穏。今日の御祈祷なり。ありはららや。なじょの。翁ども
地  上「あれはなじょの翁ども。そらいづくの翁どうどう
シテ 上「そよや
シテ 下「千秋萬歳の。悦びの舞なれば。一舞まはふ。萬歳楽
地  上「萬歳楽
シテ 下「萬歳楽
地 下上「萬歳楽

      二日目
千歳 下「鶴は千歳ふる。鶴は千歳ふる 君はいかが
地  上「萬歳こそ経れ ありうどうどうどう
千歳 上「萬歳こそ経れ。萬歳こそ経れ
千歳 上「君乃千年を経んことも。天津をとめの羽衣よ 鶴は千歳ふる君はいかが
地  上「萬歳こそ経れ ありうとうとうとう

      三日目
千歳 下「萬歳ましませ。萬歳ましませ巌か上
地  上「亀は住むなり ありうとうとうとう
千歳 上「亀は住むなり。亀は住むなり
千歳 上「君乃千年を経んことも。天津をとめの羽衣よ 萬歳ましませ巌か上
地  上「亀は住むなり ありうとうとうとう








解 説
 能、狂言とは別種の祭儀的で古風な様式を備えた芸能です。能楽の演目の一つとして正月や祝賀、記念能などの番組の冒頭で演じられます。別名「式三番」と呼ばれ、父尉、翁、三番猿楽(三番叟;さんばそう)の3演目を指しています。面そのものが神体とみなされ役者は舞台でそれぞれ父尉、白色尉または肉色尉、黒色尉の面をつけます。老体の神が祝福をもたらすという民俗信仰に関係し、子孫繁栄、天下泰平、国土安穏、五穀豊穣を祈ります。現在の上演では父尉を省略する形が一般的で翁は能役者、三番叟は狂言役者が演じます。
 *翁は翁烏帽子に蜀江錦の翁狩衣、袴は指貫を着け、翁扇を手にしています。