第12話「小さな疑問」
ここはリュウ達の泊まっている船の中。
船の形は龍の頭をモデルにして造ったそうだ。
確かにその形は龍の顔から翼が生えているような感じで、
全体的に赤いカラーリングが施されており、すごくかっこいい。と、ロックは思った。
名を『ミフォラス号』と言う。
「ここが俺達の船だ。」
船の中の一室にロックたちを通し、リュウはどうして墜落したのかをロック達に聞いた。(そして大爆笑した)
「な、何もそこまで笑わなくても良いじゃないですか。」
「だ、だってよ・・・」
リュウがヒイヒイ言いながら腹を抱えて笑っている。
レオンやタイガーも同様だ。
2、3分ほど笑い続けた後、タイガーが提案した。
「そ、そういえバ、まだ船の構造を詳しく知りませんでしたネ。
どうでス?これから船の中を見回ってみてハ?」
「そ、そうだな。しっかし味噌汁とは・・・」
さっきの話が余程つぼにはまったのか、時々ククク、と含み笑いを漏らしている。
「そ、その話は、もう良いじゃありませんか。」
ロックはつい恥ずかしくなってそれを遮った。
「ま、それもそうだな。おい、タイガー、案内してやれ、俺は母船にこの事を伝える。」
「わかりましタ。」
その後なにやらぼそぼそと話し合い、結論が出たようだ。
そうすると、リュウは無線を取ってなにやら話し始めた。
「母船?それって一体・・・?」
とロックが言いかけた所で、タイガーが先に行ってしまった。
小さな疑問を抱きつつも、ロックは慌ててその後を追った―――
第13話「超巨大母船ナハトムジー
それから約10分、船の中を案内された後、何か質問は無いかと問い掛けられた。
ロックは先程から抱いていた疑問をタイガーに投げかけた。
「ああ、そのことですカ、それならホラ、そろそろ見えてきましたヨ。」
と言って、タイガーが窓の外を見た。ロック達もつられて窓の外を見る。
いつの間にか船は発進していたようだ。辺り一面に真っ青な空が広がっている。
・・・と、なにやら大きな船のようなものが見えてきた。だが、雲が重なってよく見えない。
「あれガ我らトルネード一家が誇る超巨大母船、『ナハトムジーク』でス。」
と、雲が消え、だんだんとその船の全貌が露わになってきた―――
第14話「でかい!」
・・・・・・でかい!
それがナハトムジークを見たロックの感想だった。
ともかくでかいのだ、軽く見積もっても縦横合わせてゲゼルシャフト号の3倍はある。
見た目は角の丸い赤色の長方形に丸窓が付き、龍の首と六枚の翼が生えたような形だが、
それも手伝って船はさらに巨大に見える。そして、もう1つ目を引くものがあった。
甲板の前方から伸びた巨大な大砲。
大きさはゲゼルシャフト号程もある。一度火を吹けばおそらく町の1つや2つ消し飛ぶであろうことは容易に想像する事が出来た。
「貴方達にハ、これからあそこで生活してもらいますヨ。」
と、タイガーが告げたのだが、ロック達には聞こえていなかったようだ。
「ロックさン?どうしましタ?」
タイガーが気付いて声をかけると、ロックは我に返ったようだ。
「い、いえ、ただ、その、すごいなあって・・・」
よっぽどナハトムジークにショックを受けたのか、喋り方がどこかたどたどしい。
「ふふ、まあいいでしょウ。どれ、到着するまで私の部屋でゲームでもしてましょうカ?」
「ゲーム?」
「ええ、チェスに、オセロに、ボードゲームなら大体有りますヨ。」
最近は、カードゲームもコレクションしていまス。」
「うーん、どうする?ロールちゃん、僕はロールちゃんさえよければ・・・」
ロックは心の中で少し興味を持ちながら、ロールに同意を求めた。
「いいんじゃない?このままでいるのも退屈そうだし・・・」
と、ロールもそれに同意した。それに続いてバレルとデータも賛同した。
「じゃ、決まりですネ。」
こっちです、とタイガーが先に行った。
ロック達もそれに続いて、タイガーの後を追っていった―――
第15話「母船到着」
「チェックメイト。」
タイガーの手がコトリ、と盤上に駒を置く。
「おお〜・・・」
「うっき〜・・・」
バレルとデータが感嘆の声をあげる。
その盤上には敵の兵に包囲され、成すすべなく佇む黒き王の姿が在った。
「あちゃ〜、また負けちゃった。」
ロックがいかにも悔しそうな声で言った。
ここはタイガーの私室。
今、ロックがチェスでタイガーに記念すべき20連敗目を喫した所である。
その様子を見ていたロールが思わず吹き出した。
「あー!ロールちゃん、今笑ったでしょ!?タイガーさんってホントに強いんだよ!?」
ロックが少し怒った口調で言った。
「フフッ、ゴメ〜ン、ロック。」
ロールはペロッと舌を出しながら、ロックに詫びた。
「も〜、ロールちゃんってば・・・でも、タイガーさんってホントに強いですね。」
「フフッ、それハそれハ、有難う御座いまス。
でモ、ロック君もなかなかいい筋してますヨ。」
「ええっ、そうですかあ?」
などと和気藹々としていた所に、室内のスピーカーからリュウの声が聞こえてきた。
『え〜、まもなくナハトムジークへ到着する。忘れ物など無い様、各自支度を整えておくように。以上!ブツッ・・・』
「おっト、そろそろ到着ですネ、では皆さン、荷物をまとめてくださイ。」
タイガーが指示を出し、皆が荷物をまとめ終わった頃、ゴゴン・・・という小さな振動があたりを包み込んだ。
なんだ?とロック達が困惑していると、タイガーが言った。
「着いたようですネ。ようこそ、我らがナハトムジークヘ。
・・・・此処にお客を招いたのは、久しぶりですヨ。」
と言い終わるとタイガーが部屋を出た。それに続いてロック達も部屋を出た―――
第16話「ビックリ仰天」
「さ、こっちでス。」
そう言ってタイガーはミフォラス号から降りると、つかつかと奥に進んでいった。
「あ、待ってくださいよ!」
ロックも慌てて後を追う。ちょっとしてからロール達もそれに続いた。
その後・・・・・
「はー・・・」
ロックは思わずため息をついてしまった。
その後、タイガーに連れられ、「応接間でス」、と言われて部屋に通されたのだが・・・
その装飾たるや、サルファー・ボトム号に負けず劣らず、といった感じで、
高価そうな壺やフッカフカのソファ、さらには『花鳥風月』と書かれたこれまた高そうな雰囲気の掛け軸まで掛けられている。
「ほーんとすごいわね・・・」
「まったくじゃ・・・」
「うっき〜・・・」
ロール達もロックと同じような感じだ。
そのとき、不意にドアノブがガチャリ、と動き、この船の主が姿を現した―――
第17話「作戦参謀と武器設計者」
と、なにやら見知らぬ人物がいる。
「あれ、その人達は?」
ロックが質問する。
「ああ、紹介するぜ。」
というと、リュウはロックの言う『その人達』のほうを振り返った。
「まず、こいつが俺達の作戦参謀兼現場指揮官、ウルフ・トルネードだ。」
そう言って、その少年に向かって指を指した。
紫色のショートカットの髪、サファイアのような澄んだ蒼の瞳。
スリムでコンパクトにまとめられた紫色のアーマー。
少し(ってかぶっちゃけ結構)目付きがきついが、
顔の形も整っており、肌は雪のように白い。
いわゆる美形の青年だ。
「・・・よろしく。」
と短く挨拶すると、とたんにウルフはくるっと踵を返し、さっさと部屋を出ていってしまった。
「すまねえな、あいつ、人付き合いが苦手なほうだからよ。」
気を悪くしねえでくれよ。と言いながらリュウは次の青年のほうを指差した。
「んでもってこいつが・・・」
「わしが、空賊トルネード一家の武器開発、設計を担当しとる、パンサー・トルネードじゃ!」
とリュウが言う前に1人で言い切った。
ピンクがかった赤色の髪、同じ色の瞳、濃褐色の肌、ずいぶん明るそうな口調、
顔は綺麗で整っていて、『明朗活発』という言葉が良く似合いそうな青年である。
「よろしくのう。」
そう言って、握手を求めてきた。ロックがそれに応じると、にっこりと笑って言った。
「おんし、いい眼をしとるのお。きっとおめえは、すっげえ奴になるぞ!
っと、そうじゃ。わしは用事が有るんじゃった、そんじゃ、失礼させてもらうきに。」
と言って部屋を出て行った。
「ま、あんなやつさ。」
リュウが苦笑して言った。
「じゃ、そろそろ本題に入るか。」
リュウはそう言って、ロック達の向かいの椅子に座った、
これまでとは打って変わったような、真剣な眼差しで―――
第18話「本当の理由」
「本題・・・」
リュウの真剣な眼差しを見て、ロックは思わずゴクリ、と唾を飲んだ。自然、手にも力が入る。
「ああ、俺が、お前らを助けた理由・・・」
リュウの視線と目が合った。間髪いれずにリュウは言う。
「確かに、困っている奴はほっとけねえ、だが、それがお前ら。世間で言う所の『青い少年達』か、
それなら余計だ、お前らの行く所には、何時もいい仕事や面白い仕事が絡む・・・」
「それって、つまり・・・」
「ああ、お前達は、今回どんな仕事をしようとしているのか?そして、それがもし面白そうなら
俺たちも一口かませてもらおう、と思ってな。」
「で、でも、面白そうかどうかなんて・・・」
「それは俺たちが決める事だ。」
と即答され、ロックは封印の鍵の事、ミュラー氏にその事で依頼を受けた事、
そして今までのいきさつをリュウに話した。ロックが話し終わると、リュウはにやり、と笑って言った。
「なるほどな、封印の鍵か・・・・・おもしれえ!決まりだ!!」
「へ?決まりって・・・?」
ロックが言う間も無く、リュウは机に付いていると思われる引出しからおもむろに無線を取り出して大声で言った。
「野郎どもぉ!久々のでけえ仕事が入った!仕事内容は封印の鍵のディグアウト!
詳しくは追って伝える!心して掛かるように!以上!」
そう言って無線を切ると、今度は携帯電話を取り出し、どこかに電話を掛け始めた。
「もしもし、ああ、俺だが、ああ、今すぐ頼む・・・」
そう言ってから数秒後、また話し始めた。さっきよりも、幾分真剣な面持ちで。
「あ、もしもし、ミュラーさん?」
・・・・・え?
一瞬、リュウがなんと言ったのか理解できなかった。だが、ようやく思考が追いつく。
「え、ミュラーさんって、その、もしかして・・・」
ロックが言うと、リュウは人差し指を軽く唇に当て、『しっ』と小さく言った。
それに促されるように、ロックは黙りこくってしまった。
数分後、電話を切ったリュウはロックたちに告げた。
「よし、ミュラー氏の了解も得たし、決まりだな。」
「は、はあ・・・」
ロックはもう何が何だか解らない、といった感じだ。
その後、ロック達は色々と質問をされた後、ナハトムジークの内部を簡単に案内され、リュウ達の部屋の前の廊下に連れてこられた。
「此処が俺達の部屋で、こっちが空き部屋になってる。まさかこんな所で役に立つとは・・・」
「え、こんな所って・・・?」
「あ、いや、こっちの話だ、それより今夜はもう遅い、とっとと部屋決めてとっとと寝な。」
そう言ってリュウ達はそれぞれの部屋へ入っていった。
そうして、取り残されたロック達はとっとと部屋を決め、とっとと寝たのだった―――
第19話「テシター32号」
―――AM5:00起床
『起床ーー!皆、起きてくださーい!』
「え!?う、うわっ!」
ズドーーーン・・・・・
突然の室内アナウンスで、ロックはベッドから転がり落ちた。
「な、なんだあ?」
錯乱中のロックの耳に、なんだか聞いた事のあるような声のアナウンスが聞こえてきた。
『食事はAM6:00から食堂でーす!皆遅れないように来て下さいねー!』
「この声、どこかで聞いたような・・・?」
どこだったっけ?と考えていたロックは、ま、そのうち思い出すだろう。という
何とも楽天的な思考に辿り着き、備えつきのTVの電源を入れ、流行のTVアニメを観つつ、
着替えをし始めた。(着替えはすべてフラッター号から持ってきた。)そのとき・・・
トントン、トントンとドアをノックする音が聞こえてきた。
まだ着替えの途中だったロックは急いで穿きかけのジーパンを穿き、急いでドアを開けた。
「はーい!」
ゴン!
「な、なんだ!?」
鈍い音とともに、何かが廊下に転がった。
「い、痛いですぅ〜」
と、廊下に転がった何かが素っ頓狂な声を上げた。と、それを見たロックが仰天した。
「コ、コブン君!?」
「へ?」
そう、廊下に転がった何かは、間違い無くコブン・・・の筈だったが、アーマーを着ている。
右腕にはバスターまで装備されている。それに、顔つきも微妙に違う。なんと言うか、全体的な雰囲気が違うのだ。
「コブンって、誰ですか〜?」
「へ?」
「僕は、テシター32号です〜タイガー様に作られたんで〜す。」
「あ、そう・・・」
「あ、それより、客人さん。もうすぐお食事ですから、食堂に案内しますよ〜」
「え、でも・・・」
ロックは左腕の腕時計を見た。
「まだ5時48分だよ?」
そう言ったロックに32号が言った。
「この船は広いですから、10分ぐらい速く行動しないと遅れてしまうんですよ〜。さ、こっちです〜。」
そう言って、先に言った32号の後にロックはついていく。
食堂にロック達が着いたのは、ちょうど5:58であった―――
第20話「目指すはマンダ島ポクテ
AM6:00朝食
食堂で朝食を摂ったロック達は、32号に会議室に案内された。朝の会議に出席して欲しい、の事だそうだ。
AM6:45朝の会議
「では、本日の日程を決める。」
そう言って、リュウが会議をはじめた。
メンバーは、リュウ、タイガー、レオン、パンサー、ウルフ、眼鏡をかけたテシター5人と
アーマーを着たテシター5人、そしてロック、ロール、バレル、何故か知らんがデータだ。
「まず、本日の日程の前に、我々の新しい仲間を紹介しよう。」
リュウはそう言って、ロック達のほうを見た。
「皆も知っての通り、ロック・ヴォルナット君とその仲間達だ、
しばらく勝手が解らんだろうから、皆協力してやってくれ。」
そう言って、視線を元に戻した。
「では、本題に戻る。本日の、と言うより、これからの日程は、封印の鍵の奪取だ。
ロックの話によると、1つ目の鍵は、マンダ島のポクテ村と言う所に有るらしい。
今回の任務は、その鍵を誰よりも早く我々が奪取する、ということだ・・・と、ここまでで何か質問は?」
そうして誰も異議を唱えないのを確認してからリュウは続けた。
「誰も異議は無いな。よし!そうと決まれば善は急げだ!これにて解散!
ロック達は部屋へ戻っててくれてかまわねえ。着いて来たきゃ着いて来な。
他のものは俺と一緒に司令室に来い!以上!!」
そう言って、リュウ達は出て行った。ついついロック達も続く。
司令室(ナハトムジークの頭の部分)に到着したリュウはマイクを持って叫ぶように指示を出した。
「野郎ども、今日の日程が決定した!仕事内容は封印の鍵の奪取!
目指すはマンダ島ポクテ村!野郎ども!気合入れていくぞぉおおおおおおお!!」
「おーーーーーー!!」×沢山
そうして、明るくなり始めた空をバックに、雄大なシルエットを浮かばせながら
ナハトムジークが悠々と空を滑っていった――――
第21話「マンダ島に向けて」
「ここだな、マンダ島は。」
リュウはだんだんと近づいてくる島を見つめながら呟いた。
「あそこに1つ目の封印の鍵が・・・」
ロックも何処となく緊張した面持ちで呟いた。と、その隣でリュウが何かに気付いた。
「どうやら、先客が居やがるようだ。」
ちっ、と舌打ちしながらロックに告げた。
「えっ?」
そうロックが言った瞬間・・・
バーン!!
マンダ島で小規模な爆発が起こり、細長い煙がゆらゆらと立ち昇っている。
「なっ!?」
それを見たロックは驚いて目を見開いた。ロールやバレルも同様だ。
そんな中、リュウは的確な指示をテシタ―たちに送っていた。
と、次の瞬間、リュウがロックたちに言った。
「おい、格納庫へ急げ!ミフォラス号で出るぞ!嬢ちゃんたちはここで待機しててくれ!!」
リュウがヘルメットをかぶりながら走り出す。
「「え!?は、はい!!」」
いきなり声を掛けられたのでロックとロールは声がひっくり返ってしまった。
その瞬間後、ロックは慌ててリュウの後を追った。
―――場面変更・ナハトムジーク・格納庫
「ロック、こっちだ!って、何で丼がいるんだ!?」
リュウがデータを見付けて言った。
「い〜じゃん、い〜じゃん気にしない気にいない!」
データがお気楽そうに言う。
「ちっ!まあしゃあねえか!ミフォラス号発進!!野郎ども!!行くぞー――!!」
リュウがデータを半ば無視しながら言った。
「おおーーーーーーーー!!」×20
テシター達がそれに答えるように雄叫びを上げる。
そうしてリュウ、タイガー、レオン、ロック、テシター達(ついでに丼)を乗せた
5機ほどのミフォラス号が格納庫からマンダ島に向けて飛び立った―――
第22話「登場!ヤクトクラベ改」
フシュウゥゥゥゥ・・・
まるで大きな風船の空気がだんだん抜けていくような音をたて、ミフォラス号はマンダ島に到着した。
と、勢い良くドアを開け、一人の人影が地面に跳び降りた。
「おい!速くしろい!他の奴等に先を越されちまうぜ!!」
リュウがロックたちに怒鳴った。ロックやテシターが慌ててミフォラス号の外に出る。
「よし!5人残って見張りをしてろ!他は俺に続け!!」
そう言ってリュウがタバコにジッポーで火を点けながら駆け出した。
言われた通りテシターが5人残り、他の者はリュウに続いた。(勿論丼も)
そのとき、前方に黄色い顔をした子どもたちがその辺りをうろついているのが目に入った。
「テシターに似ていますが・・・別物のようですね。」
タイガーが言った。
「そうか、ボーン一家の野郎どもだな。テシターと同じようなもん作りやがって。あんなもんは無視だ、無視!」
そう言ってリュウ達がコブンたちの側を通りすぎようとした時、タイガーが何かに気付いた。
「兄さん、あれ・・・」
「ん?」
何だ?とでもいった感じでリュウが振り向くと、その先には何かのゲートがあった。
「ふーん、見た感じからしてサブダンジョンか。よし、おい、レオン!」
「んあ?」
と、レオンはその赤髪を風になびかせながら振り向いた。
「おめえ、テシター5人ほど連れてあそこ調べて来い。」
「あいよっ。」
レオンはそう答えて5人のテシターと共にゲートをくぐっていった。
「さてと、俺たちも急ぐか。ボーン一家の野郎ども、先を越させやしねえぜ。」
そう言って、リュウ達は前方の大きな門をくぐっていった。
と、前を行くリュウが突然足を止めた。ロックが声を掛けようとすると、その前にリュウが言った。
「へっ、どうやらおでましだぜ!」
そう言ったリュウの前には、大きな蟹型メカが立ちふさがっていた。
ヤクトクラベ改と、操縦者のトロン・ボーンだ。
と、ヤクトクラベ改から威勢のいい声が飛んできた。
「きたわね!ロック!・・・って、あんた達は誰よ?」
といきなり疑問を投げかけられた。
「あん?俺たちか?俺たちは空賊トルネード一家さ!良く頭に叩き込んどきな。」
そう言うとリュウは解ったかい、嬢ちゃん?と付け加えた。と、ヤクトクラベ改がフルフルと震えだした。
「じょ、嬢ちゃんですってー!?よくも馬鹿にしてくれたわね!?
トルネードだかトンネルだか知らないけど、たっぷり御礼をしてあげるわ!!」
そう言って、ヤクトクラベ改が軽やかに飛翔した―――
第23話「激突!ヤクトクラベ改」
「くらいなさい!」
そう言うが速いか、ヤクトクラベ改が軽やかに飛翔しその巨体を利用してリュウ達を踏み潰した!
ズズウゥン・・・
が、もう既にリュウ達の姿はそこには無かった。
「ど、どこに!?」
トロンが慌ててあたりを見回す。が。
「へっ!遅え遅え!!」
「えっ!?」
と、突然背後から声がした。
「くらいやがれ!」
そう叫ぶや否や、リュウは左手を前に突き出した。
「我がトルネード一家の科学力が生み出した超最新兵器!スロットアーム!
その力、とくと拝むがいい!!」
そう言ってリュウはなにやら小さなカードのようなものを取り出した。
「NWC(ノーマルウエポンチップ)、ショットガン!スロットイィィン!!」
そう言ってリュウが左手にカードを差し込んだ。と、その瞬間、
左手が光に包まれ、その光が収まったとき、リュウの左手はバスター状のパーツに変化していた。
「え、ええっ!?」
トロンが驚愕の声を漏らす。それと同時にリュウが叫ぶ。
「くらえええええええええ!!」
そう言うと同時にリュウがショットを放った―――
第24話「決着!ヤクトクラベ改」
バシュッ!!
リュウの放った弾がヤクトクラベ改に迫る!と、
ヤクトクラベ改にヒットする前に玉が四方八方に散らばった!
「え、えええぇぇぇ!?」
トロンが驚いている間に、散らばったショットがヤクトクラベ改を襲った!
バキィン!バチッ!バシュッ!ガシッ!バンッ!ガガガガガガガガ・・・
そのショットはヤクトクラベ改の鋏を砕き足をもぎ取り、ヤクトクラベ改をほぼ丸裸にした。
「とどめだ!俺の愛刀、爆龍丸の切れ味をみな!」
そう言ってリュウが背中の太刀を引き抜いた。
「くらえっ『横一閃』!!」
そう言ってリュウは瞬時にヤクトクラベ改に近づき、その剣を真横に振りぬいた!
ズバアァッ!!
次の瞬間、ヤクトクラベ改は縦と横に真っ二つにされていた。
そしてその次の瞬間には、ヤクトクラベ改は爆発し、砕け散った。
「あれぇぇぇぇ・・・・・」
そう言いながらトロンが放物線を描いて飛んでいった。
が、着地して3バウンドした後、すくっと立ち上がり、リュウに向けて言う。
「こっ、今回は私の負けだけど、今度は負けないんだからね!
あなたたち、退却よ!」
そう言ってビシィッ!とリュウを指差した後、迎えに来たドラッへ改に乗って大空の彼方へと飛び去っていった。
「へっ、いつでも来やがれってんだ。さ、いくぞ!」
「はいはイ、サ、ロックさン、行きますヨ。」
「え、あっ、は、はい!」
突然の出来事に驚いていたロックがはっと我に返ったときには、
リュウとタイガーは村の奥に見える少し大きな家に向かって走り出していた―――
第25話「封印の鍵INポクテ村序
ヤクトクラベ改を撃破した後、リュウ達はポクテ村の村長の家に来ていた。
「それで、封印の鍵の事なんだが・・・」
リュウが村長に出された茶を啜りながら言った。
「ああ、その事でしたら、この建物を出て向かって左側の大きなゲートをくぐっていただければ・・・
でも、急いだほうが良いかもしれませんわ・・・」
村長が少し困ったような顔をしながら言った。
「ん?そいつはどう言うこった?」
今度はせんべいをかじりながら村長に聞いた。
「ええ・・・実は、あなた方の前にも遺跡を訪ねてきた人が居たんですの、
とってもニコニコした、優しそうな子だったんだけど・・・」
「な、なにい!?」
それを聞いたリュウはぶったまげた。
「くそ、先を越されたか!おい、タイガー!ロック!テシターども!急ぐぞ!!」
と言うが早いかリュウは村長の家を飛び出した。
「は、はい!」
とロックも続く。
「はいはイ、ただいマ。」
タイガーも出ていく。
『おー―――っ!!』
そして最後にテシター達が雄叫びを上げ、それに続いた。
―――遺跡の前
そこにはリュウ、タイガー、テシター達とぜいぜいと肩で息をしているロックがいた。
「お〜、ここかあ・・・」
リュウが遺跡を見て言う。
「意外と大きいですねエ。」
タイガーも遺跡を見上げながら言った。
「やった〜あまり怖く無さそ〜。」×10
テシター達が心底ホッとしたような声で言った。
「あ・・足・・は・速いで・・・すね・・ハア、ハア・・・」
ロックが息を切らしながら言った。
「ん?ああ、鍛えてるからな。」
リュウがガッツポーズをとりながら言った。
(ど・どう鍛えればあんなに速く走れるようになるんだろ?)
ロックがやっと落ち着いたように言った。
「お前も鍛えりゃ速く走れるようになるって、さ、行くぞ!!」
そう言ってリュウ達は遺跡の中へと姿を消した―――
第26話「封印の鍵INポクテ村第
「ん、ありゃあ・・・」
リュウが何かを見付けて言った。ロックもつられてそちらを見る。
その目線の先には、上のほうに掛かった橋を渡る青年、
先程村長が言った『とってもニコニコした優しそうな子』がいた。
「おい、手前、なにもんだ!!」
リュウが青年に向かって叫んだ。
と、その青年はリュウに気付いたように振り返った。
「おや、もう来てしまいましたか。もうちょっと時間が掛かるかと思いましたが・・・」
そのニコニコした優しそうな青年、αが意外そうな、しかしさほど驚いてはいないような声で言った。
「なに!?手前、ボーン一家の仲間か!?」
リュウは相手が商売敵である事を確信し、おもわず声を張り上げた。
「だったらどうだと言うんです?これ以上あなた方に構っている暇はありません、それでは、さようなら。」
そう言うとαはさっさと先へ進んでいってしまった。
「ちっ!先を越されてたまるか!行くぞ!手前ら!!」
そう言うと、リュウは左の方に見える扉に向かって走り出した。
「あ!ちょっと!待ってくださいよ!!」
タイガー、ロック、テシター達もあとに続く。
「ちょ、ちょっと、リュウさん!」
ロックがリュウを追いかけながらリュウに声を掛けた。
「なんだ!!」
リュウが走りながらロックの問いに答える。
「何故こっちの扉を選んだんですか?他にも扉はあったのに?」
ロックが先程浮かんだ疑問をリュウに言った。
「こいつのおかげさ。」
リュウがそう言ってロックの左に並びながら右目に掛かっていた髪を
マントの下から出した真っ赤な右手でたくし上げた。
「!!」
ロックが目を見開いた。その真っ赤な右手にも驚いたが、
それ以上に驚いたのはリュウの右目の所為だった。
黒い目に赤い瞳。なんと、リュウの右目は人のそれでは無かったのだ。
「この義眼はな、遺跡のマップを瞬時に把握する事ができるのさ。
だから俺にはどこに進むべきか解ったって訳だ。ま、オペレーターもいるがな。」
リュウはそう言ってコンコンとヘルメットの耳の部分をたたきながら言った。
しばらく行くと、通路の奥にエレベーターが見えた。リュウはそのエレベーターに乗り込みながら言う。
「おい、ロック、早く乗れ!タイガー!今から俺たちは先にエレベーターで上に行く!
おまえらは隠されたアイテムをディグアウトしながら後を追ってきてくれ!!」
「はイ!了解しましタ!!」
そうタイガーが言ったのを聞きながらリュウとロックはエレベーターを昇らせた―――
第27話「封印の鍵INポクテ村第二章・対峙」
ゴゴォォォン・・・・・
エレベーターが盛大な音を立ててリュウ達を上の階へと運んだ。
「さて、早いとこ追っかけ・・・」
とリュウが次の言葉を言おうとした瞬間・・・
「ぐああああああああああ!!!」
何者かの悲鳴が聞こえてきた。
「「!!」」
「行くぞ!ロック!!」
リュウはその悲鳴を聞くと同時に走り出した!
「はい!」
ロックもリュウに続く!
「ここか!」
バアン!!
リュウ達は飛び掛ってくるリーバードを蹴散らして突き当たりの扉を開けた!
「おい!どうした!?」
と、そこにはそこかしこを何かで切り裂かれたような傷でボロボロになった
茶色いアーマーの忍者が倒れていた。
「おい!大丈夫か!?・・・!お前は、ボーラ!?」
その茶色いアーマーの忍者を見て驚愕した。
『B・Bブラザーズ』の異名を持つ凄腕空賊の1人、ボーラだったのだ。
「お・おお・・リュウか・・・かっこ悪いところを見られちまったな。」
ボーラは息も絶え絶えにリュウの名を呼んだ。どうやら知り合いのようだ。
「あ・あの・・小僧に・・気をつけろ・・・
あいつは・・ただもんじゃ・・ねえ・・・グッ!」
そう言うとボーラは気絶してしまったようだ。
「ボーラ!?ボーラ!!ちっくしょうが!!
ロック!急ぐぞ!そいつを負ぶさらせてくれ!!」
そう言うとリュウは低くしゃがみ込んだ。そこにロックがボーラを負ぶさらせた。
「行くぞ!ロック!!」
そういうより速くリュウは走り出した!ロックも急いでそれに続く!
―――5分後
「ここかあ!!」
そう言ってリュウは目の前の扉の横にいたデータにボーラを預けた。
「よし!これでいいな。ロック、いよいよだぜ!・・・・・はあっ!!」
そう言ってリュウは扉の前に立ち、勢い良く扉をその紅蓮の右腕で殴りつけた!!
ガゴオオオオオオオオン!!
その瞬間、目の前の扉は物凄い音を立てて砕け散った!
「てめえ・・・覚悟しな。」
リュウは、もうもうと立ち昇る土煙の中に平然と立っている青年・αを見てそう言った――
第28話「封印の鍵INポクテ村第三章・vsα前編」
「おやおや、挨拶にしては、ちょっと派手過ぎますよ。」
もうもうと立ち昇る土煙の中砕けた扉の破片は天井や壁に突き刺さっているが、その破片をまったく受けていないようだ。、
ニコニコとしながらαは言った。リュウはそれを無視して言う。
「ボーラをやったのはてめえか?」
そう言ったリュウにαは平然と言い放った。
「ええ、そうですよ。」
と。
その瞬間、戦いの火蓋は切って落とされた。
まずはリュウが仕掛けた。
「俺様の爆龍丸の切れ味を見ろ!!横一閃!!」
そう言うと同時に手に持った大太刀を真横に振りぬいた!!
が、そこにαの姿は無かった。
「ここですよ。」
なんと、αは5mは上にあろうかと言う天井に付きそうなほど高く跳んでいたのだ。
「なに!?」
リュウが驚愕に目を大きく見開いた。(ま、人が5mも跳んでいるのを見たら誰だって驚くけどね。)
だが、リュウが驚いたのはそれだけの所為ではなかった。
なんと、αの両足が蛙型リ―バード、フロンゲルのそれに酷似していたからだ。
「フフフ、驚きましたか?これが私の能力。
リーバードの体の一部を自分の体と融合させる事ができるのです。」
αが着地しながらリュウに向かって言った。
「な、なんだと!?」
リュウがまたしても目を見開く。
「驚くのはまだ早いですよ!」
そう言ってαが左手を突き出しながら言った。
その左手は、この部屋の主だった大蛙、ガルガルフンミーの頭部だったのだ。
「喰らいなさい!!」
そう言うが速いか、αの左腕から高速で鞭状の舌がリュウ目掛けて伸びてきた!
「くっ!」
リュウはそれを横っ飛びでかわした!
「まだまだ!」
αが続けざまに鞭を撓らせる!
リュウは何とかかわすが、かわしきれなかったものもあったのか、
アーマーの所々に傷が出来ていた。
「中々やりますね、しかし、それもいつまで続きますか!?」
そう言うと、左手を前に突き出して叫んだ。
「スライスウィップ!!」
そう言うと同時に、αは左手の鞭の先を鎌のように変えつつ、その鞭に高速でリュウを襲わせた―――
第29話「封印の鍵INポクテ村第四章vsα・後編」
「うおおっ!?」
リュウがしゃがんで難を逃れた。
ふと上を見るとリュウが避けた場所の壁には、ぱっくりと切り傷が出来ていた。
「こんなもん喰らったらさすがにやべえな。」
リュウが冷や汗を垂らしながら言った。
「なら、喰らわせて上げましょう。」
そう言ってαがリュウにその鞭を振り下ろそうとした瞬間・・・
「危ない!!」
バシュバシュバシュッ!
バスターの弾が3発ほどαに向かって放たれた。
勿論犯人はロック。
「なっ!?」
不意をつかれながらもαが飛び退く。
ロックの放った弾はαをかすめ、反対側の壁で散っていった。
「不意討ちとは、中々あじな真似をしてくれますね。」
αが舌打ちをしながら言った。
「あの攻撃を避けるなんて、なんて身体能力だ・・・」
一方ロックは完全に不意をついた攻撃が避けられた事に驚きの色を隠せない。
「へっ、一筋縄じゃあいかねえか。なら、これでどうだ!」
そう言ってリュウは右手でチップを取り出し、左手に差し込むと同時に跳び上がった!
「NWC、ショットガン、スロットイィィィィン!!」
その瞬間リュウの左手はバスター状のパーツに変化した。
「ロック!うまく避けろよ!!」
次の瞬間、リュウの左手から無数の弾丸が四方八方に発射された!!
「くっ、しまった!くっ!ぐあっ!うおっ、ぐあああああああああ!!」
だが、αは全く避ける素振りを見せず、弾丸の大半をその身に受け、
その場から吹っ飛び壁にぶち当たった。
「なに!?」
リュウが驚きの声を上げる。ロックの不意討ちを避けた相手だ、当たっても2・3発がいい所だろう、
と踏んでいたのだが、相手はその場から動かず、その身に弾丸を浴びた。
リュウとしては問題は無いのだが、どうも腑に落ちない。
「どういうつもりだ?・・・」
リュウがαに近づこうとしたとき・・・
何者かがリュウの前に飛び出した!―――
第30話「封印の鍵INポクテ村第五章・飛び出して来た者は――」
「も、もうやめてくださ〜い!」
リュウの前に飛び出して来た者、
それはヤクトクラベ改との戦闘の前に見た、あのロボットであった。
「ん、てめえは、ボーン一家の・・・」
リュウはいきなり前に飛び出してきた者を見て呟いた。
「コ、コブン・・・下がって・・なさい・・・」
リュウの弾丸によってボロボロになってしまったαがコブンに向かって言った。
「コブン?それがこいつの名か・・・ん?」
と、リュウはコブンが手に持っている物に気が付いた。
「そいつは・・・封印の鍵じゃねえか?」
「え!?」
ロックが驚きの声を上げる。だが、
コブンが持っている物は確かに鍵のように見えなくも無い。
「こ、これを渡しますから、αさんを攻撃しないで下さい〜。」
と、コブン目はを潤ませながら持っている物をリュウの前に突き出した。
「い・・いけません・・コブン・・・そ・それを渡しては・・・」
αはボロボロの体を無理やり持ち上げ、コブンに言った。
「あなたが・・それを渡した所で・・・どう・・・なるんです・・・」
と、αが言い終わる前にリュウがコブンの手から封印の鍵をとった。
「あ!」
コブンが突然の出来事に思わず声を上げる。
「へっ、安心しな、てめえ、そのちっこいのを守るためにわざと攻撃を受けたよな?
そんな事した為にボロボロになっちまった奴を攻撃するほど、俺は冷酷じゃねえよ。」
リュウはそう言うと何かをαに向かって放り、じゃあな、と言い残してロックと共に部屋を出ていった。
「これは、エネルギーボトルです!αさん!これを飲んでください!」
そう言ってコブンはαの口にエネルギーボトルを当て、半ば強引にその中身を飲ませた。
「ん・・・ふう、コブン、もう結構ですよ。有難う御座います。」
αがそう言ってエネルギーボトルを口から放した。
「さ、行きましょう。コブン。」
そう言ってαとコブンはその部屋を後にした。
数分後、αとコブンを乗せたドラッへ改はその舵を空高くに待機しているゲゼルシャフト号に向けた―――
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