ガンダム作品史

機動戦士ガンダムF91

- CAST -

シーブック・アノー 辻谷耕史
セシリー・フェアチャイルド/ベラ・ロナ
冬馬由美

リィズ・アノー 池元小百合
レズリー・アノー 寺島幹夫
モニカ・アノー 荘司美代子

マイッツァー・ロナ 高杉哲平
カロッゾ・ロナ(鉄仮面) 前田昌明
ナディア・ロナ 坪井章子
ドレル・ロナ 草尾穀
シオ・フェアチャイルド 大木民夫

ザビーネ・シャル 梁田清之
ジレ・クリューガー 小林清二
アンナマリー・ブルージュ 神代知衣

ドワイト・カムリ 子安武人
サム・エルグ 高戸靖広
ジョージ・アズマ 西村智博
アーサー・ユング 松野大紀
ドロシー・ムーア 折笠愛
ベルトー・ロドリゲス 伊倉一恵
リア・マリーバ 小林優子
コチェン・ハイン 吉田古奈美

ビルギット・ピリヨ 塩屋翼
レアリー・エドベリ 横尾まり
マヌエラ・パノパ 鈴木みえ
ケーン・ソン 佐藤浩之
ジェシカ・ングロ 天野由梨
ナント・ルース 大友龍三郎
グルス・エラス 竹村拓
ミンミ・エディット 千原江理子

コズモ・エーナス 渡部猛
バルド中尉 若本規夫
エルム夫人 峰あつ子
ロイ・ユング 大木民夫

- STAFF -

企画,製作 サンライズ
原作 矢立肇
原作,監督 富野由悠季
脚本 伊東恒久,富野由悠季
製作 山浦栄二 
演出 杉島邦久
キャラクターデザイン 安彦良和
作画監督 北原健雄,村瀬修功,小林利充
メカニカルデザイン 大河原邦夫
音楽 門倉聡
撮影 奥井敦
美術 池田繁美
音響 藤野貞義
プロデューサー 中川宏徳
製作委員会 松竹,奥山和由,創通エージェンシー,
那須雄治,名古屋テレビ,木谷忠,バンダイ,山科誠,
サンライズ,伊藤昌典

EDテーマ、挿入歌
「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」
作詞 西脇唯
作曲 西脇唯,緒里原洋子
編曲 門倉聡
歌 森口博子

パイロットフィルムテーマ
「君を見つめて-The Time I'm seeing you-」
作詞 西脇唯
作曲 西脇唯,緒里原洋子
編曲 門倉聡
歌 森口博子

作品形態 劇場公開作品
媒体 VHS(劇場公開版):115分
VHS(完全版):120分+映像特典
DVD 完全版、劇場公開版、映像特典全て収録
- 簡単なストーリー説明 -

 U.C.0123、シャアの反乱も30年昔の話となり、23年前にジオン共和国も自治を放棄し連邦傘下に下った。
敵対勢力を失った地球連邦は宇宙移民者たちへの支配を一層強めながらも地球圏は平穏な日々を過ごしていた。
 そんな中、謎の小型MSが新興コロニー「フロンティアIV」を襲撃する事件が起きる。
そこに住む平凡な高校生シーブック・アノーは学園祭の最中から友人達と共にコロニーからの脱出を図った。
だが、同級生のアーサー・ユングが戦死し、セシリー・フェアチャイルドが謎のMSに連れ去られてしまう。
父親のレズリー・アノーの協力でフロンティアIVを脱出、隣のフロンティアIへ逃れたシーブック達は
抵抗派拠点の練習艦「スペース・アーク」に収容され、伝説のMS「ガンダム」を思わせる試作MSに出会う……

- うだうだと解説 -

 1991年3月に公開されたガンダム史上2番目の劇場公開用オリジナル作品。富野由悠季、安彦良和、大河原邦夫らの
ファースト・ガンダムを創った男達が再び集結、新たなる「ガンダム・サーガ」の幕開けとなる作品になった。
事実、F91の派生作品としてF90、シルエット・フォーミュラー91(いずれも電撃コミックス刊)
フォーミュラー戦記0122(ハード:SFC、発売元:バンダイ)などがあり、
30年後の設定でVガンダムが始まるなど、平成ガンダムの幕開け的な存在となりえたのである。
 本来は劇場公開作品はプロローグにしか過ぎず、その後にTVシリーズが展開される予定であったらしいが
都合がつかなくなったのか中止となり、代わりに追加カットを含めた完全版をビデオでリリースし
1994年には富野由悠季自らが手がけたF91の続編に当たるコミックス作品「機動戦士クロスボーンガンダム」
(漫画:長谷川裕一、全6巻、角川書店刊)を発表した。F91を見たならばこちらも読むことをオススメする。

 時代設定は今までのガンダムとは別物にするためにシャアの反乱から30年後の宇宙世紀0123が選ばれた。
宇宙世紀0100にジオン共和国が自治を放棄、連邦の傘下に下ったという設定もこの時に付け加えられた為、
それ以降のガンダムでは地球連邦は反連邦組織に関して反抗する力がほとんどない、情けない存在となっている。
それもそのはず、MSも型遅れのものが主力、戦艦はシャアの反乱時からまったく変わっていないからである。
今作に登場する連邦の戦力も戦艦はシャアの反乱時の時のままで、MSは最先端の小型MSはあるものの
やはり主力は30年前の大型MS、ジェガンの改修機であった。
 このように連邦政府の腐敗、連邦軍の堕落は誰の目にも明らかであったのに対し、
かつてのジオン公国のようにそれを打ち倒そうとする強大な勢力は現れなかったのである。
……それを成そうとするものがいなかった訳ではないのだが。

 今回の敵、クロスボーン・ヴァンガードはジオンとは違い、後ろ盾に国家を持たない私兵集団であった。
後ろ盾は巨大企業のブッホ・コンツェルン。ブッホ・コンツェルンは貴族主義を宇宙世紀に対応させた
コスモ貴族主義を持ってコスモ・バビロニア建国を宣言、絶対民主主義の地球連邦を倒そうとしたのである。
(その為、F91で描かれた戦いは【バビロニア建国戦争】と呼称されるようになった。)
だが、それはジオン・ズム・ダイクンが暗殺された宇宙世紀0069にブッホ・コンツェルン創始者一家が
欧州の名家、ロナ家の名前を買い取って貴族を名乗ったという欺瞞の上に成り立つものであることを
忘れてはならない。
 だからこそ、一般の教育を受けたベラ・ロナは反発したと言えるのではないか。
本作では語られていないが、ベラ・ロナは父親のカロッゾの死後、クロスボーン・ヴァンガードの掲げる
コスモ貴族主義を否定する演説を行いこれを内部分裂させ、バビロニア建国戦争を終結に導いたといわれる。
しかしコスモ貴族主義者は歴史の表舞台から去っただけで依然としてブッホ・コンツェルン内に根強く存在している。

 今回は地球上が舞台となることはなく、新興コロニーのフロンティアI、IVが中心となって描かれている。
これらはフロンティア・サイドに属していて、場所はかつてのサイドIVがあった月軌道上のL5にある。
実はフロンティア・サイドはブッホ・コンツェルンがコスモ・バビロニア建国の為に作ったコロニーで
その為にフロンティアIVは中世ヨーロッパを思わせるクラシックな作りとなっていたようだ。
 一方、フロンティアIはハマーンの反乱時のサイド3所属のコロニー【コア3】と同様に資源採掘用の
小惑星とドッキングした鉱山コロニーで、小惑星には強大な電力を確保できる核融合炉が設置されていた。
それらがあったことと、抵抗派が集結していたこともあってフロンティアIは恐怖の大量殺戮兵器【バグ】の
試験をする場所としてはこれ以上無い最適な場所になってしまったと言える。

 バグは人間だけをサーチする機能を備えた円盤型のノコギリのようなカタチをしており、
大きなバグが建物などを破壊、奥まった場所には小型のバグが入り込み、爆発して周囲の人々を殺傷する。
精神の歪んだカロッゾだからこそ考えることの出来た恐るべき兵器である。
(完全版では追加カットを設け、劇場公開版よりもそのシーンがより恐怖感を煽るものになっている。)
カロッゾは更に自分の脳波でコントロールが可能な最恐のMA【ラフレシア】を完成させ、搭乗している。
これはノコギリやビームガンを搭載したテンタクラーロッドを無数に装備し近づく敵全てを切り刻んだりする
恐るべき能力を誇っている。月からの援軍の連邦艦隊をあっという間に全滅させたことからも
その凄さは証明される。

 この時代のMSはかつての大型化を排除し、MSの原点に立ち返る意味あいで小型化されている。
また、かつてのジオン系MSに搭載されていたモノアイはこの時代には完全に過去の遺物と化している。
 普通、ただ単に小型化すれば「クロスボーンガンダム」に出てくるゾンド・ゲーのように
「全てを小さくしてみました」といった弱体化をイメージしがちだが、技術的革新を持って
これを行った為に「小型になったけど出力はいままでと同等」=「小型になっただけ小回りが効き、素早く動ける」
という機動兵器本来のメリットが今まで以上に得られたのだ。
そして小型化に伴う出力の余剰はビーム・シールドと初めとした高出力兵器の標準搭載を可能としたのである。
 ビーム・シールドは強力なビームをシールド状に展開してダメージを防ぐが、大型MSでは出力が足らず
搭載は不可能だった。ビーム・シールドはデッド・ウェイトにならないというメリットもある為、
そういう面から見ても機動力重視の小型MSにはうってつけな装備であったといえよう。
 F91のヴェスバーも同様に出力の余剰を利用した兵器の一つで、ビームシールドごと
MSを消滅させるだけの威力を誇るまさにF91の必殺武器である。だが、ZZガンダムのハイメガキャノン同様に
発射後の行動制限がある為あまり頼りすぎる訳にはいかなかった。
しかしF91にはそれをカヴァーする為、バイオ・コンピューターを搭載しパイロットの能力次第では
「質量のある残像」を生み出すことが出来ると言われている。
MSはこの後も小型のまま、機動力重視で発展していくことになる。





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