鳥インフルエンザが日本で流行らなくても、日本の養鶏に壊滅的打撃
畑の便り 06-19 2006年5月9日小針店で印刷・配布に加筆
鳥インフルエンザ、日本の報道は小さくなっていますが、ヨーロッパでは各国で広がっており、米国など北米も時間の問題。人間での感染も増えています。
この鳥インフルエンザの蔓延で、日本の養鶏、ブロイラーや鶏卵生産の弱点が浮き彫りになってきています。最悪の場合、2〜3年後のは鶏肉や鶏卵が日本で生産できなくなるかもしれないのです。卵を採る卵用鶏(レイヤー)と鶏肉として利用する肉用鶏(ブロイラー)のヒナが、ほとんど日本から姿を消す可能性があるのです。
市販の鶏卵を孵しても、親と同じ品種の鶏は生まれません。仮にブロイラーも卵を産ませて、その卵を孵しても同じ品種ではありません。飼育される実用鶏・コマーシャル(CM)鶏は交雑種だからです。ヘテローシス (雑種強勢)を利用して、少ない飼料で、短期間に、多くの卵・鶏肉を得られるよう、鶏を長い年月をかけて何世代も交配させて品種改良を積み重ねて作られた雑種だからです。
飼育される実用鶏の親鳥にあたる種鳥(しゅけい)の雄メスも交雑種、祖父母に当たる原種鶏(げんしゅけい)も雄雌とも交雑種、祖々父母の原原種鶏(げんげんしゅけい)から曾孫にまで行き着いた時、初めて最適の食肉・採卵用に育つよう“設計”されています。
| 卵用鶏の模式図 |
エリートストック(ES) |
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| 系統造成 |
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| 原々種鶏 |
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産卵率重視(系統A) |
卵重最適(系統B) |
飼料効率良好(系統C) |
卵殻質最適(系統D) |
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| 系統造成 |
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| 原種鶏 |
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| 増殖 |
系統A(♂) |
系統B(♀) |
系統C(♂) |
系統D(♀) | ||
| 種鶏 種鶏場 |
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| 増殖 |
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| 実用鶏 |
養鶏農家 |
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原種鶏から種鳥が供給され、種鳥から実用鶏のヒヨコが供給されます。裏返せば、原種鶏抜き、原原種鶏抜きではブロイラーや鶏卵生産はあり得ません。原原種鶏、原種鶏まで国産というと採卵鶏で7%、ブロイラー、食肉では1%。これ以外は何らかの形で海外からの輸入に頼っています。種鶏が最も多いのです。原種鶏は、現在1〜2か国のみから輸入し、国内のごく限られた原種鶏農場(肉用鶏2社4農場、卵用鶏1社1農場)で種鳥が生産されています。
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半世紀ほど前、世界には50社以上の鶏の育種、原種鶏生産する会社がありました。だが「大規模な会社ほど多くの鶏の中から優秀な鶏を選抜でき、改良成績もいい。代を重ねるごとに差は開き、売れない鶏を作る会社は淘汰(とうた)された」結果、現在では世界的な規模の育種会社は肉用鶏(ブロイラー)で3社、卵用鶏で3社程度しかありません。どのように組み合わせたらどのような交雑が生産できるかは、長年の経験や積み重ねたノウハウから導かれ、原原種鶏やその親のエリートストック(ES)は門外不出。米国や欧州に本社を置くこれらが、アメリカ・イギルス・ブラジル・南アフリカ・カナダ・ドイツ・デンマークなど世界各地で原種鶏、種鶏を飼育し、世界に供給しています。
日本は昨年2005年は種鶏・原種鶏を約100万羽を輸入し、(1)英国(37.4%)(2)フランス(20.5%)(3)米国(16.2%)(4)ドイツ(13.6%)(5)オランダ(8.8%)でした。鳥インフルエンザはヨーロッパの種鶏生産国に拡がったため、イギリス、フランスとドイツ、そして予防ワクチンを使い始めたオランダからこの輸入を停止しています。これは、80%約80万羽の原種鶏、種鶏にあたります。輸入先を米国などに振り替える措置を取っていますが、残されたアメリカ、カナダなども鳥インフルエンザ発生は時間の問題と現地はとらえています。これまでに輸入された原種鶏、種鶏のストック、種鶏からの実用鶏の供給期間などから種鶏の輸入・供給数の減少は約半年後に実用鶏の減少になって顕れ、約2年間、原種鶏、種鶏雛の輸入が停止すると、採卵鶏で93%、ブロイラー、食肉では99%分の鶏がいなくなります。
対策の一つは原原種鶏、原種鶏まで国産の鶏を増やすことですが、原原種鶏から実用鶏まで約三年かかりますから、最悪の事態(2年以上長期の輸入停止)を考えると今から大増産する必要があります。しかし農水省は手を打っていません。もう一つは、オランダなど予防ワクチン使用国からの雛の輸入を認めることです。ワクチンをつかうと鳥インフルエンザにかかっていても、判別が難しいので禁止しています。この措置を解除するのです。そうすると罹患鶏、鳥インフルエンザのウイルスの輸入を完全には防げませんから、国内対策の見直しが必要となります。鳥インフルエンザに罹患した鶏は全部殺す「殺処分」からワクチン接種への移行です。また鶏卵や鶏肉も、ウイルスの移入、それによる国内での鳥インフルエンザ発生を理由に禁止していますから、これも同時に解禁になります。鶏卵や鶏肉は価格の点から否応無しに輸入品に大半が取って代わられることになる可能性が高い。
影響は、新型インフルエンザ対策にも及びます。ワクチンを接種すれば、鶏は死ななくなります。昨年の茨城で鶏を殺さない弱毒性の鳥インフルエンザが流行しましたが、鶏との接触機会が多い養鶏業者、従業員で広く弱毒性の鳥インフルエンザ罹患が認められました。これと同じ事が起きます。つまり、人間の感染は避けられない。日本国内での人の感染発生を想定しての対策、つまり人間での鳥インフルエンザ感染者、新型インフルエンザの感染者の早期検出システムの整備や緊急患者ですぐに一杯になってしまうと見込まれる地方の病院の整備などです。タミフルなど幾ら備蓄しても、投与する医者、医療機関の準備がどれほど出来ているでしょうか?
| ネタ元 |
| 独)家畜改良センター岡崎牧場 http://www.nlbc.go.jp/okazaki/ |
| 国立感染症研究所 感染症情報センター http://idsc.nih.go.jp/index-j.html の疾患別情報の高病原性鳥インフルエンザ |
| 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/ のQ&AコーナーのインフルエンザQA |
| インフルエンザ・ワクチンについては感染症研究所のトピック「インフルエンザ・ワクチンについて」 |
| 農林水産省ホーム http://www.maff.go.jp/ |