RockmanX 〜Lumie´re Princesse〜 chapitre3 「正義の悪戯」
著者:エイルさん

1話

西暦21XX年、人間とレプリロイドが共存する時代。 さらわれたアイリスとケイン博士を追って、 犯罪組織・ブリュレの機動要塞「フラムサーブル」へと乗り込んだ エイル、エックス、ロール。彼らはブリュレのボス・ブラズィエとグラスを、 戦闘モードに変身したアイリスの「力」を借りて辛くも撃破した。 暴走することなく「力」を制御している彼女に驚きを隠せない三人の前に、 ケイン博士がひょっこり現れて事情を説明する。 かくして二人を救い出し安心したのも束の間、 突然アイリスの背中に向けて灼熱弾・ファラオショットが放たれた! 撃った者は・・・・なんと・・・・ 「ロッ・・・ク・・・マ・・・・ン・・・・・・・・?」 立ち尽くすロール。 ハンター本部所管の資料でしか見たことのない旧世紀のロボットを目にした エイル、そしてエックスは暫く目を疑っていた。 「あの人が・・・・ロックマンさん・・・・!」 「ど・・・どうして・・・・・君が、こんなところにいるんだい?教えてくれ!」 青と水色の装甲・・・・・・球形のヘルメット・・・・・・・ どことなくエックスに似たその外見で判断する限り、 紛れもなくロックマン本人である。疑う余地もない。 一方のロックマンは全く表情を変えずに言い放った。 「・・・・ボクはもう一度平和な世界を取り戻すために、再び戦うことにしたんだ。 だいたいエックス、君をもとに作り出されたレプリロイドさえいなければ、 最初からイレギュラーなんていう愚かな存在は生まれないのさ。違うかい? 真の平和は、奴らがいなくなった時にこそ訪れる・・・・・ それを人々にわからせるために・・・・・ボクはこれから妹のロールを連れ戻して、 地球に増えすぎたレプリロイドを残らず処分しなくちゃならない」

2話

「!!!!」 (ロールさん・・・・!) その台詞は、ロールの顔を凍りつかせ、それをエイルの脳裏に焼きつかせるには あまりにも十分すぎた。思わず戦慄するエックス。 「!!・・なぜだっ!?君は・・・君はそんなことができるような ロボットじゃないだろう!?100年前に世界を救ってくれたのは・・・・・ ロックマン、君じゃないのか!?」 だが、ロックマンはエックスの問いに対し、声を落として語りだした。 「確かに、ボクは昔何度もワイリーの野望を阻止した。 だけどある日知ってしまったんだ。 ライト博士が無限の可能性と危険性をもった戦闘用ロボット・・・ 『ロックマンX』を作っていること。 それを使って自分だけの世界を作ろうとしていること。 つまり、あれだけ人とロボットが共に生きられる世界を夢見ていた博士は、 ただ妄信的に理想を追いかけていただけなんだってわかったんだよ。 自分の描く平和な世界を実現するためなら、どんなことをしても構わないと・・・。 だから、ボクはもうライト博士に見切りをつけて研究所を飛び出した。 初めから戦いのために作られた君が もし『ロボットは人間を傷つけてはならない』っていう原則を破ったら、 やがて世界は滅びてしまう・・・・・。 そんなエックスを、レプリロイドを、放っておくなんてできない。 今こそ、本当の平和を取り戻す時なんだ!」 ロールは依然として石になっている。 これが今まで信じてきた兄の吐いている言葉であるとは、思いたくなかった。 だが目の前にあるのは、兎に角受け入れろとばかりに彼女を苛む、無情な現実。

3話

「そんな・・・・・・そんなの、筋違いです・・・・・・ レプリロイドがみんなイレギュラーになるなんて、 少しも決まったことじゃないですよ!」 エイルが怯えながらも強い口調で反論する。彼女は喋りながら、 レプリフォース大戦の後にゼロが言っていた「俺たちレプリロイドは、 結局みんなイレギュラーなのか?」という言葉を思い出していた。 人間が不完全である限りは、作られるレプリロイドも不完全なのは当然である。 そもそも、この世に完璧な生命体など存在し得ないのだ。 いや、むしろ存在してはならないのかもしれない。 しかし・・・・・ 「今言っただろ?エックスには無限の可能性があって、裏を返せば 無限の危険性もあるっていうことになるんだ。 そのエックスをもとに作られたのがレプリロイド・・・。 君もそうなら容赦はしないぞっ!」 次第に語気を荒げるロックマンの氷のような双眸の前に、 エイルは射すくめられた子猫と化してしまう。 息を呑んで様子を見ていたケイン博士が、たまらずに口を開いた。 「ワシの作ったレプリロイドはみな我が子供たち。 そう簡単に危険物扱いするんじゃないわいっ!!」 が、これにもロックマンは動じないようだ。 「忘れたわけではないでしょう?あなたは自分でエックスを使って イレギュラーの大もとを生み出しておきながら、 その存在を否定する組織をも設立した・・・。 これはもう矛盾だらけです。 確かにあなたにとってはレプリロイド=子供たちなんだろうけど、 所詮それは独り善がり! ボクのレプリロイド粛清を諌める理由になんかならない!!」 「いい加減にしなさいっ!!! ロックっ!!!」 皆が振り向くほどの大声で叫んだのは、ロールだった。 涙をボロボロこぼし、凄まじい剣幕でロックマンを睨みつけている。 「どこで頭ぶつけたのか知らないけど・・・・・ 間違ってるよ、ロックの考えてること・・・・・・・・・。 エックスが・・・エイルちゃんが、いったい何したって言うの? 酷すぎるじゃない、そんなの・・・・・・。 このまま戦うんなら、私・・・・・現時刻をもって、 ロックマンをイレギュラーと認定しますっ!!」 この時代においてロボットにイレギュラー認定を下すことは、十中八九、 イレギュラーハンターによるそのロボットの破壊を意味している。 そして、彼女の台詞がロックマンの命を奪うことを指しているのは言うまでもない。 「!?・・・・ロールさん!?」 動揺するエイルに一瞥もくれず、彼女の潤んだ瞳は、ただ兄を射抜いていた。 「・・・・・やっぱりあの時ライト博士に改造されてから、 ロールはボクの知ってるロールじゃなくなってたんだね。 邪魔するなら・・・・・・・・仕方ない!」 その動作に殆ど躊躇を感じさせず、カチャリ、と銃口を向けるロックマン。 隙は微塵もない。 「くっ・・・・・や、やるのか・・・・・・」 苦渋の表情で、エックス、続いてロールもバスターを構える。 恐怖心で満たされたエイルに出来るのは、もはや祈ることのみ。 もう、一度狂い出した歯車を元通りにすることはできなかった・・・・・・

4話

「アイススラッシャー!!」 暫くの睨み合いの後にこちらの不意をつき、ロックマンが冷凍弾を発射した。 複数射出されたそれは、鋭利な氷の矢となって一直線に突き進み、 エックスを串刺しにしようと襲う。 エックスもすかさず、 「なんのっ!!」 ファイヤーウェーブを発生させて打ち消した。 しかし当然のことだが、氷を一気に溶かした影響で激しい蒸気が立ち上り、 周辺の視界はあっという間に閉ざされてしまった。それでもロックマンは 全く手を緩めることなく、畳み掛けるように攻撃を仕掛けてくる。 「これが目くらましのつもりなのか? そんなものがあったって、ボクには君たちが見える!!」 その腕から、バラードクラッカー、スパークショック、ジャイロアタック、 ナイトクラッシャー・・・・・・まるで手品のように、多彩な兵器が撃ち出された。 一般のレプリロイドでは実現されていないが、 Dr.ライト開発の「武器可変システム」においては、 他の者が持つウェポンカードを組み込むことで、 通常装備以外にも様々な武装を使用できるようになる。 どんな武器チップでも強引に互換性をもたせるこのシステムを 標準で備えているのは、現在の地球上では、今戦っているロックマン、エックス、 そしてロールの三人だけである。 Dr.ライト製のロボットたちの殆どがシステムを搭載していないのは、 彼が自ら開発したそれの”危険性”を認めていたためだ。 それをなぜこの三人だけにもたせてあるのかは・・・・・・もう知る由もなかろう。 「ちぃっ、息つく暇もないか・・・ マグネットマイン!! スピニングブレード!!」 「流石に見覚えのあるヤツばっかね・・・ エイミングレーザー!! スパイクロープ!!」 霧の中から休みなく飛び出してくるロックマンの攻撃に対し、 持てる限りの特殊武器で応戦するエックスとロールだが、 時代・技術の差があるにも関わらず、全て相殺してしまう。 相殺というより寸でのところで食い止めているにすぎないものの、 ともかくこれでは埒があかない。 「い、いったいどうなってるんだ・・・・!? 旧世紀とはいえ、他のロボットとは桁が違う・・・・・ ロール、これがロックマンの力なのか・・・・・!?」 「そんなの・・・・わかんないよ・・・・・私だって・・・・わかんないよっ!」 二人が考えている間にも、ロックマンは多種にわたる武器で次々と攻めてきた。 「なんだ、終わりかい? 22世紀のロボット工学も堕ちたものだね!」 バーニングホイール、サンダークロー、コピービジョン、 そしてバリアウインドが続けざまに襲い掛かる。 「ちくしょうっ、マリントルネード!! ボムビー!!」 「こ、この調子だと弾切れしちゃうじゃないのっ!! ソウルボディ!! ダブルサイクロン!!」 再び衝突し、火花と共に激しくスパークする、世紀を越えた特殊武器。 やはり相殺したのを見て、次にロックマンが使ったのは・・・・・ 「これでどうかなっ!?」 時間を完全に止める恐るべき兵器・タイムストッパーだ! 「うわっ! ロール、打つ手はないのか!?」 「わかってる! ダークホールド!!」 時空間停止パワーの衝突も結局、対消滅に終わった。 戦いは、ただ徒に二人の体を限界に追い込んでいくばかりだった・・・・

5話

ふぅ、キリがないな・・・・・・・でもボクには掛け替えのない仲間がいる!」 ロックマンは業を煮やすと、不意に声を張り上げて叫んだ。 「ラッシュ!! エディ!! ビート!! タンゴ!!」 轟音と共に、何かがフラムサーブルの天井を乱暴に突き破って現れる。 いくら頑丈な戦艦であっても、今の一撃は効いたらしい。 大きな振動が艦内の者たちの直立姿勢を崩した。 「あ、あれは・・・・・・・!!」 「まさか・・・・・・・・!!」 そう、驚愕するエックスらの眼前に出現したのは、 他ならぬロックマンのサポートロボットたちであったのだ! いずれもが今の主と同じく鋭い眼光を放つその目を見る限り、 既に眼前の獲物を仕留めるための戦闘マシンと化している。 「・・・ピョ――――――ン!!」 「っ!? い、いやあぁっ!!」 戦いを見守っていたエイルの明らかな隙を狙い、 エディが爆弾のシャワーを浴びせた。 「エイルちゃんっ!!」 絶望に打ちひしがれるロールに、 「ピィィィィ――――――――ッ!!」 荒れ狂った鳥形メカが、光のような速さで背後から接近してくるでないか。 「ビ、ビート!? ・・・あっ!」 しかしロールが避けるより一瞬早く、猛禽ビートの嘴は彼女の鳩尾に達していた。 40メートル近くも吹っ飛ばされ、床に叩きつけられると同時に激痛が走る。 「・・・・なんで、なんでこうなるのよ!!・・・・・痛っ・・・・・足が・・・・・・・」 ギシギシと悲鳴をあげる関節。 口の中に溜まるエネルギーオイルを含んだまま、周囲を見回す。 狂っているのはエディとビートだけではなかった。 「こ・・・このロボットたちもロックマンに呼応しているのか・・・・くぅっ!」 「ニャオオオォォォォォォンッ!!」 我が物顔で暴れ回るタンゴの回転体当たりを拳一つぶんの間合いで 退きこみつつかわし、バスターを乱射するエックス。 が、コンマ一秒後にエディ、ビート、タンゴが粉々に爆散したのを見て反射的に、 「!!・・・・すまない・・・・」 と、ロールに謝ってしまった。しかし彼女の返答は・・・ 「もう・・・いいのっ!!」 涙混じりの、その一言だけ。二人が互いに気を取られていると、 「ワオオォォォォォォンッ!!」 「きゃあああぁぁぁぁぁ――――――っ!!」 エイルの足目掛けて、ラッシュが食らいついた! 「このぉっ、離せっ!!」 即座に撃たれたエックスバスターにカス当たりしたラッシュは、 サッと身を翻してロックマンのもとに帰っていった。 「だ、大丈夫かい、ラッシュ!?くうぅっ・・・・・エディ、ビート、タンゴ・・・・・・・・ 許さない。ボクは君たちを絶対に許さない。よし、ラッシュ!いくよっ!!」 とうとう怒髪天を突き、ロックマンとラッシュは空中に踊り出で・・・・ 「スゥゥゥパアアァァァ・ロックマンッ!!」 次の瞬間、一つになっていた。 「スーパーロックマン・・・・・ そんな、あの合体シークエンスはライト博士の改造で失われたはず!」 もはやロールの過去の記憶は、ガラスのように崩れ去ろうとしている。 ラッシュ、エディ、ビートたち・・・そして大好きな兄・ロックマンと 楽しく過ごした日々は、彼女の思い出から消えようとしている。 今起こっていることは幻なのだ。悪夢なのだ。いつかは覚める。 そう信じていたかった・・・・・・

6話

「みなぎるよ・・・・・・これがライト博士の技術に頼らない、新しいボクの”力”。 本当の未来を取り戻すための真の”力”なんだ!!」 何かを見えないものを掴むように、両手を握り直すロックマン。しかし、 「違うっ!!」 それはエックスに真っ向から否定された。 「破壊と殺戮のためだけに向けられる”力”だと・・・・・・? そんなものは正しい”力”じゃない!! 間違っている!!」 「うるさいっ!!間違ってるのは、ライト博士がリスクを顧みずに作った エックスの存在そのものじゃないかぁっ!!」 「ぐわっ!! しまった・・・・!!」 ロックマンがしならせたエレクトリックショックに絡め取られ、 エックスはその動きを封じられてしまった。 「くだらない説教はそこまでさっ!  インフェルノロケットバスタァァァァァ――――ッッ!!」 絶体絶命のピンチ。エネルギーを溜めたロックマンの右手が発射され、 周囲の床をメリメリと剥ぎ、高速回転しながら猛スピードで迫ってくる! 「ぐぅっ!」 エックスバスターでそれを止めようとするが、勢いは全く衰えず、 ついにロックマンの拳はエックスの胸に・・・・・・

7話

到達するはずだった。 「きゃああぁぁぁぁ――――っ!!」 エイルが二人の間に割って入り、エックスの盾となっていたのだ。 咄嗟にエイル・レイヨンを張ったことでダメージを軽減したとはいえ、 彼女は浅からず傷を負ってしまっている。 「エイルちゃん!?」 「しっかりしろ、エイルっ!!」 「わ、私は・・・大丈夫です。 それより、エックスさんを・・・助けなきゃ・・・・・・・・・・!」 「・・・・全く、無茶しやがって・・・・・。 待ってろ! 俺たちは必ず奴に勝ってくる。それまで大人しくしていてくれ」 すっと立つエックス。 卑下するような眼差しのロックマンを、じっと見据えている。 「とんだ邪魔が入ったけど、もう一度いけば終わりだね。 ・・・さてと、覚悟はいいかな?」 「何度でも来いっ!!これ以上エイルには触れさせんっ!!」 再び対峙する三人。 戦場であるここ・コマンダールームは、既に随所が破損し、 壁が大きくめくれている。 戦闘の余波を受けてむき出しになり、回路がショートしている制御装置。 ロックマンとの交戦開始から10分が経とうとしていた。 たかが10分であるはずだが、果てしのない長さに感じられる。 それほどに苦しく、つらい戦いであった。 本来決して戦うはずのない三人の激戦を目の当たりにし、 茫然とするしかないケイン博士とアイリス。 ただ一人、エイルだけは小さな異常に気づいていた。 「おかしい・・・・・おかしいなぁ・・・・・・・ あの人、本当にロックマンさんなのかしら・・・・?私に入力されてるデータと、 どうしても0.0001%だけ一致しない箇所がある・・・・・ ううん、そんなことより、何とかしなきゃ・・・・ このままじゃ、エックスさんたちが・・・・!」 やがて、遂に武器エネルギーを使い果たしたエックス、そしてロール。 何千発ものバスターを発射し、あまりにも体に溜まりすぎた疲労のために、 座り込んでしまっている。 重い。体が鉛になっている。立ち上がろうとしても、殆ど言うことを聞かない。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・ど、どうしたらいいんだ・・・・・!?」 「どうもこうも・・・・・・ねぇロック、もうやめようよ。 いくらこんなことしたって、誰も喜ばないよ・・・・!」 疲れた様子の全くないロックマンは、しばし宙を仰いでいたが、 やがて蔑むように言った。 「何をしでかすかわからない凶悪な機械人形を生かしておいたら、 人類に未来はないんだ。その人間を守るために戦うボクを邪魔してでも、 イレギュラーハンターの意地っていうのが張れるのかい? ・・・・・・・まぁそうだな。ボクもそろそろ終わりにしよう」 「え・・・・・・・・やっと・・・、やっとわかってくれたのね・・・・・・・ ・・・・・バカ・・・・・・・」

8話

その瞬間。 油断したロールの身体を、槍状に形成された鋭いロックバスターの閃光が、 深々と貫いていた。 「ああぁぁっ・・・・・・嘘でしょ、ロック・・・・・・・ ねえ、嘘だって言ってよ・・・・・・・」 「嘘なんかじゃない。 終わらせるっていうのはロール、君とボクとの腐れ縁。それだけさ」 ぞっとするほど冷たい微笑を浮かべるロックマン。 「ごめん・・・・・私、ロックにやられちゃったよ・・・・・・ 信じたくないけど・・・・・・・ ・・・・私・・・・もう・・・死ぬみたい・・・・ ・・エイルちゃん・・・エックスのこと・・・・ 大切に・・してあげて・・ね・・・・・・・ あなたなら・・・・きっ・・・・・・と・・・・・・・・・」 そう言い、一瞬だけ寂しい笑顔を見せて、ロールは力なく崩れ落ち・・・・・ ・・・事切れてしまった・・・・・

9話

「ロールさぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」 「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――っ!!!」 エイルとともに、怒りと悲しみに打ち震えるエックス。 青いアーマーを不気味に輝かせ、ゆらりと立ち上がったその様は、 さながら幽鬼のようだ。 既に形相は鬼のそれと化し、目が激しい義憤でめらめらと光っている。 「アルティメットアーマァァ――ッ!!」 召喚されてすぐ、漆黒の飛行物体がロックマンに突っ込んできた。 「な・・・うわっ!!」 「フォォォォームアップッッ!!」 エックスと重なり瞬く間に変形、そして合体する。 アルティメットアーマー・・・・・・・それは、Dr.ライトが以前試作した、 究極の強化装甲である。これ自体は未完成にも関わらず、 エックスの戦闘能力だけを限界まで引き出し、 鬼神の如きパワーを発揮することができる。 しかしそのあまりの危険性故に、これまでエックスが忌み嫌ってきたものだったのだ。 「・・・・レプリロイドはあくまでも負の存在でしかないと言うのか? ・・・・お前はレプリロイドのマイナスの側面しか見ていないのか? 同じような非は、人間にもあるだろう・・・・・・・ 己の欲のために罪を犯す者がいる一方で、 エイルのように平和を愛して生きる者もいる・・・・・・・・ 力が全てだと信じる者がいる一方で、 人の幸せを、優しさを求め続ける者もいる・・・・・。 だが・・・・俺は・・今の俺は人間の味方でもレプリロイドの味方でもないっ!! 血を分けた妹までやすやすと殺すような、 お前の非道が許せないだけだああぁぁぁぁ―――――っ!!!」 言うと、限界に近い速さでエックスバスターを連射した。 ロックマンも同じくロックバスターでそれを消しにかかるものの、 「そんな豆鉄砲、いくら撃ったって無駄なんだよ・・・・・・・・・っ!?」 事前に予想していたエックスはすぐさまジャンプし、 隙のできたロックマンの眼前に降り立った。 そして間髪いれず相手の両腕を掴み、 「うおおおおぉぉぉぉぉぉ―――――――っ!!」 煙を巻き上げながら壁際を目指して、猛烈な速さでダッシュしていく! おびただしい火花が散り、エックスの軌跡に光の大河を描く! 「ぅわああああぁぁぁぁぁぁ―――――っ!!」 ぶ厚いフラムサーブルの内壁に叩きつけられてひるんだロックマンが 起き上がる間に、エックスは背中のウイングを展開させた! 「これで最後だっ!! アルティメット・エックス・ストライクッ!!」 全エネルギーをバスターに刃状に収束させて掲げ、 そのまま相手に突撃する攻撃方法である。 その命を削るとも言える荒技を使い、道を誤ったロックマンを、 後継者「ロックマンX」として倒さねばならない彼の気持ちは、 如何なるものなのだろうか? ところが、ロックマンはエックスが持ち上げたのとは逆の腕を突き出し、 「くっ、・・・・まだまだっ! ファイナル・ロック・エクスキュージョンッ!!」 こちらに向かって同じように突進してきたのだ! そして、触れる者全てを破壊する勢いでぶつかり合う両者! 「うおおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!」 「でぇぃやあああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!」 この巨大戦艦を揺るがすほどの、激しいエネルギーの奔流が撒き散らされる!

10話

猛烈な閃光と大爆発の後にエイルが見たのは、 体を吹き飛ばされ、 アルティメットアーマーを砕かれ、 朽ちていくエックスの姿だった・・・・・・・・・・・ 「いやあああぁぁぁ――――っっ!!! エックスさあああぁぁ――――――んっっ!!!」 彼女の悲痛な叫びも空しく、エックスは猛烈な勢いで床に激突した。 動力停止を確認したロックマンが、口元に邪悪な笑みを浮かべ、 喜びを噛み締める。 「ボクは・・・・ボクは、エックスを超えたんだ!! ”無限の可能性”をもつロボットを!!」 糸の切れた操り人形のように、がっくりと膝をつくエイル。 その目は殆ど焦点を失い、ぼんやりとしている。      あれ?どうして涙が出ないんだろう・・・・・   悲しいことがいっぱいあって・・・・・・ありすぎて・・・・・・・   もう出てこなくなっちゃったのかな・・・・・・・・・   ううん、そうじゃない。   何か別の・・・・・でも、よくわからない・・・・・・   教えて。   どうして、人は傷つけあうの・・・・・・?   お互いの心が擦れ違うから・・・・・・?   せめぎ合うから・・・・・・?   ねえ、教えて。   私、もういや・・・・・・ 「騙されないぞ。これまで何度も地球を滅ぼしかけたシグマは、 君たちもわかってるとおり、既にイレギュラー化してるね。 ボクはシグマウィルスの濃度が薄いE−46ポイントに隠れて、 ずっと外の世界の様子を窺ってきた。故障したレプリロイドがもたらす、 目も当てられないような惨劇の数々を・・・・・・・・。 そこの女の子も、一歩間違えばああなるところだったんだ。 やはり、レプリロイドの安全性を裏付けるものは何もないのさ!」 言いながら、ロックマンはアイリスを指差した。 「そうだな・・・・・次はあの子から倒すことにしよう。 全ては平和のために・・・・そして正義の名のもとに!」 次の標的として、彼女を手にかけるつもりなのだ。 「っ!!」 「待たんかっ!!罪のない者をも無差別に破壊するのが、 かつて世界を救ったお前のやり方かっ!?」 ケイン博士が杖を突きつけて抗議する。 博士は、どうやら先ほどまで盛んに歯軋りを繰り返していたらしい。 歯の間から血が滲み出している。 が、あくまでも冷徹なロックマンは、一つため息をつくとこう言った。 「人類の英知の結晶たる科学者の中では 例外的にそういう歪んだことしか考えることが出来ない・・・・・ あなたはライト博士やワイリーの同類だ!」 「何とでも言うがいい。シグマを作ったことは反省しとるが・・・・ 今のワシは間違ってなんぞおらん!! ワシは自分の生み出したレプリロイドたちを愛しておる。 それがどういう意味かまだわからんと言うなら・・・・、 お前は戯け者じゃあっ!!」

11話

暫しの沈黙・・・・。 (お、お父さん・・・・) 博士の激昂を聞いたエイルは、体に力が込み上げてくるのを感じていた。 例えようのない、熱く、優しい力。 やがて胸に手を当て、覚悟を決める。 そしてロックマン目がけ、 「私は・・・・・・あなたの存在を否定したくないです。 過去に地球を守りぬいた人なら尚更・・・・。 でも、今はただどんな犠牲も厭わずに、ひたすら目的を果たそうとするだけ。 人の苦しみと悲しみを理解できないあなたに、 平和や正義という言葉を口にする資格はありませんっ!」 厳しい台詞をぶつけた。 「これ以上の話し合いは無駄か・・・・・・もうエックスもロールも戦えない。 君がどこまで持ちこたえるかはわからないけど、 ボクはボクの正義を信じて一切手加減しないよ。 食らいなっ、フェイタルロックバスタァァァ――――ッ!!」 言うが早いか、ロックマンは鮮血を思わせる深紅のチャージショットを発射したが、 「イペル・エイル・レイヨン!!」 それはエイルの張った防御フィールドによって完全に阻まれた。 「なっ・・・、何だって!?」 たじろぐロックマンの前で、エイルは掌に光のエネルギーを集中させる。 「私、エックスさんやロールさんに助けられてばかりで・・・・・・・・・・ 恐くて、結局先輩たちに何もしてあげられなかった・・・。 とっても、とっても悔しいです・・・・・! だから、もうアイリスとお父さんだけは、絶対に傷つけさせたくないから・・・・・ 私、あなたを倒します!!」 程なくして、エネルギーチャージが完了した! 「力を・・・私にっ!!ユルティム・エイル・クラルテ!!」 最大出力で放たれた光のオーロラに圧倒されて驚き、なす術もなく包まれ・・・・ 「まっ、まさか・・・・・・ボクが、ボクの望む世界が、 こんなところで消えてなくなるなんて・・・・・・・ まだ、まだ死ねないのにっ・・・・・・ ぅうわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っっ!!!」 全身に次々と入っていく亀裂から眩しい閃光を発し・・・・・ ここに、DRN.001・ロックマンは消滅した。 幾度にもわたってDr.ワイリーの野望を阻止し、 平和を守るために戦い続けた21世紀の英雄。 その最期であった・・・・・・

12話

「ごめんなさい・・・・本当に、ごめんなさい・・・・・ ごめんなさい・・・・・・・・・・・」 止め処なく溢れ出す涙を、抑えることのできないエイル。 ティアラを外してツインテールを解き、頬を伝う雫を拭おうとする。 彼女のその言葉が誰に対して向けられたのかは、 アイリスもケイン博士もわかっていた。 「あなたは・・・・間違ってないわ。だから、もう泣かないで・・・・・・」 「うむ・・・・エイル、ワシらにはワシらの生き方があるんじゃ。 仮に誰がそれを否定しようとも・・・・ それがたとえロックマンであろうとも・・・・・・ 今を生きるためにもがきあがくこと。周りの存在を受け入れ、愛すること。 そして、もし命が弄ばれるなら、悲しみを乗り越えて敵に立ち向かい、 大切なものを守るために戦うこと・・・・。それが人間やレプリロイド、 すなわち心ある者の何よりの証なのじゃからな・・・・!」 「アイリス・・・・お父さん・・・・・」 アイリスが、エイルの手を優しく握る。 「大丈夫、エックスさんやロールさんはきっと助かるから。 そうですよね?ケイン博士・・・・」 「心配御無用! あれぐらいだと、特にエックスはちと時間がかかるが必ず直せる・・・・。 急ピッチで修理して見せるから期待して待っておれ!」 「あ・・・ありがとう・・・・・・・」 「よぅし、この船の操縦系も把握したことだし、そろそろベースに帰るぞぉ!」 「はいっ!」 彼女はロックマンを倒したこと、ロール、最愛の人・エックスを 守ることができなかったことに決して後悔していないわけではない。 だが、あそこでアイリスやケイン博士もろともやられていれば、 エックスもロールも二度と修復されることはなかっただろう。 あのつらさに耐えて苦しい選択をしたからこそ、 人類のパートナーたちの安寧は保たれたのだ。 何より、こうして自分を慰めてくれる者たちがいるではないか。 膝まで届くエイルの髪は、何事もなかったように、 ただ静かに揺れていた・・・・・・・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 全レプリロイドを抹消しようと企んだロックマンの野望は、 エイルたちの死闘によって潰えた。ところがハンター上層部は、 ロックマンと同じくドクターライトナンバーズであるエックスとロールに 極めて厳しい処分を適用する。釈然としないエイルたちは、 修復中のエックス、ロールを連れてケイン博士らと共にベースを脱出するが、 その行為を良しとしない上層部が彼女たちを拘束すべく付け狙う! 敵はイレギュラーハンター!果たして、エイルの進む道に光はあるのだろうか!? 次回、RockmanX 〜Lumie´re Princesse〜 chapitre4 「消えぬわだかまり」。 「皆さん・・・・・私、いきます。見ていてくださいね」


transcribed by ヒットラーの尻尾