往く夏の日に 2




夏の風 吹き抜ける雑木林

少しよごれた手のひらにのせた ぬけがらを

眩しそうに差し出した

顔を寄せてのぞきこめば茶色の薄皮の向こうに

キラキラ 木漏れ陽 揺れる記憶




透明の水に カラン 透明の氷が泳ぐ

飲み干しても潤わず 渇きはおさまらず

涙も流れ出ず

カーテンの間から空をのぞく




脱皮の時の恍惚感のあと

するすると

ワタシの中身は水洗トイレに抜け落ちた

ゆっくりそれを確認して

それから

洗浄レバーを引きました




ぽとり コップつたった水滴で

テーブルなぞる 入道雲のカタチ




夏は往ってしまった

朝はもう訪れない 何度 夜が来ても

名残の南風 チカラなく ベランダ通りゆけば

置いてきぼりのぬけがらが

ヒュウと悲しい音たてる