「ロックマンDASHアナザーストーリー〜ロックへの試練 第1章<心>」
著者:太陽神さん
第2章<友と憎しみと> 第3章<試練、その意味>> 第4章<近づいている終末の時>

1話

ロックがヘヴンから帰ってきてから1年程たったある日、その事件は起きた
「トリッガ−、どこにいるの? トリッガ−」慌てているようなそうでないような
感じでユーナがロックを探していた
「どうしたんですか、ユーナさん」部屋からロックが出てきて答える
「あ、いたいた どうしたもこうしたもないわよ また『古き神々』が目覚めたのよ
  しかも今回のはなんか変なのよ」
「またですか・・・・・ 今回で何回目だろう・・・・・」ロックが疲れたように言う
しかしそう言うのも無理はない。ヘヴンから帰ってきて間もない頃は、2週間に
ひとつぐらいのペースで目覚めていた『古き神々』がここ一週間では毎日目覚め、
昨日と一昨日は2ケ所も目覚めた為かなりハードだったのだ。
今日はまだそういった事もなく、
ロック自身「昨日一昨日とあれだけ頑張ったんだから今日ぐらいはないだろう」と思っていた
しかし現実は甘くない為こうである
「ん? なんか言った?、トリッガ−」
「いえ、別に何も ところで何が変なんです?」少し慌てた感じでロックは言い直す
「あ、そうそう その事なんだけど、いままでは遺跡が急に独自の活動を始めてたで
しょ? 今回も急に活動を始めた事に変わりはないんだけど・・・・・・」
「けど・・・どうしたんです?」

2話

「なんていうかその・・・・向こうから名指しで指名があったのよ。」
「は? 何を言ってるんですかユーナさん。冗談はやめて下さいよ。
それとも僕にその名指しされた人の護衛でもしろと?」
そう言いながら部屋に戻ろうとするロック。しかも少しおこりぎみである。
そこへセラがやってきて、
「『ロックマン・トリッガーことロック・ヴォルナットを連れて来い』
先ほど目覚めたばかりの遺跡からだ」
と真顔で言う。さすがにセラに言われると説得力があるようで、
「ホントですか?」とつい聞き返してしまう。
その反応を見たユーナが少し怒りながら、
「トリッガ−、何よその反応…なんであたしの言う事は信じないでセラちゃんの言う事は
信じるわけ〜 ひっど〜い」
「いや、そういうわけじゃあ・・・・・・・・」とロックがごまかし(?)の言葉を言うも
「じゃあどういうわけよ〜」とユーナがつめよる。
「いや・・その・・」と困っているロックを助けるがごとくセラが
「おぬし達、今はそんな事をしている場合ではないだろう。それよりも何故『古き神々』
がトリッガーの今の名前を知っておるのだ?」
「確かに言われてみればそうね」とユーナ
「そういえばそうですね」とロックも言う
「おぬし達、感心している場合ではないだろう・・・
この『古き神々』はもしかしたら・・・」
「もしかしたら・・・・」ロック、ユーナが声をあわせて言う
「トリッガ−のことを常に監視していたのかもしれぬ。方法はわからぬがな。
突然活動を再開したように見せかけて呼び出したのもおそらく何かわけがあるはずだ
…行ってはくれぬか? それにお主の過去の事もわかるやもしれん」とセラ。
「・・・・・・わかりました、行きます」ロックは少し考えてから言った

3話

早速その遺跡に行きディグアウトを開始する。
ヘヴンから帰ってきてからはサポートが二人に増えた。
ロールちゃんとトロンちゃんだ。何故トロンちゃんがサポートをしているのかわからないので、
データに聞いてみたら『ああ、トロンちゃんはねロックを助けるのに
協力した時お金をいっぱい使っちゃったらしくて
少しでも返してもらいたいから一緒に来てるらしいよ
(本当の事言ってもいいんだけどロックに言ったらどうなるかわかんないしね。
こんなふうに言っておけばロックは納得するでしょ)←<データの心の声>』
と言っていた。
トロンちゃんは家族のティーゼルやボン、それに40人いるコブン君たちはどうしたのだろう。
いまいちサポートをしている理由がわからないけどそんなことはまあいいや。
でも困った事にこの二人、僕が戦闘中だろうと休んでいる時だろうとなんだろうと
無線をきらずによく口喧嘩をしている。しかも大声で。『船頭多いと船山登る』とは
この事だなと実感する。それが嫌で『サポートの順番を決めてくれないかなあ?
ディグアウト中に口喧嘩されると困るんだけど・・・・・』と言ったら二人に
『ロックは黙ってて!!』と言われた。何故こういう時の息はピッタリでサポートの時は
てんでバラバラなのだろうと思う。だがなんにしろ僕の立場は、ない。
そんな事を思っていた矢先にまた口喧嘩が始まる。
目の前にはリ−バードのシャルクルスやホロッコ、更にはマンムーまで迫ってきている。
念のため持ってきたシャイニングレーザーでさっさと倒すが、その間も口喧嘩が続いている。
怒りたいのだが怒ると矛先がこっちに向くし、なによりもう呆れている。
もう無視するしかないと思った。
そう思いながら進んでいくと横にふと気になる小部屋を見つけた。
部屋の中には宝箱があった 中にはかなり古い書物が入っていた。

4話

「かすれててよく読めないな… えっと……『ロックマンXに関するレポートと考察』?
なんだこれ?中には何が書いてあるんだ?……だめだ かすれてて全く読めないや
ん〜わかるのは人型のロボットの図案が書かれている事ぐらいかなあ。
ロックマンって表紙に書いてあるから
オリジナル・ヒト・ユニットの『ロックマンシリーズ』の事かな?
  セラさんやユーナさんに聞けばわかるかな?とりあえず持って帰ろう」
そしていまだ続いている口喧嘩を聞きながらどんどん進んでいき、
遺跡の最深部と思われる所まで来た。
カトルオックス島のように扉はでかく、まわりの壁は白い
そしてお約束(?)といわんばかりに無線は途切れた。
こんな大事な所で口喧嘩が聞こえなくなったのはちょうどいい。
そして僕は扉を開けた。
「なんだ、ここ?今までと違ってまわりが赤い。まさに真紅だ」
そう言いながらロックは部屋の奥にあるカプセルに気がついた。
近寄ろうとするとそのカプセルが開き、
中からオレンジ色のア−マーを着た人型の物体が現れた
顔はいわゆる美形 髪の毛は短く、
まぶしいような金髪でどこかからすきま風でも流れ込んでいるのだろう。
わずかになびいていた。
そしてそれが入っていたカプセルは奥に扉でもあったのか奥へと消えていった。
ロックはそれを見た時、何か言い様のないものを感じた
「あなたですか? 僕、ロック・ヴォルナットをここに呼んだのは」
カプセルから出てきた人型のそれにロックが尋ねた
「…そうだ私だ…ロック・ヴォルナットを呼んだのはこの私だ……
  ……そうか…お前がマスターの言っていたトリッガ−か……」
人型のそれが懐かしむように言った

5話

「あなたは誰です?『古き神々』のはずなのに
何故僕の名前を知っているんです?」
ありのままの自分の疑問を聞くロック。
「まだ名乗っていなかったな…私の名はロックマン・ランム……
太陽神の名を受け継ぎし者だ。勘違いしているようだが
私は『古き神々』ではない…お前と同じマスター達に
作られたオリジナル・ヒト・ユニットだ……」
ランムと名乗るものが答え続ける。
「私はある事情によりマスターからお前の監視を仰せつかったのだ。
だからお前の今の名前を知っているのだ」
「マスターが?何故そんな事を?それにどうやって?」
ロックは困惑しながら聞いた。記憶の中で見たマスターは
そんな事をするような人物ではなかったからだ。 
「お前がデータを作るまでは小型の監視ロボットを使っていたが、
お前がデータを作ってからはやつに小型のビデオアイを埋め込んだ。
もちろんやつの記憶にその事はない、と言うかこちらで抹消した。
余談だがこの時にデータをかなり改造した」
淡々と話すランム。ロックはこの時
「(だからデータって大気圏突入できるのか・・・・・・)」などとのんきな事を考えていた
「理由はマスターからの伝言で『時が来たらトリッガー君を試して欲しい』と・・・・」

6話

「その『時』とは?」アホな事(?)を考えるのをやめ、ロックはランムに聞く。
「…へヴンの機能が停止してから1年程経ち、当たり前だがお前が生きている事だ…
ここはとりあえずへヴンからは独立しているからな。その程度の事はすぐにわかる」
「つまりそれが今だと?」
「その通り、今から試練を与える。死にたくなかったら、
お前の持てる全てでこの試練、見事乗り越えてみせろ!」
静かな口調からまるで別人のように激しい口調へと変わるランム。
まわりの壁の色が一瞬にして赤から青に変わり、
目の前には先ほどとは明らかにプレッシャーの違う人物がいた。
ロックは目を疑った。そこには自分がいたからだ。
いや、自分そっくりの人物がいたと言うべきだろう。
「あなたは…?」全くもって訳がわからないロックが目の前の人物に聞く。
「私は…一等粛正官……ロックマン・トリッガ−………」
自分そっくりの人物が答える。するとどこからかランムの声が聞こえ、
「そいつと戦うのが試練だ…過去の自分を見事乗り越えてみせろ…
私が乗り越えたと判断したら試練は終了だ…言っておくがそれは幻ではないぞ」
それ以後ランムの声は聞こえなくなった。
目の前の自分、トリッガ−がロックに向け異常なスピードで接近し、
バスターを撃ってくる。ロックは避けようとするもア−マーにかすってしまった。
かすったとはいえ威力は凄まじいようでア−マーにヒビが入り、
ロック自身も衝撃を受けた。

7話

「そ、そんな!このア−マーはロールちゃんとトロンちゃんの合作で、
今までのどんなア−マーよりも硬いのに…もうやつの攻撃には当たれない!
  全部避けるしかない!いや……全部避けてみせる!」
そう言いながらもロックは内心恐怖していた。
「グランド・ノヴァ!」
そう言いながらトリッガーは斜めの方にバスターを乱射した。
「? どこに撃っているんだ…?!まさか!」
後ろを向くと予想通りバスターが飛んできた。
全てを間一髪で避けるものの、一発だけヘルメットに当たり粉々に砕け散った。
「くっ!ヘルメットまで…だけど今がチャンスだ!シャイングレーザー!!」
ヘルメットの事も気にするが相手が隙を見せたのですかさず
シャイングレーザーを打ち込むロック。
「ぐああああああああああああああ!」
見事に当たり吹っ飛ぶトリッガ−。
手応えを感じたロックは撃つのをやめた。
「倒せたか!?」その期待は無惨にも打ち砕かれた。
立ち上がるトリッガーを目の前にして絶望するロック。
最強武器であるシャイングレーザーが効かないのだから
……ロックの目には生気がすでになかった。
トリッガ−がロックめがけてバスターを撃った
アーマ−が粉々に砕け、ロック自身も壁まで吹っ飛んだ。
なんとか立ち上がるもののロックにはなす術がなかった。
ロックはあまりの恐怖に『死』を感じた。
過去のディグアウトで恐怖を感じた事はあるが、
『死』を感じる恐怖は初めてだった。
「ここまでか…意外とあっけないものだ」
そう言いながらトリッガーはとどめのバスターを撃った。
「………はっ! 危ない!」
ロックは当たる直前で我に帰り、間一髪直撃は避けたと言っても
右腕に当たり、シャイニングレーザーは使い物にならなくなった。

8話

「そうだ……!たとえ勝ち目がなくてもロールちゃんやトロンちゃん、
バレル博士達が、僕の帰りを待ってくれている人がいるんだ!
僕の帰りを待っている人がいる限り、僕は…負けるわけには…
いや、死ぬわけにはいかない!」
ロックがそう言うと周りが元に戻り、目の前にはロックマン・ランムが立っていた。
「? 一体…何が起きたんだ……?」
「今のは私が造り出したヴァーチャル・リアリティだ…
本物ではないが痛みなどは現実と同じように感じるのだ…お前の『絶望』
と言う名の恐怖に打ち勝つ心、しかと見届けた」
「じゃあ僕は試練をクリアしたのか?」
「その通りだ……そして、これを……」
ランムはふところからICチップを出し、ロックに手渡した。
「これは?」
「マスターからお前宛の伝言だ…確かに渡したぞ…10数年か…長かった……
これで私の役目も終わりを告げる……私に見せたその心、決して…忘れるでないぞ…
さらばだ」ランムは微笑みながらそう言った。
「ちょっと待って下さい!まだ聞きたい事が…」
ロックの声が聞こえなかったようにランムはドアの奥に去っていった。
ロックがドアを開けようとするもカギが掛かっていたらしく開かなかった。
ドアにバスターを撃っても傷一つつかなかった。ロックは
「シャイニングレーザーなら・・・」
と思ったが先ほどの戦闘で壊れてしまったので諦めざるをえなかった。
「……ク? ロック聞こえる?」
「つながったの!? どきなさいよあんた! あたしが先よ!」
「なによ、トロンこそ!」
またロールとトロンの口喧嘩が始まった。
それを聞いたロックは安心したのか、その場に座りこんだ。

9話

地上に戻ると地下で何があったかセラとユーナに報告していた。
「最深部でロックマン・ランムという人にあい、試練を受けました」
「ロックマン・ランム?誰それ?あたし聞いた事ないわ」
「何を言っているのだユーナ、昔マスターから聞いた事があるだろう。
『オリジナル・ヒト.ユニットには司政官や粛正官タイプの他に
試練官タイプがいる』と。確か試練官には特殊能力を
持った者がなっていたはずだ。確かそやつの特殊能力は
『ヴァーチャル・リアリティ・ホログラフィー(仮想現実と立体映像)』
だったはずだ。おおかた異常に強い過去の自分とでも戦ったのだろう」
「ええ、そうです。何でも『恐怖に打ち勝つ心』があるかの試練だったらしくて…」
「それで見事合格したってわけね〜」
「はい。なんか叫んだら周りが元に戻って……」
この言葉はユーナのいたずら心(?)を刺激した。
「さけんだ?なんて?あ、トリッガ−もしかして
『僕には好きな人がいるんだ!』とでも言ったんじゃないの〜?」
「そそそ、そんなわけないでしょ!どういう話の流れでそうなるんですか!」
少し(かなり?)慌てるロック。
  それもそうだ。違う事を言ったにしても今思えば少し恥ずかしいセリフだ。
知られるのは嫌だろう。
「慌てる所がまた怪しいわねえ〜?
あ、トリッガ−『僕はユーナさんの事が好きだ−』とでも言ったんじゃないの〜?
あたしは別にいいわよ?」
「何がいいのだ、ユーナ。確か他にも試練官はいたはずだ。
また来るやもしれん。気をつけるのだぞ。」
「あら、セラちゃんらしくないわね〜『気をつけるのだぞ』な〜んて」
「うるさい!少し黙っとれ!とにかく、
また『古き神々』が目覚めるまでしっかり休んでおくのだぞ」
「それと……」
「ん? まだ何かあるのか?」
「ランムからマスターの伝言が入っていると言うICチップを貰いました」
そう言いながらランムは貰ったICチップを出した。
「なんだと!? 貸せ! さっそく見るぞ!」
セラはロックの手からICチップをひったくり、データを読みこんだ。

10話

「セラちゃんすごい剣幕で取ったわね〜」と小声でユーナ。
「そうですね」ロックもうなずく。そんな事を言っていたら…
「読み込みが終わったぞ!」とセラ。
それはいわゆるビデオレターだった。
3人はモニターに映っているマスターに釘付けになった。
『トリッガ−君、君がこれを見ているという事は僕はもうこの世にはいなく、
そして僕の頼み通りシステムを破壊し、試練に合格したのだろう。
もしかしたら横にセラとユーナもいるのかな?
それはそうと君がリセットを掛けた時の為に
僕の『遺伝子コード』がどうなったかを伝えよう。
…君は僕の『遺伝子コード』を貰うとすぐに、
その場で破壊した。僕がお守りとして君に渡し、
“必要がなくなったら処分してくれ”と言ったら君は僕の目の前で破壊した。
笑顔で“もう必要無いですよ”と言ってね。
だから僕の『遺伝子コード』はもうないはずだ。セラは落胆すると思うが
君が選んだ事だ。僕から文句はないよ。それと試練の事だが、
今回のも含めて三つある。残りの二つがいつかは秘密にしておこうと思う。
もちろん試練の内容もだ。ただこれだけはわかって欲しい。
これはただ君を試す為だけではないという事を。
そしてこの伝言の最後に一つ、
残りの試練をクリアすればまた僕の伝言が貰えるはずだ。
まだ聞いてもらいたい事もあるので、頑張って試練を乗り越えてもらいたい。
とりあえず試練官にはトリッガ−君を殺さないようにと言ってあるけど、
試練官ってあまり僕の言う事を聞かないから気をつけてね。
それじゃあ……また』
そのあとはメッセージがないようなので
セラが手元のリモコンでモニターのスイッチを消した。
「……………」伝言が終わって、3人はしばらく何も言わなかった。
いや、おそらく何も言えなかったのだろう。
……しばらくしてセラがその沈黙をやぶった。

11話

「トリッガーよ、『マスターの遺伝子コード』については気にする事はない。
お主が処分してしまったのは残念だが……いたしかたあるまい」
「……」ロックは黙っていた。何を言えばいいかわからなかったからである。
それに気づいたユーナが、
「そうよトリッガ−。気にする事ないわよ」
「…そう、ですよね。僕が言うものなんですけど過ぎてしまった事ですし…」
そう言うもののロックにはあまり元気がなかった。
「でもセラちゃんもずいぶん大人しくなったわね〜
『マスターの遺伝子コード』が無いってわかったら絶対怒ると思ってたのに」
「なんだとユーナ?私は怒らなければならなかったのか?」
ユーナの言葉に対し、あきらかに怒っているセラ。
「冗談よ冗談。セラちゃんそんなにおこんないで〜」
そう言いながらユーナはロックに片目でウインクした。
それに気付いたロックは内心ユーナに感謝した。
するとトロンの声がスピーカーから流れてきた。
「ロック! また『古き神々』が目覚めたわ。
疲れているでしょうけど行ってきて!」
「……」3人は一瞬黙った。
「大変だな、トリッガーよ」
「トリッガーかわいそ〜」
ロックの沈黙の中セラとユーナが言った。
「……はい。それじゃあまた行ってきます。」
ロックはとてもだるそうに言った。
(当たり前と言えば当たり前だが)
「(なんで僕ってこう女の人のしりに敷かれるんだろう。
それにみんなは本当に僕の帰りを待ってくれているのだろうか。……あっ!
そういえば遺跡で手に入れたこの本の事、言うの忘れてた。まあいいか。
そんなに急ぐものじゃないと思うし……)」
そう思いながらロックはディグアウトの準備を始めた。
それが第2の試練とは知らずに…


−エピローグ−

ランムはカプセルに戻ってからトリッガー、つまりロックの事を考えていた。
「何故私は試練が終わったあとあいつに話し掛けなかったのだ!?
やはり自分の事を忘れられていたからか? 何故だ! 何故……!」
ランムはわかるはずのない疑問を考えていた。

……やがてランムは祈り始めた。トリッガーの無事と幸せとを…。
ヒトとして、機械として、試練官として。
…そして……『かつての友」として…。

ランムは覚める事のない眠りについた。
友に忘れ去られた事の哀しみと、立体映像でない『本物』の友の顔を見れた事の
嬉しさとを噛み締めながら……。

一つ例外があるとすればトリッガーの…『友』の身に何かがあった時だろう。
その時は目覚め、必ずあいつのところに行くだろう。
『試練官』という敵としてではなく、『友』という味方として…。
そうなる事がないようにと願いつつ……。

………ランムのほほを………つたうものがあった。

−第1章 完−



transcribed by ヒットラーの尻尾