切 符
潮風に髪をゆらして 華奢なサンダル 帰り道は いつも指先が痛い。
座ったイスは冷たかった。 ホームの先は暗く淋しかった。
抱えるほどのカスミ草 どこかへ捨てて帰ろうか。
ここには屋根があるけれど 心はちっとも休まらない。
洗った髪は一つに結び 履きなれた暖かい靴下をはこう。
泣きながらむいた林檎をほおばり 横たわった身体に 時が砂のように流れてゆく
子供のように眠り続ける 何かを忘れようと眠り続ける
気がつけば いくつか季節が過ぎていた 壁のつる草が 黄色や赤に染まっていた
久しぶりに 窓から空を見上げた気がする 切符は、 切符は もういらない。
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