スズメ


草むらに踏み入ると

知らずにいたスズメらが いっせいに飛び立った

行くなよ

置いて行くな。

小スズメたちにも 私の足では追いつけない。

傍らをビョゥ。と風が駆け抜けた。

夕暮れ空に 胡麻つぶのように群れ飛ぶ姿

私はぐるりと 空を追いかけ 

やり場のない空しさを握り締め 仕方なく歩き出す

欲のかたまりが 足かせへと姿を変え

人を 地上に縛りつける

ナミダなんて流すから 悲しいなんて思うから

人には 翼は与えられなかった

草が根こそぎ抜かれ 黙っている

虫がひねり殺され 黙っている

捨て猫は 母のぬくもりを 旅立つ時に捨ててきた

人には解りはしないだろうが

ねえ 人間ってどこまで 行けるのだろう

先の知れない不安に 眠れない夜を数え

誰かに寄りかかり 手をつないでいて欲しい 

何もかも 捨てると言ったら

背中に翼が 生えるだろうか 

あぁ 空に放つよ 我が思い

誰にも 届きはしないけれど

秋の気配が 満ち満ちている

遠い季節をくぐり抜けて届いた 透明な風を

胸に 吸い込み 家へ帰ろう

せめて今日だけ 誰かに優しくしようと思う