風の運んだもの


 

熱い草いきれが 地上から吹きあがる

私は 夏草の中に立ち

風の通り道を探す

 

私を からかうように

そこ ここに 葉うらのざわめき。

 

気まぐれに草をなぞって消える 風の道すじ

ころがるように

草の上を風が駆け抜けた

 

頃合を 上手に見計らって

トンボはすぅいっと 風にのる

摂氏36度の熱い風を受け 

桑の葉畑が 重く揺れている

 

真夏の日差しは今日も元気に 人を刺す。

今日 ここに

手の中に握り締めてきた 思いを捨てに来た。

 

草原(くさはら)に吹き起こる風に乗せ

後ろ手で 思いをちぎって 捨てる

誰かにさとられぬよう そ知らぬ顔で 風に散らす。

 

夏の日差しが アスファルトに

くっきりとした木々の陰影を作る 帰り道

やがて 

秋が来て きっと私も静かに眠るのだろう

熱い炎も やがて消える

すれ違う 影と影

 

燃やした炎も 野を渡る透明な風に吹かれ 消えゆくのか

犬が草原で あらぬ宙を見つめているのは

風の姿が見えるからかもしれない