『ロックマンDASHアナザーストーリー〜ロックへの試練』最終章<過去に縛られし者、それを解き放つ者>
著者:太陽神さん

1話

「クッハッハッハッハッハッ! こんなポンコツロボットでオレを止められると 思っているのか。 全くお笑いだな。」 ルインはそう言いながら次々と襲いかかってくるリーバードを破壊しながら出口へ と向かっていった。 そう、一歩一歩着実に・・・・主の願いを叶える為・・・・ だがルインはそれを 成した後、一体どうするのだろうか? ・・・・そんな事すら考えず、ただ主の夢 を叶えようとするルインだった。 一方その頃、ロックのメモリーの内部で・・・ 『トリッガー、目を覚ませ。 そして怒りを静めるんだ、トリッガー・・・』 「ダメだ・・・僕じゃルインには勝てない・・・マスターが伝言の中で言っていた 『四つの終わり』って僕達四人の生の終わり、つまり僕ら四人の死なんだから・・・」 ロックは全てを諦めていた。 絶対的な力を持つルインには勝てない、と。 『トリッガー、諦めてしまっては何も変わらないし、変えられない・・・ お前は 第一の試練で何を学んだ? オレとロックマンはどんな時も諦めなかった・・・  ロックマンは世界の人々が好きだから・・・そしてオレはほんの微かにあった記 憶、本能とも呼べるものになっていたロックマンとの誓いを果たすためだっ た・・・ だから諦めないでくれ・・・ お前の絶望は世界の絶望で、お前の希望 は世界の希望になるんだ・・・』 「世界の命運は僕にかかっているっていう事・・・?」 『そうだ。』 「・・・わかりました。 僕は諦めない、もう二度と。 過去のロックマンとあな た、ロックマンXがそうであったように。 そして必ず・・・ルインを倒す!」 ロックマンXはその言葉を聞いて安心したのか、これ以降ロックに声は聞こえなく なった。 まるでその任を終えたかのようにロックの中からその存在が消え去って しまった。 ロックは立ち上がった。 そしてまわりを見回した時、ルインがいない事に気付 き、 「しまった! もうこの部屋を出た後か! 早く追い掛けないと空中で待機してい るみんなが危ない!」 ロックは3人には目もくれずに部屋を出ていった。 「う〜ん、ガディグとクルタルグス先生は気を失っているからいいとして、ってあ んまりよくはないけど、なんで僕までそのままにされるの?」 ランムは部屋で独りつぶやいた。

2話

ルインが遺跡から出てきた。 「ハーッハッハッハッハッハッハッ! 実に久しぶりの地上だ!」 ルインはその場で叫んだ。 「なんじゃあ、あいつは?」 バレルが言った。 「少なくとも入っていった人ではありませんわ。」 トロンが答える。 「じゃあ、遺跡に元からいた人?」 今度はロールが言う。 するとバレルの顔から血の気がひいていった。 「ロール! 今すぐここを離脱するんじゃ!」 突然バレルが叫んだ。 「え? なんで? ロックはまだ遺跡の中だよ?」 「ならばせめて上昇するのじゃ! 嫌な予感がするわい!」 ロールはバレルの様子を見てただ事ではないと思い、とりあえずフラッター号を上 昇させた。 「ずいぶんといろいろなものが浮いてるなあ? フフフ・・・どれから破壊しよう か・・・ ん? 一つだけ妙に動きの素早いものがあるな。 あれは最後のお楽し みとして残しておこう。」 ルインの言った素早いもの、それはフラッター号の事だった。 「さて、まずは・・・・あれだ。」 ルインは数ある飛空船の一つに光球を放った。 光球が飛空船の中に吸い込まれる と間もなく、爆発した。 当然船は木っ端微塵に砕け、中にいた人達も・・・・ 「ハーッハッハッハッハッハッハッ! 脆い! 脆すぎるわ!」 それを見たほかの船は一目散にその場から離脱しようとした。 「そうだ、足掻け、逃げまどえ! 結局死ぬ運命なのだから少しでも長生きしよう という無駄な努力をするがいい! それでこそ殺しがいがあるというものだ!」 ルインの声は狂喜に満ちており、逃げまどう船を次々と破壊していった。 「なに、あれ・・・・・」 その惨事を見ていたトロンがふるえる声で言った。 「おじいちゃんが言ってくれなかったら私達もああなって・・・・」 同じようにロールの声もふるえていた。 「まずいぞ・・・このままではワシらも破壊された船と同じ運命をたどりそう じゃ・・・・」 バレルがそう言い終わる頃にルインは十隻を超えた船を破壊し終えていた。 「さあ、これで残りはあのすばしっこいやつだけだな。 あっさりやるか、それと も追い掛けまわしてからにするか・・・どちらもで楽しめそうだ。 あれを破壊 し、世界滅亡の狼煙としよう・・・」 ルインは異常だった。 いや、元々そうだったのかもしれない。 「ロック・・・もしかしてやられちゃったの・・・・?」 ロールの声は絶望していた。

3話

第二の試練があった遺跡の最深部・・・ 「? ガディグサマノハンノウガキエタ・・・? タスケニイカナクテハ・・・  バショハ?」 ガディグのリーバード、トロウアは付けっぱなしのモニターを見た。 「ホッキョク・・・イソガナクテハ・・・」 トロウアは全力で北極へと向かい始めた・・・ 「これだけのリーバードが全滅!? まずい、この調子だともうルインは地上 か!? ・・・・ん?」 ロックの耳になにかが聞こえた。 当たりを見回すとかすかに動いているリーバー ドをロックは見つけた。 そのリーバードは壊れる寸前のようで、近づいたロック に機械音で話しかけた。 「トリッ・・・・ガーサ・・・マ、ゴブ・・ジデ・・シタカ・・・ ワ・・レワレ ハ、ゴ・・ラン・・・ノトオリデ・・・ス デズ・・・ガナンド・・ジデモ ル・・・インヲ、タオジ・・・テクダサイ コデ・・・ハワ・・レワレシ・・ンデ イ・・・ッタリーバ・・・ドタチ・・ノネガ・・・イデ・・・・ズ・・・」 リーバードはその活動を停止した。 「一部のリーバードには意思があるってわかってたけど、全てのリーバードに意思 があるなんて・・・ ルイン、君はこの命に変えても・・・」 ロックの言葉は静かだったが顔は徐々に険しくなっていった。 「さて、そろそろ追いかけっこも終わりだ。 これで終わりにしてやろう。」 ルインは手から光球をだし、それを逃げるフラッター号へと放った。 が、それは フラッター号に当たる前に爆発した。 「!? 一体何が起きたの?」 目の前の爆発に驚くトロン。 「おお、あれはロックじゃ!」 バレルの声は絶望から希望の声に変わった。 「え? ・・・・ロック!」 ロールの声からもまた絶望感が消え去った。 「ルイン! そこまでだ! ロールちゃん達は戦いに巻き込まれるかもしれないから逃げて!」 ロックの言葉にロール、トロン、バレルの三人は返事こそしなかったがフラッター 号をその場から離脱させる事により、ロックの言葉が届いている事を証明した。 「まったく、これだからロックマンっというのはしゃくに触る。 諦める事を知ら ないからな。」 ルインはため息混じりに言った。 「恐いの・・・? それで今までもロックマンとロックマンXにもやられてきたん でしょ?」 ロックがいたって冷静に言う。 「なんだと・・・? どうやら確実に壊されないと分からないみたいだな・・・  よかろう、今度は確実に破壊してくれよう! 原型すらとどめぬ程にな!」 再び二人の戦いが始まった。  さっきと違うのはランム、ガディグ、クルタルグスの三人がいない事。 ロックの 不利なように見えたがそれを補って余りあるほどの意志、『諦めない心』を手にし たロック。  ・・・戦いの行方はまだ分からない・・・

4話

「ローリングシールド&レインフラッシュ!」 ロックは叫んだ。 すると次の瞬間、ルインのまわりがシールドの様なもので包ま れ、シールドの内部には雨が降らされた。 「なんだこの雨は? ぐおおおおおおおお!! これは強酸の雨か!?」 シールド中は何故か強酸で満たされず、時間が経つにつれてより強く降っていっ た。 「まずい、このままでは体が溶ける・・・ うおおおおおお!」 ルインは自分のまわりを覆っているシールドを打ち壊した。 「(くっ、ダメージを無効化する装置がやられたか!?) このままでは私がやら れる・・・ あんなやつを金縛りにしている余裕はない!」 ルインはランムの体の自由を奪っていた光の輪を消した。 遺跡内部・・ 「えっ? うわわわわっ!? あいたっ!」 突如光の輪が消えた事により、ランムは地面に落ちた。 「いたたたたた・・・ 光の輪が消えた? 上で何かあったのか? ! こうし ちゃいられない早くトリッガーを・・・っとその前に二人を起こさなきゃ。」 ランムはガディグに走りよった。 「ガディグ! 起きてガディグ! 起きて〜」 ランムはガディグの体を揺さぶった。 「お、おい、やめろ、もう起きてる。 気持ち悪いから止めてくれ。」 ガディグが起きるとランムはガディグを掴んでいた手を放した。 ゴンッ! ガディグの頭が壁にあたった。 「いって〜 おいランム! いきなり手を放すな! 頭が壁にぶつかっただろう が!」 ガディグがランムに対して文句をいうが、ランムは既にクルタルグスの方へ走り よっていた。 「オイ、シカトかよ・・・」 そう言いながら、ガディグもクルタルグスの方へ走りよった。 「ん? ! ルインはどうした!?」 目覚めたクルタルグスが言う。 「ルインとトリッガーは地上へ向かったみたいです。 地上の被害が広まらないう ちに僕達も行きましょう。」 ランムの言葉に従い三人は地上へと向かった。

5話

「ニードルキャノン!」 ロックの右手から尖ったものが発射された。 ルインはそれを避けようとするが 横っ腹にかすった。 「ちぃ! ならば! ニードルレイン!」 ルインは両手を広げた。 するとロックの頭の上に先ほどロックが撃ったものと同 じものが降り注いできた。 ロックは側転でそれを避け、今度は両手をルインに向 けた。 するとロックの手はバスターも何もついていない素手の状態になった。 「ハードナックル&ロックンアーム!」 ロックの両手がルインに向かって飛んでいった。 ルインは両方とも叩き落とし た。 そしてそのまま一気にロックに接近し、 「はあああ!」 かけ声と共にロックの腹部にエネルギー弾を当てた。 バキャアン!  ロックは空中に吹っ飛んだ。 が、その不安定な体制のままバスターをルインに向 けた。 「ホーミングミサイル!」 かなりの速度で連射されたミサイルがルインに襲いかかった。 ズドドドドドドドド・・・・  ミサイル着弾時の煙りでロックの視界からルインが消えた。 すると横からゴミ屑 が飛んできた。 ロックがそれを反射的にバスターで撃つと四方にそれが拡散し、 拡散したゴミ屑がロックにあたった。 ゴミ屑と言っても主に鉄くずである。 予 想以上の固さであるそれはロックのアーマーにヒビを入れた。 しかし、それでも ロックは怯まなかった。 「チャージ! スピンホイール!」 ロックの右手から尖っている歯車が出た。 直後、それは八方向に拡散した。 そ してそれはルインに直撃した。 「ぬおおお! はあ、はあ、はあ、はあ・・・」 「くっ・・・はあ、はあ、はあ、はあ・・・」 二人の息づかいはあらかった。 突如、空中から何かが飛来してきた。 「何だ、あれは? リーバードか?」 「あれはまさか・・・ガディグのリーバード、トロウア?」 トロウアはそのままルインへと体当たりをし、ルインが吹っ飛ぶとロックの方へと 近寄って行った。 「君はトロウアだよね? 何かこの間と違って背中に翼が生えてるけど。」 ロックの言う通りトロウアの背中には翼が出来ていた。 その容貌はまるでペガサ スのようだった。 「ガディグサマハドコデスカ・・・・」 「え、ガディグ? まずい、忘れてた! ・・・えっとね、ガディグは遺跡内にい る。 死んではいないはずだけど。」 「ワカリマシタ。」

6話

「大丈夫かトリッガー!」 遺跡の入り口から大きい声が聞こえた。 「よかった、まだ生きてた・・・」 ランムは安心した。 「・・・どうでも良いんだが・・・この出方、ルインの部屋に入った時とほとんど 同じではないか?」 クルタルグスがさりげなく言った。 「まあ作者が作者だしな。 そんな事よりトロウア、どうしてここに・・・って言 うかなんで翼まで生えてんの?」 「ワタシニモワカリマセン・・・・」 「? このリーバード・・・特殊タイプではないか! ガディグ! お前これをど こで手に入れた!?」 「急に出けえ声だすなっての! 吃驚するだろが! ったく・・・トロウアはヘヴ ンで故障しかけてたからオレが直したんだよ。 そしたらオレになついた(?)ん だよ。 で、なんだよその特殊タイプってのは。」 クルタルグスの大声に対してガディグが冷静に答える。 「名前そのまんまだ。 進化したり特殊条件下で活動が活発になるもののこと だ。」 クルタルグスがそう言い終わるとルインも立ち上がった。 「ガディグサマ、クルタルグスサマ、ランムサマハダメージガヒドイヨウス。 ト リッガーサマ、ワタシガサンニンヲオマモリシマスノデ、アヤツヲタオシテクダサ イ。」 「もちろんだ。 三人を頼むよ。」 そういうとロックは立ち上がったルインのもとへと向かった。 「ガアアアアアアアアアア! 私は!これ以上負けるわけにはいかんのだ!」 「ひとつ聞きたい事がある。 君は何者なんだ? 何故そこまでしてロックマンを 倒したがるの?」 咆哮をあげるルインにロックが聞く。 「何者かだと・・・? ・・・よかろう、私は貴様を知っているのに貴様が私の正 体を知らないので手加減しました、では私もいささか不愉快だからな。 ・・・・ 私は、宇宙から飛来した存在だった。 当時、悪のエネルギーと呼ばれていた私は 意識はあるものの、ただロボットに取り付き、それを暴走させるだけだった。 つ まり、無力な存在だった。 だが、そこで私を拾ってくれたワイリー様は私に力を 与えてくれた。 私が取り付いた存在を、それが強固な意志を持っていない限り、 私自身が支配できるように、と。 そして私はある時、私に力をくれたワイリー様 が『ロックマン』と言うものにその願い、世界征服をを邪魔されていると知った。  だから私はロックマンを倒すのだ。」 「そう・・・わかった。」 

7話

今度は変わりにルインが口を開いた。 「私にも聞きたい事がある・・・・ 先ほども聞いたが何故デコイと呼ばれるもの 達を助けるのだ・・・・ 奴らはお前に何もしてはくれない・・・・ 同じ創られ しモノとして不公平だとは思わんのか・・・・」 「僕は・・・・みんなを助けたいし、それが僕を創ったマスターの願った事でもあ るから・・・・・」 ロックは答えた。 「そうか・・・・ 私がワイリー様のために世界を滅亡させようとするのと変わら ない・・・・ 私達は自らを創った者のため、自らを見い出してくれた者のために 戦うのだな・・・・ わかった。 続きを・・・始めよう。」 その後、二人は戦った。  トロウアに守られているランムとガディグはトリッガーを助けようと幾度となく戦 いに参加しようとしたが、 「戦いの邪魔はするな。 その傷ついた体ではかえって足手まといになる。 私達 にできる事はトリッガーが勝ってくれる事をただ願うだけだ。」 とクルタルグスに言われ、不本意ながらもただ見ていた。 ロックの装備したブレードがルインのボディをかすめた。 ルインはトリッガーの 足下に光球を放ち、爆発させる。 ロックは空中へと舞い上がるがそのまま反転 し、反撃へと移る。 ロックがブレードを振り降ろすとルインは手で受け止めた。  その時、二人は互いの顔を見た。  二人とも、後ろへ飛び退いた。 「(次で決まる・・・・)」 二人は同じ事を思った。  戦いは、間もなく終わりを迎えようとしていた。 「二人とも五分だ・・・ このままじゃトリッガーとルインは相打ちになる・・・  僕はトリッガーに死んでもらいたくない・・・ 先生にこの勝負に入ってはいけな いと言われてるけど!」 ランムはある覚悟をした。 二人はその場にたたずんでいた。 何も言わず、その場から全く動こうともせず、 まるで時が止まったようだった。 ・ ・ ・ ・ ・ 沈黙はやぶられた。 二人は互いに接近し始めた。 そしてロックは空中ヘと飛 び、地上でルインが迎え撃つかたちとなった。 ガキィン  金属のぶつかりあう音がした。 「くっ、体が動かん! 貴様!」 ルインの体はランムによって押さえ付けられていた。

8話

「おい、あれは・・・ランム!何をした!?」 クルタルグスが言う。 「きっと・・・トリッガーとルインは相打ちになる。 僕はトリッガーに死んでも らいたくない。 だから・・・」 「立体映像で押さえ付けようと・・・ !? むこうがお前の本体か!?」 ガディグが気付く。 「・・・うん」 ランムはいやに冷静だった。 「ランム! どくんだ! 危ないぞ!」 ロックは叫んだ。 「気にしないで一緒に斬ってくれ! それは立体映像だ!」 トロウアの近くにいる偽のランムは言った。 「わかった! うおおおおおおおおおおおお!」 「まずい! やめろ!トリッガ アアアアアアアアア」 ガディグの叫びはもう手遅れだった。 シュパンッ ・ ・ ・ ルインの体は真っ二つに分かれた。 「まだだ! うおおおおお!」 ロックはブレードを横に振った。 ルインの体は四つに分かれた。 「うおおおおおおおおお!!」 ルインの叫びがこだました。 「ハッ・・ハッ・・ハッ・・ハッ・・やったか?」 ロックは膝をついた。 「ワイリー様・・・・申し訳ありません・・・・ 貴方様の夢、また叶えられませ んでした・・・・!」 「ガハア! ガハッガハッ。 まだ・だ・・これで最後・・・・」 ランムは最後の力を振り絞り、再び立体映像を出した。 ルインの目の前に二人の 老人と一人の少年が現れた。

9話

「ワイリー様にDr.ライト、ロックマン!? 何故!?」 「すまなかったな、ルインよ・・・・ ワシのわがままにつきあわせてしまっ て・・・・ 本当にすまなかった。 もう安らかに眠るのだ。」 老人の一人が言った。 「ですが! 私はもう後には引けません! そのような事を言われても私は・・・ 今までの事を二人に、ライトとロックマンに許してもらえるとは思いませ ん・・・・!」 「いや、気にする事はないんじゃよ・・・・・ わしらはお前を恨んだりはしてお らん。」 もう一人の老人が言った。 「そうだよ。 僕らは君を恨んでいたわけじゃない。 君はただ力の使い道を誤っ てしまっただけなんだ。 気にすることはないよ・・・・」 少年は言った。 「なっ・・・・・二人とも、私を許してくれると言うのか・・・・! こんな私 を・・・・ お前達を殺そうとした私を・・・・! すまない・・・心のそこか ら・・・礼を言うぞ・・・!」 ルインの目から涙がとめどなく溢れた。  ・・・・・・・・間もなく、ルインは消滅した。 「消滅した・・・・これで・・・終わったんだ・・・」 ロックはそうつぶやくとクルタルグス達の方へと歩み寄った。 その時、ロックは ある事に気付いた。 「・・・あれ? ランムは・・・?」 「死んだよ・・・」 ガディグが答えた。 「え・・・?」 「お前が切ったランムは立体映像ではなく、ランム本人だ。」 「そ、そんな・・・ウソ・・・でしょ?」 「本当だ。 アイツはお前が死ぬのは見たくなかったらしくてな、変わりにその身 を犠牲にした。」 クルタルグスは哀しんでいないかのように淡々と話した。 「そ、そんな・・・じゃあ、僕がランムを・・・・?」 ・・・マスターが言っていた四つの終わりは現実のものとなった。 ワイリーの世 界征服の野望の『終わり』、ロックマンを倒すという夢の『終わり』、ロックマン の名をもつ者の戦いの『終わり』、そして・・・・ロックマン・ランムの生の『終 わり』、すなわち『死』だった。

<エピローグ>

「・・・というお話じゃよ。」 イスにもたれている老人が言った。 「ロック達はどうなったの?」 近くで座って聞いていた子供が言った。 「いや、わからん・・・・ このお話はこれで終わりなのじゃよ・・・・」 老人は答えた。 「ウソだ! 隠してるんでしょ? 教えてよ!」 子供は老人にすがった。 「本当じゃよ。 このお話は本当にこれで終わりなのじゃ・・・」 老人はゆっくり言った。 「ふ〜ん、そうなんだ。 うん、わかった。 じゃあ今度また伝説のディグアウ ター、青い人『ロック』のお話を聞かせてね。 それじゃあ僕おうちに帰るね。  またね、ティーゼルおじいちゃん!」 子供は元気よく外へ出ていった。 「気をつけて帰るんじゃよ! ・・・・・ふー ・・・・ロックがヘヴンに行って しまってからもう50年になるのか・・・ 長いようで短かったのう・・・」 老人は50年前の出来事を思い出した。 −50年前− 二人の青年が丘の上に立っていた。 ティーゼルとロックである。 「なんだ? 話って言うのは。」 ティーゼルが言った。 「ティーゼル、僕、へヴンに行こうと思うんだ。」 ロックが言った。 「そうか・・・ なんでだ?」 ティーゼルは聞きたくもないのに理由を聞いた。 「うん。 この間あったルインとの戦いを終えて、やらなければいけないことが出 来たんだ・・・」 ロックは静かに言った。 「そうか・・・ で、いつ行くんだ?」 ティーぜルはまた聞きたくもないことを聞いた。 「・・・明日には行こうと思う。」 「そうか。 随分早いんだな・・・」 「・・・驚かないの?」 「・・・予想はしていた。 二人で話があるって言われたからな。」 「そう・・・」 「ロールやトロンには隠しておくんだな?」 「・・・うん。」 ロックは少しためらいながらうなづいた。 「そうか・・・」 「それと、遺跡は間もなくディグアウトできなくなるから。」 「お前が言っていたガディグとクルタルグスとか言うやつがそうしようとしている んだな?」 「うん。 みんなを危険な目に合わせたくないからって僕が頼んだんだ。」 「じゃあ今のうちにディグアウトしておくか・・・」 ティーゼルは思ってもいないことを言った。 「もう、会えないかもしれないね・・・・」 「そうだな・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」二人の間に沈黙が流れた。 「それじゃあ、『また』いつか。」 「ああ。 『また』な」 二人は『また』という言葉に意味を込めたつもりだった。 「フー・・・・・ アイツは今も元気じゃろうか・・・・」 ティーゼルは再びため息をついた。 コンコン  誰かが窓ガラスを叩いている音がした。 「ん? 誰じゃ?」 ティーゼルは窓の方を向いた。 窓の向こうには、『青い人』がいた。 「また、会えたのお・・・」 ティーゼルは窓の向こうの『青い人』に言った。  ティーゼルの目には『青い人』は微笑んでいるように見えていた。 「やるべきことが終わったのか?」 その問いに『青い人』はゆっくりとうなづいた。 「そうか・・・」 ティーゼルはゆっくりと目を閉じた。  窓の外の『青い人』は消えていた。 満月と、その側にある『へヴン』と名付けられた星が、夜空でひときわ美しく輝い ていた・・・・     ロックマンDASHアナザ−ストーリー〜ロックへの試練〜     第五章(最終章)<過去に縛られし者、それを解き放つ者>                                 −完−


transcribed by ヒットラーの尻尾