月 (真夜中の月)


 

ネオンの消えた駅前通りは

まだ 誰かが来るのを待っている

きいろい 月の光が

昼間のように影を作る

「助走をつけて 表通りをまっすぐ 月へ一直線にかけのぼろう」

うふふ 

「自由の羽を 背中につけて」

そんな夢を見た

月の光は人を酔わせる

やがて駅前の風は

街角をいくつもいくつも横切って

悲しい色を集めながら

こちらのほうへ流れて来るよ

それを頬に感じるのも切ないね

ずっと昔にしまい込んだ

苦くて小さな 心のかけらを思い出させる。

きいろい月のしずくを

手にすくい 飲み干せば

夢の扉が もう一度

開くかもしれないと

「助走をつけて 表通りをまっすぐ 月へ一直線にかけのぼろう」

「自由の羽を 背中につけて」

駅前通は また誰かを待っている。

迎えのもの を待っている。