しあわせな詩人

 

ときどき カタコト止まる

君のミシンの音

疲れたように 首を左右に振り

思い直したように またカタコトはじまる

つまらなくて

君に向かって 机のホコリを吹いてみた

猫は目をしばたき 新聞の山の上で 窓の外を監視中

散らかった部屋を

堆積した言葉を 片付け始めようとすると

君は 自分の領域を 守り

白い腕で僕を止める そっと

窓の下の木は 何の種類だったろう

葉が散ってしまうと その名前すら忘れてしまった

からまったツタが

最後の色変わりの葉を残し 細々と風に震えている

その木の下で 犬が通行人に激しく吠える

ここから見上げる 物憂げな冬の空が

僕を不精人にし 部屋にとどめるのだろう

猫もドアの前にいる

「こうして ここで生きるんだろう」

「時計とカバンと共に。」

頭をかいて 僕はビールの缶を積みあげる

ちらり 君の視線を感じ

つぶやきを 僕はあわてて消して

1人の見えない扉を そそくさと閉め タバコに火をつける4

アカネから着替えた宵の色が 窓をノックし

猫も仕事を終え 大あくび

トマトリゾットの ニンニクの香りが腹をくすぐり

いつの間にか休日は

安堵と休息の一日の終わりへと また むかう。