砂浜にて



晴天の冬の午後 砂浜で凧をあげる

裸足のかかとにオレンジ色の砂粒をつけて

細い糸を操る

きりりと冷たい浜風が 頬に吹きつけ

凍った青い空をにらみ 

無心に糸をひく

 

冬の午後に 一人で来た

広がる空のキャンバスの

右のはしから左のはしに

飛行機雲が弧を描き 細く長く伸びていく

 

今ここにいる 身体いちまいで風を受け

かじがんだ手は 他人の手のよう

冷たい風に揺らされつつも 踏ん張る背中

なみだ目のはじに見えるもの

はるか彼方 砂浜のカーブを走るランナー 

 

凧と雲の合間には 昼間の月が見え隠れし

とがった三日月の先で

ついっ、 と風に踊る凧を突く

 

ついっ、 と突かれ 

はりつめた私の意識は 急に悲しくなっていく

 

砂浜の上の ほの白い三日月。

 

黒いとんびが 風をいっぱい胸にうけ

ゆうゆうと 空に大きな輪を描く