あの1月の空


枯れた並木が続く以外 何もない街角で 

コンクリートとレンガの建物を

弱々しい午後の光が包んでいた 

私はこれから自分の居場所を作ろうするところだった

冷たい風を受けて 雪の残る道を行く

たまたま開いたページ 古い記憶を呼び覚ます

突きつけられた 言葉のつぶて

心に刺さったままだったんだ

いや

大切に保存していたのは私なのか

いつか同じつぶてを投げかえそうと?

目を閉じて

深い眠りは何よりの薬

曇りガラスに指で書いた 汚い言葉も

頭の中で用意した 悪い言葉も

みな消し去る イチバンの薬

あの時 若くて 何も知らなかった

広く柔らかい気持ちで

もっと自由な心でいた

誰にも出会う前の私がいた

いつから変わってしまったのだろう?

北から渡る風に吹かれ 

新しい自分を抱いて 

手荷物と

最小限の日常を持ち、 

あの空の下に立っていたのは 確かに自分だったのに。

帰り道

コートの中の言葉達を 右手で握りつぶす

とっくに 頭のバケツはいっぱいになっているのだ。

折り畳み続ける日々の中で 変わった自分に

あの北の空に戻れと 声が聞こえる。

そろそろ その時だと。

凍った土の下を掘り起こせば 小さな命が

確かに春の球根が 息づいているはずだから。