少 女


梅雨を知らせる風がふく

少女は小首をかしげて立ち止まった。

・・・・・・

緑のフェンスには

ミツバチが群がる古いつるばらが咲き

ハコベの花をじっと見つめれば

誰かのピアノがもう聞こえる

 

通いなれた道路を横切り

ひとしきり草の中でぺんぺん草を探す

おおや石の塀をよじのぼり

太陽を見上げると、もう一日の半分は

とっくに過ぎている。

 

赤いランドセルが揺れる

ひとりでも鼻歌を歌いながら

ひたいに汗が光る季節

毎日はなだらかに過ぎ行き

やがて子供の季節は終わる

 

初夏の曇り空は憂鬱で

湧き出した木々の青葉にゆれる心

・・・・・・

少女はふと背中を向け

物思いつつ階段を上っていく

 

大きな柳の老木が

梅雨を待ち

静かに川岸に揺れていた