泰山木の花
太陽は 高く 道は 遠く
歩いても歩いても
いっこうに家が見えてこない
風が耳元で
かさり 音を立てる
玄関先の泰山木の そう 硬い葉ずれの音に似て
坂を登ると
おかえり と 私を迎えてくれた
真白の泰山木の花
手のひらに余るほど
大きなその花 見上げるたびに
きっと神様が隠れていると 思ってた
アスファルトは いつのまにか ふわ ふわ
靴をどこかに 忘れてきたのか
ロボットのように 勝手に先へと進む足
仕方なく 身体はそれを追いかける
いつか はじまりの場所へと
歩き続ける
坂の上の
傾きかけた木戸のむこうへ 還る時まで