高いところに居るお月さま





風吹く夜道を急げば 足元に街頭の影が揺れて

いつの間にか 天空は晴れ 灰色のちぎれ雲の

てっぺんに 居りますは きりり引き締まった

銀色に輝くお月さま




ずいぶん高いところまで 昇られたこと

さぞ良いながめでしょうか

ついでに あの扉のむこうに何があるのか

そこから見てはもらえませんか




重くて 重くて 開かないのです

両隣の扉を軽く開け するり抜けてゆく人々の中で

思いがけず 自動改札機のピンポンに

きまり悪げに 立ち尽くすヒトのよう

私は今日も扉の前で 途方にくれています




あの扉

硬くて開かないのか 私の力足らずなのか

それとも もしかして

誰かが反対側からも 開かないように押しているのか




お月さま 扉の向こうが

そこから見えたら 今夜の夢の中ででも

教えてくれると ありがたいのですが