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レンブラントに遇えた奇蹟


大阪を離れるとき、京都にはそう何度も
来ることはできないだろうな、と思っていたのだが、
なんとことやら1年に1度は、訪れている。

仕事で訪れることもあったり、
個人的に訪れることもあったり、
京都を訪れる理由はさまざまであったわけだが、
新しい年の明けた元旦に、京都を訪れたのは、
今までとはまた違う目的があった。

それは、絵を観ること。
ちょうど、京都国立博物館で「大レンブラント展」という
展示会をやっていたのだ。

別に、絵画鑑賞を趣味にしていると
公言するつもりはないのだが、
高校生の頃に、世界史をやっていたとき、
このレンブラントという画家だけは、
非常に印象に残っていたのだ。

かつては、鬼のように記憶した世界史上の人名や国名の
多くが、無意識のそこに沈んでいくなかで、
レンブラントとその代表作「夜警」は、
はっきりと記憶に焼き付いていた。

レンブラントという画家の作品のみを集めた展覧会、
というのは、実は今までなかったらしく、
アジア初というだけではなく、
世界でも例を見ない展覧会だそうだ。
ちなみに、日本で終了したあとは、
ドイツのフランクフルトに行くらしい。

京都国立博物館は、東山七条にある。
JRなら京都駅から、歩いていけないこともないが、
京阪電車なら七条駅を降りて徒歩5,6分で着く。
ちょうど三十三間堂(蓮華王院)の向かいである。

本当ならば、早めに起きて、9時とか10時に起きて、
行くのがいいのだろうけれども、
正月早々、寝正月をかましてしまったので、
昼からの出発、と出発が遅い。

着いたのが午後4時半頃。
午後6時に閉まってしまうそうなので、
1時間半しか見ることができないことになる。
やばい。時間がない。

1時間半もあれば、充分という人も多いだろうが、
順路通りに見て回らず、ついさっき見た場所まで戻って、
また先の絵を観て…という具合に
行ったり来たりしながら見て回るのが、
自分のスタイルのようなので、非常に時間が掛かるのだ。

ひょっとすると、ゲームで全てのイベントを見てみないと
気が済まなかったような、そんな感覚が未だにあるのかも知れない。
そういえば、パソコン関連の展示会でも、
行ったり来たりして、結局終了時刻まで、
いるような気がする…な。

まぁ、そんなわけで時間も気にしつつ、
音声ガイドを聴きながら、館内に入っていく。
もちろん館内は、撮影禁止なので、
ここで逐一紹介する訳にはいかないのだが、
絵心があまりない人間にも、
そのすばらしさは、よく伝わってきた。

レンブラントは、光と陰の巨匠と言われるように、
絵のなかでスポットライトを浴びる光の部分と
光を落とした陰の部分の対比が特徴だ。

また、これは書かれてある説明を見るまで、
忘れていたことだが、
ヨーロッパの絵には、表情が乏しいものが多い。

これには、絵画が宗教画として
発達してきた歴史があることと関係がありそうだが、
彼の作品には、表情や動きが豊かなものが多い。
ただ単に「かたち」がリアルなだけでなく、
「画家がいる」ことをよく感じられるように思われた。

特に、印象に残っているのが、
「扇を持つ若い女の肖像」
「描かれた額縁とカーテンのある聖家族」
「ヨアン・デイマン博士の解剖学講義」

の3つ。

一部の絵画に関しては、京都国立博物館のページ
http://www.kyohaku.go.jp/tokuten/rembrandt/
で紹介されているので、参照していただきたい。

まず、「扇を持つ若い女の肖像」。
来客を迎えに、玄関先まで出てきた若奥様、
といった感じで動き出しそうな感じ。

また、首もとと手首のおそらくシルクの衣装に
クローズアップされており、
実物を見ると、まばゆいほどの輝き。
この強弱の付け方が、ほかにはないように思う。
(知らないだけかも知れないが)

それから、「描かれた額縁とカーテンのある聖家族」。
これは、絵の中に額とカーテンが描かれており、
その中には、聖母マリアとキリストを
イメージしたであろう母子が、暖炉で暖まっている。

ある家のカーテンからちょっと垣間見られる、
小さな赤ちゃんのいる家庭の雰囲気が
感じられるような工夫が、絵そのものにされてある。
単に描くというだけではなく、
絵を観る楽しみを意識した作品で非常に面白い。

最後に、「ヨアン・デイマン博士の解剖学講義」。
現在では考えられないことだが、
当時、死刑囚の人体解剖の様子は
市民に公開されていたらしい。

その様子を描いた絵画の一部がこの絵画であるが、
この展覧会には展示されていなかった、
別の解剖学講義の絵画を見ても、
かなり好奇心を持って見入っている姿が、
描かれている。

絵自体は、あまり気持ちのいいものではないが、
当時の人の好奇心の向かった先が、
こんなところにあったのかと、すこし驚く。

個人的には、「夜警」がなかったのは残念ではあったが、
どの絵を観ても、レンブラント特有の
光と陰のコントラストが楽しめた。

たまには、こんな京都もいいのかな、
と思った2003年の元旦であった。

2003-2-10(遅いっ!)


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