往く夏の日に 1




ベランダで頬を撫でる風

いつかの潮の香りがよみがえる

砂浜なぞって吹いてきたのか

物干しざおには 名残惜しげに麦わら帽子




セミは わが身をいとおしいと思い鳴くのかな

ざわわと震えるケヤキの樹に守られて




あの高台の窓からいつも

午後に流れるピアノの音が

透明になりつつある風にからまり

秋を迎えに行く




日に焼けた少女の見たヒマワリ畑と

茶色く乾いた髪を揺らして




秋を迎えに行く